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white_robe_love_syndrome:scr01111

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[001]【なぎさ】

[002]「ん〜、

[003] やっぱ、あみちゃんの音って癒されるぅ〜」

[004]【はつみ】

[005]「そうね、

[006] 演奏に関してはわたしは良くわからないけれど

[007] ……ずっと聴いていたくなるような音ね」

[008]【なぎさ】

[009]「そうですよねー。

[010] 夜勤の沢井が寝に帰らずに残ってまで参加するくらい、

[011] 魅力的な演奏ですよねー」

[012]【かおり】

[013]「そりゃ残りますよー。

[014] だって、わたしは演奏会の企画者ですし、

[015] あみちゃんのファン第1号なんだもーん」

[016]【さゆり】

[017]「……やれやれ」

[018]そうこうしている内に、

[019]あみちゃんの演奏は滞りなく終わって――。

[020]集まってくれた患者さんたちに、ぺこりと頭を下げて、

[021]足取りも軽く、あみちゃんが駆けてくる。

[022]【あみ】

[023]「かおりんさんっ!

[024] どうでした、わたしの演奏!!」

[025]【かおり】

[026]「んーっ、もう、最高っ!だったよ!!

[027] 今まで聴いた中で、間違いなく一番!!」

[028]【なぎさ】

[029]「うわ、主任さん、聞きました〜?

[030] あみちゃんったら、真っ先に沢井のとこに来て

[031] 『かおりんさんっ!』ですってー」

[032]【はつみ】

[033]「ふふ、そうね。

[034] 浅田さんの視界には

[035] わたしたちは入っていないのかもしれないわね」

[036]【なぎさ】

[037]「あたしたちも準備とか根回し、頑張ったのにー」

[038]【さゆり】

[039]「わたし、ずっと見てましたけど、

[040] あなたが頑張ったところなんて

[041] これっぽっちも目に入らなかったんですけど」

[042]【なぎさ】

[043]「なぁんですって!?」

[044]【さゆり】

[045]「悔しかったら、ちゃんと仕事も企画の準備も

[046] どっちも頑張ってください。

[047] あなたは中途半端なんです」

[048]【なぎさ】

[049]「ムキーッ!!

[050] ちょっと主任さん!!

[051] この患者さん、こんな暴言吐いてますよ!!」

[052]【はつみ】

[053]「……痛いところを突かれたわね、藤沢さん」

[054]【なぎさ】

[055]「うわーん、

[056] 主任さんが部下の頑張りを認めてくれな〜い!」

[057]拗ねて泣いてるフリのなぎさ先輩、

[058]主任さんは微笑んでいて、

[059]退院を控えた堺さんは相変わらずの毒舌ぶり。

[060]ここに山之内さんがいたら

[061]もっとカオス……じゃなくて

[062]楽しいことになったんだろうなって思える。

[063]【はつみ】

[064]「浅田さん、患者さんのレクリエーションを

[065] 引き受けてくれてありがとう。

[066] 患者さんたちも喜んでくれているし、嬉しいわ」

[067]【はつみ】

[068]「内科だけでなく、外科や外来までも話に乗って、

[069] 意外と大きな演奏会になってしまったけれど、

[070] 負担ではなかったかしら?」

[071]【あみ】

[072]「そんなこと……っ!!

[073] こんなわたしの演奏でも、

[074] 喜んでくれる人がいることが嬉しいです!」

[075]あみちゃんは夏休み前に退院して、

[076]ギリギリ1学期中に学校に戻った。

[077]そこで、お友達と仲直りをして、

[078]楽しい学生生活を送る傍らで、

[079]演奏会の申し出を受けてくれたの。

[080]夏休み中はこのために

[081]お友達や先生を巻き込んで猛練習の上、

[082]演奏会をしてくれることになった。

[083]今回の評判が良かったら

[084]定期的に……という話だったので、

[085]もしかしたら、こんな風に

[086]定期的に演奏会が開かれるようになるかもしれない。

[087]最初は内科に入院中の患者さんだけが観客の

[088]内輪の演奏会の予定だったんだけど、

[089]どこから噂を聞いたのか、

[090]どんどん観客希望者が増えちゃったのよね。

[091]きっと、この9月から新しく外科の主任になった

[092]小林主任さんが大塚主任さんの後輩だったことや、

[093]常盤師長さんが外来師長を兼任していることが

[094]関係してるんだと思うけど……。

[095]【なぎさ】

[096]「あみちゃんったら本番に強いのねー!

[097] 最初はガッチガチになってて、

[098] どうなっちゃうのかって心配したんだけど〜」

[099]【あみ】

[100]「やだ、なぎさんったらぁ!

[101] 思い出させないでくださいぃ〜!」

[102]真っ赤になったあみちゃんが身悶えている。

[103]うん……、出されたお茶をひっくり返したり、

[104]おしぼりを頭の上に乗せてみたり、

[105]控え室代わりの詰所で記録用紙をぶちまけたり、

[106]緊張のあまり、意味不明な行動をしてたよね。

[107]でも、演奏が始まっちゃえば、

[108]そんな緊張も何のその!

[109]楽しそうにのびのびと演奏するあみちゃんに、

[110]わたしも勇気を貰った気分……!

[111]【はつみ】

[112]「次もまたお願いできたら良いのだけれど……

[113] 難しいかしら?」

[114]【あみ】

[115]「いえ、大丈夫です!

[116] スケジュールが決まったら、また連絡ください!

[117] もっと練習しておきますから!!」

[118]【はつみ】

[119]「助かるわ、ありがとう。

[120] じゃ、わたしたち日勤組は

[121] 患者さんを部屋に帰さないと!」

[122]颯爽と主任さんはその場を立ち去って、

[123]外科や外来の看護師さんたちと手分けして

[124]車椅子の患者さんを運び始めている。

[125]【なぎさ】

[126]「あみちゃん、演奏、すごく良かったよ!

[127] こないだ聴いた時よりも上達してた!

[128] どんどん上手くなってくんじゃない?」

[129]【あみ】

[130]「わー、本当ですか!?

[131] お世辞でも嬉しいですー!」

[132]【なぎさ】

[133]「お世辞じゃないわよー。

[134] 今の内にサインでも貰っておこうかしら」

[135]【あみ】

[136]「うふふ、なぎさんったらぁ」

[137]【かおり】

[138]「…………」

[139]むー、

[140]なぎさ先輩ったらミーハーなんだから……!

[141]【かおり】

[142]「なぎさ先輩、

[143] 主任さんと同じ日勤組なのに、

[144] 患者さんの移動を手伝わなくてもいいんですか?」

[145]【なぎさ】

[146]「んま!!

[147] 沢井ったら、心せまーい!」

[148]【なぎさ】

[149]「一刻も早くあみちゃんと

[150] ふたりきりになりたいからって、

[151] あたしを邪険にするのね!?」

[152]【かおり】

[153]「う……!

[154] そ、そういうわけじゃないんですけどぉー」

[155]【かおり】

[156]「主任さんも病棟に戻ったようですし、

[157] 叱られるのはなぎさ先輩なんですよ?」

[158]【かおり】

[159]「これ以上、叱られないようにって

[160] 気遣ってあげてるのにぃ」

[161]【なぎさ】

[162]「そういう沢井は、あみちゃんの演奏会が

[163] 夜勤明けになるように勤務希望入れてたよね。

[164] まったくもー、公私混同しちゃって!」

[165]【かおり】

[166]「え……、

[167] だって……、演奏の後に

[168] 次回の相談とかイロイロあるし……」

[169]なぎさ先輩の指摘に

[170]うっかり真っ赤になってしまう。

[171]【あみ】

[172]「か、かおりんさん……」

[173]そして、何故かあみちゃんまで

[174]真っ赤になってるし。

[175]【なぎさ】

[176]「んもー、可愛いわねー。

[177] そうして、揃って仲良く顔を赤らめてると、

[178] 仲良し姉妹みたいね」

[179]……仲良し姉妹、ね……。

[180]わたしとあみちゃんは

[181]顔を見合わせて、こっそりと微笑み合った。

[182]演奏会の後は、わたしの部屋で打ち上げ。

[183]もちろん、あみちゃんは未成年だから

[184]アルコールはなしで。

[185]わたしも夜勤明けだから

[186]ノンアルコール。

[187]ふたり、隣り合って座って、

[188]ジュースを注いだグラスを重ねて、乾杯。

[189]【かおり】

[190]「お疲れ様でした、あみちゃん」

[191]【あみ】

[192]「いえいえ、こちらこそ

[193] ありがとうございました!」

[194]もう一度、グラスを合わせてみる。

[195]【あみ】

[196]「それにしても……

[197] なぎさんに姉妹って言われちゃいましたねー」

[198]【かおり】

[199]「仲良しって言われちゃったねー」

[200]うふふとふたり、声を揃えて笑う。

[201]【あみ】

[202]「でも、わたし、妹でもいいんですけど……、

[203] 妹じゃなくて……」

[204]【かおり】

[205]「妹じゃなくて……なぁに?」

[206]わかってて、わからないフリをしてみる。

[207]真っ赤になるあみちゃんが可愛い。

[208]【あみ】

[209]「んもうっ、

[210] かおりんさんのイジワルぅ!!」

[211]ポカポカと殴られたけど、

[212]ただのじゃれ合いだから全然痛くない。

[213]拗ねてるフリのあみちゃんを

[214]そっと抱き寄せる。

[215]【かおり】

[216]「……だって、

[217] あみちゃんはまだ高校生、でしょう?」

[218]もう何度したかわからない額へのキスをすると、

[219]いつものように、不満そうな顔をするのも

[220]また楽しい。

[221]【あみ】

[222]「……かおりんさん……」

[223]【かおり】

[224]「そんな顔しても、ダーメ」

[225]【あみ】

[226]「わたし、かおりんさんと

[227] そろそろ恋人のチューしたいです」

[228]年下で未成年の恋人は

[229]時々、こうしてわたしの自制心を試すようなことを

[230]天然で言ってくれるので、とっても困る。

[231]……少しだけ嬉しいんだけど。

[232]【かおり】

[233]「……わたしもしたいのは山々だけど、

[234] あみちゃんが卒業するまで、おあずけって

[235] ふたりで決めたでしょう?」

[236]【あみ】

[237]「そうなんですけどぉ!」

[238]あらら、

[239]むくれてる、むくれてる。

[240]ぷぅ、とほっぺを膨らませてる

[241]そんな顔でさえ可愛いんだから、もう!

[242]【かおり】

[243]「んもう、

[244] しょうがないなぁ、あみちゃんは」

[245]肩を抱いたまま、頭をナデナデ。

[246]少し機嫌を直したのか、

[247]あみちゃんが小さく息を吐いた。

[248]【あみ】

[249]「……わたし、

[250] かおりんさんにナデナデしてもらうの、

[251] 大好き……」

[252]【かおり】

[253]「でも、もう以前みたいな

[254] 気持ちいい感じはしないでしょう?」

[255]階段から落ちた時に

[256]夢の中のあの子が消えて以来、

[257]わたしの『癒しの手』も消えたらしい。

[258]お陰で、

[259]患者さんからの楽になったという言葉は

[260]激減したけど……

[261]でも、それが本来のことなんだよね。

[262]これで、わたしの『癒しの手』は

[263]完全なプラセボ効果になって、

[264]残念な反面、ちょっとホッとしてるわたしがいる。

[265]夢の中のあの子まで消えちゃったことは

[266]ちょっと気にかかるけど……。

[267]【あみ】

[268]「たしかに、以前のような感じはしなくなったけど、

[269] でも、かおりんさんに触られてるって思うと……

[270] その……」

[271]【かおり】

[272]「ふふっ、いけない子ね」

[273]そっと頬を撫でて、首筋を撫でる。

[274]【あみ】

[275]「ひゃん!」

[276]【かおり】

[277]「うふふ、キスはできないけど……

[278] こういうのは、どう?」

[279]【あみ】

[280]「……は、恥ずかしいけど……

[281] でも、かおりんさんの手に触られてるって思うと、

[282] 何だかじんじんしちゃいます……」

[283]【かおり】

[284]「ふふっ、

[285] それこそプラセボ効果だけどね、

[286] 今のはくすぐってみただけだから」

[287]【あみ】

[288]「プラセボでもなんでもいいんです、

[289] かおりんさんがわたしに触ってくれるのが

[290] 嬉しいんです……」

[291]うっとりと潤んだ目で見つめられて、

[292]また自制心を試されてる。

[293]【かおり】

[294]「可愛いこと言ってくれちゃうよね、

[295] あみちゃんは」

[296]あみちゃんをぎゅっと抱き締めて、

[297]またおでこにキスをする。

[298]今は……こうやって

[299]抱き締め合ってるだけで、幸せ、だもんね。

[300]この続きは、

[301]あみちゃんがもう少し大人になってから――。

white_robe_love_syndrome/scr01111.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)