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white_robe_love_syndrome:scr01101

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[001]       ゆっくりと目を開ける。

[002]        何もない、暗い中。

[003]   目の前に、

[004]   ふっと見たことのない女の子が現れた。

[005]【???】

[006]「……ねぇ、

[007] 友達って――何?」

[008]【かおり】

[009]「え……?」

[010]女の子は無表情だったけど、

[011]何故だかひどく傷ついてる印象を受けた。

[012]【かおり】

[013]「……友達、かぁ」

[014]難しい問題だなぁ……。

[015]自分を助けてくれる人よ

[016]大人になったらわかるわ

[017]【かおり】

[018]「友達っていうのはね、

[019] 困った時に、自分を助けてくれる人よ」

[020]女の子はかなしそうな顔をした。

[021]【???】

[022]「誰もわたしを助けてくれない……」

[023]それだけ言うと、

[024]彼女はフッと消えてしまった。

[025]【かおり】

[026]「そういう難しい質問は、

[027] 大人になればわかるわ」

[028]【???】

[029]「…………」

[030]女の子はがっかりした顔で

[031]フッと消えてしまった。

[032]……な、何だったんだろう……?

[033]今日は夜勤なので、

[034]なぎさ先輩と一緒に、ゆっくり出勤。

[035]少し時間に余裕があるので、

[036]ゆっくりと歩きながら病院へ入る。

[037]休日だからか、ロビーには

[038]普段着の人が多い。

[039]きっとお見舞いに来た人たちね。

[040]そんな中、ふと、

[041]見たことのあるグリーンの制服の子を見かけた。

[042]【かおり】

[043]「ん……?

[044] あれって、あみちゃんのお友達かなぁ?」

[045]【なぎさ】

[046]「へ、どこどこ?」

[047]なぎさ先輩は見てなかったようで、

[048]わたしの視線の先を追ってから、

[049]不思議そうに首を傾げた。

[050]どうやら、見つけられなかったみたい。

[051]【かおり】

[052]「桜立舎学院の制服を着た女の子が

[053] そこにいたんですけど……」

[054]【なぎさ】

[055]「……あーあ、見損ねちゃった。

[056] こないだ来た子かしらね?

[057] あの制服、可愛くて目の保養なのに」

[058]【かおり】

[059]「目の保養って……なぎさ先輩」

[060]【なぎさ】

[061]「も、もぅ、何よぅ、

[062] 可愛いものを可愛いって言って何が悪いのよ、

[063] もーもー!」

[064]唇を尖らせるようにして抗議したなぎさ先輩は、

[065]次の瞬間には、フッと表情を曇らせて、

[066]あみちゃんかぁ、と呟いた。

[067]【なぎさ】

[068]「そういえば、あみちゃんから

[069] 全然、学校の友達の話とか聞かないから、

[070] ちょっと心配してたんだよね……」

[071]【なぎさ】

[072]「お見舞いに来てくれる友達はいるのに、

[073] その友達の話をしないのは変じゃない?

[074] 結局、お見舞いの子とは会えなかったみたいだし」

[075]【かおり】

[076]「わー、今のなぎさ先輩、

[077] すごく看護師らしい顔してました!」

[078]【なぎさ】

[079]「なぁんですって!?

[080] 先輩看護師に向かって

[081] 生意気なこと言う口はこの口かしら〜!?」

[082]むにっと、ほっぺを抓られた。

[083]【かおり】

[084]「い、いひゃいいひゃい、

[085] あぎふぁへんぱい、いひゃいれすぅ!」

[086]いつもよりも抓る力が強いのは

[087]気のせいじゃない……っ!

[088]【なぎさ】

[089]「こう見えても、あたしは306号室担当なの!

[090] 自分の担当してる部屋の患者さんのことが

[091] 心配じゃない看護師なんていないでしょー!」

[092]やっとほっぺを離してもらえた。

[093]あうう、

[094]じんじんするぅ……。

[095]【なぎさ】

[096]「あみちゃんも病状が安定してきたし、

[097] 退院も近いって話だしね!

[098] どうせなら笑顔で退院させてあげたいじゃない」

[099]【かおり】

[100]「そうですよね、

[101] あみちゃん、早く退院できればいいですね」

[102]ヒリヒリするほっぺを撫でながら、

[103]なぎさ先輩の意見に同意する。

[104]あみちゃんのご両親がお見舞いに来ないのは、

[105]看護記録にご両親の仕事を気遣ったあみちゃん自身が、

[106]『甘えちゃうから来ないでって言った』って

[107]書かれてあるから知ってるけど……。

[108]でも、お友達に関しては、

[109]なぎさ先輩の言う通りかも。

[110]さっき見た桜立舎の制服を着た子、

[111]今日こそはあみちゃんに会えてたらいいなぁ。

[112]【かおり】

[113]「はーい、みなさん、消灯ですよー、

[114] 電気消しますよー」

[115]【ひろくん】

[116]「わー、鬼が来たー!!」

[117]あー、はいはい、

[118]わたしはひろくんにとっては鬼なのねー。

[119]【こむやん】

[120]「鬼はあっち行けー!」

[121]【かおり】

[122]「こーら!

[123] 騒いでないで、早く寝るんですよー?」

[124]腰に手を当てて怒った真似をする。

[125]ちょんちょんと、

[126]白衣の裾が引っ張られた。

[127]【ショウ】

[128]「……あのね、

[129] あーみんちゃんがいないの」

[130]【かおり】

[131]「は!?」

[132]言われて慌ててカーテンを開けてベッドを見ると、

[133]ホントにいない!

[134]【かおり】

[135]「あ、あみちゃん!?」

[136]【あみ】

[137]「……はい」

[138]【かおり】

[139]「きひょー!?」

[140]真後ろから声がして、

[141]思わず変な声が出ちゃった。

[142]真っ暗な中で、

[143]これはちょっと心臓に悪い……!

[144]【あみ】

[145]「あ、ちょっとおトイレに……。

[146] 心配かけてすみません……」

[147]【かおり】

[148]「う、うん。

[149] 無事ならいいんだけど……」

[150]【あみ】

[151]「……おやすみなさい」

[152]……どうしたんだろう、

[153]あみちゃん、元気がなかったような……。

[154]気のせい、かなぁ?

[155]なぎさ先輩が入れてくれた

[156]粉末のレモンティーを、夜勤さんとなぎさ先輩と

[157]三人で飲む。

[158]んー、

[159]落ち着いた夜勤っていいなぁ〜。

[160]【かおり】

[161]「あ、そういえば、

[162] あみちゃん、何だか元気なかったです」

[163]【なぎさ】

[164]「うん、

[165] そのことなら、日勤さんの報告にもあったわ。

[166] どうしたんだろうね?」

[167]猫舌なのか、さっきからカップを

[168]ふーふーしていた夜勤さんが

[169]ちょっと躊躇うように顔を上げた。

[170]【夜勤看護師】

[171]「……実はね、

[172] わたしも気になって考えてたんだけど、

[173] あの子、退院したくないんじゃないかな……」

[174]【かおり】

[175]「退院したくない……んですか?」

[176]【夜勤看護師】

[177]「退院の話が出た日……一昨日だったかな、

[178] わたし、その時も夜勤だったんだけどね」

[179]そういえば、この夜勤さんって、

[180]夜勤だけの勤務しかしない、

[181]夜勤専従看護師さんなんだよね。

[182]【夜勤看護師】

[183]「あんまり喜ばないのは、部屋の子に

[184] 気兼ねしてるからかなーって言ってたんだけど……。

[185] 夜、ベッドでしくしく泣いてたのよ」

[186]【なぎさ】

[187]「泣いてた……?

[188] どうしてですか?

[189] 退院って、普通は喜ぶものでしょう?」

[190]【夜勤看護師】

[191]「おかしいわよね、退院の話が出て泣くなんて……。

[192] ご家族の仲は問題なさそうだし、ってことは、

[193] 学校に行きたくないのかしら」

[194]夜勤さんは、

[195]やっと冷めたらしいレモンティーを一口啜って、

[196]小さく溜め息をついた。

[197]やっぱり猫舌らしい。

[198]【夜勤看護師】

[199]「……あの年頃の子って難しいわね」

[200]しみじみ言う夜勤さんの言葉が

[201]胸の底深く、いつまでも残っていた。

[202]【かおり】

[203]「はーい、朝ごはんですよー!」

[204]【ひろくん】

[205]「わー、ごはんだごはんー!

[206] プリンがあるー!!」

[207]【なぎさ】

[208]「ちょ、誰よ、

[209] エプロン引っ張ってんのは!!」

[210]【こむやん】

[211]「プリン、ちょーだい! プリン!!」

[212]【なぎさ】

[213]「ダーメ!!

[214] プリンは後! ご飯を食べてから!!」

[215]ふと、配膳車に、

[216]あみちゃんの食事が乗ったままなことに気がついた。

[217]いつもなら、自分でごはんを取りに来るのに……。

[218]【かおり】

[219]「あみちゃん?

[220] 朝ごはん、来たよ?」

[221]【あみ】

[222]「……食欲ないんです……」

[223]【かおり】

[224]「でも……食べないと、元気になれないよ?」

[225]【あみ】

[226]「今、食べると吐いちゃうかも……」

[227]え!?

[228]そんなに気分が悪いの!?

[229]【なぎさ】

[230]「沢井、後はあたしが看るから、

[231] 沢井は残りの配膳、よろしく」

[232]【かおり】

[233]「わ、わかりました」

[234]後ろ髪を引かれながらも、

[235]なぎさ先輩にバトンタッチした。

[236]わたしみたいな新人より、

[237]あみちゃんだってなぎさ先輩の方が安心だもんね。

[238]【ショウ】

[239]「うわーん!

[240] プリン、食べられちゃったー!!」

[241]【ひろくん】

[242]「な、何だよ、

[243] さっさと食べないのが悪いんだろ!!」

[244]【こむやん】

[245]「でもさ、人のプリン、

[246] 勝手に取って食べちゃうのはダメだよ、ひろくん」

[247]【ひろくん】

[248]「な、なんだよっ、

[249] 食べちゃったものは、し、仕方がないじゃ……

[250] う、うわーん!!」

[251]【ショウ】

[252]「うわぁああん、

[253] ばかー!!

[254] 返してよ、プリンー!!」

[255]【かおり】

[256]「ああああ!

[257] ケンカしないで、泣かないでぇ!!」

[258]オロオロしてると、

[259]夜勤さんがやってきて、

[260]上手く子供たちをあやしてくれた。

[261]……ああ、こういうところも、

[262]わたし、まだまだなんだなぁ……はぁ。

white_robe_love_syndrome/scr01101.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)