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white_robe_love_syndrome:scr00955

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[001]あれから二ヶ月。

[002]クラリスちゃんのバセドウ病も

[003]花粉症の症状が治まると同時に少しずつ良くなって、

[004]ひとまずは寛解、今日が退院の日。

[005]ちなみにこはくちゃんは

[006]春先の寒波で体調を崩したことで血糖コントロールが

[007]効かなくなった、いわゆる管理入院だったから、

[008]二週間ほどで退院しちゃってるの。

[009]でも、学校がお休みの度に、

[010]クラリスちゃんのお見舞いに来て、

[011]ふたりで病室にいるのを見る度に、

[012]山之内さんがニヤニヤしちゃって。

[013]……ふたりは

[014]こんなダメな大人になっちゃいけないよ?

[015]――って言ってあげたいのに、

[016]くわしく説明することで

[017]ふたりの耳を汚しちゃいそうな気がして

[018]何も言えない……くやしいっ!!

[019]【クラリス】

[020]「タイヘンお世話になりました!」

[021]クラリスちゃんがぺこりと頭を下げる。

[022]隣にいるさゆりちゃんは、

[023]もう涙目になっちゃってて……。

[024]【クラリス】

[025]「わたし、さゆりや、みなさんたちのように

[026] 病院で働けるよう、勉強しようと思います」

[027]【クラリス】

[028]「ダディは、わたしがやる気があるなら、

[029] 医者を目指してもいいって言ってくれました!」

[030]【クラリス】

[031]「それで、こはくのような病気の子を

[032] 治してあげたいと思います」

[033]【やすこ】

[034]「ほほぅ、ドクターかぁ……。

[035] あっちの白衣もエエよねぇ……」

[036]【はつみ】

[037]「勉強も大事だけど、健康も大事よ。

[038] 勉強のしすぎで、具合が悪くなるようでは

[039] いけないわよ?」

[040]【クラリス】

[041]「大丈夫! わたしが熱を出すと

[042] こはくが悲しそうな顔をするから!

[043] でも、夢があるから頑張ります!」

[044]【なぎさ】

[045]「……なーんか、

[046] どっかで聞いたことがあるセリフだわねぇ」

[047]クラリスちゃんは

[048]最後にペコリと頭を下げて

[049]エレベーターに乗り込んだ。

[050]【さゆり】

[051]「クラリスちゃん……元気でね……」

[052]【クラリス】

[053]「さゆりも!

[054] 今まで本当にありがとうございました!

[055] じゃ、シツレイします!!」

[056]エレベーターの扉が

[057]ゆっくり閉まってゆく。

[058]完全に閉まってから、

[059]思わずポツリと呟いた。

[060]【かおり】

[061]「……ねぇ、

[062] クラリスちゃんって、

[063] わたしのことは完全無視なの??」

[064]そんなこんなで、

[065]病棟からクラリスちゃんがいなくなっても、

[066]わたしたちは別の患者さんを受け持ちながら、

[067]日々、忙しく過ごしている。

[068]そして、明日は、

[069]久しぶりにふたり揃ってお休みの日。

[070]今夜はさゆりちゃんとだらだらして過ごすんだ〜!

[071]【さゆり】

[072]「あっ!!」

[073]ケータイを見て、さゆりちゃんが声を上げた。

[074]【さゆり】

[075]「ねぇ、かおりさん、見て!!」

[076]見せられた画面には、

[077]プールで笑ってる、水着姿のクラリスちゃんと

[078]こはくちゃん。

[079]【さゆり】

[080]「あのふたり……、

[081] プールでデートなんて味な真似を……」

[082]あ、さゆりちゃんのスイッチがまた入ったみたい。

[083]もう、変なところで負けず嫌いなんだから。

[084]【さゆり】

[085]「かおりさん、明日、海に行きましょう!!」

[086]【かおり】

[087]「う、海で泳ぐにはまだ寒いと思うよ……?」

[088]【さゆり】

[089]「いいんです!

[090] わたしが行きたいから行くんです!!

[091] ……それとも、かおりさんは嫌なんですか?」

[092]【かおり】

[093]「い、嫌じゃないけど……」

[094]【さゆり】

[095]「じゃ、決まりですね!

[096] 明日は早起きして、お弁当作らなきゃ!!

[097] じゃ、わたし、帰りますね、おやすみなさーい!」

[098]【かおり】

[099]「えっ……ちょ、え……ええーっ!?」

[100]今夜はさゆりちゃんとだらだらしながら

[101]お話しようと思ってたのにぃ〜〜〜!!

[102]6月の海は、まだちょっと冷たい。

[103]でも、ほぼ真上から降り注ぐ太陽の光と熱に、

[104]ひんやりした水は気持ちがいい。

[105]【さゆり】

[106]「ずっとね、

[107] かおりさんと海に来たかったんですよー」

[108]さゆりちゃんがはしゃいでる。

[109]【かおり】

[110]「だったら言ってくれればよかったのに。

[111] さゆりちゃんが学生の時なら、夏休みとか、

[112] 遊ぶ時間を目一杯、合わせられたのにぃ」

[113]【さゆり】

[114]「ダメです。

[115] わたしは看護師になってから思う存分遊ぶんだ、って

[116] 決めてましたから」

[117]【かおり】

[118]「んもう、真面目だなぁ……」

[119]でも、こういう真面目なさゆりちゃんが

[120]どうしようもなく大好きなんだよね……。

[121]【さゆり】

[122]「実はね、こはくちゃんが教えてくれてたんですよ、

[123] 彼女が退院するちょっと前に」

[124]【かおり】

[125]「えっ?」

[126]【さゆり】

[127]「ずっと病室の窓から見てた同じ海なのに、

[128] クラリスちゃんと会ってから、

[129] 何だか全然違う海に見える、って」

[130]さゆりちゃん、

[131]わたしの知らない間に、

[132]こはくちゃんとそんな話してたのね。

[133]【さゆり】

[134]「そんなこと言うから、

[135] それは恋をしたからじゃないかな、って

[136] 言ったら……」

[137]【かおり】

[138]「言ったら?」

[139]【さゆり】

[140]「恥ずかしそうに微笑んでました」

[141]ああ、

[142]奥ゆかしいこはくちゃんらしい……。

[143]さゆりちゃんが用意してくれてたお茶を

[144]微笑ましい気分で、ゆっくりと飲む。

[145]【さゆり】

[146]「わたしが入院してた頃、こはくちゃんは

[147] まだほんの子供で、引っ込み思案で、

[148] 泣いてばかりいる子ってイメージだったけど……」

[149]【さゆり】

[150]「でも、人は成長するんですね。

[151] あの子、笑いながら、

[152] 退院の日に告白するんだって……言ってました」

[153]【かおり】

[154]「そっか……。

[155] こはくちゃん、もう子供じゃないんだ……」

[156]【さゆり】

[157]「それで、こはくちゃんから

[158] 女の子同士の交際のコツを教えて欲しい、って

[159] 言われて……」

[160]【かおり】

[161]「げほっ!?」

[162]思わずむせた。

[163]【さゆり】

[164]「あら、大丈夫ですか、かおりさん?

[165] 急いで飲むから……」

[166]【かおり】

[167]「そ、それで、さゆりちゃんは

[168] 何て答えたのかなぁ〜?」

[169]【さゆり】

[170]「ふふ……そんなの簡単です」

[171]ニコッと笑って、

[172]さゆりちゃんは、わたしから視線をそらして、

[173]キラキラした海を見た。

[174]【さゆり】

[175]「相手のことが大好きな自分の気持ちに

[176] ちゃんと素直になること。

[177] ……そう教えておきました」

[178]【かおり】

[179]「…………」

[180]【さゆり】

[181]「クラリスちゃんがかおりさんに素っ気なかったのは、

[182] かおりさんのことが、

[183] 羨ましかったからでしょうね」

[184]【かおり】

[185]「羨ましいって、何が?」

[186]【さゆり】

[187]「もう……かおりさんって、ホント鈍いですよね!

[188] わたしがかおりさんのこと大好きだってことが

[189] わかったから、でしょう?」

[190]【さゆり】

[191]「……というより、誰かから

[192] 100%の気持ちを向けられるあなたが

[193] 羨ましくてならなかったんでしょうね」

[194]【かおり】

[195]「……わたしだって、

[196] さゆりちゃんのこと、大好きなのに」

[197]【さゆり】

[198]「わたしは極端ですから。

[199] 正直言うと、かおりさんさえいれば、

[200] 後はどうでもいいんです」

[201]【さゆり】

[202]「でも、かおりさんは違うでしょう?」

[203]【さゆり】

[204]「藤沢さんや山之内さん、主任さんがいて、

[205] 更にそこにわたしがいなきゃ嫌な、

[206] とっても欲張りさんですもんね」

[207]……う、そうかも。

[208]【さゆり】

[209]「だから、いつもわたしだけを見て、なんて

[210] ワガママは言いません。

[211] でも、ふたりきりの時に余所見したら……」

[212]【かおり】

[213]「したら……?」

[214]近づく顔。

[215]【さゆり】

[216]「ふふ、暴れます、たくさん」

[217]【かおり】

[218]「それは大変!

[219] まずはマウス・トゥ・マウスで口をふさいで、

[220] 愛情を吹き込んであげたら元に戻るかな?」

[221]【さゆり】

[222]「やってみてください」

[223]【かおり】

[224]「そ? じゃ、やっちゃおう。

[225] ん……、んー……っ!?」

[226]チュッと唇を吸うのとタイミングを合わせるように、

[227]さゆりちゃんが息を吹き込んできた。

[228]【かおり】

[229]「ささささ、さゆりちゃんっ!?」

[230]【さゆり】

[231]「うふふ……、

[232] 愛情は吹き込まれるより、吹き込んで、

[233] 吸い上げられる方がいいかもですね」

[234]【さゆり】

[235]「吸い上げられれば吸い上げられるほど、

[236] 胸の奥の方から、愛情がどんどん溢れて

[237] こぼれちゃいそうになるような気がします」

[238]【かおり】

[239]「……さゆりちゃん、

[240] その言葉はちょっとえっちだよ?」

[241]【さゆり】

[242]「ふふ、わざとですよ。

[243] えっちなわたしは、嫌いですか?」

[244]くすくすと笑うさゆりちゃん。

[245]本当に困った子だなぁ。

[246]けど……。

[247] 「嫌いなわけないでしょ。

[248]  どんどん溢れて、

[249]  わたしで一杯にしてあげたいくらい、大好きよ」

[250]      「……うふふ、

[251]       かおりさん、大好き……」

[252]     困った子だけど、可愛いんだよね。

[253]      ああ、困っちゃうなぁ、

[254]      さゆりちゃんが、可愛すぎて。

white_robe_love_syndrome/scr00955.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)