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white_robe_love_syndrome:scr00754

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[001]…………

[002]ああ、遠くからケータイが鳴ってる。

[003]うっとうしい音色が

[004]ガンガンと頭の中に響いて、お布団をかぶった。

[005]【かおり】

[006]「……っ!!」

[007]あんなの、認めたくないっ!!

[008]絶対、認めないんだから……っ!!

[009]【かおり】

[010]「……んあぁ?」

[011]ハッと気付くと、もう夕方だった。

[012]そう言えば、

[013]昨夜は山之内さんと飲んで……。

[014]…………。

[015]えっと、そこからの記憶が、ない……。

[016]……えっと、えっと、

[017]今日って、たしかわたし、

[018]日勤じゃなかったっけ……?

[019]【かおり】

[020]「や……やばい……」

[021]サーッと顔が青くなっていくのが

[022]自分でもわかる。

[023]わたし、サボっちゃった……!!

[024]三年目のくせに、

[025]日勤前夜に飲んで、酔った挙句、

[026]無断欠勤だなんて……!!

[027]【???】

[028]「沢井!!

[029] あたしよ、ここ開けて!!」

[030]あの声は……なぎさ先輩の声?

[031]ふらつきながらも起き上がって、

[032]ドアを開けようと、鍵を開けた途端――。

[033]【なぎさ】

[034]「何よ、元気なんじゃない!

[035] 無断欠勤したって聞いたから

[036] 心配して飛んできたのに!!」

[037]【かおり】

[038]「え……、

[039] どうして病棟の違うなぎさ先輩が知って……」

[040]【なぎさ】

[041]「大塚主任がわざわざ外科にまで、

[042] 理由を知らないかって、直接訊きにきたのよ!

[043] 電話をかけても誰もデンワって」

[044]【かおり】

[045]「……ぇと……?」

[046]なぎさ先輩……、

[047]外科に行って、ちょっと変わった……?

[048]以前は

[049]そんなオヤジギャグを言うような人じゃ

[050]なかったのに。

[051]【なぎさ】

[052]「あー、コホン。今のギャグはともかく。

[053] かおりは理由もなく無断欠勤するような子じゃないわ、

[054] なーんて言って、すごく心配してたわよ」

[055]【なぎさ】

[056]「今日は師長主任会議があるし、

[057] いろいろあって、

[058] 沢井の様子を見に行けないからって」

[059]【かおり】

[060]「……だから、なぎさ先輩に……?」

[061]【かおり】

[062]「あいたっ!!」

[063]【なぎさ】

[064]「まさかこんな顔して、お酒の匂いをさせて、

[065] 部屋で不貞寝してただけだなんて思わなかったわ、

[066] あー、がっかり!!」

[067]ずかずかと、

[068]なぎさ先輩が部屋の中に入り込んでくる。

[069]【かおり】

[070]「ご、ごめんなさい……」

[071]なぎさ先輩を部屋に通して、お茶を出す。

[072]そういえば、昨日も山之内さんに

[073]愚痴を聞いてもらったのに、

[074]わたし、お礼も言ってないんじゃ……?

[075]うう、

[076]何も覚えてない……。

[077]【なぎさ】

[078]「で? ズル休みの理由は何?

[079] 二日酔いだけが理由じゃないでしょ?」

[080]【かおり】

[081]「その……」

[082]言うべきかどうか迷ったけど、

[083]黙ってても状況は改善しないもんね。

[084]【かおり】

[085]「実は……」

[086]昨日見たことを

[087]かいつまんで、なぎさ先輩に話した。

[088]――さすがに、

[089]堺さんとはつみさんとのキスの件は、

[090]どうしてもなぎさ先輩には話せなかったけど……。

[091]そういえば、以前も、

[092]廊下で見かけたはつみさんは、

[093]てっきりわたしの部屋に来たのだと思ってたのに、

[094]わたしの部屋にはいなかった。

[095]あの時も、もしかしたら

[096]隣の堺さんの部屋に行ってたのかもしれない。

[097]【なぎさ】

[098]「……で?」

[099]【かおり】

[100]「で、って……?」

[101]【なぎさ】

[102]「要するに、沢井は

[103] 大塚主任が堺さんと浮気してんじゃないかって

[104] 疑ってるのよね」

[105]【かおり】

[106]「う、疑ってるっていうか……」

[107]【なぎさ】

[108]「そうやってウダウダ言ってるってことは、

[109] 疑ってるのと同じことよ」

[110]バッサリ切られた。

[111]【かおり】

[112]「あうう……。

[113] なぎさ先輩、外科に行って、

[114] ちょっと言動がキツくなってませんか……?」

[115]【なぎさ】

[116]「そりゃそうよ。

[117] 外科はスピードが命!

[118] ちんたらやってると、患者さん死んじゃうもん!」

[119]あっけらかんとそう言って、

[120]ズビーッとお茶を飲んでいる。

[121]あああ、憧れだったなぎさ先輩が

[122]微妙な方向に成長して

[123]やけに漢(おとこ)らしくなっていってる……。

[124]【なぎさ】

[125]「大体、沢井、

[126] ちゃんと大塚主任と話し合ったの?」

[127]【かおり】

[128]「そ、それは……」

[129]話し合うなんて、

[130]考えつきもしなかった。

[131]目に焼きついた光景が辛くて、

[132]ただ逃げていただけ。

[133]【なぎさ】

[134]「要はさ、あの主任が、堺さんの部屋に

[135] こそこそ入ってったってことが

[136] 気に入らないんでしょ?」

[137]【かおり】

[138]「それだけじゃないけど……」

[139]【なぎさ】

[140]「じゃあ、何?」

[141]まっすぐに見つめてくるなぎさ先輩の視線に、

[142]もう誤魔化せないと、覚悟を決めた。

[143]それでも――心が揺れる。

[144]【かおり】

[145]「……キス……してた」

[146]【なぎさ】

[147]「はぁ?」

[148]【かおり】

[149]「もしかしたら見間違いかもしれないけど、

[150] はつみさん、堺さんにキスしてた……!!」

[151]【なぎさ】

[152]「…………」

[153]【かおり】

[154]「み、見間違いかも……だけど……」

[155]【なぎさ】

[156]「見間違いじゃなかったら、浮気確定ね」

[157]【かおり】

[158]「う……うう……」

[159]人が一所懸命に、目を背けていたことを

[160]そんなにあっさり……。

[161]【なぎさ】

[162]「……でもさ、あの大塚主任ってさ、

[163] 今まで仕事が恋人だった不器用な女でしょ。

[164] そんな情緒のない女が浮気なんてできるのかしら」

[165]【かおり】

[166]「……そんなの、わかんないよ……」

[167]なぎさ先輩が盛大に溜め息をついた。

[168]【なぎさ】

[169]「……沢井はさ、

[170] 主任に浮気しててほしいの?」

[171]【かおり】

[172]「そんなわけないっ!」

[173]【なぎさ】

[174]「じゃあ、まずは主任が浮気してなかったってことを

[175] ちゃんと確認する必要があるよね!

[176] その確認、した?」

[177]【かおり】

[178]「…………」

[179]そんなの、してない。

[180]できっこない……怖いもん。

[181]あなたと付き合うのは飽きたのよ、って

[182]そう言われてしまったら、

[183]わたし、きっと立ち直れない……!

[184]【なぎさ】

[185]「相手の気持ちを確かめるのが怖い……。

[186] その気持ち、わかるわよ」

[187]なぎさ先輩が大きく頷いてくれてる。

[188]こういう時、

[189]ホント、なぎさ先輩って頼りになる。

[190]【なぎさ】

[191]「相手は海千山千のスタッフを束ねる病棟主任。

[192] こっちは、たかが三年目のヒヨッコ看護師。

[193] どうあっても、太刀打ちなんかできないもんね」

[194]【なぎさ】

[195]「沢井が及び腰になる気持ちはわかるわ。

[196] それは仕方がないことかもしれない。

[197] でもね……」

[198]【かおり】

[199]「で、でも……?」

[200]【なぎさ】

[201]「当たって砕けるのも、また重要よ!!」

[202]【かおり】

[203]「はひーん!?」

[204]砕ける!?

[205]砕けちゃうの!?

[206]【なぎさ】

[207]「大丈夫よ、骨ならあたしが拾ってあげる!

[208] どんなに細かく砕けても、小さなカケラさえ、

[209] ちまちまキレイに拾ってあげるから!!」

[210]う、嬉しくない。

[211]嬉しくないけど……

[212]伝わってくるなぎさ先輩の気遣いは

[213]すごく嬉しい。

[214]【なぎさ】

[215]「この時間なら、主任も会議から戻ってきてるわ。

[216] だから、即断即決即実行よ!」

[217]【かおり】

[218]「え!?

[219] えと……え、ええっ!?」

[220]【なぎさ】

[221]「だーいじょうぶ、大丈夫!

[222] 心配いらないから!

[223] じゃ、ちょっと待っててね〜!」

[224]ポケットから携帯電話を出して、

[225]なぎさ先輩はどこかに電話をかけた。

[226]チラッとわたしを見た目が、

[227]何故か笑ってる……。

[228]【なぎさ】

[229]「はい……はい、藤沢ですー。

[230] 大好きな恋人が浮気したってへこんでるんで、

[231] 今から沢井連れて、突撃しますね!」

[232]【かおり】

[233]「えええ、今から!?」

[234]【なぎさ】

[235]「この件では、あたしも怒髪天ですから、

[236] 首を洗って待っててくださいねー。

[237] じゃっ!!」

[238]なぎさ先輩は問答無用で電話を切って、

[239]そのまま有無を言わせない勢いで

[240]わたしの腕を掴んで、立ち上がった。

[241]【なぎさ】

[242]「善は急げ!

[243] あたしは主任を信じて沢井を任せたのよ、

[244] 直接、文句言ってやらなきゃ気が済まないわ!」

[245]【かおり】

[246]「な、なぎさ先輩……」

[247]心強いんだけど、

[248]どうしてかな、すごく不安なんだけど……。

[249]はつみさんの部屋には、

[250]何故か堺さんもいた。

[251]【かおり】

[252]「…………」

[253]堺さんの顔を見ただけで、

[254]胸が苦しくて、もう何も言葉が出ない……。

[255]【なぎさ】

[256]「ほほー、さすがは内科の敏腕主任。

[257] この場に浮気疑惑の相手を同席させるなんて、

[258] 良い度胸ですこと」

[259]【はつみ】

[260]「藤沢さん……、

[261] あなたまで、なんてことを言うのよ……」

[262]【さゆり】

[263]「あ、あの……、

[264] これはわたしが頼んだことで……」

[265]堺さんの声を聞いた途端、

[266]胸の奥から、抑えきれない感情が

[267]どうしようもなく溢れてきてしまった。

[268]【かおり】

[269]「ごめんなさい、堺さん!

[270] わたしからはつみさんを取らないで!!」

[271]【さゆり】

[272]「え、は……い?」

[273]【かおり】

[274]「わたし、はつみさんが本当に好きなの!

[275] はつみさんと釣り合うようなナースじゃないけどっ、

[276] でも、好きなの! この気持ち、抑えられない!」

[277]【かおり】

[278]「わたしがはつみさんの周囲をうろつくのを見るのは

[279] そりゃイライラすると思う!

[280] でも……わたし、やっぱりはつみさんが好き!!」

[281]【かおり】

[282]「諦めきれないの!

[283] わたしの人生からはつみさんがいなくなるなんて、

[284] 考えただけで、苦しくて辛くて仕方がないの!!」

[285]【さゆり】

[286]「ちょ、ちょっと待って!!

[287] 何の話をしてるんですか、あなたは!!」

[288]【かおり】

[289]「ほえ?」

[290]顔を上げると、

[291]堺さんも、はつみさんも真っ赤になっている。

[292]【さゆり】

[293]「わたしは慣れない病棟勤務で、

[294] いろいろと相談に乗ってもらっていただけです!」

[295]【さゆり】

[296]「あなたが指導を頑張ってくれてるのはわかるけど、

[297] わたしはこういう性格だから、

[298] ついキツイことを言っちゃうし、伝わらないし!」

[299]【さゆり】

[300]「都知さんが亡くなった時、何もできなくて……。

[301] でも、沢井さんに叱ってもらって、

[302] 悔しくて、嬉しくて、もうわけわかんないっ!」

[303]……えっと……、

[304]どういうこと……?

[305]【はつみ】

[306]「……たしかに、堺さんの目から見れば、

[307] 沢井さんは頼りなく見えるかもしれないわね」

[308]くすっと笑ってから、

[309]はつみさんはジロリとわたしを見た。

[310]【はつみ】

[311]「天然だし、ナースコール対応では噛むし、

[312] 緊急事態にはいつまで経っても慣れないし、

[313] 自棄酒して欠勤するし」

[314]あうう……はつみさん……、

[315]そんな言い方しちゃ嫌です……。

[316]【はつみ】

[317]「でも、うちのスタッフの誰よりも

[318] 患者さんのことを優しい目で見ているわ。

[319] できないことを減らそうと努力もしている」

[320]【はつみ】

[321]「有能な堺さんには物足りなく思えるかもしれないわね。

[322] でも、技術や知識だけが看護じゃないの。

[323] 患者さんの生活に寄り添う全てが、看護なのよ」

[324]はつみさんがフッと小さく笑った。

[325]【はつみ】

[326]「……たしかに、沢井さんはまだまだ未熟者よ。

[327] でも、それでも……いえ、未熟だからこそ、

[328] 沢井さんに堺さんのプリセプターを任せたの」

[329]【さゆり】

[330]「未熟……だからこそ……?」

[331]【はつみ】

[332]「あなたが沢井さんにキツイ言葉をぶつけた後、

[333] こっそりへこんでいること、

[334] わたしが気付いていないとでも思った?」

[335]【はつみ】

[336]「堺さんが沢井さんから学ぶべきことは、

[337] あなたが思っている以上にたくさんあるわ」

[338]【はつみ】

[339]「それは誰かから教えてもらうんじゃなくて、

[340] あなた自身が肌で感じて、

[341] しっかりと自分の頭で考える必要があるものよ」

[342]【はつみ】

[343]「言うつもりのなかった酷い言葉を吐いて落ち込む、

[344] 酷い言葉を言われて落ち込む。

[345] それは、あなたたちにとって、無駄じゃないの」

[346]【なぎさ】

[347]「……ってことはつまり、

[348] 主任さんは浮気してたとかじゃなくて……?」

[349]【はつみ】

[350]「……バカね、

[351] わたしはかおり『だけ』を愛していると

[352] 何度も言っているでしょう」

[353]呆れた顔のはつみさんが、

[354]しょうのない子ね、とでも言いたげな顔で

[355]わたしを見ている。

[356]その視線は、すごく優しい。

[357]わたしは、

[358]はつみさんを信じ切れなかったというのに!

[359]【かおり】

[360]「は、はつみさん!!

[361] 疑って、ごめんなさいっ!!」

[362]慌てて頭を下げると、

[363]ふわりと、その頭の上に手を乗せられた。

[364]【はつみ】

[365]「ふふ、実はね、あなたがわたしを疑っていること、

[366] 薄々勘付いていたわ。

[367] でも……そのままにしておいたの」

[368]【かおり】

[369]「え……どうしてですか?

[370] わたし、すごく悩んだのに……」

[371]優しい手が、

[372]まるで愛しむかのように

[373]わたしの頭を撫でてくれる。

[374]【はつみ】

[375]「……だって、悩んでいる間、

[376] あなたはわたしのことだけを考えて、

[377] わたしのこと以外を考えなくなるでしょう?」

[378]【なぎさ】

[379]「…………」

[380]【さゆり】

[381]「しゅ、主任さん……?」

[382]【はつみ】

[383]「主任失格って言いたいのね……わかっているわ。

[384] でも、わたしだって恋する女なの。

[385] これでも独占欲は強いつもりよ?」

[386]【なぎさ】

[387]「……なんって傍迷惑な……」

[388]【さゆり】

[389]「沢井さんって

[390] 意外と心が狭いんですね」

[391]うっ!!

[392]【さゆり】

[393]「わたしだったら、

[394] 一度信じた相手は

[395] とことん信じ抜く自信があるんですけどね!!」

[396]【かおり】

[397]「うう……だって、

[398] ふたりがキスしてるの、見たんだもの……」

[399]【さゆり】

[400]「キス!?

[401] わたしが、主任さんと……?

[402] 見間違いにも程があるわ」

[403]【はつみ】

[404]「おばかさんね。

[405] わたしの唇は、かおりだけのものよ?」

[406]【かおり】

[407]「それはわかってるんですけど……っ!

[408] でも〜〜っ!!」

[409]だって、

[410]相手はわたしよりも優秀な堺さんだから!

[411]――と言うのは

[412]悔しかったので黙っておいた。

[413]【なぎさ】

[414]「……あほらし」

[415]呆れた口調で、なぎさ先輩が呟く。

[416]【さゆり】

[417]「ええ、もう本当に。

[418] 全くの同意見です」

[419]【さゆり】

[420]「……そんなにフラフラするのなら、

[421] わたしが奪っちゃいますよ?」

[422]【かおり】

[423]「っ!!」

[424]悪戯っぽい言葉とは裏腹の優しい微笑みに、

[425]思わずぎゅっとはつみさんに抱きつく。

[426]はつみさんも

[427]何故か敵を見るような目で堺さんを見て、

[428]わたしを抱き締めてくれる。

[429]呆れた目で、わたしたちを眺めてから、

[430]なぎさ先輩が堺さんを見た。

[431]【なぎさ】

[432]「……で、

[433] あんたはどっちを奪るの?」

[434]意味深な目で、

[435]堺さんもなぎさ先輩を見た。

[436]【はつみ】

[437]「…………」

[438]抱き締めてくれているはつみさんの腕から、

[439]はつみさんの緊張が伝わってきた。

[440]【かおり】

[441]「ほへ?」

[442]よく意味がわからないけど、

[443]堺さんには……それから、はつみさんにも、

[444]なぎさ先輩の言葉の意味がちゃんと伝わってるみたい。

[445]【さゆり】

[446]「さぁ……どちらでしょう?」

[447]【なぎさ】

[448]「あんたが主任を奪うなら、協力してもいいわよ。

[449] その代わり、沢井はあたしが貰うから」

[450]【はつみ】

[451]「そこ!

[452] 当事者を無視して、話を進めない!!」

[453]なぎさ先輩と堺さんは

[454]ちらりとお互いを見ると、くすっと笑い合った。

[455]【さゆり】

[456]「どっちにしても、この状態じゃあ、

[457] 奪うのは骨が折れそうですけど」

[458]【なぎさ】

[459]「引っ掻き回すのは、さぞ面白いと思うけど、

[460] 馬に蹴られる前に、

[461] ほどほどにしときなさいよー?」

[462]呆れながらも面白がっているふたりに見せ付けるように、

[463]わたしは強く、はつみさんの身体に回した腕に

[464]力を込めた。

[465]【かおり】

[466]「やだやだっ!

[467] 誰にもあげないんだからっ!!」

[468]はつみさんはわたしのもので、

[469]わたしははつみさんのものなんだからっ!!

[470]【はつみ】

[471]「その通りよ!

[472] わたしからかおりを奪うつもりなら、

[473] 命賭けでいらっしゃい!!」

[474]【はつみ】

[475]「生まれてきたことを後悔させてあげるわ、

[476] ふふふ……」

[477]はつみさんの、本気とも冗談ともつかない言葉に、

[478]なぎさ先輩は呆れ、堺さんは本気で怯え、

[479]そしてわたしは……。

[480]【かおり】

[481]「ダメです!

[482] わたしのために犯罪者になっちゃ、ヤです!」

[483]【はつみ】

[484]「もちろんよ、わたしの可愛いかおり。

[485] 横恋慕するような不届き者は

[486] 馬に蹴らせておけばいいの」

[487]【はつみ】

[488]「わざわざ、自分の手を汚すなんて

[489] 馬鹿な真似はしないわ」

[490]【かおり】

[491]「はつみさん……」

[492]【はつみ】

[493]「かおり……」

[494]ギャラリーの視線を忘れて、

[495]わたしたちは深いくちづけを交わした。

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