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white_robe_love_syndrome:scr00711

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[001]はつみさんとの関係は超良好!

[002]職場では主任と平ナースだけど、

[003]プライベートではイチャイチャほやほやの恋人同士!

[004]そして、今、はつみさんは完璧ナースとして

[005]主任の仮面をかぶって、バリバリ仕事中。

[006]そんな主任さんに憧れる平ナースとして、

[007]わたしは何とか追いつこうと頑張ってるの。

[008]【はつみ】

[009]「ねぇ、山之内さん!

[010] 釣藤さん、来週退院だけど、

[011] サマリーはもう書けたの?」

[012]【やすこ】

[013]「すんません、まだです!

[014] つーか、ンなモン、書くヒマあるかいっ!」

[015]【はつみ】

[016]「暇がなくても書いてください!

[017] もしくは、別の誰かに仕事を振ってあげないと!

[018] 釣藤さんを手ぶらで帰すわけにはいかないのよ?」

[019]【やすこ】

[020]「じゃあ、藤沢!

[021] 釣藤さんのサマリー、書いて!」

[022]【なぎさ】

[023]「ちょっ、またですか!?

[024] つくしちゃんのサマリー、

[025] あたしに押し付けたクセに、釣藤さんまでっ!?」

[026]【やすこ】

[027]「だーくそ、ほなアンタには頼まん!

[028] 沢井、不肖の先輩の代わりに、

[029] あんたが書け!」

[030]【かおり】

[031]「えええええー!?」

[032]【はつみ】

[033]「そうね、沢井さんは、この後、

[034] 堺さんの転院サマリーを書かなければいけないのだし、

[035] 練習がてらにちょうどいいかもね」

[036]【かおり】

[037]「そ、そんなぁ!」

[038]じゃあ、よろしく〜とばかりに、

[039]なぎさ先輩と山之内さんが

[040]詰所から出て行ってしまった。

[041]残されたのは

[042]わたしとはつみさんだけ。

[043]はつみさんがクスッと笑った。

[044]【はつみ】

[045]「……実際の話、ここの常勤スタッフで、

[046] 受け持ち患者数が一番少ないのはあなたよ。

[047] つまり、一番手が空いているのは、あなた」

[048]【はつみ】

[049]「それに、サマリーを書くことによって、

[050] 患者さんの状態や看護を振り返ることができるし、

[051] あなたにとっても、良い勉強になると思うわ」

[052]【はつみ】

[053]「釣藤さんは退院だから、転院サマリーみたいに

[054] びっしり書き込まなければいけないこともないし、

[055] 肩の力を抜いて書いても大丈夫よ」

[056]【かおり】

[057]「……わたしに、書けるでしょうか?」

[058]フッとはつみさんは笑ってくれた。

[059]【はつみ】

[060]「大丈夫よ。

[061] 無理だと思っていたら、こんなこと頼まないわ」

[062]とても優しい微笑み。

[063]わたしを信頼してくれている、眼差し。

[064]【はつみ】

[065]「わからないところがあれば、

[066] わたしが直接、教えてあげるから……ね?」

[067]【かおり】

[068]「本当ですか?

[069] 絶対、ですよ!!」

[070]クスッと笑ったはつみさんは、

[071]わたしの肩をポンと叩いてくれた。

[072]ふわりと、おでこに優しい感触。

[073]【はつみ】

[074]「……可愛い、かおり。

[075] 続きは……また後で、ね?」

[076]わたしは、一瞬、ポカンとして……。

[077]【かおり】

[078]「はいっ!」

[079]【かおり】

[080]「はー、疲れたー!!」

[081]ばったりとベッドにダイブする。

[082]今日、わたしが書いたサマリーを持って

[083]釣藤さんが退院した。

[084]あのサマリーは

[085]釣藤さんの近所のクリニックに持っていくそうだ。

[086]けれど、ここで安心していられないのよね。

[087]次に堺さんの転院のサマリーを

[088]書かなきゃいけないんだから。

[089]大学病院に持っていくもので、

[090]書くのがすごく大変なのがわかってるから、

[091]今からすっごくキンチョー!!

[092]【かおり】

[093]「ん……?

[094] メール来た……?」

[095]モゾモゾと身体を起こして、

[096]ケータイを手にする。

[097]【かおり】

[098]「んー……っと。

[099] あ、はつみさんからだ!」

[100]「お仕事、お疲れ様。

[101] これからわたしの部屋で、一緒に夕食、どうかしら?

[102] ダメなら無理にとは言わないけれど……」

[103]【かおり】

[104]「やだ、すぐ行きます!!」

[105]慌てて返信して、

[106]わたしはもう一度、靴を履いた。

[107]【はつみ】

[108]「いらっしゃい、かおり。

[109] 突然、誘うことになって、ごめんなさいね」

[110]部屋の中から

[111]すごく美味しそうな香りが漂ってくる。

[112]【かおり】

[113]「いえ、誘ってもらえて嬉しいです。

[114] お腹減りました!」

[115]【はつみ】

[116]「まぁ、かおりったら!」

[117]クスクス笑いながら、

[118]靴を脱いで上がり込む。

[119]……ん?

[120]玄関に男物の靴があったけれど、

[121]はつみさんったら、男装でも始めたのかな。

[122]うん、はつみさんなら何でも似合うよね〜!

[123]……見慣れた部屋に、

[124]誰か……見知らぬ男の人がいる。

[125]その男の人が、

[126]くるりとコチラを振り向いた。

[127]【かおり】

[128]「!!」

[129]見たことある、この人!

[130]この怖い、顔!

[131]【かおり】

[132]「きゃあああああっ!!」

[133]【???】

[134]「!!」

[135]思わず悲鳴を上げたわたしを

[136]はつみさんが強く抱きしめてくれた。

[137]【はつみ】

[138]「大丈夫よ!

[139] この人はわたしの父だから!」

[140]パニックになりそうなわたしを、

[141]主任さんの声が、ぬくもりが、落ち着かせてくれる。

[142]【はつみ】

[143]「驚かせてごめんなさいね。

[144] どうしてもあなたに会いたいって

[145] 父が言うものだから……」

[146]【かおり】

[147]「ち、父……?」

[148]【はつみ】

[149]「ええ。

[150] 血は繋がっていないのだけれど」

[151]クスッとはつみさんが笑う。

[152]【はつみ】

[153]「実はあなたとも

[154] 何度か会っているのよ?」

[155]【かおり】

[156]「え……」

[157]はつみさんの陰に隠れながら、

[158]そっと男の人を見てみた。

[159]【かおり】

[160]「!!」

[161]目が合って、思わずはつみさんの陰に隠れる。

[162]……だって、顔が怖いんだもん……。

[163]【はつみ】

[164]「……覚えていないかしら、

[165] あなたがストーカー呼ばわりした……」

[166]言い終わらないうちに、

[167]その男の人は、わたしに向かって

[168]バッと頭を下げた。

[169]【かおり】

[170]「!!」

[171]え、えっと……。

[172]これって、土下座!?

[173]わたし、土下座されちゃってる!?

[174]【大塚】

[175]「驚かせてしまって

[176] 大変申し訳ない!!」

[177]え、えええ!?

[178]【大塚】

[179]「きみがはつみの部下になったと聞いて、

[180] 成長したきみの元気な姿を

[181] この目で確認したかっただけなんだ!」

[182]【大塚】

[183]「きみを怖がらせようなんて思っていなかった、

[184] すまない、この通りだ、許してくれ!」

[185]はつみさんが優しく肩を抱いてくれた。

[186]【はつみ】

[187]「んもう、お父さんは顔が怖いんだから、

[188] かおりじゃなくても怯えるわよ!」

[189]【大塚】

[190]「誰が悪人顔だ!」

[191]ひぃっ!?

[192]【大塚】

[193]「……そんなこと言われると、パパ、泣いちゃう。

[194] 泣いちゃっても、いい?」

[195]怖い顔が、へにゃりとゆがむ。

[196]へにゃってても、怖い顔には違いないんだけど、

[197]……ちょっと親しみがわいた。かも。

[198]怖い顔だけど。

[199]声もちょっと怖いけど。

[200]【はつみ】

[201]「そこまで言ってない。

[202] 被害妄想もほどほどに。

[203] あと、キモいしゃべり方、やめて」

[204]【大塚】

[205]「はつみさんは辛口だなぁ。

[206] そんなに辛口だと、

[207] かおりさんに怖がられてしまうよ?」

[208]【はつみ】

[209]「ご心配なく。

[210] わたしはお父さんみたいに

[211] 怖い顔じゃないもの」

[212]【大塚】

[213]「またそんな意地の悪いことを言う……。

[214] お父さんはそんな子に育てた覚えはありませんよ」

[215]【はつみ】

[216]「お父さんと戸籍上の親子になったのは、

[217] 自我も性格も形成済みの十八の時よ。

[218] お父さんに育てられた覚えはないわね」

[219]【大塚】

[220]「はつみさんは辛口だなぁ、はっはっは」

[221]【かおり】

[222]「……えー……」

[223]はつみさんのお父さんって

[224]たしかに怖い顔をしてるけど、

[225]よく見ると、目が優しい……。

[226]それに、この言い合いを聞いてると

[227]何だか本当の血の繋がった親子みたい。

[228]仲良しさん親子で微笑ましいなぁ。

[229]不意に、大塚さんが顔を引き締めて、

[230]またわたしに頭を下げた。

[231]【大塚】

[232]「きみに謝らなければいけないことが、

[233] もうひとつある」

[234]【はつみ】

[235]「お、お父さん!」

[236]はっとしたはつみさんが

[237]慌てた様子で静止したけれど、

[238]大塚さんは首を振って、また土下座した。

[239]【大塚】

[240]「はづきちゃんときみの事故は

[241] わたしが原因だ」

[242]大塚さんの言葉に、

[243]一瞬、頭が真っ白になった。

[244]【はつみ】

[245]「お父さん!」

[246]【大塚】

[247]「……いや、いいんだ、はつみさん。

[248] これ以上、口をつぐんではいられない。

[249] わたしはかおりさんご本人にもちゃんと謝りたい」

[250]【大塚】

[251]「事故のことを許してくれとは言わない。

[252] きみが望む通りに何でもする」

[253]【大塚】

[254]「きみが死ねと言うのなら、

[255] 今すぐにでも、この命を投げ出してもいい。

[256] 本当に、申し訳なかったと思っている!」

[257]【かおり】

[258]「…………」

[259]【はつみ】

[260]「お父さん!

[261] あれはお父さんのせいじゃないわ!」

[262]【はつみ】

[263]「あれはたまたま運悪く起きた、

[264] ただの事故だったでしょう!

[265] わたし、見てたもの! 知ってるもの!」

[266]はつみさんがわたしを見た。

[267]その視線に、

[268]わたしの中の何かが膨れ上がってくる。

[269]だんだん記憶が鮮明によみがえってきた。

[270]あれは、わたしがまだ小学生だった頃。

[271]いつも親友のはづきちゃんと帰っていた。

[272]ある日の帰り道、突然、はづきちゃんから

[273]もう一緒に帰れないの、と切り出されたんだよね。

[274]どうして? と聞いたけど、

[275]はづきちゃんは理由を教えてくれなくて。

[276]わたし、大好きなはづきちゃんに

[277]嫌われちゃったって思って、

[278]少し混乱したのかな。

[279]もしかしたら、

[280]言葉のアヤで、思ってもいなかったようなことを

[281]言ったかもしれない。

[282]はづきちゃんは

[283]かなしそうに微笑んでいた。

[284]はづきちゃんはずっと体調が悪くて、

[285]その日も、ずっと咳をしていたの。

[286]何も言ってくれないはづきちゃんに焦れて、

[287]わたし、「はづきちゃんなんか

[288]もう知らない!」って言っちゃったんだよね……。

[289]はづきちゃんは、少し傷ついた顔をして、

[290]それから、また微笑んで……。

[291]【はづき】

[292]「うん、

[293] わたしのことは、もう忘れて」

[294]その微笑みが、

[295]酷くショックだったことを思い出した。

[296]そして、

[297]はづきちゃんは、そう言った直後、

[298]激しく咳き込んで……。

[299]【かおり】

[300]「はづきちゃん!?」

[301]はっと気がついたら、

[302]わたしたちは、道路に転がり出てしまっていて、

[303]目の前には大きなトラックが迫ってきていた。

[304]【はづき】

[305]「かおりちゃん!!」

[306]はづきちゃんがわたしの身体を抱きしめて、

[307]その直後――。

[308]跳ね飛ばされながら、

[309]運転席の男の人が見えた。

[310]怖い顔をした、運転手。

[311]そうか、

[312]あれは、大塚さんだったんだ……。

[313]……恐怖が流れ込んでくる。

[314]突然、自分の車の前に、

[315]ふたりの女の子が飛び出してきた、恐怖が……。

[316]気がついたら、

[317]わたしは涙を流していた。

[318]【はつみ】

[319]「……父の誠意はわたしが証明するわ」

[320]はつみさんの手が伸びてきた。

[321]【はつみ】

[322]「父はあの事故で、自分の家庭と職場を

[323] 同時に失った……」

[324]【はつみ】

[325]「けれど、そんな大変な中なのに、

[326] はづきの遺族である、わたしやわたしの母、

[327] あなたのご家族に誠心誠意、真心を見せた」

[328]優しい手のひらが、頬に添えられる。

[329]【はつみ】

[330]「わたしの母はその誠意に打たれて、

[331] この人と再婚したの」

[332]繊細な指で、

[333]わたしの涙をぬぐってくれた。

[334]【はつみ】

[335]「実家に戻ったら、ご家族に聞いてごらんなさい……、

[336] 父がどれだけあなたのことに気を砕いたか、

[337] ご両親が話してくれると思うから」

[338]はつみさんの言葉に、

[339]わたしはゆっくりと首を横に振った。

[340]【かおり】

[341]「大丈夫です。

[342] もう、わかりました」

[343]【はつみ】

[344]「え?」

[345]【かおり】

[346]「この人が……

[347] はつみさんのお父さんが怖い人じゃないって、

[348] もうわかりました」

[349]わたしの涙を拭いてくれた手を

[350]そっと握り締める。

[351]【かおり】

[352]「わたしの大好きなはつみさんが認めている、

[353] はつみさんのお父さん、なんですよね?

[354] そんな人が、怖い人なわけ、ありません」

[355]【はつみ】

[356]「かおり……」

[357]【かおり】

[358]「はつみさん……」

[359]手を取り合って、見つめ合った。

[360]【大塚】

[361]「あー……、

[362] えー、ゴホン。

[363] そういうことは、父親の前では……」

[364]【はつみ】

[365]「お父さん、邪魔しないで!」

[366]【大塚】

[367]「はい、すみません」

[368]親子漫才に、思わず笑いが漏れた。

[369]大塚さんはバツが悪そうに笑ってる。

[370]はつみさんも、照れくさそうに笑ってる。

[371]【かおり】

[372]「……あはっ」

[373]……突然、幸せだなぁって思ったの。

[374]こんないい人たちに囲まれて、大事にされて、

[375]わたしは幸せだなぁって。

[376]はつみさん、なぎさ先輩、山之内さん、

[377]病棟のみなさん。

[378]堺さん、あみちゃん、患者さんのみんな。

[379]わたしの周囲にいる人は良い人ばかり。

[380]ううん、それだけじゃない。

[381]わたしのお父さんやお母さん、妹も、

[382]はつみさんのお母さんや、大塚さんも、

[383]ずっと、かげ日なたになって

[384]わたしを見守っててくれてたんだよね。

[385]そして……わたしの中のはづきちゃんにも守られて、

[386]今、わたしはこうして生きている……。

[387]【かおり】

[388]「はつみさん……、

[389] 今まで、ありがとうございました」

[390]【はつみ】

[391]「今まで、って……かおり?」

[392]わたしの言葉に、

[393]不安そうな顔をするはつみさん。

[394]そんなはつみさんに、

[395]わたしはにっこりと笑いかけた。

[396]【かおり】

[397]「そして、これからも、

[398] よろしくお願いします!」

[399]はつみさんがふわりと微笑んで……。

[400]【はつみ】

[401]「ええ、こちらこそ!」

[402]ぎゅっと、強く、抱きしめてくれた。

[403]唇から伝わる感触に……あまりにも幸せ過ぎて、

[404]思わず泣きたくなる。

[405]だからわたしも、はつみさんの背中にまわした手に、

[406]ぎゅっと力をこめた。

[407]わたしがこんなに、

[408]はつみさんのことを愛してるってこと。

[409]そして、大切に思っているってことが、

[410]少しでも伝わるように――

white_robe_love_syndrome/scr00711.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)