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white_robe_love_syndrome:scr00699

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[001]――結局。

[002]堺さんは

[003]帝都大学医学部付属病院に転院してしまったの。

[004]辛口すぎる言葉を投げつける人がいなくなって、

[005]それはそれでストレスが減って良かったんだけど……。

[006]でも、心のどこかで

[007]これで良かったのかなぁって感じてるわたしがいるの。

[008]わたしが担当している限り、

[009]堺さんの希望する完璧なサービスを受けられないし、

[010]そもそも、この病院自体、堺さんの病気の

[011]根治治療を目指せるような施設でもない。

[012]【なぎさ】

[013]「沢井、なにボーッとしてるの?」

[014]なぎさ先輩の声で、ハッと我に返る。

[015]【かおり】

[016]「あ……、

[017] いえ、何でもありません」

[018]顔を上げると、

[019]主任さんがこちらをじっと見ている。

[020]【なぎさ】

[021]「じゃ、じゃあ、あたし、

[022] 部屋回りしてるから……」

[023]主任さんの視線に気づいたなぎさ先輩は

[024]そそくさと逃げるように詰所を出て行った。

[025]ゆっくり立ち上がった主任さんが

[026]わたしに近づいてくる。

[027]……わ、わたし、

[028]何か言われちゃうのかな……?

[029]【はつみ】

[030]「あなたはもう、わたしの――ではないわね」

[031]すれ違いざま、投げつけられた言葉。

[032]【かおり】

[033]「え?」

[034]今、主任さん、何て言ったの?

[035]主任さんはわたしに背中を向けたまま、

[036]振り返ることなく、詰所を出ていった。

[037]【かおり】

[038]「…………」

[039]何だろう、この胸騒ぎ……。

[040]大事な言葉を聞き逃したような気がする。

[041]【かおり】

[042]「!!」

[043]ナースコールが鳴る。

[044]いつでも、どんな時でも、

[045]ナースコールは待ってくれない。

[046]……何か考えたいことがあったとしても、

[047]そんなこと、患者さんには関係ないのだから。

[048]【かおり】

[049]「はーい、どうされました?」

[050]仕事が終わって、帰り道、

[051]ふと、足を止める。

[052]わたしは患者さんのために何ができるんだろう?

[053]いつか、いつの日か

[054]患者さんや同僚に信頼される

[055]ちゃんとした看護師になれるのかな?

[056]そして――。

[057]――信頼し、信頼される、

[058]そんな気の置けないパートナーが

[059]わたしにもできるのかな……?

white_robe_love_syndrome/scr00699.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)