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white_robe_love_syndrome:scr00601

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[001]          夢を見る。

[002]          夢を見る。

[003]          恐い、夢。

[004]      夢はいつも

[005]      クラクションの音と

[006]      急ブレーキの音から始まる。

[007]        ほら、今日も……。

[008]      そして、

[009]      飛び込んできたトラックに

[010]      わたしはぶつかるの。

[011]   ――わたしは、トラックにはねられた――。

[012]     ……これはわたしの身体の記憶?

[013]  交通事故に遭ったわたしの肉体の細胞の

[014]  ひと粒ひと粒が覚えている、これは過去の記憶?

[015]         それから――。

[016]         心地よい場所。

[017]    もしかしたら、

[018]    これは、臨死体験なのかもしれない。

[019]   あの世とやらがあればの話、なんだけど。

[020]     そして、わたしに話しかける、声。

[021]         「生きなさい」

[022]     「あなたは……あの子の分まで

[023]      生きなければいけないのよ」

[024]      きっとわたしは

[025]      瀕死の重傷を負ったんだよね。

[026]      でないと、こんなに必死に

[027]      呼びかけてもらえないもの。

[028]     わたしにお姉ちゃんがいたら

[029]     きっとこんな感じなのかなぁ……。

[030]      「目を開けなさい。

[031]       死ぬなんて、許さないわ」

[032]   厳しさと優しさが

[033]   絶妙のバランスで混ざり合ったような、声。

[034]    ……もっとこの声に包まれていたい。

[035]       「かおりちゃん……、

[036]        死なないで、お願い」

[037]       ああ、あなたも

[038]       泣かせちゃったね……。

[039]        「ごめんね、

[040]         ―――ちゃん……」

[041]        思わず、唇が動いた。

[042]     けれど

[043]     肝心の部分が、聞こえなかった。

[044]        名前が、わからない。

[045]     ごめんね、

[046]     わたしは知っているはずなのに、

[047]     あなたの名前がわからないの。

[048]    わたしの声、わたしがしゃべったこと、

[049]    なのに、肝心の部分が

[050]    自分ではわからない……。

[051]     わからないことが、不安をあおる。

[052]       ……ねぇ、

[053]       あなたたちは誰なの……?

[054]【かおり】

[055]「……ぁ……」

[056]ゆっくりと目を開ける。

[057]暗い、部屋。

[058]これは……夢の続き?

[059]ゆっくりと起き上がる。

[060]目が慣れてくるに従って、

[061]ここが自分の部屋だとわかってくる。

[062]【かおり】

[063]「はっ、今、何時!?」

[064]枕もとの目覚まし時計を手に取った。

[065]【かおり】

[066]「六時五分!?」

[067]文字盤の針に混乱する。

[068]六時、って、朝の六時?

[069]それとも、夕方の六時!?

[070]今日の勤務は何!?

[071]お、落ち着かなきゃ……。

[072]そう、深呼吸して……。

[073]【かおり】

[074]「…………」

[075]そうだ、ケータイ!

[076]ケータイを見ればわかるよね。

[077]明かりをつけて、

[078]カバンの中をゴソゴソとさぐる。

[079]【かおり】

[080]「……えっと」

[081]ディスプレイを確認すると――。

[082]【かおり】

[083]「六月十七日、十八時七分。

[084] ……夕方か……」

[085]【かおり】

[086]「って、夕方!?」

[087]一瞬、混乱する。

[088]まさか、今日は日勤だったのに爆睡した挙句、

[089]夕方まで寝こけてたとかじゃないよねと

[090]どきりとした。

[091]落ち着いて、勤務表を確認する。

[092]【かおり】

[093]「えと……、沢井かおり……、

[094] 十七日は……明け……?」

[095]ホッとした。

[096]そう……、

[097]今日は夜勤明けで、

[098]この部屋にはお昼前に帰ってきたんだっけ。

[099]初めての夜勤はすごく大変だったな……。

[100]おっかなびっくりの連続で、

[101]なぎさ先輩にすっごくフォローしてもらって、

[102]朝、主任さんの顔を見て

[103]思わず泣き出しちゃったんだっけ。

[104]うわ、思い出したら、

[105]すごく恥ずかしくなってきた……!!

[106]【かおり】

[107]「うう……」

[108]もう一度、ベッドにもぐり込む。

[109]今日はもう勤務がないから

[110]二度寝しても大丈夫。

[111]寝ようとして

[112]チラッと見たケータイには

[113]メールの着信があった。

[114]【なぎさ】

[115]『初夜勤、お疲れ!

[116] 戸惑ったこともあるだろうけれど、

[117] 少しずつ慣れていこうね!』

[118]……なぎさ先輩……。

[119]すごく迷惑かけちゃったけど、

[120]なぎさ先輩がいたから

[121]わたしは初夜勤を乗り切れたんだよね。

[122]メール打たなきゃ。

[123]【かおり】

[124]「えっと……。

[125]『お疲れ様です、夜勤ではお世話になりました!

[126] なぎさ先輩のお陰で無事に乗り切れました!」

[127]【かおり】

[128]「少しずつ、って言ってもらえると

[129] 気が楽になります。

[130] ありがとうございました!』……と」

[131]【かおり】

[132]「はい、送信!

[133] あ、もしかしたら

[134] なぎさ先輩、寝てるかも……?」

[135]わたしのメールの着信音で

[136]起こしちゃってなきゃ

[137]いいんだけど……。

white_robe_love_syndrome/scr00601.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)