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white_robe_love_syndrome:scr00428

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[001]うう……、

[002]記録が全然進まない〜!

[003]真っ白な記録用紙を前に、

[004]パタッと机に突っ伏してみた。

[005]【???】

[006]「あら、何してるの?

[007] 誰かに用?」

[008]ん……、なぎさ先輩、

[009]誰に話しかけてるんだろう?

[010]【???】

[011]「え、いえっ。

[012] 大丈夫です!!」

[013]顔を上げたけど、時すでに遅く、

[014]あみちゃんらしき後ろ姿が

[015]そそくさと逃げるように遠ざかって行った。

[016]【かおり】

[017]「……あみちゃん、どうかしたんですか?」

[018]【なぎさ】

[019]「さぁ?

[020] 何か言いたげにウロウロしてたから

[021] 声をかけたんだけど……逃げられちゃった」

[022]なぎさ先輩も首を傾げてる。

[023]なぎさ先輩にわかんないことが

[024]わたしにわかるわけないよねー。

[025]というわけで、

[026]再び真っ白な記録用紙に向かい合う。

[027]ううう、欝だ。

[028]【かおり】

[029]「えっと……、

[030] 五輪さんのコールの内容は……」

[031]前に座って記録を書いてた山之内さんが

[032]顔を上げた。

[033]【やすこ】

[034]「あれ?

[035] あみちゃん、どないしたん?」

[036]【あみ】

[037]「あっ!

[038] 何でもないです、失礼しましたー!」

[039]振り向くと、さっきと同じく、

[040]そそくさと逃げるような後ろ姿が見える。

[041]【かおり】

[042]「…………?」

[043]【かおり】

[044]「やっと書けたぁ……」

[045]【やすこ】

[046]「遅いっ!

[047] 時間かかりすぎ!!」

[048]丸めた記録用紙で頭を叩かれた。

[049]くっ、

[050]これが本場のツッコミってやつか……。

[051]【なぎさ】

[052]「じゃあ、見せて……ん、まぁまぁかな。

[053] もうちょっと具体的に書いて欲しいところだけど、

[054] 頑張って書けたと思うわ」

[055]【やすこ】

[056]「藤沢〜〜!

[057] あんたの指導も具体性に欠けとるなぁ」

[058]【なぎさ】

[059]「そんなの、指導の仕方なんて人それぞれでしょう?

[060] あたしはあたしのやり方で

[061] 沢井を指導してるんですー!」

[062]【やすこ】

[063]「あー、せやねー」

[064]【かおり】

[065]「あ、あの、

[066] わたし、お手洗いに……」

[067]ふたりの険悪なやり取りを聞いていたくなくて、

[068]こそこそと詰所を出た。

[069]【かおり】

[070]「あ」

[071]【あみ】

[072]「あっ!」

[073]そういえば、

[074]さっきから、あみちゃんが

[075]詰所の前をウロウロしてるっぽかったっけ?

[076]【かおり】

[077]「どうしたの?

[078] 何かよ……おひょ!?」

[079]【あみ】

[080]「こっちに来てくださいっ!」

[081]あみちゃんに手を掴まれて、

[082]そのまま引っ張っていかれる。

[083]連れてこられたのは、あみちゃんの病室だった。

[084]【かおり】

[085]「ど、どうしたの、あみちゃん?」

[086]【あみ】

[087]「あ、あの……」

[088]あみちゃんの頬が赤く染まってる。

[089]【あみ】

[090]「か、かおりんさん……

[091] 屋上のこと、黙っててくれたんですよね」

[092]【かおり】

[093]「あ……うん」

[094]【あみ】

[095]「わ、わたし……かおりんさんの気持ちが嬉しいって、

[096] 感謝してるってこと、伝えたくて……

[097] ありがとうございました!」

[098]そう言って頭を下げたあみちゃんに、

[099]慌てて、頭を上げさせた。

[100]【かおり】

[101]「あ、あみちゃん!?

[102] やめてよ、頭を上げて、そんな、

[103] 頭を下げてもらうようなことしてないしっ!」

[104]ん?

[105]【かおり】

[106]「……って、なんであみちゃん、

[107] わたしが黙ってたこと知ってるの?」

[108]あみちゃんはにっこり笑った。

[109]【あみ】

[110]「さっきね、さゆりんとおトイレで会ったの。

[111] でね、なぎさんと主任さんが

[112] わたしのことを探してたって聞いて……」

[113]【かおり】

[114]「うん、検温がまだだったもんね」

[115]【あみ】

[116]「本当はね、

[117] 基本的に屋上は立ち入り禁止だって

[118] わたしも他の患者さんも知ってるの……」

[119]【あみ】

[120]「だから……もし、かおりんさんが

[121] わたしと屋上にいたって主任さんに報告してたら、

[122] 今頃は屋上閉鎖の騒ぎになってるはずでしょう?」

[123]【かおり】

[124]「……う、うん……」

[125]あの主任さんなら、

[126]時間をおかずに、即、閉鎖するって思ったから、

[127]わたしは……。

[128]【あみ】

[129]「どうして報告しなかったんですか?

[130] 後でバレたら、きっとかおりんさんが

[131] 主任さんに叱られちゃうのに」

[132]あみちゃんの素直な質問に、

[133]わたしも素直に答えてみた。

[134]正直に言うのが怖かった

[135]屋上は憩いの場だから

[136]【かおり】

[137]「主任さんってね、怒るとすごく怖いの。

[138] だから、正直に言うのが怖くて……」

[139]冗談めかして、そう言ってみる。

[140]【あみ】

[141]「えー!?

[142] 主任さんって、そんなに怖い人なんですかー?

[143] キレイなお姉さんじゃないですかー!」

[144]【かおり】

[145]「んー、褒めてくれる時は褒めてくれるんだけどね、

[146] ダメなことしちゃったり、しそうになっただけで、

[147] もう雷がピシャーンって!!」

[148]【あみ】

[149]「うわー。

[150] そういえば、同じ部屋の子たちが騒いでて、

[151] 主任さんに叱られるの、見たことあったなぁ……」

[152]【あみ】

[153]「もう、自分が言われたわけじゃないけど、

[154] あんな風に怒られるなら、

[155] 普通に怒鳴られる方がマシかもって思っちゃう」

[156]【かおり】

[157]「でしょー。

[158] あれがしょっちゅうなの!!」

[159]【かおり】

[160]「上司としてすごく信頼できるんだけど、

[161] 正直にゴメンナサイって言えるような

[162] 雰囲気じゃないっていうかー」

[163]【あみ】

[164]「わー、かおりんさんがそんなこと言ってたって

[165] 主任さんに言いつけたら、

[166] すごいことになりそう〜」

[167]ニヤニヤと笑うあみちゃんに、

[168]そんな場面を思い浮かべて、

[169]思わず涙目になってしまった。

[170]【かおり】

[171]「あひゃっ!?

[172] や、やめて、それは本気でヤメテ!!」

[173]【あみ】

[174]「えー、どうしよっかなー」

[175]【かおり】

[176]「あ、あみちゃんんん〜」

[177]【あみ】

[178]「うふふっ、冗談ですよ」

[179]【かおり】

[180]「んもう、あみちゃんったらぁ!」

[181]こんな悪い子には、

[182]えいっ、お仕置きだ!

[183]【あみ】

[184]「あいたっ!」

[185]でも、相手は患者さんだから、

[186]ちょっと弱めの力でのデコピン。

[187]手加減してあげたの、

[188]感謝してほしいなっ!

[189]【かおり】

[190]「屋上は憩いの場、でしょう?

[191] 息苦しい入院生活で、憩いの場を取り上げるのは

[192] 可哀想だなって思ったの」

[193]【あみ】

[194]「……みんなのために……?」

[195]【かおり】

[196]「うん、それもあるよ。でも……あみちゃんが、

[197] あんな顔してフォルテールを弾いてるんだもん、

[198] それを思い出すと……主任さんに言えなくて……」

[199]【あみ】

[200]「わたしの、ために……ですか?」

[201]あみちゃんのために……?

[202]そうなのかな。

[203]でも、たしかに、

[204]言うかどうか迷った時、

[205]あみちゃんの顔が浮かんだのは事実。

[206]【かおり】

[207]「……また、演奏、聴かせてくれる?」

[208]【あみ】

[209]「は……はいっ!

[210] わたしで良ければ喜んで!!」

[211]がばっとあみちゃんが抱きついてきた。

[212]【かおり】

[213]「あひゃっ、

[214] あう、あわ……わわ……!!」

[215]支えきれずに、

[216]あみちゃんを抱き締めたまま、

[217]床に尻餅をついてしまった。

[218]【あみ】

[219]「ご、ごめんなさい、かおりんさん!

[220] お尻、大丈夫ですか……?」

[221]【かおり】

[222]「う、うん……大丈夫だけど……」

[223]【あみ】

[224]「けど……?」

[225]【かおり】

[226]「全然、痛くなかったの」

[227]【あみ】

[228]「痛くなくて良かった……んじゃないんですか?」

[229]【かおり】

[230]「それはそうなんだけど。

[231] ……尻餅ついて痛くないって、

[232] お尻に脂肪がついたってことでしょう!?」

[233]【あみ】

[234]「……それって、太ったってこ……」

[235]【かおり】

[236]「いやーっ!

[237] 言っちゃダメぇ!!」

[238]おおお、恐ろしい!!

[239]激務をこなしてるはずなのに、

[240]太っちゃったなんて!

[241]そういえば、夜中にラーメンとかお菓子とか、

[242]イロイロ食べてるし、お酒も飲んでるし、

[243]太っちゃっても仕方がないのかも!

[244]ふと見れば、あみちゃんがクスクス笑ってる。

[245]【あみ】

[246]「ふふふ……。

[247] かおりんさんみたいな大人でも、

[248] そんな高校生の女の子みたいな心配するんですね」

[249]【かおり】

[250]「む、失礼な!

[251] 大人になっても、

[252] 体重増加は乙女の最大の禁忌なんですー!」

[253]【あみ】

[254]「ダメですよー、

[255] かおりんさんは変なダイエットは

[256] しないでくださいねー」

[257]【かおり】

[258]「え、どうして?」

[259]【あみ】

[260]「だって……」

[261]ニコッと笑ったあみちゃんが、

[262]ぽふっと、わたしの胸の間に顔を埋めた。

[263]【あみ】

[264]「ダイエットすると、

[265] このふわふわの感触が減っちゃうじゃないですか」

[266]【かおり】

[267]「うくぅ……」

[268]ううう、

[269]あみちゃん……わたしの胸は枕じゃないよぅ。

white_robe_love_syndrome/scr00428.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)