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white_robe_love_syndrome:scr00417

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[001]最近、龍角さんの状態が良くない。

[002]尿量も低下して、

[003]身体が全体的に浮腫むようになった。

[004]呼吸も少し苦しそうで、

[005]少しのことで咳き込んだり、

[006]痰が絡んだりするようになっている。

[007]心機能が低下してきた証拠、って

[008]主任さんは言ってたっけ。

[009]今日から、龍角さんの胸には電極が貼られ、

[010]詰所で二十四時間ずっと心電図を監視する事になった。

[011]【かおり】

[012]「……龍角さん、

[013] 元気になってくれればいいのに」

[014]そう思う気持ちにウソはないけど

[015]元気になるのは無理かもしれないという、

[016]そんな予感がある。

[017]不意に背筋がゾクッとした。

[018]病院、って、そういう場所なんだ。

[019]わかっていたつもりだったけど、

[020]現実に『そういうこと』を実感すると……怖い。

[021]【???】

[022]「……もう出た?」

[023]ん?

[024]【???】

[025]「まだ」

[026]トイレの中から声が……?

[027]【???】

[028]「……そろそろ?」

[029]この声は、堺さん、だよね?

[030]【???】

[031]「もう帰る?

[032] まだ帰らない?」

[033]この声は……誰だろう?

[034]子どもの声だよね。

[035]【さゆり】

[036]「大丈夫、出てくるまで帰らないから。

[037] 安心していいよ」

[038]【???】

[039]「……本当?

[040] あ、でも、もう終わったよ」

[041]そういえば、

[042]昨日、女の子の入院があったよね。

[043]たしか、熱を出した後に

[044]体調が一気に悪くなって、

[045]調べてみたら糖尿病だったって子。

[046]熱ですい臓の機能を失ってしまったんだとか……。

[047]その子かな?

[048]【???】

[049]「終わったよ!」

[050]あ、やっぱり、

[051]糖尿病の管理で入院してきた

[052]つくしちゃんだ。

[053]糖尿病の管理入院をわたしが経験するのは、

[054]こはくちゃんに続いて二人目。

[055]こはくちゃんは、一旦、301号室に収容された後、

[056]意識が戻って、それからめきめきと回復したから

[057]今は306号室にいるの。

[058]やっぱ子どもって治りが早いんだな……。

[059]もうこはくちゃんみたいなことが起こらないよう、

[060]つくしちゃんには、もっともっと、

[061]気をつけて糖尿病指導しなくちゃ……。

[062]【さゆり】

[063]「ダメでしょう?

[064] 使った後は、次の人のことを考えて

[065] キレイにしなくちゃ」

[066]【つくし】

[067]「えへへ、ごめんなさい」

[068]【さゆり】

[069]「ちゃんとごめんなさいが言えるなんて、いい子ね。

[070] さ、手を洗いましょう?」

[071]【つくし】

[072]「うん!」

[073]……なんか、微笑ましいな。

[074]つくしちゃんのお母さん、

[075]ひとりでトイレにいけるか不安がってたけど、

[076]この様子なら大丈夫ね。

[077]ん?

[078]もしかしたら、つくしちゃん、

[079]堺さんについて来てってお願いしたのかも。

[080]【さゆり】

[081]「ハンカチ持ってる?」

[082]【つくし】

[083]「あ、忘れちゃった」

[084]【さゆり】

[085]「じゃあ……、はい、どうぞ。

[086] わたしのを使って?」

[087]【つくし】

[088]「うん!

[089] ありがとう、お姉ちゃん!

[090] 今度はわたしがハンカチ貸してあげるね!」

[091]【さゆり】

[092]「そうね。

[093] わたしが忘れちゃったら、

[094] あなたのハンカチを貸してもらうね、うふふ」

[095]【さゆり】

[096]「でも、わたしはハンカチ忘れないよ?

[097] もう大人だからね」

[098]【つくし】

[099]「そっかぁ……。

[100] じゃあ、もし忘れちゃったら、

[101] こっそり貸してあげるね」

[102]それにしても、堺さんって

[103]こんなに優しい声が出せるのね。

[104]【さゆり】

[105]「うふふ、そうね。

[106] 他の人に知られちゃうと恥ずかしいから、

[107] ヒミツにしててね?」

[108]【つくし】

[109]「うん、

[110] わたしたちふたりだけのヒミツね!」

[111]堺さんって、子どもが好きなのかな?

[112]もっとこういう優しい部分も

[113]見せてくれればいいのに。

[114]きっとわたしが知らないだけで、

[115]堺さんのいい部分もステキな部分も

[116]いっぱいあるんだろうな。

[117]【かおり】

[118]「……もったいないな」

[119]何となく、ここで

[120]ふたりの会話を聞いていたいな。

[121]でも、龍角さんの

[122]バイタルの報告をしなきゃいけないんだよね。

[123]うーん、どうしようかな?

[124]このまま立ち聞きしてても、

[125]そんなに時間はかからないだろうけど、

[126]見つかっちゃ気まずいよね。

[127]龍角さんの報告も

[128]多少は遅れたって大したことはないけど、

[129]でも、もしかしたら担当のバイトナースさんが

[130]わたしの報告を待っているかも……?

[131]立ち去る

[132]もうちょっと見てる

[133]……うん、仕事中だしね。

[134]興味本位で患者さんのプライベートに立ち入るのも、

[135]看護師の職務から逸脱しちゃうしね。

[136]詰所に戻ろう。

[137]……だって気になるんだもの、

[138]仕方がないよね。

[139]【つくし】

[140]「お姉ちゃんの名前、

[141] 聞いてもいい?」

[142]【さゆり】

[143]「いいわよ。

[144] わたしの名前は、堺さゆり、よ」

[145]【つくし】

[146]「さかいさゆい……?」

[147]【さゆり】

[148]「さゆい、じゃなくて、さゆり、ね」

[149]【つくし】

[150]「さゆり……」

[151]【さゆり】

[152]「そうそう。

[153] さかい・さゆり」

[154]【つくし】

[155]「さかり・さゆい!」

[156]【さゆり】

[157]「いや、そうじゃなくて」

[158]うくく……、

[159]堺さんが困ってる……!

[160]わたし相手なら

[161]きっと、即! 嫌味! だろうに、

[162]子ども相手にはこんなに優しくて

[163]マイルドな対応になるのね。

[164]【さゆり】

[165]「じゃあ、苗字はいいわ。

[166] さゆりお姉ちゃん、で」

[167]【つくし】

[168]「うん、『さゆりお姉ちゃん』。

[169] わぁ、こっちの方が言いやすいよ」

[170]【さゆり】

[171]「それは良かったわ。

[172] じゃあ、お部屋に戻りましょうね」

[173]あ、やばい!

[174]とっさに隠れようとしたけれど、

[175]時、既に遅し!

[176]トイレから出てきた

[177]堺さんとバッチリ目が合ってしまった!!

[178]な、何か言わなきゃ!!

[179]【かおり】

[180]「あ……えっと。

[181] 堺さんって、子どもが好きなの?」

[182]言ってしまって、ハッとした。

[183]あああ、わたし、なに言ってるの〜!?

[184]【さゆり】

[185]「そ、そんなの……関係ない、でしょ……」

[186]堺さんは真っ赤になってる。

[187]ああ、わたしのバカー!

[188]そんなわたしの白衣の裾を

[189]くいくいと誰かが引っ張った。

[190]【つくし】

[191]「あのね、わたしね、

[192] さゆりお姉ちゃんに

[193] おトイレについてきてもらったの!」

[194]無邪気につくしちゃんが報告してくれる。

[195]【かおり】

[196]「そう、良かったねぇ」

[197]【つくし】

[198]「うん!

[199] さゆりお姉ちゃん、優しいから大好き!」

[200]チラッと堺さんを見ると

[201]堺さんは更に真っ赤になっている。

[202]【さゆり】

[203]「……そ……」

[204]照れてる。

[205]すっごく照れてる、あの堺さんが。

[206]……こうしてると、

[207]何だか、堺さんが年相応の女の子に見えるよ。

[208]そうだよね、

[209]堺さんって突っ張ってはいるけれど、

[210]わたしよりも年下の、

[211]まだ二十歳の若い女の子なんだよね。

[212]【かおり】

[213]「そうなのー。

[214] わたしも、さゆりお姉ちゃんが好きよ」

[215]つくしちゃんの目線の高さに屈み込んで、

[216]つくしちゃんの頭を撫でる。

[217]【つくし】

[218]「えー!

[219] さゆりお姉ちゃんは

[220] わたしが先に好きになったのにー!」

[221]【かおり】

[222]「そっかー。

[223] じゃあ、わたしは二番目でいいかな。

[224] 一番目はつくしちゃんに譲っちゃう!」

[225]【つくし】

[226]「そう言われると弱いんだよなぁ。

[227] じゃあ、わたしたちふたりのお姉ちゃんでいいよ」

[228]【かおり】

[229]「そうね!

[230] わたしたちふたりのお姉ちゃんね!」

[231]微笑ましい気分になって、

[232]傍にいるはずの堺さんを見上げる。

[233]【かおり】

[234]「あれ?」

[235]堺さんは既に立ち去った後だった。

[236]きっと、あまりの気恥ずかしさに

[237]いたたまれなくなったのかも。

[238]照れなくてもいいのに。

[239]【かおり】

[240]「じゃ、看護師のお姉ちゃんは

[241] お仕事に戻るね。

[242] つくしちゃんはひとりでお部屋に帰れる?」

[243]【つくし】

[244]「大丈夫よ、それくらい。

[245] わたし、子どもじゃないもの」

[246]【かおり】

[247]「そっかー、子ども扱いして

[248] 失礼だったかな?」

[249]【つくし】

[250]「そうよ、失礼しちゃう。

[251] でも、許してあげるね」

[252]【かおり】

[253]「うふふ、ありがと。

[254] じゃあ、またね、つくしちゃん」

[255]【つくし】

[256]「うん、じゃーねー」

[257]つくしちゃんが手を振って

[258]306号室に入るのを見届ける。

[259]さてと。

[260]微笑ましい気分になったことだし、

[261]仕事、頑張ろっかな!

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[263]0411で「黙っておく」を選択した場合

[264]屋上が施錠されていない状態の場合のみ

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[267]0411で「主任に報告する」を選択した場合

[268]屋上が施錠されている状態の場合のみ

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white_robe_love_syndrome/scr00417.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)