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white_robe_love_syndrome:scr00409

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[001]う。

[002]……何だか最近、

[003]わたしが詰所に帰ってくると

[004]ナースコールが鳴るような気がする……。

[005]【かおり】

[006]「はいはい、っと……はうっ!?」

[007]しかも、コール先って311、

[008]堺さんの部屋からだし!!

[009]わたし、さっきまで堺さんの部屋にいたのに!

[010]……もしかして、嫌がらせ?

[011]でも、無視するわけにはいかないよね。

[012]【かおり】

[013]「はい、どうされました?」

[014]【さゆり】

[015]「鼻血が出ました」

[016]鼻血っ!?

[017]【かおり】

[018]「す、すぐ行きますっ!」

[019]えっと!

[020]鼻血の時は、どうすればいいんだっけ!?

[021]【さゆり】

[022]「はい」

[023]【かおり】

[024]「堺さんっ!

[025] 鼻血、大丈夫ですか!?」

[026]【さゆり】

[027]「……大丈夫だったら、コールなんてしません」

[028]【かおり】

[029]「あ、そ……そうだよね……」

[030]相変わらず、嫌味ちっくだなぁ、もう。

[031]……で、どうすれば――って、血!!

[032]堺さんの両手が血まみれ!!

[033]【かおり】

[034]「きゃーっ!?

[035] 血が、血が赤いーーっ!!」

[036]パニックのあまり、

[037]当たり前のことを言っちゃった!

[038]【さゆり】

[039]「……もしかして、

[040] 看護師のくせに血が苦手なんですか?」

[041]【かおり】

[042]「どどど、どうしよう!?

[043] 血が……血が……!!」

[044]【さゆり】

[045]「はぁーーーーーっ……」

[046]【かおり】

[047]「うう……」

[048]今、すっごい深いため息つかれちゃった?

[049]【さゆり】

[050]「そこのティッシュ、三枚ほど取って」

[051]【かおり】

[052]「あ、はい」

[053]わたしが取ってあげたティッシュを

[054]血まみれの右手に持って、

[055]ぎゅっと鼻を押さえる堺さん。

[056]血まみれの左手を

[057]わたしの方に差し出される。

[058]【さゆり】

[059]「拭いてくださいますか?」

[060]【かおり】

[061]「うぇ?」

[062]【さゆり】

[063]「このままだと、

[064] 何も触れませんから」

[065]あ、そっか。

[066]乾いたティッシュで血を吸い取るように軽く拭いて、

[067]別のティッシュを濡らして、

[068]血の痕跡を拭き上げていく。

[069]こういう時、個室って便利だな。

[070]小さいけど洗面台がついてるんだもん。

[071]【かおり】

[072]「反対の手も拭く?」

[073]【さゆり】

[074]「……お願いします」

[075]鼻を押さえるティッシュを持ち替えて、

[076]右手を出してくれた。

[077]あれ?

[078]……意外と素直だ。

[079]こういう『自分でできないことを

[080]誰かにお願いする』ことに関しては

[081]抵抗がないのかな?

[082]両手を拭き終わって、ふと堺さんを見る

[083]堺さんは少し顔を上げて、鼻の根元を押さえていた。

[084]【かおり】

[085]「……もうそろそろ止まった?」

[086]ピクリと堺さんの眉が不快そうにひそめられる。

[087]【さゆり】

[088]「鼻血のケアの方法、

[089] 勉強してないんですか?」

[090]う!

[091]堺さんのこの目……、

[092]またわたしをバカにしてる……。

[093]【さゆり】

[094]「鼻出血のケア方法は、

[095] 鼻中隔のキーゼルバッハ部位をしっかり圧迫止血。

[096] 基本でしょう?」

[097]キーゼルバッハ……、

[098]うん、たしか看護学校で習った覚えがあるよ。

[099]鼻中隔のキーゼルバッハ部位には

[100]血管が豊富に分布してるから、

[101]ちょっと血管が切れただけで

[102]大出血に見えるんだ、とか……だっけ?

[103]【さゆり】

[104]「本当は、鼻出血の際はキーゼルバッハ部位を

[105] 圧迫すると同時に、冷却するのだけど……。

[106] あなたに期待するのは無駄ね」

[107]うう……、

[108]無駄、って言われた……。

[109]そりゃたしかに

[110]気が利かないわたしが悪いけど。

[111]保冷材なんて持ってきてないし。

[112]【さゆり】

[113]「あと、血液が鼻の奥から口に流れ込むから

[114] あまり上を向きすぎないように、とか

[115] 看護師ならそういう指導をするのも基本ですよね」

[116]確かに、基本だけど……。

[117]【さゆり】

[118]「あと、止まったかなーって圧迫解除すると

[119] また出血してしまう、とかも

[120] 本来は看護師が指導するものですよね」

[121]【かおり】

[122]「……あぅ……」

[123]【さゆり】

[124]「……あなたみたいなダメナースが看護師で、

[125] わたしは一般人でしかないのよね、

[126] 世の中って不公平だわ……」

[127]【かおり】

[128]「……うぅ、ごめんね……」

[129]いたたまれない気分になって

[130]思わず謝ってしまった。

[131]【さゆり】

[132]「……別に、謝られても……。 わたしは

[133] 知識があるから平気だったけど、他の患者さんには

[134] ちゃんと対応してあげてください」

[135]【かおり】

[136]「……うん」

[137]そうだよね。

[138]堺さんは知識があったから

[139]わたしがオロオロしても、まったく問題はなかったけど。

[140]でも、堺さんが普通の患者さんだったら、

[141]鼻血が止まらなくて、

[142]ふたりしてパニックになってたんだよね。

[143]【さゆり】

[144]「あとは、自分でできます。

[145] ……沢井さんはもう戻っていいです」

[146]【かおり】

[147]「……後で、血圧はかりに来るね……」

[148]わたし……、ちゃんと看護師なのかな。

[149]患者さんである堺さんに

[150]方法を教えてもらっちゃって……。

[151]堺さんは看護学生だから

[152]普通の人より医療知識があるのは当然にしても、

[153]それでも、わたしより知識が豊富で、

[154]わたしなんかより、ずっと看護師っぽい。

[155]わたしも頑張らなきゃいけないんだけど。

[156]【かおり】

[157]「……はぁ」

[158]それはわかってるんだけど。

[159]【かおり】

[160]「はぁ……」

[161]ああ、へこむなぁ……。

white_robe_love_syndrome/scr00409.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)