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white_robe_love_syndrome:scr00403

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[001]【やすこ】

[002]「おっ!

[003] お疲れ〜」

[004]なぎさ先輩と休憩室でお昼を食べていると、

[005]山之内さんがやってきた。

[006]【やすこ】

[007]「ふたりとも自炊?

[008] 偉いなぁ〜、あ、よっこいしょっと」

[009]ソファーに座った山之内さんは、

[010]カバンから出したコンビニのおにぎりを二つ

[011]テーブルに置いた。

[012]【かおり】

[013]「お昼、それだけですか?」

[014]びっくりして聞くと、山之内さんは笑う。

[015]【やすこ】

[016]「そこのコンビニ、

[017] おにぎり百円セールやってるから

[018] 今なら自炊より安いねんでー」

[019]【なぎさ】

[020]「でも、それじゃ栄養が偏っちゃいませんか?」

[021]【やすこ】

[022]「大丈夫!

[023] ちゃんと計算してサプリも飲んどるから」

[024]【なぎさ】

[025]「サプリだけじゃダメですよ!

[026] サプリ万能主義はやめた方がいいと思います!」

[027]【やすこ】

[028]「藤沢は真面目やねぇ。

[029] コンビニおにぎりも、

[030] それなりに栄養価はあるんよ?」

[031]【なぎさ】

[032]「そんなの、微々たるものじゃないですか」

[033]【やすこ】

[034]「こっちは具がうなぎ〜。

[035] うなぎにはビタミンB1が豊富に含まれてて

[036] 美容にもいいんやで」

[037]ニコニコしている山之内さんに、

[038]なぎさ先輩がため息をついている。

[039]そうだよね、

[040]おにぎりだけじゃ

[041]栄養、偏っちゃうよね……。

[042]というか、

[043]圧倒的にカロリー、足りてないよね!

[044]【かおり】

[045]「わたしも、なぎさ先輩の意見に同意です」

[046]【やすこ】

[047]「まぁ大丈夫やって。

[048] うちには、心優しい同僚がおるもんなー、

[049] ほら、ここにふたりも!」

[050]うっ!

[051]山之内さんの視線が、

[052]わたしたちのお弁当に注がれてる!?

[053]【かおり】

[054]「あ、あげませんからねっ?」

[055]【やすこ】

[056]「な、なんと……なんと冷たいっ!

[057] ああ、この冷たさに、

[058] うちは打ちのめされそうやわ……ああっ!」

[059]ショックを受けた様子で

[060]山之内さんがソファーに倒れ込む。

[061]大げさな!

[062]【やすこ】

[063]「あああ、なんて冷たい同僚どもめ……。

[064] うちがこんなにもひもじがってるっちゅーのに。

[065] ショックが大きすぎや、立ち直れへん……ううう」

[066]【なぎさ】

[067]「ウソ泣きしてもダメです。

[068] お金がないわけじゃないのに

[069] ケチってる山之内さんの自業自得ですー」

[070]【やすこ】

[071]「なっ!

[072] 『ケチ』の一言で片付けんな!

[073] うちのは守銭道っちゅう立派な哲学や!」

[074]【かおり】

[075]「は?

[076] しゅせんどう?

[077] しゅせんど、じゃなくて?」

[078]【やすこ】

[079]「よくぞ聞いてくれました!

[080] うちの尊敬する某キャラクターも

[081] 同じ教えを崇拝しとるんよ」

[082]【やすこ】

[083]「ケチと呼ばれる守銭奴とは違うんや。

[084] あくまでも守銭道。

[085] オゼゼを守るという教えを説く道なんや!!」

[086]【かおり】

[087]「はぁ……」

[088]山之内さんは

[089]目をキラキラさせて語っているけれど……。

[090]どうしよう、

[091]無視できるような雰囲気じゃないよね……。

[092]なぎさ先輩と目配せし合って、

[093]こっそりとため息をつく。

[094]【やすこ】

[095]「塵も積もれば、て言うやろ。

[096] 百円、二百円でも節約して溜めると

[097] 気づけば大きな資産になっていく……」

[098]【なぎさ】

[099]「…………」

[100]【やすこ】

[101]「なったらいいなぁ……」

[102]【かおり】

[103]「…………」

[104]ビミョーな沈黙。

[105]なぎさ先輩が、はぁとため息をついた。

[106]【なぎさ】

[107]「……つまり、自分のお金を節約するために、

[108] 山之内さんより安い給料で働いている後輩や初任給で

[109] 給料の安い新人のおかずを取り上げると?」

[110]【やすこ】

[111]「いやん、藤沢さんたら、あからさまっ!

[112] 心優しい同僚が、うちの信条を理解して

[113] 快く協力してくれたら幸せやな〜、みたいなっ?」

[114]【なぎさ】

[115]「……まったくもう。

[116] ちょっとだけですよ?」

[117]なんだかんだ言って、なぎさ先輩は優しい。

[118]お弁当箱の蓋の上に卵焼きを一つと、

[119]塩鮭の切り身を一つ乗せて

[120]山之内さんに差し出した。

[121]【やすこ】

[122]「わーぉ!

[123] さっすが藤沢〜、気前がよくて男前!

[124] ステキッ、抱いてー!!」

[125]上機嫌にそう言って

[126]山之内さんは次に、わたしをじっと見た。

[127]【かおり】

[128]「…………」

[129]えっとぉ……。

[130]この期待に満ちた視線は、

[131]わたしも何かあげなきゃいけないってことだよね?

[132]わたしはお弁当箱の中身を見る。

[133]なぎさ先輩と被らないもので、

[134]山之内さんにあげられそうなもの……。

[135]ガーン!

[136]から揚げとハンバーグしかないっ。

[137]どっちも好きなのに……。

[138]ううっ、どうしよう。

[139]【やすこ】

[140]「沢井のお弁当も美味しそうやね〜」

[141]【なぎさ】

[142]「もー!

[143] そうやって新人にたからない!

[144] 沢井の分もあげたつもりなんですから!」

[145]【やすこ】

[146]「いやいや、独り言や独り言。

[147] 気にすんなって〜」

[148]そう言いながらも

[149]山之内さんの視線は、

[150]ジーッとわたしのお弁当箱に注がれていた。

[151]うううぅっ……、

[152]し、仕方がない。

[153]【かおり】

[154]「ど、どうぞ……」

[155]わたしは先輩のお弁当の蓋に、

[156]からあげをひとつ、コロンと乗っけてみた。

[157]ああ、サラバ、わたしのからあげさん……!

[158]【やすこ】

[159]「うはっ、おおきにおおきに!

[160] いやぁ〜、ここは優しい同僚がたくさんいて

[161] 山之内さん、めっさ感謝感激、雨アラレ〜!」

[162]山之内さんは嬉しそうにおかずをつまみ、

[163]おにぎりと一緒に頬張った。

[164]【やすこ】

[165]「うーん、ふたりとも料理上手やね〜!

[166] 立派なお嫁さんになれるで」

[167]ホクホク顔で

[168]山之内さんがおかずを頬張ってる。

[169]あつかましいって怒ってもいいのに、

[170]なんか憎めないんだよね、山之内さんって。

[171]なぎさ先輩も

[172]わたしと同意見みたい。

[173]【なぎさ】

[174]「……もう、山之内さんにはかないません」

[175]【やすこ】

[176]「お、もう一個、何かくれる?」

[177]【なぎさ】

[178]「これ以上は、何もあげませんっ!」

[179]【やすこ】

[180]「ケチ」

[181]【なぎさ】

[182]「……何か聞こえましたが?」

[183]【やすこ】

[184]「冗談冗談。

[185] あ、お礼にこれあげるわ」

[186]山之内さんがポケットから

[187]何かの紙を二枚取り出した。

[188]ケーキ無料サービスと書かれてある。

[189]【なぎさ】

[190]「わ、いいんですか?

[191] こっちのほうがおかずより高いかもなのに」

[192]【やすこ】

[193]「んー、ええよ。

[194] 駅前で配ってたんやけど、

[195] しばらく神庫に行くことないしなー」

[196]なぎさ先輩の手元を覗いてみると、

[197]神庫駅近くにあるカフェの名前が印刷されてある、

[198]とあるカフェの割引チケットだった。

[199]【かおり】

[200]「わぁ、ここ行ってみたかったんです!

[201] ケーキが美味しいって評判だし、

[202] 紅茶もすっごく美味しいらしいですよ」

[203]【なぎさ】

[204]「へぇ、そうなんだ」

[205]【かおり】

[206]「なぎさ先輩、今度のお休みに一緒に

[207] 行きましょうよー!

[208] ついでにお買い物とかして」

[209]【なぎさ】

[210]「そうね。

[211] 久しぶりに美味しいケーキ、食べたいかも〜」

[212]【かおり】

[213]「じゃ、決まりっ!

[214] 山之内さん、ありがとうございます!」

[215]【なぎさ】

[216]「ありがとうございます」

[217]【やすこ】

[218]「いやー、こちらこそ。

[219] わたしの分まで、楽しんできてね。うふっ」

[220]【かおり】

[221]「次のお休みか〜。

[222] なに着ようかなっ」

[223]【なぎさ】

[224]「んもー、沢井ったらぁ!」

[225]【やすこ】

[226]「……で、キミら、

[227] 夢見んのもええけど、

[228] そろそろ休憩時間、終わりとちゃうの?」

[229]【かおり】

[230]「やぁぁんっ!

[231] 休憩時間オーバーしちゃうと

[232] また主任さんに怒られちゃう!」

[233]わたしは慌ててお弁当を口に押し込んだ。

[234]うふふっ。

[235]今度のお休みはなぎさ先輩と

[236]ショッピング〜。

[237]楽しみ〜!

white_robe_love_syndrome/scr00403.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)