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white_robe_love_syndrome:scr00315

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[001]【あみ】

[002]「あ、かおりんさん!」

[003]306号室に立ち寄った時、

[004]あみちゃんに呼び止められた。

[005]【かおり】

[006]「あみちゃん?

[007] どうかしたの?」

[008]【あみ】

[009]「あ、ううん。

[010] 忙しいのかなーと思って」

[011]【かおり】

[012]「んー……今日はそうでもないよ。

[013] というか、割とヒマかも」

[014]【あみ】

[015]「……そう、ですか……」

[016]ヒマ、という言葉に反応したのか、

[017]あみちゃんはわたしをじっと見て、

[018]不意に目をキラキラさせた。

[019]【かおり】

[020]「ど、どうか、した?」

[021]【あみ】

[022]「んー、もしちょっとヒマなんだったら、

[023] かおりんさんの魔法を

[024] また使ってもらいたいなーって思って」

[025]【かおり】

[026]「魔法?」

[027]【あみ】

[028]「うん。ほら、前にわたしが足をひねった時、

[029] かおりんさんが撫でてくれたら

[030] 痛みがなくなったことがあったじゃないですか」

[031]【かおり】

[032]「あぁ、あれね。

[033] ……でも、あれ、

[034] 魔法とかじゃないんだけどなー」

[035]【あみ】

[036]「でもでも!

[037] 痛みがなくなったのは本当だもん!

[038] だから、魔法なんですー!」

[039]唇をとがらせて反論するあみちゃんが可愛い。

[040]【かおり】

[041]「うーん……

[042] ただのプラセボ効果だと思うんだけど。

[043] ……それでもやるの?」

[044]【あみ】

[045]「やる! やってもらいたいです!

[046] お願いしてもいいんですよねっ、

[047] いいんですよね、わーい!」

[048]嬉しそうに両手を挙げて

[049]はしゃいでいるあみちゃん。

[050]【かおり】

[051]「わかったから、落ち着いて。

[052] ネフローゼなんだから、安静にしないと、

[053] また具合悪くなっちゃうよー?」

[054]ネフローゼは腎臓の病気。

[055]腎臓がダメージ受けちゃって、

[056]血液の中のたんぱく質が再吸収されずに

[057]そのまま尿中に排泄されてしまうの。

[058]血液中のたんぱく質が減ることで、

[059]浮腫むし、身体はだるくなるし、

[060]いろいろしんどい状態になっちゃうのよね。

[061]だから、腎臓を流れる血液量を制限するために、

[062]まずは安静にしなきゃならないんだけど、

[063]あみちゃんの場合は、そこまで酷い状態じゃないみたい。

[064]わたしは大喜びのあみちゃんを落ち着かせながら、

[065]わたしはあみちゃんの隣、ベッドに座った。

[066]【かおり】

[067]「で、今日はどこの調子が悪いのかな?」

[068]【あみ】

[069]「うーん……」

[070]ベッドに座ったあみちゃんは少し考えてから、

[071]小さくため息をつく。

[072]【あみ】

[073]「どこがってわけじゃなくて……。

[074] わたしってどうしてこんなに弱いんだろう、

[075] 退院してもすぐまた入院になっちゃうしって……」

[076]そっか……。

[077]あみちゃん、

[078]具体的にどこかが痛いとかじゃなくて、

[079]そういうところで悩んでたのね……。

[080]【あみ】

[081]「かおりんさんの魔法かけてもらえば、

[082] 元気になれるんじゃないかなーって思ったんです。

[083] でも……」

[084]あみちゃんはまた小さなため息をついた。

[085]【あみ】

[086]「どこが痛いとかって場所があるわけじゃないし。

[087] なんかあちこち次々に病気になっちゃう。

[088] もうずっとこのままなのかな、わたし……」

[089]【かおり】

[090]「そんなことないよ!

[091] 絶対元気になれるから!」

[092]力説した自分の声の大きさに驚いて、

[093]わたしは慌ててトーンを落とした。

[094]【かおり】

[095]「まだ若いうちは病気の進行も早かったりするけど

[096] 治る能力だって若い方が断然、高いんだから。

[097] あみちゃんは、絶対元気になれるはず!」

[098]ベッドに投げ出されたあみちゃんの手を

[099]ぎゅっと握り締める。

[100]【かおり】

[101]「だから、ね?

[102] そんなに悲観的になっちゃダメ」

[103]元気になって、と願いながら。

[104]【かおり】

[105]「撫でてほしいんなら、

[106] いつでも撫でてあげるから。ね?」

[107]あみちゃんはくすっと笑った。

[108]【あみ】

[109]「ありがとうございます、かおりんさん」

[110]にっこりと笑うあみちゃんに、ホッとする。

[111]わたしの『癒しの手』が、

[112]あみちゃんが元気になる手助けになるなら、

[113]いつでも、いくらでも撫でてあげるのに。

[114]【かおり】

[115]「じゃあ、どうしようか。

[116] どこかナデナデする?」

[117]わたしの言葉に、

[118]あみちゃんは『待ってました』というように

[119]キラキラの目でわたしを見上げる。

[120]【あみ】

[121]「えっと、ちょっと考えてみたんですけど。

[122] ここがって具体的に言えないし、

[123] わたしの場合、出る症状もいろいろだから……」

[124]【あみ】

[125]「いっそ全身やってもらうのが

[126] 一番早いかもって思うんですけど……ダメ?」

[127]上目遣いに見上げてくるあみちゃん。

[128]う……反則だよ、その目!!

[129]【かおり】

[130]「ぜ、全身?」

[131]【あみ】

[132]「うん……できれば、でいいんですけど。

[133] かおりんさんに撫でてもらえばどこもかしこも

[134] 丈夫になって治ったり……しない?」

[135]わたしは苦笑した。

[136]【かおり】

[137]「わたしのはそういうのじゃなくて、

[138] ホントに気休めでしかないものだから、

[139] 完治とかは目的にしちゃダメだよ?」

[140]【あみ】

[141]「……治るっていうか、癒される感じ?

[142] なんか元気になる気がするんですよね。

[143] だから……、ね、お願い……」

[144]おねだり上手すぎるよ、あみちゃん!

[145]おねだりの仕草も可愛すぎる!!

[146]【かおり】

[147]「う、うん、わかった。

[148] じゃ、どこからやろうかな」

[149]【あみ】

[150]「頭っ!」

[151]【かおり】

[152]「へっ?」

[153]【あみ】

[154]「頭を撫でてもらったら、

[155] 頭、良くなりそうじゃないですか?」

[156]【かおり】

[157]「それで頭が良くなるんなら、

[158] わたし今頃はものすごい天才になってるよね」

[159]【あみ】

[160]「それもそうですよね……」

[161]あみちゃんはがっかりしたように肩を落とし、

[162]次の瞬間、慌てて顔を上げて手を振った。

[163]【あみ】

[164]「あっ、あっ!

[165] そういうことじゃなくって。

[166] かおりんさんはデキるナースさんだしっ!」

[167]【かおり】

[168]「うーん、あみちゃんったら、

[169] それ、フォローになってないよ……」

[170]【あみ】

[171]「…………」

[172]【かおり】

[173]「…………」

[174]【あみ】

[175]「えっと……。

[176] 可能性はきっとゼロじゃないと思うんで、

[177] やっぱ頭からお願いします」

[178]あみちゃんはそういうと、

[179]猫が人間の足や手に頭を擦り付けるように、

[180]わたしに身体を預けて

[181]頭をすりすりとこすり付けてきた。

[182]わたしはあみちゃんの頭をナデナデする。

[183]【かおり】

[184]「気持ちいい?」

[185]【あみ】

[186]「んー……ごろにゃーん。

[187] なんか猫になった気分……」

[188]【かおり】

[189]「もう、あみちゃんったら!」

[190]【あみ】

[191]「……わぁい、なんだか頭が軽くなった気がするー!

[192] すっきりしたっていうか、

[193] クリアになったっていうか!」

[194]【かおり】

[195]「ホントかなぁ?」

[196]【あみ】

[197]「ホントですってばぁ!」

[198]次に、あみちゃんの首のあたりをナデナデ……。

[199]【あみ】

[200]「なんか、かおりんさんの手のひらから、

[201] あたたかい力が出ていて、それがわたしの中に入って

[202] あたたかい何かで満たしてくれてる感じがする」

[203]あみちゃんはうっとりと目を閉じて

[204]わたしの手の感触を味わっている様子だった。

[205]けれど、急にガバッと目を開いて体勢を起こす。

[206]【かおり】

[207]「ど、どうしたのっ?」

[208]【あみ】

[209]「わたし、思いついちゃったんですけど!

[210] たぶん服の上からより、直に

[211] やってもらった方が、効果が高いかもですっ!」

[212]【かおり】

[213]「ひょぇっ?」

[214]【あみ】

[215]「はーい、じゃあ、実験実験!」

[216]ニコニコ笑って、

[217]あみちゃんがカーテンを閉めた。

[218]【かおり】

[219]「えっ?

[220] ちょ、あみちゃん?

[221] 本気で脱いじゃうの!?」

[222]【あみ】

[223]「はい、その方が絶対に効くと思うし」

[224]【かおり】

[225]「ブラまで!?」

[226]【あみ】

[227]「あ、下も脱ぎますか?」

[228]【かおり】

[229]「そ、そこまで脱がなくても大丈夫だからっ!」

[230]【あみ】

[231]「えー、そーですか?」

[232]あみちゃんっ、

[233]そこでどうして残念そうな声を出すのかなぁ?

[234]【かおり】

[235]「か、風邪ひくといけないでしょー?」

[236]【あみ】

[237]「うーん、じゃあ、パンツはいっか。

[238] はい、かおりんさん、お願いします」

[239]【かおり】

[240]「あ、う、うん……。

[241] じゃあ……失礼して……」

[242]ぴたっとあみちゃんの肌に触れる。

[243]【かおり】

[244]「わたしの手、冷たくない……?」

[245]【あみ】

[246]「はい、大丈夫です」

[247]【かおり】

[248]「じゃあ……」

[249]そっと手を下のほうにずらしてゆく。

[250]ふんわりとした膨らみに……。

[251]【かおり】

[252]「あ、柔らかい……」

[253]思わずつぶやいちゃった!

[254]わ、わたしったら、恥ずかしいっ!!

[255]【あみ】

[256]「わたしの胸、

[257] かおりんパワーでドーンと大きくなるかなぁ?」

[258]【かおり】

[259]「そんなことができるなら、

[260] わたしがとっくに自分でやってるってば」

[261]【あみ】

[262]「……んー、かおりんさんの手、気持ちいい〜。

[263] なんかふわふわした気分になっちゃう。

[264] 不思議だなぁ……ホントに大きくなりそう……」

[265]【かおり】

[266]「そ、そう?」

[267]【あみ】

[268]「きゃふっ、そんなことしたらくすぐったいですー!

[269] でも、なんか、いい感じ……あふぅ〜ん……」

[270]【かおり】

[271]「じゃあ、こっち側もね」

[272]【あみ】

[273]「ん〜ぅっ……、

[274] あー、効いてるかも〜ん」

[275]【かおり】

[276]「……あみちゃん、

[277] これだけやればもう十分じゃない?」

[278]【あみ】

[279]「やだやだ。

[280] もっとプリンプリンになりたい〜」

[281]【かおり】

[282]「でも、大きさよりはやっぱ形じゃないかな。

[283] こんなに白くて柔らかくて、

[284] 手のひらに吸い付くようなお肌は貴重だよ?」

[285]【あみ】

[286]「うーん……、

[287] そう、かなぁ?」

[288]【かおり】

[289]「大きくなりすぎると、

[290] 今度は垂れちゃうって話だし?」

[291]【あみ】

[292]「ガーン!!」

[293]【かおり】

[294]「はいはい。

[295] じゃあ、次ね」

[296]【あみ】

[297]「あ、次はお腹がいいです!

[298] ウエストも気になります!」

[299]【かおり】

[300]「エステじゃないんだから……」

[301]【あみ】

[302]「そうじゃなくて!

[303] お腹って胃とか腸とかあって大事なところだから!

[304] そういうのを癒して治してもらいたいんですー」

[305]【かおり】

[306]「……なるほど。

[307] じゃあ、お腹いくね。

[308] 一緒に背中も撫でる?」

[309]【あみ】

[310]「そう……ですね。

[311] わたしの腎臓が良くなれば……」

[312]今まで楽しそうにしていたあみちゃんが

[313]一瞬、見せた暗い表情。

[314]わたしは何の気なしにいったんだけど、

[315]腎臓は背中側にある臓器だから、

[316]あみちゃんは自分の病気のことを思い出しちゃったのね。

[317]そうだよね……、

[318]この病気のせいで、あみちゃんは

[319]入退院を繰り返して……。

[320]【あみ】

[321]「あん、そこそこ。

[322] 細くなりますように!」

[323]でも、暗い表情を見せたのは一瞬で、

[324]次の瞬間には、いつもの明るいあみちゃんに戻ってる。

[325]【かおり】

[326]「……もう……」

[327]【あみ】

[328]「わかってます、わかってますって。

[329] でも、願うだけならタダですよねー?」

[330]【かおり】

[331]「……はいはい」

[332]【あみ】

[333]「あーん、でもなんか、

[334] こうやって撫でられてると、変な感じ〜。

[335] もっと触ってほしくなるっていうかー」

[336]【かおり】

[337]「……もうっ、

[338] しょうがないなー……」

[339]【かおり】

[340]「……ここ、なんか、……どう?」

[341]【あみ】

[342]「きゃうっ!」

[343]【かおり】

[344]「触ってほしいって言ったのは

[345] あみちゃん、でしょ?」

[346]【あみ】

[347]「あ、そ、そうなんですけど……、

[348] やんっ、くすぐった……!!」

[349]【かおり】

[350]「はーい、ここは終わりっ。

[351] 次は足ねー!」

[352]【あみ】

[353]「ええっ!

[354] もうっおしまい!?」

[355]【かおり】

[356]「はい、足出して〜」

[357]【あみ】

[358]「やーん、かおりんさんのいけず〜」

[359]【かおり】

[360]「ぐずぐず言わないの。

[361] ほら、足」

[362]【あみ】

[363]「はぁーい」

[364]それからわたしはあみちゃんの足を擦り、

[365]次に背中を擦ってマッサージを終了した。

[366]それにしても……。

[367]マッサージって

[368]結構、疲れるものなのね……。

[369]【あみ】

[370]「はぁ〜、気持ちよかったぁ。

[371] 癒されました〜ぁ!」

[372]【かおり】

[373]「……それは良かった」

[374]【あみ】

[375]「かおりんさん、ありがとうございましたー!」

[376]【かおり】

[377]「どういたしまして。

[378] 気分的なものでも、気持ちが休まれば

[379] 身体も癒されていくものだし、ね」

[380]【かおり】

[381]「じゃあ、また後でね。

[382] ちゃんと安静にしててね?」

[383]【あみ】

[384]「あ、かおりんさん!」

[385]病室を出ようとしたわたしを、

[386]あみちゃんが呼び止める。

[387]あみちゃんはちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべて

[388]小さな声で言った。

[389]【あみ】

[390]「また、全身マッサージやってくださいね、

[391] お・ね・が・い」

[392]【かおり】

[393]「……あみちゃんがいい子にしてたらね」

[394]【あみ】

[395]「わーい。楽しみにしちゃおうっと!」

[396]はしゃぐあみちゃんの様子に、

[397]わたしは小さく息をついて病室を出た。

[398]カーテンで仕切られた薄暗いベッドでの出来事。

[399]わたし、もしかして、

[400]かなり大胆なことしちゃったんじゃ……。

[401]【かおり】

[402]「…………」

[403]思い出すと、

[404]ちょっと顔が熱くなってしまう。

[405]せ、清拭と同じような感じだよねっ。

[406]うんっ、

[407]身体を拭いてあげるのと同じ!

[408]わたしは熱くなった頬を冷ますように、

[409]早足で詰所に向かった。

white_robe_love_syndrome/scr00315.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)