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white_robe_love_syndrome:scr00308

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[001]【やすこ】

[002]「はーい、どうされましたー?」

[003]あれ、ナースコール、

[004]山之内さんが取ってる……。

[005]向こうの会話を聞きながら、

[006]山之内さんがわたしに目配せをした。

[007]もしかして……!

[008]【やすこ】

[009]「はーい、

[010] すぐ伺いますねー」

[011]ナースコールの受話器を置いて、

[012]山之内さんが肩をすくめた。

[013]【やすこ】

[014]「あんたの担当してるお嬢から。

[015] 点滴、終わった、って」

[016]わたしの担当患者はひとりしかいない。

[017]【かおり】

[018]「さ、堺さんのところに行ってきます」

[019]気が重いけど、

[020]これがわたしの仕事なんだから!

[021]患者さんには優しく!

[022]患者さんには分け隔てなく!

[023]【かおり】

[024]「……失礼します、

[025] 点滴、交換しますね」

[026]【さゆり】

[027]「…………」

[028]堺さんは

[029]わたしと目を合わせようともしない。

[030]うう……、

[031]この態度、へこむなぁ……。

[032]どうしよう、

[033]コミュニケーションをとりたいんだけど、

[034]堺さんのこの様子じゃ無理、かもね。

[035]手早く点滴を交換して……。

[036]……よし。

[037]【かおり】

[038]「な、何かあったら呼んでくださいね」

[039]【さゆり】

[040]「…………」

[041]!!

[042]ため息をつかれちゃった!?

[043]うう……、

[044]どうしたらいいのか、わかんないよ……。

[045]【さゆり】

[046]「……一応、教えて差し上げますけど、

[047] 個室に入る時はノックをするのが常識ですよ?

[048] ご存じなかったんですね。……最悪だわ」

[049]【かおり】

[050]「っ!!」

[051]その後、どうやって詰所に戻ったのか、

[052]よく覚えていない。

[053]【やすこ】

[054]「うっわー。

[055] 沢井、盛大に落ちてんなぁ〜」

[056]【かおり】

[057]「……ほっといてください」

[058]【やすこ】

[059]「患者さんとの相性ってあるもんなー。

[060] 担当チェンジしてもらう?」

[061]……そうしてもらえれば

[062]どれだけ気が楽か。

[063]【かおり】

[064]「でも……患者さんを区別するのは

[065] 良くないですから、

[066] わたし、もっと頑張ってみます」

[067]【やすこ】

[068]「せやねー。うちやったら、ココ辞めて、

[069] もっと働きやすい病院行くけど、

[070] あんた、新人やもんなぁ、移る先ないわなぁ」

[071]……辞めて、って……

[072]それ、大げさすぎません?

[073]【はつみ】

[074]「……また、あなたは

[075] 潜在看護師を増やすような問題発言をして……」

[076]主任さんがため息をついている。

[077]な、何か言わないと……!

[078]【かおり】

[079]「大丈夫です!

[080] わたし、辞めませんから!!」

[081]わたしの言葉に、

[082]主任さんがホッとしたような、苦笑するような

[083]微妙な表情を浮かべた。

[084]【はつみ】

[085]「そう、それは良かったわ。

[086] あなたが辞めると、

[087] 藤沢さんががっかりするでしょうから」

[088]!!

[089]そうだ、わたしにはなぎさ先輩がいる!

[090]なぎさ先輩をがっかりさせないためにも、

[091]絶対に、辞められないよね!

[092]【はつみ】

[093]「沢井さんと堺さんのことは

[094] わたしの方でも考えてみますが……、

[095] 沢井さん、堺さんの疾患の勉強はしたの?」

[096]【かおり】

[097]「再生不良性貧血、ですよね。

[098] ……ちょっと難しくて……」

[099]【はつみ】

[100]「そうね、難しい疾患よ。

[101] もし、自分がその難しい病気だと宣告されたら、と

[102] 想像しながら勉強してごらんなさい」

[103]もし、わたしが

[104]再生不良性貧血になったら……。

[105]【はつみ】

[106]「自分がその病気になることで、どうなるのか、

[107] 病気の何について知りたいと思うのか、

[108] 何に対して不安になるのかを考えて」

[109]【やすこ】

[110]「所詮は他人事やと思って勉強しても、

[111] 全然、身につかへんもんなー」

[112]そうか。

[113]自分がその病気になったら、を考えて

[114]患者さんの知りたいこと、やってほしいことを

[115]想像しながら、勉強すればいいのか。

[116]なるほど……。

[117]【かおり】

[118]「今日から、そのつもりで

[119] 勉強してみます!」

[120]ナースコール対応で

[121]別の患者さんの部屋へ行った帰りに、

[122]ふと、堺さんの部屋の前を通りがかった。

[123]難しい疾患の、

[124]気難しい患者さん……。

[125]でも、まだ二十歳の女の子、なのよね。

[126]夜勤さんへの申し送りも終わったし、

[127]もうすぐ仕事も終わりだし、

[128]ちょっと顔を出してみようかな……。

[129]……ん?

[130]ノックをしようとした

[131]わたしの手が止まる。

[132]中から話し声が聞こえる。

[133]【???】

[134]「そんなことありませんよ、

[135] ジェネレーションギャップだなんて、

[136] 主任さんも全然お若いじゃないですか」

[137]この声……、もしかして、堺さん?

[138]こんな明るい声、初めて聞いたんだけど!!

[139]【???】

[140]「ううん、いろいろ難しいのよ、それが。

[141] 三年違うと、何を考えているのか

[142] わかんなくなっちゃうの。いっそ異星人よ」

[143]しかも、堺さんと喋ってるのは……主任さん!?

[144]【さゆり】

[145]「う〜ん……。

[146] でも、そういうのって、

[147] 相性ってのもあるんじゃないんですか?」

[148]【はつみ】

[149]「考え方が違うのよね。

[150] メイクひとつとっても

[151] わたしたちの考えるメイクとは違うもの」

[152]【さゆり】

[153]「メイク……か。

[154] わたしの顔色が悪くなったら、主任さん、

[155] メイクのやり方とか教えてくださいますか?」

[156]【はつみ】

[157]「いいわよ。

[158] 診察や検査の時は落としてもらうけど、

[159] それでもいい?」

[160]【さゆり】

[161]「はいっ!

[162] 楽しみにしてます!」

[163]【かおり】

[164]「…………」

[165]そっとドアから離れる。

[166]堺さん……、

[167]主任さんには普通の女の子のように

[168]何の問題もなく、会話できるんだ……。

[169]そりゃ、主任さんはベテランだし、

[170]堺さんみたいな気難しい患者さんと

[171]コミュニケーションをとるのは

[172]そう難しくないことなのかもしれないけど……。

[173]……なんだか、主任さんとわたしのレベルの差を

[174]目の前で突きつけられたみたい……。

[175]…………。

[176]へこむなぁ。

white_robe_love_syndrome/scr00308.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)