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white_robe_love_syndrome:scr00223

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[001]おむつ事件の翌々日、

[002]お昼休みは山之内さんと一緒になった。

[003]【やすこ】

[004]「……で、

[005] レポート、どうやった?」

[006]好奇心を隠そうともせずに、

[007]山之内さんが訊いてくる。

[008]そういえば、昨日、

[009]山之内さんはお休みだったっけ。

[010]■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[011]0221で「でも、やらなきゃ」を選んだ場合のみ

[012]■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[013]【かおり】

[014]「良く書けてるって

[015] 褒めてもらいました」

[016]【やすこ】

[017]「ちゅーことは、やったんやな、あんたら」

[018]【かおり】

[019]「はい、やりました。

[020] やって良かったと思います」

[021]きっぱりと言うと

[022]山之内さんはクスッと笑った。

[023]【やすこ】

[024]「ええ顔しとるな、あんた。

[025] 看護師の顔や」

[026]主任さんとは違う、

[027]でも、ストレートな褒め言葉に、

[028]胸の中が熱くなる。

[029]【やすこ】

[030]「そんな沢井に、ちょっと質問」

[031]■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[032]0221で「黙ってれば分からない」を選んだ場合のみ

[033]■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[034]【かおり】

[035]「……バレました……」

[036]【やすこ】

[037]「はぁ!?

[038] あんたら、あれだけ忠告したったのに、

[039] やらへんかったん、アホちゃうか!?」

[040]【かおり】

[041]「うう……、

[042] 反省してます……」

[043]【やすこ】

[044]「当たり前や、海よりも深く反省せんかい!

[045] 叱る、ってことは、気力も体力も使うねんで!

[046] わかっとんのか、あんたら?」

[047]【やすこ】

[048]「自分の仕事抱えて、あんたらの後始末して、

[049] 仕事持ち帰ってまであんたらの指導した主任を、

[050] あんたら、裏切ったんかいな!」

[051]うう……っ、

[052]山之内さんの言葉が胸にグサグサ突き刺さる。

[053]【かおり】

[054]「……本当に反省してま……」

[055]【やすこ】

[056]「反省やったらサルでもできるわ、アホ!」

[057]ぴしゃっと言われた。

[058]【やすこ】

[059]「せやから、朝から主任のオーラが

[060] ジメっとしとったんか……ウザッ」

[061]【かおり】

[062]「……ううう……」

[063]【やすこ】

[064]「あんたな、大塚主任やからその程度で済んでるけど、

[065] ホンマはいじめられてもおかしくないねんで?

[066] わかっとるか?」

[067]自分が悪いことはわかってるけど、

[068]思い出せば思い出すほど

[069]もう泣きたくなってくる……。

[070]【やすこ】

[071]「……そんな顔せんの。

[072] 本気で反省しとるんやったら、気持ちを切り替えて

[073] 今以上に頑張ったらええねん」

[074]【かおり】

[075]「でも……でも、主任さん、失望したって……。

[076] 時間の無駄だって言ってました〜〜!!」

[077]【やすこ】

[078]「あー、もう、泣くな!

[079] 主任にとって、時間を無駄にしたんは事実なんやから

[080] 仕方がないやろ」

[081]【かおり】

[082]「でも〜、でもぉ〜〜!!」

[083]失望した、って言われて、

[084]すごく悲しかったし、

[085]すごく後悔した。

[086]でも、一番、心に突き刺さったのは、

[087]主任さんの傷ついた顔……。

[088]そして、

[089]わたしたちがあんな顔をさせたという事実……。

[090]【やすこ】

[091]「泣くなって!

[092] 事実いうても、昨日の時点の事実やろ?

[093] 今日からいくらでも挽回できるやん!」

[094]【かおり】

[095]「挽回……?」

[096]【やすこ】

[097]「マイナスの評価をプラスにするんは

[098] めっちゃ大変やけど、

[099] 本気でやれば、できんことやないで?」

[100]【かおり】

[101]「そうでしょうか……」

[102]【やすこ】

[103]「覚悟次第やな。

[104] 未来を切り開く苦労をする覚悟はあるか?」

[105]挑発するような山之内さんの眼差し。

[106]覚悟。

[107]未来を切り開く、

[108]そのための苦労をいとわない、覚悟。

[109]その覚悟なら……。

[110]【かおり】

[111]「あります!

[112] もう二度と、期待してくれている人を

[113] 裏切ったりしません!」

[114]山之内さんはクスッと笑って、

[115]無言で髪をわしゃわしゃと撫でてくれた。

[116]【かおり】

[117]「ひゃああん!」

[118]ちょっと乱暴だけど、

[119]不器用な優しさを感じる手つきで

[120]少し嬉しくなる。

[121]【やすこ】

[122]「そんな沢井に、ちょっと提案」

[123]【かおり】

[124]「はい?」

[125]【やすこ】

[126]「気分転換せえへん?」

[127]【かおり】

[128]「は?

[129] 意味がわからないんですけど……」

[130]山之内さんの予想外の言葉に、

[131]ついていけないわたしは

[132]首をかしげるくらいしかできなかった。

[133]【やすこ】

[134]「うん、ぶっちゃけて訊くけど、

[135] 沢井、マンガとか好きやんな?」

[136]【かおり】

[137]「そうですね、マンガを読んでると、

[138] その世界に入り込むからか、

[139] 読んでる間は、現実を忘れられますし」

[140]【やすこ】

[141]「ふ〜ん……他には?」

[142]【かおり】

[143]「あと、登場人物になりきって、

[144] その人の経験を疑似体験できるっていうか……、

[145] あ、これは読書でもそうですよね」

[146]【やすこ】

[147]「せやねー。

[148] ちなみに沢井って

[149] どんなマンガが好きなんやったっけ?」

[150]【かおり】

[151]「わたしが買うのは少女マンガですけど

[152] 妹が少年マンガが好きなので、

[153] 少女マンガも少年マンガも読みますよ」

[154]【やすこ】

[155]「ほほぅ?

[156] 少女マンガを買うってことは、

[157] 恋愛モノが好きなん?」

[158]【かおり】

[159]「恋愛モノ、っていうのかな……、

[160] 好きとか嫌いとかがメインなのじゃなくて、

[161] 主人公が頑張ることの中に恋愛がある、みたいな」

[162]【やすこ】

[163]「あ、それわかる!

[164] 『あの人、ワタシのこと好きなの? 嫌いなの?』が

[165] 延々続いてると、本人にきけや、て言いたなる!」

[166]【かおり】

[167]「そういうじれったいのを楽しむのが

[168] 少女マンガかもしれないんですけど、

[169] 動こうとしない主人公は、ちょっと……」

[170]【やすこ】

[171]「せやね、せやんね!

[172] 頑張る子を応援して、その子と

[173] 一心同体になれるんがええんやんね!」

[174]【やすこ】

[175]「うわ〜、

[176] 沢井とは美味い酒が飲めそうやわ〜」

[177]【かおり】

[178]「え、えへ……」

[179]山之内さんに全開の笑顔を向けてもらえるのが

[180]嬉しいけど、照れくさい……。

[181]【かおり】

[182]「え、えっと……。

[183] わたし、今、『OPERA』に

[184] すごくハマってるんですよね」

[185]好きなマンガのタイトルを言ったのは

[186]照れ隠しのつもりだったんだけど。

[187]【やすこ】

[188]「お!

[189] うち、昨日、最新刊、買うてきた!」

[190]【かおり】

[191]「ウソッ!?

[192] 出てるのは知ってたけど

[193] わたし、買いに行けてないのに〜〜!」

[194]そう、百合ヶ浜には

[195]マンガ本が揃ってるような本屋さんはないのよね。

[196]だから、仕事の後に神庫に行って

[197]買ってこようって思ってるんだけど、

[198]ずっとバタバタしてたのと、残業があったのとで、

[199]まだ買いに行けてなくて……。

[200]山之内さんは勝ち誇ったような顔で

[201]わたしを見た。

[202]【やすこ】

[203]「……読みに来る?」

[204]【かおり】

[205]「ほえぇ?」

[206]【やすこ】

[207]「今まで何度も借りパクされたから、

[208] 貸すのはイヤやけど、

[209] 読みに来るんやったらええよ?」

[210]【かおり】

[211]「本当ですか!?」

[212]思わず、山之内さんの手を握ってしまった。

[213]【かおり】

[214]「行きます、行きたいです!

[215] 今日ですか!? 明日ですか!?

[216] 山之内さんの都合はいつがいいですか!?」

[217]【やすこ】

[218]「今日でもええよ?

[219] その代わり、あんたが残業したら明日に延期な。

[220] 残業に付き合うほど、暇やないから」

[221]【かおり】

[222]「ざ、残業は……しないように頑張ります!!」

[223]うん、頑張れば大丈夫!

[224]わたし、頑張れるよ、

[225]だって究極の癒し漫画の『OPERA』、

[226]早く読みたいんだもん!

[227]しかも、この最新刊の十二巻が最終巻なのよね!

[228]んもう、本気で

[229]十二巻が気になって気になって……!!

[230]【はつみ】

[231]「頑張るのはいいけれど、

[232] そろそろ出てきてくれないかしら?」

[233]詰所で仕事をしていた主任さんが

[234]渋い顔で休憩室を覗いている。

[235]【かおり】

[236]「あ、はい!

[237] 今、行きます!!」

[238]……山之内さんの部屋が、

[239]いつか寮のロビーで出会った

[240]あのジャージ姿の人の部屋だと思い出して

[241]実はちょっと冷や汗ものなんだけど……。

[242]でも、『OPERA』……最終巻!!

[243]ああ、やっぱ読みたい!!

[244]あの頃は山之内さんと全然面識なかったし、

[245]今ならきっと、山之内さんのジャージ姿見ても

[246]ドン引きせずにいられるよね、きっと!

[247]山之内さんの部屋って、ここだよね。

[248]407って言ってたもんね!

[249]うう、ドキドキする……。

[250]『OPERA』最終巻のために

[251]頭と身体をいつもの何倍も使って仕事をして、

[252]何とか十分の残業で済ませることができたの。

[253]なぎさ先輩を置いて帰るのは気が引けたけど、

[254]「夜勤さんの邪魔だから帰れ」って

[255]主任さんに言われちゃ、残っていられないもんね。

[256]先に帰った山之内さんの部屋の前に立って、

[257]深呼吸三回。

[258]【かおり】

[259]「よしっ!」

[260]【やすこ】

[261]「いーらっしゃいまっせ〜ぇ」

[262]【かおり】

[263]「!!」

[264]や、やっぱりジャージだ……。

[265]病棟の山之内さんは

[266]キレイで気さくで仕事もできる美人ナースさんなのに、

[267]私服の山之内さんは

[268]どこからどう見ても、超がつくほどのオタ……ク……。

[269]【やすこ】

[270]「ホレホレ、早よ入らんかいな〜!

[271] この姿は他の連中には秘密やねんから、一応」

[272]……秘密なんだ……。

[273]うん、そりゃそうだよね、

[274]ちょっとギャップありすぎだもんね。

[275]この人の部屋に足を踏み入れるのは

[276]ちょっと勇気がいるけど……

[277]でも、『OPERA』のためだもん!

[278]【かおり】

[279]「お邪魔しまーす……」

[280]【かおり】

[281]「わぁ……」

[282]【やすこ】

[283]「好きなとこに座ってな〜」

[284]意外にも、と言うと失礼だけど、

[285]山之内さんの部屋は整然と片付いていた。

[286]テーブルの上に、

[287]わたしが読みたくて仕方がなかった

[288]『OPERA』の最終巻と……。

[289]【かおり】

[290]「あれ、これは……」

[291]ノートの倍くらいの大きさの紙に、

[292]鉛筆描きの、マンガ……?

[293]【やすこ】

[294]「見ぃ〜たぁ〜なぁ〜?」

[295]【かおり】

[296]「ひぃいっ!?」

[297]背後から覗き込まれて、

[298]思わず固まった。

[299]【かおり】

[300]「え、えと、あの、その、わ、わたしっ」

[301]【やすこ】

[302]「落ち着け、沢井。

[303] ほれ、深呼吸。

[304] すー、はー……」

[305]【かおり】

[306]「すー、はー……」

[307]山之内さんの深呼吸に合わせて、

[308]わたしも深呼吸してみる。

[309]うん……、

[310]ちょっと落ち着いたかな。

[311]これって、いつものおまじない効果?

[312]なーんてね。

[313]改めて、手元の紙の束を見た。

[314]【かおり】

[315]「えっと……これって、

[316] マンガの原稿……ですか……?」

[317]【やすこ】

[318]「それ以外に何に見えるねん」

[319]山之内さんがニヤッと笑う。

[320]……白衣姿の山之内さんならともかく、

[321]その姿でニヤッと笑われると……。

[322]と、とても怖いです……。

[323]【やすこ】

[324]「で、だ。

[325] うちの秘密も見たことやし、

[326] 手先の器用な沢井を見込んで頼みがある」

[327]た、頼み!?

[328]山之内さんが!?

[329]わたしに!?

[330]【かおり】

[331]「はい!

[332] わたしにできることなら!!」

[333]にやりと山之内さんが笑った。ような気がした。

[334]【やすこ】

[335]「……時々でええから、

[336] マンガの原稿の手伝いをしてくれへん?」

[337]【かおり】

[338]「え……」

[339]マンガの原稿……?

[340]わたしみたいな素人が

[341]手伝えるようなものなのかな?

[342]でも、山之内さんは

[343]わたしの手が器用だって褒めてくれて、

[344]それを見込んでくれたんだよね。

[345]せっかく褒めてもらったんだから、

[346]協力くらいはしたい……かな。

[347]けれど……。

[348]【やすこ】

[349]「どや?」

[350]……この、山之内さん、だよ?

[351]だって、ジャージだよ?

[352]学校指定のジャージかどうかわかんないけど、

[353]たぶん、学校ジャージ、だよ?

[354]怪しさ爆発だよね。

[355]手伝うって言ったら最後、

[356]仕事終わってから

[357]ずっと一緒にいなきゃなんだよ?

[358]そもそも、マンガのお手伝いなんて

[359]わたしにできるのかな?

[360]もしかしたら、マンガのお手伝いの最中に

[361]仕事についても、お話を聞けるかもしれないけど……。

[362]主任さんにも認められている山之内さんの直接指導は、

[363]とっても魅力的だけど……、

[364]プライベートで看護の仕事の話はしないとか

[365]言われちゃいそうだし……。

[366]【かおり】

[367]「えっと……」

[368]手伝う

[369]手伝わない

[370]【かおり】

[371]「……そのお手伝い、って

[372] わたしにできそうなこと、ですか?」

[373]【やすこ】

[374]「できひんことは、元から頼まん。

[375] 沢井やったらできる、て思たから

[376] 声をかけたんやで?」

[377]わたしならできる……?

[378]あれ……?

[379]じわじわと湧き上がるこの気持ちは……嬉しさ?

[380]【かおり】

[381]「あ、あの、最初は何も知らなくて

[382] 迷惑をかけてしまうかもしれませんが、

[383] いろいろ教えてください!」

[384]【やすこ】

[385]「おう、任せとけ!」

[386]山之内さんは、握った拳で胸を叩いて

[387]またニヤッと笑った。

[388]……うう、その笑い方が怖いよぅ……。

[389]【かおり】

[390]「せっかく誘ってもらったんですけど、

[391] わたしには無理そう、というか、

[392] 仕事の後は自由になりたいって言うか……」

[393]【やすこ】

[394]「うちの誘いを断る、ってか?」

[395]ひえええええ!!

[396]【かおり】

[397]「ここここ断るっていうか、

[398] わ、わたしには荷が重いっていうか……っ!」

[399]慌てて言うと、

[400]山之内さんはニヤッと笑って

[401]わたしの頭を小突いた。

[402]【やすこ】

[403]「冗談や、アホ」

[404]…………。

[405]ホッとした……。

[406]けど、正直、

[407]外見が怪しすぎて怖すぎなんです……山之内さん。

[408]【やすこ】

[409]「ま、それはともかく、

[410] うちはココで原稿しとるから、

[411] あんたは『OPERA』読んでてええで」

[412]【かおり】

[413]「あ、はい……」

[414]夢の『OPERA』最終巻を受け取り、

[415]山之内さんが指定した場所に座る。

[416]……今日は手伝わなくてもいいのかな?

[417]何だか、本当にマンガだけ読みに来たみたいで

[418]ちょっと申し訳ないな……。

[419]【やすこ】

[420]「ホンマは何か手伝ってもらお思ててんけど、

[421] やってもらうこと、まだ何もあらへんわ」

[422]【やすこ】

[423]「ペン入れ終わってたら、

[424] ゴムかけしてもらうねんけど」

[425]山之内さん、もしかして、

[426]わたしの考えがわかったのかな?

[427]主任さんといい、山之内さんといい、

[428]人の考えを読むのが上手だよね。

[429]いつかわたしも、

[430]人の顔色読んで先回りできるようになるのかな。

[431]なれるんだったら、

[432]わたしもそうなりたいな……。

[433]は〜ぁ、読んじゃった……。

[434]主人公のベガさんのように

[435]わたしも誰かから頑張れって言われるくらい

[436]お仕事を頑張らなくちゃ!

[437]……で、

[438]山之内さんは……。

[439]【やすこ】

[440]「…………」

[441]すごい、

[442]さっきから集中して

[443]机に向かったままだなんて。

[444]【かおり】

[445]「あの〜、読めました〜……」

[446]【やすこ】

[447]「……んー……」

[448]うーん……、

[449]これって、生返事、だよね?

[450]聞いてないよね?

[451]どうやら集中してるみたいだし、

[452]変に声をかけて邪魔しちゃ悪いよね。

[453]メモだけ残して、

[454]邪魔しないように帰ろう……。

[455]【かおり】

[456]「えっと……『今日は、ありがとうございました。

[457] 邪魔をしてはいけないので、

[458] このまま帰ります』……っと」

[459]【かおり】

[460]「それから、『わたしもベガさんを見習って

[461] 仕事に前向きにぶつかっていこうと思います』。

[462] こんな感じかな」

[463]【かおり】

[464]「えと……あの、失礼しますね」

[465]【やすこ】

[466]「……おー……」

[467]やっぱり聞こえてないみたい。

[468]帰ろう。

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