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white_robe_love_syndrome:scr00219

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[001]点滴回りも終わったし、

[002]バイタルチェックも終わったし。

[003]何となく今日は病棟が落ち着いてる感じ。

[004]たまにはこういう

[005]のんびりした雰囲気もいいなぁ。

[006]なぎさ先輩がお休みだから、

[007]今日は一人で何とか頑張らなくちゃいけないんだけど、

[008]この調子なら無事に一日頑張れそう、かな。

[009]【???】

[010]「うわーーーん!

[011] 看護婦さぁーん!」

[012]突然の大声。

[013]子ども部屋の方からだったよね!?

[014]振り返った途端、

[015]306号室から飛び出してきた子が

[016]わたしに飛びついてきた。

[017]【かおり】

[018]「こ、こはくちゃん!?」

[019]【こはく】

[020]「看護婦のおねーちゃん、大変なのっ!」

[021]【かおり】

[022]「ど、どうしたの?」

[023]【こはく】

[024]「来てっ!

[025] 早く、早く来てっ!」

[026]【かおり】

[027]「ちょ、ちょっと……!」

[028]こはくちゃんに引っ張られるようにしながら

[029]入った306号室には……!

[030]【かおり】

[031]「あ……っ!」

[032]目の前のベッドには、

[033]泡を吹いて身体を震わせている女の子がいる。

[034]【こはく】

[035]「どうしよう、桔梗ちゃん、どうしちゃったの!?

[036] 看護婦のお姉ちゃん、

[037] 桔梗ちゃん、大丈夫なの?」

[038]この子、桔梗ちゃん、だっけ……?

[039]頭の中で、

[040]少しだけ見た桔梗ちゃんのカルテのページをめくる。

[041]この子の病名って、何だっけ?

[042]【かおり】

[043]「ど、どうしよう……」

[044]どうしたら、いいの!?

[045]今、詰所にはたぶん誰もいない。

[046]主任さんは休日外来に対応中、

[047]山之内さんは緊急で出た検査オーダーのために

[048]検査室にいる。

[049]口角から泡を吹き出しながら

[050]白目を剥いて

[051]ガクガクと身体を震わせている桔梗ちゃん。

[052]こ、こんな、こんなのって……。

[053]ど、どうしよう?

[054]どうすればいいの!?

[055]心臓を冷たい手に鷲掴みにされたみたい。

[056]背筋を冷たい汗が流れる。

[057]桔梗ちゃん……このまま、どうなっちゃうの!?

[058]このまま、ガクガクが止まらなければ、

[059]血を吐いて、死ん――。

[060]【かおり】

[061]「……っ!!」

[062]ガタガタと足が震える。

[063]その場にヘナヘナとへたり込んでしまった。

[064]どうしよう!

[065]どうしたらいいのっ?!

[066]怖い。

[067]泣きたいくらい怖い。

[068]何かしなきゃって思うのに、

[069]身体がまったく動いてくれない。

[070]これは、痙攣……だよね。

[071]えと、この子の熱型表、書いた……よね。

[072]よく熱を出す子で、

[073]37度オーバーして氷枕を作ったこともある……。

[074]熱で痙攣っていうと……熱性痙攣?

[075]頭の中を、色々な単語や

[076]断片的な記憶が、ぐるぐる回る。

[077]でも、朝のバイタルで熱発報告あったかな?

[078]今朝は特に何も報告がなかった気がする。

[079]急に熱が上がった?

[080]……だとしたら、何故?

[081]【こはく】

[082]「看護婦のお姉ちゃん、

[083] 桔梗ちゃんを助けてあげてっ」

[084]わたしの腕を掴んだまま

[085]怯えた目で見上げてくるこはくちゃん。

[086]……そう、

[087]ここは、わたしが何とかしなきゃいけない……。

[088]ドクターに連絡?

[089]でもそのためには

[090]一旦、ここから離れなきゃいけないよね。

[091]この状態の子を放置して、

[092]ベッドサイドから離れてもいいの?

[093]離れていた間に何かあったらどうするの?

[094]【あみ】

[095]「どうしたのっ!?」

[096]あみちゃんが病室に駆け込んできた。

[097]【あみ】

[098]「かおりんさん!?

[099] 桔梗ちゃん、どうしたの?」

[100]【かおり】

[101]「そ、それが……」

[102]【あみ】

[103]「あ、もしかして発作ですか!?」

[104]え?

[105]【かおり】

[106]「あみちゃん、この状態を知ってるの?」

[107]【あみ】

[108]「たまにあるみたいですよ。

[109] わたし、以前、見たことあります!」

[110]【かおり】

[111]「ホント!?」

[112]【あみ】

[113]「はい。

[114] わたし、処置も覚えてます」

[115]あみちゃんは入院も長いし、

[116]この病室では一番の年長者。

[117]わたしよりもこういうことには

[118]詳しいのかもしれない……。

[119]あみちゃんの言う通りにした方がいいかな。

[120]でも、あみちゃんは素人だし、

[121]わたしが自分で何とかする方がいいかな。

[122]どうしよう……?

[123]あみちゃんの言う通りにする

[124]自分で何とかする

[125]【かおり】

[126]「あみちゃん、どうしたらいいか教えて。

[127] わたし、やってみるよ!」

[128]【あみ】

[129]「えっとね、発作が起きた時は

[130] ナースさんが横に向かせてました」

[131]そっか!

[132]まずは気道確保!

[133]看護学校でも習った!

[134]慌てて桔梗ちゃんの身体を支えながら

[135]側臥位を取らせる。

[136]他の子たちはベッドの上で、

[137]心配そうにこちらを見ている。

[138]【かおり】

[139]「次は!?」

[140]【あみ】

[141]「口の中に何かを入れてました!」

[142]口の中に……?

[143]ああ、舌をかまないようにする器具……

[144]名前はたしか、バイドブロック、ね!

[145]でも、器具もないし、

[146]舌を噛みそうになるほど、痙攣は酷くないし……。

[147]【かおり】

[148]「他には何かあるかな?」

[149]【あみ】

[150]「あとは、ナースコールして応援呼んで、

[151] その間に落ちたりしないように身体を支えて、

[152] 顔色を見て……とか……?」

[153]うん、たしかに痙攣って

[154]身体をしっかり押さえておかないと

[155]ベッドから落っこちちゃいそうだもんね。

[156]【あみ】

[157]「いつもなら、これでしばらくすると元に戻るから、

[158] 戻ったら血圧はかったり、先生の診察受けたり……。

[159] そんな感じ……かな」

[160]【かおり】

[161]「そっか!

[162] 本当に助かったよ、ありがとう!

[163] あみちゃんは落ち着いてて、すごいね」

[164]わたしの言葉に

[165]あみちゃんは少し照れたように微笑んだ。

[166]【あみ】

[167]「慣れてるだけですよ。

[168] ホントは、こんなこと慣れない方がいいんだって

[169] わかってるんですけど」

[170]【かおり】

[171]「そうかもね」

[172]みるみる内に、

[173]桔梗ちゃんの痙攣は治まって、

[174]呼吸も落ち着いてきた。

[175]わたしはホッとため息をつく。

[176]よかった……、

[177]あみちゃんがいてくれて。

[178]それに、このまま桔梗ちゃんの痙攣が治まらなかったら、

[179]どうしようかと思った……。

[180]【かおり】

[181]「わたし、他の人に知らせてくるね。

[182] もしまた桔梗ちゃんに何かあったら

[183] ナースコールしてくれる?」

[184]【あみ】

[185]「はい」

[186]桔梗ちゃんが落ち着いた様子を見て、

[187]わたしは一旦、306号室を出て詰所に戻った。

[188]やっぱり看護師として、

[189]患者さんには頼れないよ……。

[190]【かおり】

[191]「…………」

[192]どうしよう……、

[193]わたし、どうしたらいい?

[194]わたしは両手を胸に当て、大きく息を吸って吐く。

[195]何度かそれをゆっくりと繰り返した。

[196]すうっと気持ちが落ち着いてくる。

[197]よし、大丈夫。

[198]【かおり】

[199]「あみちゃん、

[200] 桔梗ちゃんが痙攣を起こしてる理由、

[201] 何か知らない?」

[202]【あみ】

[203]「たしか……てんかん発作だって

[204] ナースさんたちが言ってたような……」

[205]……小児てんかん……。

[206]学校で習ったよね。

[207]どういう症状なのか。

[208]どういう対処をすればいいのか。

[209]さぁ落ち着いて。

[210]まずやるべきことは?

[211]【かおり】

[212]「まずは気道確保」

[213]わたしは桔梗ちゃんの身体をそっと支え、

[214]側臥位を取らせた。

[215]口内に溜まった泡を吐き出させ、

[216]口角の泡もティッシュで拭う。

[217]転落防止のためにベッドの柵も

[218]きちんと上げておかなきゃ。

[219]ベッドの上で不安そうにこちらを見ている子どもたちに、

[220]なんとか笑みを作ってみせた。

[221]【かおり】

[222]「桔梗ちゃんは、大丈夫よ。

[223] でもみんながザワザワしてると、

[224] 安心して休めないから少しだけ静かに、ね?」

[225]子どもたちは口をキュッと結んで、

[226]コクリと頷いてくれた。

[227]てんかんの発作はそう長くないはずだけれど、

[228]万が一のことも考えて時間もちゃんと計って。

[229]腕時計を見る。

[230]部屋に入ってから大体五分くらい経過したかな。

[231]三十分以上続く場合は危険だけれど……。

[232]ふと見ると、桔梗ちゃんの痙攣は

[233]ほとんど落ち着いてきていた。

[234]【あみ】

[235]「かおりんさん、すごい……」

[236]あみちゃんが呆然としたようにつぶやく。

[237]【あみ】

[238]「かっこいい!!」

[239]【かおり】

[240]「まぁね。

[241] これでも一応、看護師だからね」

[242]冗談ぽく言いながら、

[243]わたしはこっそりと息を吐く。

[244]本当に、何とかなって良かった……。

[245]ゆっくりと

[246]桔梗ちゃんが目を開けた。

[247]【かおり】

[248]「あ、桔梗ちゃん、気がついた?」

[249]わたしの呼びかけに、

[250]寝起きのような顔で桔梗ちゃんが頷いた。

[251]【かおり】

[252]「じゃあ、物品取ってくるから、

[253] あみちゃん、何かあったら

[254] すぐコールしてくれるかな?」

[255]【あみ】

[256]「はい、任せてください!」

[257]【かおり】

[258]「というわけで、306号室の桔梗ちゃんが

[259] てんかん発作を起こし、約五分で収まりました。

[260] その後、バイタル等は正常に戻っています」

[261]【はつみ】

[262]「そう、大変だったのね、

[263] 沢井さん、お疲れ様」

[264]緊張しながら主任さんへの報告を終えた。

[265]ホッと一息。

[266]山之内さんがポンポンと軽く肩を叩いてくれた。

[267]【やすこ】

[268]「よしよし、新人にしちゃ上出来やで?

[269] よくパニックも起こさず冷静に対処して……

[270] 成長したんやね、沢井……ホロリ」

[271]【かおり】

[272]「いや〜、実はかなりドキドキものでした」

[273]【やすこ】

[274]「いやいや、上出来上出来!

[275] 普通は痙攣発作見た時点で

[276] テンパってオロオロしてまうモンで」

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[278]直前の選択肢で「あみに任せる」を選んだ場合のみ

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[280]【かおり】

[281]「本当のこと言っちゃうと、

[282] あみちゃんが指示してくれたんです。

[283] あみちゃんの指示がなかったら……うう」

[284]【やすこ】

[285]「ああ、あみちゃんなぁ……。

[286] あの子は下手な新人より詳しいしなぁ……」

[287]【はつみ】

[288]「……今の話、本当かしら?」

[289]ひぇっ!

[290]今の、主任さんに聞かれちゃった!?

[291]【はつみ】

[292]「患者さんに助けてもらうなんて、

[293] 看護師としての自覚と責任が

[294] 足りていないとしか思えないわね」

[295]【かおり】

[296]「す、すみません……」

[297]【はつみ】

[298]「何事もなかったからよかったものの。

[299] 何かあった場合、どうするの?

[300] 患者さんに責任転嫁するわけにはいかないのよ?」

[301]【かおり】

[302]「はい……」

[303]【はつみ】

[304]「医療従事者としての責任を持って

[305] もっとしっかり勉強しなさい」

[306]【かおり】

[307]「はい……」

[308]主任さんは厳しい顔でそう言った後、

[309]早足で詰所を出て行ってしまった。

[310]山之内さんが黙ったまま、

[311]ポンと肩を叩いてくれる。

[312]うう、気を遣われてるなぁ、わたし。

[313]わたし、まだまだダメナースなんだなぁ。

[314]もっと頑張らなきゃ、だよね。

[315]よし!

[316]まずは患者さんのことをしっかり知っておこう!

[317]できることから少しずつ。

[318]落ち込みそうになる心を何とか奮い立てて、

[319]わたしは桔梗ちゃんのカルテを開いた。

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[321]直前の選択肢で「自分で何とかする」を選んだ場合のみ

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[323]【かおり】

[324]「が、頑張ってみました……」

[325]……うん、本当は

[326]わたしもいっぱいいっぱいだったの。

[327]おまじないがなかったら、

[328]きっと泣いちゃってたかもしれない。

[329]でも、そんなこと言ったところで、

[330]誰も信じてくれないもんね。

[331]【はつみ】

[332]「そう、いいわね。

[333] この調子で、これからも頑張ってください」

[334]ニコッと笑った主任さんが

[335]詰所から出て行った。

[336]えへ……褒められちゃった……?

[337]じわじわ湧き上がってくる喜びを胸に、

[338]わたしは意気揚々と

[339]桔梗ちゃんのカルテを開いた。

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