User Tools

Site Tools


white_robe_love_syndrome:scr00208

Full text: 217 lines Place translations on the >s

[001]【かおり】

[002]「はーい!」

[003]【???】

[004]「あたしー」

[005]あ、この声は……!!

[006]【かおり】

[007]「なぎさ先輩、いらっしゃい」

[008]【なぎさ】

[009]「お邪魔しまーす」

[010]【かおり】

[011]「どうぞ、狭いトコですが

[012] どうぞどうぞー」

[013]【なぎさ】

[014]「狭いとこって、あたしの部屋と同じでしょー」

[015]【かおり】

[016]「あ、そうですね」

[017]なぎさ先輩が来てくれたっていうだけで

[018]何だか楽しくなってきちゃうから不思議。

[019]ちょっと浮かれすぎかもって思わなくもないけど。

[020]でも、憧れの看護師になって、

[021]その勤務先でなぎさ先輩に再会できるなんて

[022]すごい偶然なんだもん、

[023]嬉しくなっちゃうのは仕方ないよね。

[024]【なぎさ】

[025]「んもう、ホントに沢井は天然よね〜。

[026] 高校の時からあんまり成長してないんじゃない?」

[027]【かおり】

[028]「わっ、ひど〜い!

[029] わたしだってちょっとは成長してますー!」

[030]【なぎさ】

[031]「へーぇ?

[032] 具体的には、どこが?」

[033]なぎさ先輩がニヤニヤしてる。

[034]【かおり】

[035]「んもうっ!

[036] そんなひどいこと言うなぎさ先輩には

[037] コレあげません!」

[038]わたしはキンキンに冷やしたビールの缶を見せた。

[039]【なぎさ】

[040]「あっ、ごめん!

[041] ウソだよ、ウソウソ!

[042] 冗談だからそれちょーだい!」

[043]【かおり】

[044]「もうっ、なぎさ先輩ってば調子いいんだから……」

[045]【なぎさ】

[046]「あはっ、沢井ってば優しい〜!

[047] そういうところがだぁい好きっ!」

[048]【かおり】

[049]「そんな言葉には騙されませーん」

[050]【なぎさ】

[051]「やだ、沢井ったら、ひどいわっ。

[052] あたしの純真な恋心を踏みにじるつもりねっ!」

[053]【かおり】

[054]「コイゴコロ〜?

[055] なぎさ先輩のはビールにつられた下心でしょ!」

[056]【なぎさ】

[057]「ちぇ、バレたか。

[058] さ、乾杯しよ乾杯!」

[059]【なぎさ】

[060]「んじゃ、今日もお疲れ様でした〜!

[061] かんぱーい!」

[062]【かおり】

[063]「かんぱーい!」

[064]ビールをぐいっと一気に煽る。

[065]なぎさ先輩もゴクゴクのどを鳴らして飲んでる。

[066]【なぎさ】

[067]「プハーッ!

[068] 仕事の後の一杯は染みるね〜!

[069] まさにこの一杯のために働いてるーって感じ」

[070]それにしても、すっごく幸せそうな顔しちゃって。

[071]【かおり】

[072]「なぎさ先輩って

[073] 時々すごくおじさんくさ……」

[074]【なぎさ】

[075]「んー?

[076] うら若き乙女をつかまえて、今、

[077] おじさんくさいとか言わなかった〜?」

[078]【かおり】

[079]「いえ、別に!」

[080]【なぎさ】

[081]「ふぅ〜ん。

[082] なら、いいんだけどね。

[083] ところで沢井はなんでここに来たの?」

[084]突然ふられて、

[085]わたしはきょとんとなぎさ先輩を見た。

[086]【かおり】

[087]「……それって、看護師になった理由ですか?」

[088]【なぎさ】

[089]「ううん、そうじゃなくて。

[090] 内科に来た理由」

[091]【かおり】

[092]「えぇっと、それは、特には……。

[093] 配属先が内科だった、それだけです」

[094]【なぎさ】

[095]「そっかぁ。

[096] じゃ、配属先の希望とか出してなかったんだ」

[097]【かおり】

[098]「はい。

[099] 百合ヶ浜総合病院であれば、

[100] 配属がどこでも良かったんで……」

[101]【なぎさ】

[102]「そっかぁ〜……」

[103]ビールを片手に

[104]なぎさ先輩はなんだか物憂げな表情をしてる。

[105]どうかしたのかな?

[106]【かおり】

[107]「そういう、なぎさ先輩はどうだったんですか?」

[108]わたしの言葉に、なぎさ先輩は少しだけ笑った。

[109]【なぎさ】

[110]「ふふっ。

[111] ……あたし、実は外科志望だったんだよね」

[112]【かおり】

[113]「え、そうなんですか?」

[114]なぎさ先輩はビールの缶を傾けて、

[115]少しだけ遠い目をしていた。

[116]【なぎさ】

[117]「配属先が内科だって聞いた時は、

[118] やっぱりショックだったな。

[119] 看護学校の頃からずっと外科に憧れてたから」

[120]【かおり】

[121]「外科ってものすごく大変な感じですよね。

[122] そこを卒後すぐに志望するなんて、

[123] やっぱりなぎさ先輩ってすごいです!」

[124]【なぎさ】

[125]「そうは言っても、

[126] 実際に配属されたのは内科なんだけどさ」

[127]【かおり】

[128]「でも、なぎさ先輩が内科に配属されたから

[129] こうやって一緒に働けるんじゃないですか」

[130]【かおり】

[131]「それに、なぎさ先輩ならいつか外科に行けますよ。

[132] たぶん外科からスカウトが来ると思います」

[133]わたしの言葉に、なぎさ先輩はクスクス笑った。

[134]【なぎさ】

[135]「スカウトって、芸能界じゃないんだから〜」

[136]【なぎさ】

[137]「でも、

[138] ……ホントいつか外科に行けたらいいなぁ」

[139]【かおり】

[140]「なぎさ先輩……」

[141]心配そうなわたしの表情に気づいたのか、

[142]なぎさ先輩はすぐに笑顔になった。

[143]【なぎさ】

[144]「なーんてね!

[145] 面倒見なきゃいけない後輩もいるし

[146] しばらくは無理だろうけど」

[147]【かおり】

[148]「はうっ!?

[149] それってわたしのことですか?!」

[150]【なぎさ】

[151]「他に誰がいるの?

[152] あたしが居なきゃ、困んじゃないの〜?」

[153]【かおり】

[154]「そんなことないですよーだ。

[155] わたしひとりでも、大丈夫ですもん!」

[156]【なぎさ】

[157]「えー?

[158] 配属初日は泣きそうになってたじゃない」

[159]【かおり】

[160]「あ、あれは、緊張とかイロイロ……」

[161]【なぎさ】

[162]「あたしがいて、嬉しかったく・せ・に」

[163]【かおり】

[164]「そ、それは否定しませんけど」

[165]【なぎさ】

[166]「でしょー?

[167] 沢井にはあたしが必要なのよ。

[168] だから、あたしはもうしばらく内科にいなきゃね」

[169]【かおり】

[170]「むう〜っ!

[171] なぎさ先輩がいなくても大丈夫って言えるように

[172] すぐに成長してやるんだからー!」

[173]【なぎさ】

[174]「むむっ、生意気〜!

[175] 仕事をなめてると痛い目みるわよ〜?」

[176]【かおり】

[177]「なめてなんかいませんよ!

[178] すごく大変だなって、毎日痛感してるんですから。

[179] やること一杯あるし、患者さんの訴えも多いし」

[180]【なぎさ】

[181]「お、なかなか素直でよろしい」

[182]【かおり】

[183]「だから……、

[184] 本当になぎさ先輩を尊敬してるんですよ?」

[185]【なぎさ】

[186]「え?」

[187]【かおり】

[188]「なぎさ先輩が内科にいてくれて、良かった。

[189] 先輩は外科志望だったかもしれないけど、でも、

[190] 内科にいてくれて良かったって心から思います」

[191]【なぎさ】

[192]「や、やーね。

[193] 照れるじゃない!」

[194]【かおり】

[195]「ぐほっ!

[196] な、なぎさ先輩、痛いです〜!」

[197]背中がじんじんする。

[198]けれど……その痛さが、ちょっと嬉しい。

[199]【なぎさ】

[200]「こうして再会できたのも何かの縁だと思うし、

[201] 可愛い後輩のために、しばらくは内科で

[202] 一緒に頑張ってあげるわ!」

[203]なぎさ先輩の明るい笑顔、

[204]また一緒に同じ道を歩いていける。

[205]高校の時と同じように、

[206]なぎさ先輩と会って、話をして。

[207]そんな毎日が続いていく。

[208]なぎさ先輩には悪いけど、

[209]なぎさ先輩が外科に配属されてたら

[210]きっとこんな風に、部屋に寄ってもらって

[211]お酒を飲むこともなかったかもしれない。

[212]だから……。

[213]【かおり】

[214]「はいっ!

[215] よろしくお願いしますっ!」

[216]なぎさ先輩が内科にいてくれて良かったって

[217]心からそう思った。

white_robe_love_syndrome/scr00208.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)