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white_robe_love_syndrome:scr00204

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[001]お仕事も今日から二週間目に突入!

[002]わたしにできることはまだまだ少ないから、

[003]せめて他のスタッフさんが

[004]働きやすいようにしないとね!

[005]例えば、机の上が散らかってたら

[006]さりげなく片付ける、とか

[007]ナースコールは真っ先に取る、とか。

[008]【かおり】

[009]「はい、どうされました?」

[010]…………。

[011]あれ?

[012]返事がない。

[013]返事がない時は、

[014]間違えて鳴らしてしまっただけかもしれないけど、

[015]念のために確認に行かなきゃね!

[016]【かおり】

[017]「302からのコールですが、

[018] 返事がありません」

[019]【やすこ】

[020]「返事がない……

[021] RPG的には、屍のようだ、

[022] ってのが定説やね」

[023]ええええ!?

[024]【はつみ】

[025]「山之内さん、不謹慎ですよ」

[026]【やすこ】

[027]「えっへっへ、すみませんね〜」

[028]【かおり】

[029]「あの、わたし、

[030] 302に確認に行ってきます!」

[031]【やすこ】

[032]「屍でないことを祈る!」

[033]【はつみ】

[034]「山之内さんッ!」

[035]主任さんと山之内さんが何か言ってたけど、

[036]直接関係ないから、スルー、スルー……。

[037]【かおり】

[038]「失礼しまーす、

[039] どなたかコール鳴らしまし……!!」

[040]足を踏み入れて、ハッとした。

[041]太田井さんがベッドにうずくまって

[042]ひどく吐いている。

[043]【かおり】

[044]「だ 大丈夫ですか、太田井さん!!」

[045]あわてて駆け寄って、背中をさすった。

[046]こういう時は、

[047]わたしは看護師として

[048]何をしたらいいんだっけ?

[049]えっと……。

[050]嘔吐介助は二回目なのに、

[051]わたし、前回の経験を何も活かせない!

[052]どうしよう……!

[053]どうしよう、なぎさ先輩……!!

[054]【なぎさ】

[055]「失礼します、

[056] 沢井さんがここにいると……大丈夫ですか!?」

[057]入ってきたなぎさ先輩が

[058]吐いている太田井さんとわたしを見て駆け寄ってくる。

[059]【かおり】

[060]「な、なぎさ先輩、

[061] わたし、どうしたらいいんでしょうか〜」

[062]【なぎさ】

[063]「え、えっと……、

[064] バイタルはもう取った?」

[065]【かおり】

[066]「手ぶらで来ちゃいまして……」

[067]【なぎさ】

[068]「じゃあ、あたし、血圧計取ってくるから、

[069] 沢井は太田井さんをお願い!」

[070]言うなり、なぎさ先輩が出て行ってしまった。

[071]あああ、だからわたしは

[072]どうすればいいの〜!?

[073]と……取り敢えず、

[074]背中でもさすっておく……?

[075]うん……、それくらいしか、

[076]わたしにできることはなさそうだしね。

[077]太田井さんが身体を起こした。

[078]【太田井】

[079]「……もう、大丈夫……」

[080]か細い声に、青白い顔。

[081]【太田井】

[082]「看護婦さんが来てくれて良かった。

[083] 背中をさすってもらって、ホッとしたよ」

[084]ニコリと笑ってくれる。

[085]【太田井】

[086]「でも、ごめんね、

[087] ベッドを汚しちゃって……」

[088]【かおり】

[089]「き、気にしないでください!

[090] すぐシーツ交換しますね!」

[091]汚れたベッドカバーを折り曲げて

[092]太田井さんの吐瀉物(としゃぶつ)を隠す。

[093]えっと……

[094]他にわたしにできることは……。

[095]ふえーん、なぎさ先輩、

[096]早く戻ってきて……!

[097]【なぎさ】

[098]「失礼します!

[099] じゃあ、血圧はかりますね!」

[100]なぎさ先輩が

[101]太田井さんの血圧をはかる。

[102]それを横目に、わたしは

[103]シーツ交換のために、

[104]汚れた布団を持って廊下に出た。

[105]【介護士】

[106]「あら、沢井さん。

[107] どうしたんですか、お布団なんか持って」

[108]【かおり】

[109]「あ、あの

[110] 太田井さんが吐いてしまって……」

[111]【介護士】

[112]「そうなんですか。

[113] じゃあ、新しいのを持ってきます」

[114]【かおり】

[115]「え?

[116] シーツ交換は……」

[117]【介護士】

[118]「お布団の上に吐いたなら

[119] お布団に染み込んじゃってるでしょう?

[120] 沢井さんはそんなお布団、使いたいですか?」

[121]介護士さんに言われて、はっとした。

[122]そうだよね……、

[123]わたし、そういうところまで

[124]考えてなかった……。

[125]【介護士】

[126]「中のお布団はクリーニングに出しますから。

[127] あと、こういうことは介護スタッフに任せて

[128] 看護師さんは他の仕事をしてくださいね」

[129]【かおり】

[130]「あ、はい……」

[131]介護士さんが

[132]お布団を持って行ってしまった。

[133]【かおり】

[134]「他の仕事、って言ったって……」

[135]介護士さんも悪気があって

[136]ああいう風に言ったんじゃないってわかってる。

[137]むしろ、わたしに気を遣ってくれてるって

[138]わかってるんだけど……。

[139]でも、新人のわたしには

[140]他の仕事、っていうのがイマイチわからなくて……。

[141]【介護士】

[142]「あら、沢井さん。

[143] 廊下で何してるんです?」

[144]さっきの介護士さんが

[145]新しいお布団を抱えて戻ってきた。

[146]【介護士】

[147]「うふふ、もしかして

[148] お布団が来るのを待ってたんですか?

[149] じゃあ、はい、これ」

[150]お布団を渡される。

[151]【介護士】

[152]「患者さんに冷えは禁物ですものね!

[153] ちゃんとあたためるように

[154] 言ってあげてくださいね!」

[155]【かおり】

[156]「え……あ、はい。

[157] ありがとうございます……」

[158]介護士さんは

[159]わたしの返事も待たずに

[160]さっさと歩き去ってしまった。

[161]忙しそうだな……。

[162]お日様のにおいがするお布団を抱えて

[163]部屋に戻る。

[164]【なぎさ】

[165]「…………」

[166]左手の甲に

[167]ボールペンでメモ書きしているなぎさ先輩は

[168]ちょっと顔色が悪い。

[169]太田井さんにお布団をかけると、

[170]青い顔の先輩が立ち上がる。

[171]【なぎさ】

[172]「血圧も落ち着いてきま……うっ!」

[173]【かおり】

[174]「なぎさ先輩!?」

[175]わたしを押しのけるように

[176]なぎさ先輩は部屋の外へと駆け出してしまった。

[177]【かおり】

[178]「な、なぎさ先輩〜??」

[179]新しい布団をかぶった太田井さんが

[180]目を丸くしている。

[181]【かおり】

[182]「ど、どうしたんでしょうかねぇ?

[183] 太田井さん、何かあれば

[184] またナースコールしてくださいね」

[185]太田井さんは弱々しく微笑むと

[186]ぺこりと頭を下げてくれた。

[187]あれ?

[188]さっき慌てて出て行ったなぎさ先輩がいない……?

[189]てっきり記録か何かで

[190]慌てて走ってったと思ったんだけどな。

[191]【やすこ】

[192]「お、沢井は無事か?」

[193]【かおり】

[194]「はい?」

[195]無事、って……何が?

[196]【やすこ】

[197]「さっき、藤沢がトイレで

[198] オエオエ言うてたで?」

[199]【かおり】

[200]「!!」

[201]そ、そういえば、なぎさ先輩、

[202]『もらっちゃう』って言ってたっけ!

[203]何を『もらっちゃう』のかよくわからなかったけど、

[204]ああ……そういうこと……。

[205]【なぎさ】

[206]「も、戻りました〜」

[207]【やすこ】

[208]「戻りました、っちゅーよりは、

[209] 戻しました、って感じやねぇ」

[210]【なぎさ】

[211]「すみません……」

[212]【やすこ】

[213]「去年の誰かさんは

[214] 患者さんの目の前で盛大に『もろた』から、

[215] それに比べたらマシなんちゃう?」

[216]【なぎさ】

[217]「……言わないでください……」

[218]な、なぎさ先輩、

[219]去年、そんなことが……。

[220]【やすこ】

[221]「あんたも、もらいゲロ

[222] せんくなれればええんやけどねぇ」

[223]【なぎさ】

[224]「特効薬とかコツとかあったら

[225] あたしが知りたいですよ、本気で」

[226]【はつみ】

[227]「無駄口たたいていないで、

[228] 仕事をしなさい、あなたたち!」

[229]【やすこ】

[230]「はーい、

[231] 部屋回り行ってきまーす!」

[232]足取り軽く

[233]山之内さんが出て行く。

[234]わたしが次にするべきことは……。

[235]【かおり】

[236]「あ、記録書かなきゃ……」

[237]【なぎさ】

[238]「ごめん、沢井。

[239] コレ……書いておいて」

[240]なぎさ先輩は

[241]左手の甲に書いた数字を

[242]メモに転記して渡してくれた。

[243]それから、青い顔で

[244]またフラフラと詰所を出て行った。

[245]なぎさ先輩……大丈夫かなぁ……。

[246]【はつみ】

[247]「あなたも!

[248] 余所見していないで記録を書いてしまいなさい。

[249] 時間は限られているのよ」

[250]主任さんに叱られて、

[251]慌てて太田井さんの記録を手にする。

[252]【かおり】

[253]「はい、すみません!」

[254]【はつみ】

[255]「藤沢さんのあの心の弱さは致命的なのよね……」

[256]記録を書いていると聞こえてきた

[257]主任さんのつぶやき。

[258]致命的、って……?

[259]わたしが使えなくて

[260]なぎさ先輩に負担をかけてしまってるから?

[261]わたし……どうしてこんなに

[262]使えないんだろう……。

[263]まだまだ努力が足りないのかな。

[264]今でも十分頑張ってるつもりなのに、

[265]もっと頑張らなくちゃいけないのかな……。

white_robe_love_syndrome/scr00204.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)