User Tools

Site Tools


white_robe_love_syndrome:scr00203

Full text: 247 lines Place translations on the >s

[001]【やすこ】

[002]「わが内科病棟にも

[003] 新人が入ってきたことを祝して、

[004] カンパーイ!!」

[005]【なぎさ】

[006]「かんぱーい!」

[007]【かおり】

[008]「か、かんぱい……」

[009]昨日、惰眠をむさぼった後、

[010]すっきり気分で目覚めた夕方に

[011]先輩からメールが入ったの。

[012]『明日、沢井の歓迎会をやるからね』って。

[013]場所は病院に近い居酒屋。

[014]参加費は無料。

[015]なぎさ先輩の説明によると、

[016]こういう時のために

[017]詰所費というものがあるんだって。

[018]もし金額が足りなければ、

[019]師長さんとかドクターとかが出してくれるらしい。

[020]【やすこ】

[021]「本日はお疲れのところお越しいただき

[022] 毎度ありがとうございますー、なんちて」

[023]【やすこ】

[024]「本日の飲み食いは詰所費から、

[025] 足りない分は院長の小野医師と常盤師長が

[026] 負担してくれるそうでーす、はい、拍手!」

[027]わぁ、やっぱり本当なんだー。

[028]なぎさ先輩の話を聞いた時は

[029]まさかって思ったけど、

[030]本当にドクターと師長さんが負担してくれるんだー。

[031]てか、ドクターも師長さんもお金持ち?

[032]【やすこ】

[033]「本日は夜勤さんと、小さいお子さんがいる人と

[034] デートの予定が入っている人以外は、

[035] 基本、参加してもらいました!」

[036]【やすこ】

[037]「こういう機会は、他に忘年会くらいしかないので、

[038] 積極的に参加して、タダ酒、アーンド、タダメシ

[039] かっくらうのがお得です!」

[040]参加者の間から苦笑が漏れる。

[041]山之内さん、あけすけだなぁ。

[042]良く言うと、裏表がない、んだろうけど。

[043]【やすこ】

[044]「っちゅーわけで、

[045] 誰かマイクで何か主張したいって人は

[046] いませんかー?」

[047]……シーン。

[048]ま、そうだよね、

[049]いくら十数人程度の集まりでも

[050]マイクを使ってまでしゃべりたいとは思わないよね。

[051]【やすこ】

[052]「誰もいないようなので、

[053] わが内科病棟の新人紹介に移ります〜!」

[054]【やすこ】

[055]「ちゅーわけで、期待の新人・沢井さんでーす!

[056] 不肖、山之内が、みなさんに代わって

[057] 突撃インタビューをしまーす!」

[058]えええ!?

[059]突撃インタビュー!?

[060]聞いてないよー!!

[061]【なぎさ】

[062]「ホラホラ、ボケッとしない!

[063] はい、立って!」

[064]なぎさ先輩に促されて、

[065]その場に立ち上がる。

[066]みなさんの視線がいっせいに集まって

[067]……ちょっと恥ずかしい、です……。

[068]【やすこ】

[069]「こんばんはー!

[070] それでは、新人の沢井さん、

[071] フルネームをお願いしますー!」

[072]【かおり】

[073]「えと……こ、こんばんは。

[074] 新しく内科病棟に配属されました、

[075] 沢井かおりです」

[076]【やすこ】

[077]「堅い、かたいなぁ、新人!

[078] 人見知りするタイプ?」

[079]【かおり】

[080]「人見知りっていうか……

[081] 心の準備ができてなくて、

[082] ちょっとうろたえています」

[083]【やすこ】

[084]「正直者やねー。

[085] じゃ、ここから質問コーナーでーす。

[086] 看護師になった理由を聞かせてください」

[087]出た!

[088]新人の誰もが遭遇する質問!

[089]思えば看護学生時代にも

[090]何度、この質問をされたことか……。

[091]【かおり】

[092]「えっと……昔、大怪我をしたことがあって

[093] せっかく助かった生命だから

[094] 誰かの役に立てたら、と……思って……」

[095]【はつみ】

[096]「…………」

[097]あれ?

[098]主任さんが何か言いたそうな顔で

[099]わたしをじっと見てる……。

[100]何だろう?

[101]【やすこ】

[102]「殊勝な心がけです!

[103] 金のために看護師やってるわたしに

[104] 爪の垢を恵んでやってください」

[105]どっと、みんなが笑う。

[106]【なぎさ】

[107]「やだー、

[108] 沢井が山之内さんの毒牙にかかっちゃう!

[109] 逃げて、早く逃げてー!」

[110]【やすこ】

[111]「コラ、そこ!

[112] 人聞きの悪いこと言わない!」

[113]また笑いが沸き起こった。

[114]山之内さん、

[115]いいムードメーカーだな……。

[116]なぎさ先輩も

[117]山之内さんのボケに乗っかる形で

[118]上手く雰囲気を盛り上げてる。

[119]わたしも、頑張らなくちゃ!

[120]一日も早く、ここの人たちに

[121]スタッフの一員として認めてもらいたい!

[122]【やすこ】

[123]「ちうわけで、

[124] 覚悟を新たにする新人に

[125] 一曲、歌ってもらいましょう〜!」

[126]【かおり】

[127]「ええええ〜!?」

[128]聞いてない!

[129]そんなの聞いてないよー!!

[130]【やすこ】

[131]「まさかイヤやとは言わんやんなぁ、新人?」

[132]【かおり】

[133]「う、歌います……」

[134]うう……、わたしが歌うことで

[135]みなさんが盛り上がるなら……!

[136]【なぎさ】

[137]「じゃ、なに歌うの〜?

[138] あたし入れてあげる!」

[139]【かおり】

[140]「……じゃあ、『Little Wing』を……」

[141]【やすこ】

[142]「おおお、あの知る人ぞ知る名曲!

[143] 沢井とは美味い酒が飲めそうやね!」

[144]【かおり】

[145]「は?」

[146]知る人ぞ知る名曲? なのかな……。

[147]【かおり】

[148]「えと、そうじゃなくて、

[149] 看護学生時代に

[150] いつもこの曲を歌う友達がいて……」

[151]【なぎさ】

[152]「あるよねー。

[153] カラオケで歌を覚えることって」

[154]【やすこ】

[155]「チッ、期待させやがって」

[156]【なぎさ】

[157]「楽しかったねー、沢井!」

[158]【かおり】

[159]「はい!」

[160]飲み会が終わってすぐ、

[161]山之内さんは緊急のメールが入っていたとかで

[162]そそくさと帰ってしまった。

[163]他のスタッフは寮住まいではないので、

[164]店を出てすぐ、駅へと向かい、

[165]わたしはなぎさ先輩とふたりきりに。

[166]さっきまでワイワイやってたのに、

[167]いきなりしっとり気分。

[168]病棟スタッフで寮住まいなのは

[169]先に急いで帰ってしまった山之内さんと、

[170]わたしとなぎさ先輩、……それから、主任さん。

[171]【かおり】

[172]「あれ?

[173] そういえば、主任さんは?」

[174]【なぎさ】

[175]「たぶん、病棟じゃないかな」

[176]なぎさ先輩の言葉に

[177]わたしはギョッとした。

[178]【かおり】

[179]「え!?

[180] 主任さん、仕事だったんですか!?」

[181]わたしの言葉に

[182]なぎさ先輩はくすっと笑った。

[183]【なぎさ】

[184]「違うわよー!

[185] 今日の飲み会、夜勤さんは参加できなかったでしょ?

[186] だから、夜勤さんに差し入れを、ね」

[187]【かおり】

[188]「へぇ……」

[189]【なぎさ】

[190]「あんまり愛想の良い人じゃないけど、

[191] 主任さん、すっごく気配りの人なのよ?」

[192]【なぎさ】

[193]「沢井は緊張して気づかなかったかもしれないけど、

[194] 主任さん、飲み会の間、お皿を片付けたり、

[195] 料理を取り分けたり、色々やってたんだから!」

[196]【かおり】

[197]「そうなんですか……」

[198]わたし、全然、気づかなかった。

[199]【なぎさ】

[200]「表立って盛り上げるのは山之内さんの役目、

[201] 自分は縁の下の力持ちでいい、って

[202] 割り切ってるのかもしれないよね」

[203]【なぎさ】

[204]「誰にでもできることじゃないよ、

[205] 人に評価されないことを

[206] 嫌がらずにコツコツやるなんて」

[207]【なぎさ】

[208]「あたしも、主任さんくらい気が利く性格だったら

[209] 好きな子に振り向いてもらえるかもしれないのに」

[210]【かおり】

[211]「ほえええ!?

[212] なぎさ先輩、好きな人、いたんですかぁああ!?」

[213]【なぎさ】

[214]「あわわっ!!

[215] 今のナシだから、ね!

[216] 聞かなかったことにして!」

[217]なぎさ先輩、好きな人がいたんだ……。

[218]【かおり】

[219]「わたし、全然、気がつきませんでした」

[220]【なぎさ】

[221]「もうっ、しーっ! し〜〜っ!」

[222]【かおり】

[223]「わたしはなぎさ先輩の味方ですから!

[224] 協力するので、何でも言ってくださいね!」

[225]【なぎさ】

[226]「いや、だからね……」

[227]振り向いてもらえるかも、だなんて

[228]人知れず、そんな辛い恋をしてたなんて……。

[229]【なぎさ】

[230]「……まぁいいわ。

[231] 飲みすぎちゃった、あたしが悪い」

[232]【かおり】

[233]「なぎさ先輩?」

[234]【なぎさ】

[235]「なーんでもなーい!

[236] さ、明日も仕事だから、

[237] 今日はさっさと帰って寝るわよ〜!」

[238]【かおり】

[239]「はい!

[240] 寝坊したら、

[241] 主任さんに叱られちゃいますもんね!」

[242]今日の飲み会では

[243]主任さんと全然喋れなかったけど、

[244]きっとこれから仲良くなる機会があるよね。

[245]そのためには、

[246]仕事、ちゃんとやらなきゃ!

[247]明日からまた頑張るぞー!

white_robe_love_syndrome/scr00203.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)