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tenshitachi_no_harukoi:s020
;//S020
#savetitle 「基礎看護学概論」


;**学校教室・昼
#bg bg07a
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;♂MP07
#bgm 0 bgm07


#mes on
#system on


昨夜、皐さまはわたしが寝付いた後に帰ってきたらしい。
そして、朝、起きたら、皐さまは既に登校した後だった……。


#cg 1 tyu03s 400 0
#wipe fade


#voice YUUNO_0442
【Yuuno】(……こんな風に拒絶されるのは……苦しいですわ……)
席に座って、ぼんやりと皐さまの席を眺める。
#voice YUUNO_0443
【Yuuno】(毎朝、一緒に登校しようって言ってらしたのに……)
溜め息をつきながら、次の授業の準備をする。
基礎看護学概論。
一応予習はしてきたけれど……。


#cg 1 tyu03s 200 0
#cg 2 tna08s 600 0
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#voice NARUMI0109
【Narumi】「ねぇ、優乃、聞いてる?」
#voice YUUNO_0444
【Yuuno】「は、はい!? 何がですの?」
ああ、成美さんが呆れた顔をしている……。


#cg 2 tna01s 600 0
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#voice NARUMI0110
【Narumi】「りんごったら、今日、まだ学校に来てないんだけど、休むとか聞いた?」
慌ててりんごちゃんの席を見る。
#voice YUUNO_0445
【Yuuno】「そ、そういえば、朝から見ていませんわね……」
自己嫌悪。
親友が出席しているかどうかさえ、気づいていないだなんて。
#voice NARUMI0111
【Narumi】「こういう時、寮生だと朝の動向がわかりやすくていいんだけど、りんごは寮生じゃないからねぇ」
#voice YUUNO_0446
【Yuuno】「そうですわね、一時間目の授業にいないということは、お休みなんでしょうけれど……」
#voice YUUNO_0447
【Yuuno】「頑張りすぎてしまって、体調を崩す時があるから、心配ですわね」
#voice NARUMI0112
【Narumi】「それなのよねー、慣れない看護学校の授業と、大好きすぎる従姉との生活」
#voice NARUMI0113
【Narumi】「知恵熱出しててもおかしくない状況でしょ?」


#cg 1 tyu01s 200 0
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#voice YUUNO_0448
【Yuuno】「りんごちゃんは素直な子ですから」
#voice NARUMI0114
【Narumi】「お子様だもんねー」
#voice NARUMI0115
【Narumi】「もっと大人にならないと、同居人の高尾さんが大変よね」
#voice NARUMI0116
【Narumi】「ま、その高尾さんも、大変なのが楽しいとか言いそうな人ではあるんだけどさ」
昨日、お会いした、りんごちゃんの同居人の高尾さんを思い出して、ついクスクスと笑みが漏れる。


#cg 1 tyu02s 200 0
#wipe fade



#voice YUUNO_0449
【Yuuno】「正直なことは良いことですわ」

;//SE:チャイムの音
;♀SE019
#se 0 SE019


#cg 1 tyu01s 200 0
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#voice YUUNO_0450
【Yuuno】「さ、そろそろ席に着いておきませんと、講師の方がいらした時に慌てる羽目になりましてよ?」
#voice NARUMI0117
【Narumi】「そーねー。じゃ、また後でね」


#cg 2 clear
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自分の席へ戻ってゆく成美さんを見送って、小さく溜め息をつく。


#cg all clear
#cg 1 tyu03s 400 0
#wipe fade


#voice YUUNO_0451
【Yuuno】(いくら皐さまのことがあったからといって、りんごちゃんが登校してないことにさえ気づかないなんて……)
#voice YUUNO_0452
【Yuuno】(わたしって、なんて友達甲斐のない女なのかしら……ふぅ)

;//SE:ざわざわ
;♀SE001
#se 0 SE001


ふと、気が付くと、チャイムが鳴ってから五分は経っている。
なのに講師の方はまだ姿を見せていない。

;//SE:走ってくる足音
;//SE:ドアが開く

;♀SE034
#se 0 SE034


#cg 1 tch03s 400 0
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#voice CHIAKI0005
【Chiaki】「遅れてごめんなさいっ!!」


#cg 1 tyu04s 400 0
#wipe fade


#voice YUUNO_0453
【Yuuno】「!!」
講師としてやってきたのは――。

;//SE:ドアを開める
;♀SE035
#se 0 SE035


#cg 1 tch01s 400 0
#wipe fade


#voice CHIAKI0006
【Chiaki】「すーはー……聖ミカエル総合病院消化器内科病棟看護師、高尾千秋です」
#voice CHIAKI0007
【Chiaki】「本当はうちの病棟主任が講義をするはずだったんだけど、今日だけ、わたしが代理で担当することになりました」
#voice GAKUSE0000
【Student】「今日だけなんですかー?」
#voice CHIAKI0008
【Chiaki】「たぶん……。今、ちょっと病棟がバタバタしてるから、もしかしたら、主任の都合がつかなくて、またわたしが来るかもしません」
#voice CHIAKI0009
【Chiaki】「まだまだ若輩者ですが、一緒に学んでいきましょうね」
#voice GAKUSE0001
【Student】「はーい!」


#cg 1 tch02s 400 0
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#voice CHIAKI0010
【Chiaki】「ふふっ……わたしもこのミカ看の卒業生なので、この空気、何だか懐かしいわね……」


#cg 1 tch01s 400 0
#wipe fade


#voice CHIAKI0011
【Chiaki】「……と、懐かしがってばかりでは、後で主任に叱られてしまうので、授業に入ります」
#voice CHIAKI0012
【Chiaki】「まずは、『基礎看護学概論』という言葉から考えてみましょう」
#voice CHIAKI0013
【Chiaki】「さて、『看護』という言葉から、みなさんは何を思い浮かべますか?」
#voice CHIAKI0014
【Chiaki】「当てられたら、名前の後に、思い浮かべたことを言ってくださいね」
順番にクラスメイトが当てられていく。
それぞれの意見が全く違うのが面白い。
『人に親切にすること』という子もいれば、『効率的な治療をするための考え方』と答える子もいる。
当てられた稲取さんは、『患者さんに提供するサービス全般』と答えていた。
#voice CHIAKI0015
【Chiaki】「じゃあ、次は、そこの頬杖ついてアンニュイな表情の……あら、あなたは、りんごちゃんの……」
高尾さんと目が合った途端、りんごちゃんの友達ってバレてしまった。
昨日、ちょっと会っただけなのに、既に顔を覚えられてしまったようだ。


#cg 1 tyu01s 200 0
#cg 2 tch01s 600 0
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#voice YUUNO_0454
【Yuuno】「片倉優乃です。看護……しんどかったり、辛かったりする人の助けになる……こと……?」
#voice CHIAKI0016
【Chiaki】「片倉さんは奉仕の心が豊かなんですね」


#cg 1 clear
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からかわれたわけではないとわかっていても、そのコメントに、頬が熱くなってしまった。
赤くなっている間にも、クラスメイトのそれぞれの意見を耳にしてゆく。
#voice CHIAKI0017
【Chiaki】「次は……あら、あなたもりんごちゃんのお友達ね」


#cg 1 tna01s 200 0
#cg 2 tch01s 600 0
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#voice NARUMI0118
【Narumi】「はい、氷川成美です。看護とは、医師の片腕となって、患者さんへのケアをすることだと思います」
#voice CHIAKI0018
【Chiaki】「そう、氷川さんは治療寄りなのね。では次は……」


#cg 1 clear
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次々に、色々な意見が出てくる。
最後に当てられたのは――。


#cg 1 tsa01s 200 0
#cg 2 tch01s 600 0
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#voice SATUKI0369
【Satsuki】「石神皐です。看護とは、相手の人生の一時、その人に寄り添うための考え方だと思います」
#voice CHIAKI0019
【Chiaki】「なるほど……石神さんは勉強しているのね、さすがは主席入学者ね」
全員の発表が終わった。


#cg all clear
#cg 1 tch01s 400 0
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#voice CHIAKI0020
【Chiaki】「このクラスだけでも、みんな意見が違ったように、看護師それぞれに『看護観』というものがあります」
#voice CHIAKI0021
【Chiaki】「同じ看護師という仕事に就いていても、Aという人の看護観と、Bという人の看護観が同じとは限りません」
#voice CHIAKI0022
【Chiaki】「奉仕の精神で看護サービスを提供する人もいれば、あくまでも専門技術者としてのサービスを提供しようとする人もいます」
#voice CHIAKI0023
【Chiaki】「みんな、それぞれ重要と思うポイントが違っていることが多いのですが、それで当たり前なのです、価値観が違うのですから」
#voice CHIAKI0024
【Chiaki】「わたしたちも病棟で患者さんに看護サービスを提供する上で、その患者さんに一番良い方法は何だろうかと模索をしています」
#voice CHIAKI0025
【Chiaki】「看護はチームで行います。価値観や看護観の違う同僚と、何が患者さんにとってベストなのか、病棟メンバーで話し合うのです」
#voice CHIAKI0026
【Chiaki】「すぐに方向が決まることもありますが、恥ずかしながら、方向性が決まらないこともあります」
はい、と稲取さんが手を挙げた。


#cg 1 tak01s 200 0
#cg 2 tch01s 600 0
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#voice AKIRA_0014
【Akira】「方向性が決まらないのに、看護するんですか?」
#voice CHIAKI0027
【Chiaki】「ええ、ベストが決まらなくても、いくつかのベターは提示されていますから」


#cg 1 tak03s 200 0
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#voice AKIRA_0015
【Akira】「……妥協するんですか?」
#voice CHIAKI0028
【Chiaki】「妥協……なのかしらね。でも、暗中模索しながらでも進むうちに、ベストの道が見つかることもあります」
#voice AKIRA_0016
【Akira】「見つからないこともある、と……?」
#voice CHIAKI0029
【Chiaki】「残念ながら」
こくりと高尾さんが頷いた。


#cg all clear
#cg 1 tch01s 400 0
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#voice CHIAKI0030
【Chiaki】「わたしたちの仕事の主役は、医師でも看護師でもなく、患者さんです」
#voice CHIAKI0031
【Chiaki】「患者さんにとって、何が一番良いのかを考え、迷い、今よりも少しでも良くなってもらうのが仕事だとわたしは思っています」
#voice CHIAKI0032
【Chiaki】「もちろん、わたしたちもただの人間」
#voice CHIAKI0033
【Chiaki】「だからこそ迷うわけですし、本当はあってはいけないことですが、ミスをすることもあります」
#voice CHIAKI0034
【Chiaki】「後々、患者さんの命を縮めることになったとしても、本当に患者さんのためを思って考えた末の決断であったなら、それはミスではないのではないかと思っています」
すかさず、成美さんが手を挙げた。


#cg 1 tna08s 200 0
#cg 2 tch01s 600 0
#wipe fade



#voice NARUMI0119
【Narumi】「それって、傲慢だと思います!」
#voice CHIAKI0035
【Chiaki】「傲慢、かしら?」
#voice NARUMI0120
【Narumi】「患者さんの命の刻限を決めるのは医師であり、看護師は医師の仕事のサポートをするべきだと思います!」
シーンと教室内が静まり返っている。
#voice CHIAKI0036
【Chiaki】「……氷川さんは、医師と看護師の仕事の違いについて、どう思っていますか?」
#voice NARUMI0121
【Narumi】「医師の仕事は患者さんの病気を治すことで、看護師は医師の仕事の手助けをするものだと思います」
静かに、高尾さんが言った。


#cg 2 tch08s 600 0
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#voice CHIAKI0037
【Chiaki】「医師が患者さんの病気を治す――その考えこそ傲慢なのではないでしょうか」


#cg 1 tna03s 200 0
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#voice NARUMI0122
【Narumi】「どうしてですか?」
#voice CHIAKI0038
【Chiaki】「医師だけでなく、看護師もね。たかが人間に、人の病気は『治す』ことはできません」
#voice CHIAKI0039
【Chiaki】「わたしたち人間にできることは、『癒す』ことと、その人が持っている自己治癒能力が働きやすいように環境を整えること」
#voice CHIAKI0040
【Chiaki】「患者さんが治りたいと思わない限り、患者さんは治りません」


#cg 1 tak08s 200 0
#cg 2 tch08s 600 0
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#voice AKIRA_0017
【Akira】「治らない患者さんを治療するのは無駄ではないのですか?」
微笑みを浮かべていた高尾さんの顔が、スゥッと冷たいものになった。
#voice CHIAKI0041
【Chiaki】「では、あなたの大切な人が末期がんだと宣告されたとして、『どうせ治らないんだから、治療なんて無駄だ』と言われて放り出されたら、どんな気がしますか?」
稲取さんの顔がサーッと青くなった。


#cg 1 tak03s 200 0
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#voice AKIRA_0018
【Akira】「そ、それは……っ!」


#cg 1 tna03s 200 0
#wipe fade



#voice NARUMI0123
【Narumi】「でも、治すことが医療というものでは……!?」
成美さんの言葉に、高尾さんの頬に再び微笑みが浮かぶ。


#cg all clear
#cg 1 tch01s 400 0
#wipe fade


#voice CHIAKI0042
【Chiaki】「みなさんには誤解をしないで欲しいの」
#voice CHIAKI0043
【Chiaki】「治る・治らないを決めるのは患者さんです。もしくは、患者さんの体力」
#voice CHIAKI0044
【Chiaki】「わたしたち医療従事者に、患者さんの余命をどうこうできるほどの能力があると思うことこそ傲慢です」
#voice CHIAKI0045
【Chiaki】「……医師も看護師も、患者さんを助けたい、長生きして欲しいと思う気持ちに嘘偽りはありません」
#voice CHIAKI0046
【Chiaki】「医師には医師のやり方があって、看護師には看護師のやり方がある」
#voice CHIAKI0047
【Chiaki】「看護師の職務内に医師の補助があるので、氷川さんだけでなく、『看護師は医師のヘルプ』で、『患者さんを治すのが医師の仕事』と思う人がいても仕方がないかもしれません」
#voice CHIAKI0048
【Chiaki】「職業が違うのだから、やり方が違って当然ですし、患者さんにもそう見えることでしょうしね」
#voice CHIAKI0049a
【Chiaki】「でも、医師も看護師も、薬剤師さんや検査技師さんなどのコメディカルの人たちも、同じ医療従事者」
#voice CHIAKI0050
【Chiaki】「患者さんに少しでも良くなってもらうために、自分たちの仕事の範囲で可能な限り、できることをしようと頑張っています」
#voice CHIAKI0051
【Chiaki】「どの職業が一番偉いとかそういうのはなく、お互いがお互いの職業をリスペクトできる……そんな関係が理想だとは思いませんか?」
教室内がシーンとなっている。
#voice CHIAKI0052
【Chiaki】「みなさんには、看護師だからできること、あなただからこそできることを考え、行動し、患者さんのケアに役立てて欲しいと思います」

;//SE:チャイム
;♀SE019
#se 0 SE019


#cg 1 tna01s 200 0
#cg 2 tch01s 600 0
#wipe fade



#voice NARUMI0124
【Narumi】「……あの、最後にいいですか?」
#voice CHIAKI0053
【Chiaki】「どうぞ」
#voice NARUMI0125
【Narumi】「あの、これは意思表明みたいなものなんですけど……高尾さんに指摘されたように、わたしは看護師とは医師のヘルプをする職業だと思ってました」
#voice NARUMI0126
【Narumi】「まだ、実際、具体的にどんな仕事をするのかはわかってませんが、看護学生として、自分が最大限できることをこの学院で学んでいこうと思います」
高尾さんがフッと微笑んだ。


#cg 2 tch02s 600 0
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#voice CHIAKI0054
【Chiaki】「あなたは自分の意見を持っているし、きっと良いナースになるわ。いつか、一緒に働けたらいいわね」

;//SE:ドアの開閉
;♀SE036
#se 0 SE036


;**学校廊下・昼
#cg all clear
#bg bg09a
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教室から出た高尾さんを追いかける。


#cg 1 tyu03s 400 0
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#voice YUUNO_0455
【Yuuno】「あ、あのっ!」


#cg 1 tyu03s 200 0
#cg 2 tch01s 600 0
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#voice CHIAKI0055
【Chiaki】「あら……片倉さん。さっきの授業でわからないことでもあったの?」
#voice YUUNO_0456
【Yuuno】「い、いえ、そうじゃなくて……りんごちゃん、お休みしてどうしたのかなぁって……」
ふわりと、見ているだけで癒されるような笑顔で、高尾さんが微笑んだ。


#cg 2 tch02s 600 0
#wipe fade



#voice CHIAKI0056
【Chiaki】「ありがとう、心配してくれて」
#voice CHIAKI0057
【Chiaki】「環境が変わったせいかしらね……、りんごちゃんは熱を出してしまったの」
#voice CHIAKI0058
【Chiaki】「くすっ……保護者失格ね」
微笑みに影が差す。
一緒にやってきた成美さんが、ちょっとイタズラっぽい笑みを浮かべて、ウィンクする。


#cg 1 tna02s 200 0
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#voice NARUMI0127
【Narumi】「りんごは保護者を求めてるわけじゃないと思いますけど」
#voice CHIAKI0059
【Chiaki】「………………」
#voice NARUMI0128
【Narumi】「あ、差し出口を挟んですみません\001」
#voice CHIAKI0060
【Chiaki】「ふふ……、敢えてノーコメントにしておくわ」


#cg all clear
#wipe fade


そう言っただけで、高尾さんは今度こそわたしたちの前から立ち去った。
わたしたち学生にはできないような、大人っぽい妖艶な微笑みを残して。


;**暗転
#mes off
#mes clear
#system off
#bg black
#cg all clear
#wipe fade



;♂MS
#bgm 0 stop 1000


;//END
#next2 S021
tenshitachi_no_harukoi/s020.txt · Last modified: 2013/09/27 12:28 by axypb