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seisai_no_resonance:sce08_04_30_3
八月に入ると、織戸伏島は本格的に夏を迎える。
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通常通りに運行する定期船には二人の人影があった。
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「さらば、織戸伏島よ――ってところかな」
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「本当によろしいのですか?」
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「ああ、もう僕があの島で出来ることはない」
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「……姉さんと片倉末来が礎となり、
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「それに……未来を紡ぐのは僕の仕事じゃない。
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「そうすることで、織戸伏の島は在り方を変えていく」
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「……頼継様」
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「さて、昌次郎――どこへ行こっか?(BROKEN:8_20)
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「フッ……頼継様が望まれるのでしたら、
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定期船は二人を乗せ、水平線へ消えていく。
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その後、二人がどこへ行ったのか知る者はいない。
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でも、彼が言った通り――織戸伏の島は在り方を変えていく。
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「ようやく……肩の荷が下りましたね」
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「そんな、まだまだ学園長には頑張って頂きますよ?」
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「んんっ……金澤先生、時代は変わるものです。
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「でも、知っているからこそ、教鞭を執ることも出来ますよね?」
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「……はぁ、後任が決まるまで見逃してはくれなさそうですね」
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「ふふっ、当然です。まだまだよろしくお願いしますね」
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「――ですので、御花会の在り方も変わる必要があります。
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「形骸化するとはいえ、巫女の存在は必要です。選抜に当たって、
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「ふふっ、縁子、祭りが一般的な祭りへと変わるのですよ。
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「神楽……それもまた巫女の務めかもしれませんが……
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「縁子、肩の力を少し抜きなさいな。
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「そ、そのようなことを今持ち出されてもっ」
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「あら、そんなに顔を赤くして。何を言われたのかしら?」
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「…………」
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「……母さん、ちゃんと終わったから。
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「ね、やっぱり学園を辞めちゃうの?」
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「禰津先輩、来ていたのですか……」
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「自分はもう少し外の世界に触れる必要があります」
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「彼女が外で見てきたものを、私も見ることが出来れば、
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「そっかー。でも、行くなら行くで、
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「ふふーっ、盛大なお別れ会を開く予定だからっ!」
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「……あまり派手なのは控えて頂けると」
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「んー?(BROKEN:8_20)
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「……そ、それは……」
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「どーかぁんっ!(BROKEN:8_20)
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「ふふっ……賑やかになりそうですね」
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「あー、もうっ……鼎のやつ、また逃げてるしっ!」
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「由布ちゃん、夏期講習に遅れちゃうよ?」
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「葉子先生から、今日こそ連れてくるようにって
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「由布ちゃん、落ち着いて。そうだ、きっとカナちゃんなら、
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「いつもの場所……?(BROKEN:8_20)
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「あ……な、なんでもなーいっ」
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「恵、あんた何か知ってるでしょ……?」
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「し、知らないよぅ!(BROKEN:8_20)
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「こらっ、ちょっと待ちなさいってば!」
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「待たないよぉ!(BROKEN:8_20)
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「はぁ、また先生に怒られる……鼎のやつぅ……」
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「もう……仕方ないなぁ……今回だけだからね」
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島も人も――変わっていく。
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止まっていた織戸伏島の時間が動き出し、
様々な変化をもたらす。
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ただ、それが小さなさざ波から大きな波へと変わるまでは、
もう少しだけ時間がかかりそうだった。
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潮風が私達の髪を撫でる。
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波飛沫が跳ね、冷たくて心地いい。
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強い日差しは夏らしく、肌を焼くように照り付ける。
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本土のような蒸し暑さはなくとも、暑いものは暑い。
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でも、海沿いにいると、そんな暑さも少しだけ忘れられる。
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「風、気持ちいいね」
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私達は堤防に座りながら、水平線を眺めていた。
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その先には、私達が向かうことになった本土が待っている。
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「……ああ」
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三年生の奈岐は進路相談で島を出ることを告げた。
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この島で彼女を縛るものは無くなり、途端に世界が広がった。
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だから、一つ約束を果たすことになる。
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島の外を見に行こう――それもまた約束だった。
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「鼎、外の世界は広いか?」
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「うん、凄く広い」
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「……そうか」
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目を閉じ、波の音を聞きながら、奈岐は私の腕に触れる。
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「鼎……奈岐は迷子になるのは嫌だ」
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「お父さん、お母さんはどこですか?(BROKEN:8_20)
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クスッと笑った私を奈岐が見る。
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「初めて会った時、鼎はそんな調子だったな」
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「ふふっ、何だか懐かしいね」
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「大丈夫、私は奈岐の側にいるから。迷子になんてさせない」
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奈岐の背が私にもたれかかり、体重を預けてきた。
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「だが、どうするつもりだ?(BROKEN:8_20)
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「ふふんっ、こう見えても転入経験があります」
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「……不(BROKEN:8_20)
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「あはは、事故がなければ平気だよ」
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「まったく……」
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「でも、楽しみだ。すごく楽しみだ」
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奈岐が水平線の彼方へ視線を戻す。
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きっと彼女の瞳には果てなく広がる世界が映っているのだろう。
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閉鎖された島から外の世界へ。
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それは大変な冒険になるかもしれない。
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でも、私達は手を取り合って進むことを誓った。
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二人ならどんな大変な事も乗り越えられる、と本気で思う。
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だって、それだけのことを私達はこの島でしてきたんだから。
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「鼎、ずっと一緒にいるための言葉、用意してきた」
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「んー?」
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海の向こうを見つめたまま、奈岐が微笑んだまま唇を動かす。
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「――――」
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その言葉はずっと待っていたもので、嬉しさから笑みが零れる。
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「えへへ……照れるね」
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「鼎は……奈岐によく言ってくれる」
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「ありがたみがない?」
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「そんなことない。言葉は力になる」
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「んー、じゃあさ、もう一回――聞きたいっ」
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「…………」
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墓穴を(BROKEN:8_20)
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でも、再び微笑みを浮かべると奈岐は私に告げてくれる。
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「――鼎、愛している。結婚できるところへ行こう」
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「えへへ、顔が緩んじゃうよ」
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「しばらく緩んでいてくれ。その方が嬉しい」
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「ふふっ――」
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青空を真っ白な海鳥が羽ばたいていく。
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翼をはためかせて、空へ昇る。
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遥か遠く、私達が見つめる水平線の彼方を目指して、
羽ばたいていく。
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外の世界は広い。
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それでも私達は手を取り合い、歩み出していく。
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あの空に羽ばたいた鳥のように、
私達はどこへでも行ける翼を手に入れた。
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だから、どこへでも行こう。
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その先にお母さんと約束した幸せを信じて。
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二人で歩み出す――。
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SetEndingCharaData( 4 )
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seisai_no_resonance/sce08_04_30_3.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)