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seisai_no_resonance:sce08_04_28_1
光が瞬き、私を包んだのはどこか懐かしい温もりだった。
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その感覚に私は身を委ねながら自然と声をあげる。
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「……お母さん」
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「ようやく……鼎をこの腕で抱きしめられたね」
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「こっちの台詞だよ。やっとお母さんに会えた」
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どうりで温かいわけだ。
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お母さんの腕は私をしっかりと抱きしめてくれていた。
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子供の頃と変わらずに、私をあやすように髪を撫でてくれる。
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「……ホントに大きくなったね。
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「それ、何年前の話?(BROKEN:8_20)
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「そうだね、でも鼎は鼎だ。お母さんの子供だよ」
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頭を撫でてくれる感覚に懐かしさと嬉しさを覚えて、
目頭が熱くなった。
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「お母さんがやろうとしたこと……
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「正直、無茶ばっかりだったよ?」
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「ふふっ、でも最後まで頑張ってくれた。
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「じゃあ、いっぱい自慢しておいて下さい」
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お母さんが肩を震わせて笑ってくれる。
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「鼎も言うようになったねぇ。あははっ、これが成長かぁ」
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「七年も経ってるんだよ?(BROKEN:8_20)
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「大人の経験とか?」
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「親にそんなことは答えられません」
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次は二人で笑い合う。
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そうすることがとても懐かしくて、
ずっと、こうしていたくて、
でも――分かっているから。
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目尻から涙が伝い、頬を濡らしていく。
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「鼎、無理してないかい?」
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「うん、平気だよ」
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「……お母さん、鼎には我慢させてばっかりだったよね。
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「ううん、そんなことない。そんなことないよ」
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「私にとって、お母さんは……ホントに自慢のお母さんなんだよ」
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そんなお母さんの温もりを求めて腕を回す。
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頭を撫でてくれる温もりに目を細めながら、
今という瞬間に感じる感覚を全て記憶に刻む。
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「自慢のお母さん、かぁ……ふふっ、嬉しいね」
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「ねえ、鼎?(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「……色々知ってる癖に」
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「私は……一人なんかじゃないよ」
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「あははっ、そうだったね。鼎には可愛い恋人がいるしね」
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「友達だって、いっぱいいるもん」
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「お母さんこそ、平気?」
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「鼎がお母さんの心配をしてくれるのかい?(BROKEN:8_20)
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「これからは末来のやつだって一緒なんだ。
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「……じゃあ、末来さんにもよろしく、だね」
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「ああ、言っておく」
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言葉が途切れると、温もりも薄れていく。
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時間が来た――
頭のどこかでは分かっていた。
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「…………」
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「鼎、そんなに強く抱きついたら行けないじゃないか」
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「うん、でも……」
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「…………鼎」
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「……分かってる」
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腕の力を緩める。
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感覚が遠のいていく。
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胸が痛くなる。
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零れ出す涙が止まらない。
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「鼎、幸せになるんだよ。それがお母さんの最後の願い」
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「……幸せになるよ。お母さんよりも幸せになる」
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「ふふっ、そっか、その心意気だ」
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とんっと背中を(BROKEN:8_20)
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これが合図だって分かった。
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震え出した唇が何とか言葉を紡いでくれる。
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「私ね……お母さんのこと、大好きだよ」
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「うん、お母さんも鼎のことが大好きだ」
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「愛してる、鼎」
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手が離れる。
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腕が離れて、言葉が告げられる。
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「ばいばい、鼎」
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「うん、さようなら――お母さん」
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光の波が押し寄せ、視界が真っ白に染まる。
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無数の光に流されて、この境界が無くなっていく。
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「お母さんっ……!」
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声が届くかどうかも分からない。
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でも、私は最後の時まで声を上げ続ける。
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「私っ、お母さんのっ……分までっ……っ……ぁ……!」
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言葉になってくれない。
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でも、言葉にしようと何度でも声を上げる。
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「お母さんのっ……分まで……っ……幸せにっ……!!」
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お母さんの分まで幸せになるから――だから、安心して。
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そんな言葉も紡げない自分が悲しくて涙が止まらない。
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でも。
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「ああ、幸せになるんだよ――鼎」
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言葉は届いていた。
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「…………うんっ」
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眩い世界が閉じていく。
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ほんの僅かな再会と別れの時間が終わり、
それぞれがいるべき場所へ戻る。
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私にも待ってくれている人達がいて――
きっとお母さんにも待ってくれている人がいる。
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「さようなら、お母さんっ……!」
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戻ったら、いっぱい泣いて――そこから歩きだそう。
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そう胸に誓って、私は流れる光の感覚に目を閉じた。
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seisai_no_resonance/sce08_04_28_1.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)