User Tools

Site Tools


seisai_no_resonance:sce08_04_26_2
炎を纏った剣が金属の肌を貫いた。
>

「このまま焼き切る――ッ!!」
>

刀身が赤く発光し、穢れの金属を切り裂いていく。
>

胴体の半分を切断された穢れは体勢を崩し、
ゆらゆらと仰け反っていった。
>

封印を行うには、一度あの穢れを門へ還す必要がある。
>

私が剣を構え直し、穢れに向かおうとした時だった。
>

「待つんだっ!(BROKEN:8_20)
>

「っ……!?(BROKEN:8_20)
>

「今のアレは生と死を分かつ境界線だ!
(BROKEN:8_20)
>

それだけの言葉を交わしている間にも、
白い穢れの傷が塞がり始めている。
>

勾玉からの供給が無くなっても、再生力は他の穢れとは
比較にならないほど高い。
>

さすが私のお母さん――と言いたいところだけど、
今はその粘り強さが悪い方向に出ているよ。
>

「祓う方(BROKEN:8_20)
>

「……それを僕に聞くのかい?」
>

一瞬、唖然とした後に理事長がハハッと笑い始めた。
>

「キミは面白いなぁ、ホントに……姉さんにそっくりだ。
(BROKEN:8_20)
>

「じゃあ聞きます。あなたは……お母さんを、お姉さんのことを
(BROKEN:8_20)
>

「…………っ」
>

「お母さんも末来さんも、私を信じて力を貸してくれてる!
(BROKEN:8_20)
>

私の剣は末来さんの力で光を放ち――
私の炎はお母さんの力を得て、さらに燃え上がっている。
>

「その目で……見鬼の業で私を視れば分かるはずです!」
>

「…………」
>

理事長が私を睨み付けるように見た後、長い息を漏らす。
>

「ハハッ……やっぱり……僕は姉さんに敵わないや」
>

そう呟いた理事長が私に――違う。
私と共にあるお母さんの力に語りかける。
>

「姉さん……僕はこの世にいられなかった存在だったよね。
(BROKEN:8_20)
>

「でも……姉さんが僕を守ってくれた。まだ子供だったのに、
(BROKEN:8_20)
>

「御陰で諏訪家は大荒れだったよね……ハハッ……」
>

目元を押さえた理事長が頭を振るい、天を仰いだ。
>

そして、ゆっくりと視線を下ろした理事長は、
私に鋭い眼光を向ける。
>

「あの穢れは僕達が引き受ける。キミは門を閉じるんだ」
>

「引き受けるって……そんなこと……」
>

「時間を稼ぐことなら出来る。鬼子の目と知恵、そして――」
>

理事長の側で控えていた秘書がネクタイをゆるめた。
>

「全ては頼継様のために、この力を振るいましょう」
>

秘書が両手に拳を作ると、穢れへ向けて構えを取る。
>

「――持って数分だ。いいね?」
>

「分かりました……」
>

理事長が頷くと、秘書が穢れへ向けて駆け出す。
>

「昌次郎、右から来るっ!(BROKEN:8_20)
>

そして、二人の戦いが始まった。
>

理事長達が時間を稼いでくれる間に、私は門の前へ走り込んだ。
>

「封印……!(BROKEN:8_20)
>

門の手前で、私は視線を左右させていく。
>

薄汚れた光る鉱石、荒れた地面、瘴気を吐き出す門、
そしてその前で鎮座する大きな岩――。
>

あの穢れに力を渡す際、勾玉を岩に押し当てていた。
>

岩から門へ、門から穢れへ。
その仕組みが分かっているなら、答えは見える。
>

「この岩から直接働きかけることが出来るなら……!」
>

私は剣を振り上げ、岩に突き立てた。
>

「くっ……あああぁぁっ!?」
>

途端に、剣を通して様々な思念が頭を過ぎっていく。
>

これは門に囚われている巫女達の魂……?
>

負に満ちた感情の波が頭の中を圧迫し、堪らずに声をあげる。
>

この岩は門と繋がってる。それは確かだ。
>

でも、繋がっているだけに彼女達の声が聞こえてしまう。
>

絶望と悲鳴、慟哭と怨念、生者への憎しみが溢れかえる。
>

「くうぅっ……!!」
>

剣を握った手の震えが止まらない。
>

こちらから力を伝える前に、死者の声に呑まれてしまう。
>

「鼎っ!!(BROKEN:8_20)
>

奈岐の声が響き、意志が僅かに戻る。
>

振り返ると、地面を這った奈岐が星霊石を掲げていた。
>

「穢れの記憶を見た時を思い出せ!(BROKEN:8_20)
>

「くっ……!」
>

すぐに剣から手を離し、奈岐の元へ駆け寄る。
>

ここまで這って進んできたのか、血の痕がべったりと地面に
こびりついていた。
>

穢れに切られた足から出血が止まらない。
>

「奈岐……足が……!」
>

「そんなものどうにでもなるっ……今は急げ!
(BROKEN:8_20)
>

「…………っ」
>

私は奈岐の輝く星霊石に手を触れる。
>

力の交信がこれで完了した。
あとは一対として、死者の思念を受け流せばいい。
>

「行け、鼎っ……!(BROKEN:8_20)
>

奈岐に頷き、私は岩に突き刺さった剣へ向かう。
>

「くっ……!」
>

柄を手に取ると同時にまた巫女達の叫びが頭に響く。
>

私は歯を食いしばり、一対としての魂を体現することだけを、
意識し続ける。
>

「いいぞ、思念がこちらへ来た……あとは……やるだけだっ!」
>

頭に反響する叫びが奈岐へ流されることで、
私は明確な力を意識することが出来るようになった。
>

「お母さんっ……!」
>

描いた炎の力を剣に注ぎ込み、岩へ力を流し込む。
>

岩が発火すると、巨大な門が大きく揺れ動き、
まるで融解したかのように岩肌が波打った。
>

「門に変化が起きてる……このままやれれば……!」
>

そして、さらに力を籠めた時だった。
>

「くっ、祓えないのでは押されるだけかっ!」
>

刀で穢れの腕を切り落とすが、すぐに再生してしまう。
>

どれほど中村さんの剣術が卓越したものでも、
霊験無きものでは穢れを祓うことが出来ない。
>

「マコっ!(BROKEN:8_20)
>

「そんなっ……!」
>

「まずいっ!(BROKEN:8_20)
>

「間に合わなかったか……でも、これが僕の報いに……なる」
>

穢れの腕が理事長の身体を掴み上げる。
>

爪が深く食い込み、鮮血が舞台に滴っていく。
>

「頼継様っ!(BROKEN:8_20)
>

秘書が穢れの腕に掌底を(BROKEN:8_20)
>

「がっ……!?」
>

穢れの放つ棘が秘書の腹を貫いていた。
>

「昌次郎っ!?」
>

「お逃げ下さい……頼継様っ……!
(BROKEN:8_20)
>

理事長を掴む腕に拳を(BROKEN:8_20)
>

「ハハッ……まったく……バカだなぁ、昌次郎……」
>

「キミがいなくなれば、僕に逃げ場なんてないよ……」
>

無数の棘が弧を描き、連続して振り下ろされていく。
>

まるで呑み込むかのように、金属の棘が二人を覆っていった。
>

「そんな……間に合わなかった……」
>

「鼎、意識をそらさずに――」
>

奈岐が途中で言葉を切り、息を呑んだ。
>

「なんだ……あれは……」
>

その視線の先は、理事長達が消えた方向――。
>

「穢れが……集まっていく……」
>

「全部、あの白いのに呑まれてる……これって……」
>

「奴らめ、高遠が封印することに勘付いたか……!」
>

中村さんが刀を構え直し、切っ先を穢れが集まる場所へ向ける。
>

「マコ、ダメっ!(BROKEN:8_20)
>

「だが……今、高遠達があの場所を離れるわけには……!」
>

「巫女の力無しでは無謀すぎますっ!」
>

「なら、ここで指をくわえて見ていろと言うのかっ!」
>

中村さんが声を荒げた時、穢れ達の咆吼が空洞に響き渡った。
>

「オオオオオオオオォォォォ――ッ!!」
>

集結した穢れを呑み込み、その身体からは瘴気が溢れ出す。
>

白い金属は瘴気を浴びて黒く変色し、紅く虚ろな目が開かれる。
>

そこにはもうお母さんであった面影は無い。
>

ただ禍々しく、直視することも躊躇われる
異様な穢れが誕生していた。
>

「くっ……こっちに来る!」
>

紅い瞳が私を捉え、音も無く穢れの身体がゆらゆらと蠢き出す。
>

滑空するようにして、次第にその速度が上がり、突進へ変わる。
>

狙いは私だ――岩に突き刺した剣を引き抜こうと力を籠めた。
>

「させるものかっ!!」
>

刀を片手に中村さんが穢れに向かう。
>

六つの黒い棘が反応し、刀を振るう彼女へ降り注いでいく。
>

「この一刀だけでもっ!!」
>

引くことはせず、さらに前へ中村さんが踏み込む。
>

柄を握る手を両手から左手一本に――
懐に伸びる秘策の突きを繰り出す。
>

継いで、甲高い金属音が響き渡る。
>

「なん、だと……」
>

棘が中村さんの行動を読み、刀をへし折っていた。
>

武器を無くした彼女に対し、棘が今度こそ身体を狙う。
>

「避けなさいっ!!」
>

遠山先輩が中村さんの身体を抱き、その場から転がる。
>

舞台に棘が突き刺さり、砂ぼこりを舞い上げた。
>

「くっ……なんて無力な……」
>

「いいえ、今は高遠さんを信じる時です……」
>

穢れは中村さん達に追撃を加えることなく、
再び進路を私へ向ける。
>

「奈岐、御魂でそのまま私を支援して」
>

「まさか、アレとやるつもりか……!?」
>

岩から剣を引き抜き、刀身に炎を宿す。
>

「中村さんの行動で分かったよ。あの穢れは考えを読んでる」
>

「見鬼の業……理事長を取り込んだからか……!」
>

瘴気を放つ穢れには三つの顔が見えた。
>

お母さんだったものと、理事長達二人の顔が浮かび上がっている。
>

「アレを止められるのは、私と奈岐の一対だけ」
>

「一度でも行動を読まれれば、あの棘にやられる」
>

「……鬼には鬼を、か」
>

「神狼じゃなかったっけ?」
>

剣を構えながら、冗談めかして言うと奈岐が苦笑した。
>

「フッ、そうだな……なら、勝ち目はある」
>

「うん、加護があるからね」
>

「奈岐は複雑に思考で見鬼の業を止めて。
(BROKEN:8_20)
>

「分かった、鼎は死ぬなよ」
>

「分かってる、それが約束だからね」
>

奈岐の星霊石がさらに煌めき、強い輝きを放つ。
>

初めは全然上手くいかなかった私達の力だけど、
今はこうして一対として成立している。
>

心を通わせ、互いの魂を共鳴させ――奇跡を宿す。
>

「…………」
>

小さく息を吐き出し、つま先に力を籠める。
>

「お母さん、末来さん……待っててね」
>

私は地面を蹴って、迫り来る穢れへと突き進んでいく。
>

「これで終わりにさせるっ!!」
>

降り注ぐ棘をかいくぐり、一気に距離を詰める。
>

そして、最後の炎を解き放つ。
>
seisai_no_resonance/sce08_04_26_2.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)