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seisai_no_resonance:sce08_04_23_1
炎を纏った剣が金属の肌を貫く。
>

それでも穢れは抵抗するように、無数の棘を私へ向ける。
>

「このままっ……!」
>

「何をするつもりだっ!?」
>

「この存在が門から生まれたなら……そこへ還すだけ!」
>

剣を突き刺したまま、穢れの身体に体当たりして、
門へ押し込んでいく。
>

両足にありったけの力を籠め、
今なお抵抗を続ける穢れを押し進める。
>

「そんなことをしても封印は――」
>

「門を完全に閉じることが封印なら!(BROKEN:8_20)
>

「…………」
>

理事長が言葉を失った後、ハハッと笑い声をあげた。
>

「あっははっ、まるで姉さんを見ているようだよ……
(BROKEN:8_20)
>

「通じさせてみせるよ。私とお母さんと末来さん、
(BROKEN:8_20)
>

身体から火の粉が溢れ出し、お母さんの力を感じる。
>

そして、穢れに突き立てた剣から光が溢れ、
末来さんの力を感じた。
>

「このまま……封印させてみせるっ!」
>

押さえ付けた穢れの背が門に近づいてくる。
>

あと数歩、僅かな距離にまで迫った時、
不意に穢れを押さえる力が強まった。
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「面白い、その意志に賭けてみようじゃないか――
(BROKEN:8_20)
>

「はっ、頼継様のご意志とあらば」
>

理事長と秘書が私に並び、穢れの身体を押し込んでいく。
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「あと少しっ……!」
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穢れの背中が門の表面に接すると、岩肌が不気味に波打った。
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「何っ!?(BROKEN:8_20)
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水面が揺らめくようにして、穢れの背中を呑み込んでいく。
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「くっ、離れるんだっ!(BROKEN:8_20)
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「どういうこと!?」
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「説明をしている暇は――くそっ、昌次郎っ!!」
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「御意っ!」
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突然、秘書の人が私の胸ぐらを掴み、穢れから引き離す。
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「えっ?(BROKEN:8_20)
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そして、そのまま門から遠ざけるように投げ捨てる。
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「コイツは――姉さんの魂は僕達が門へ還す」
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「だから、あとはキミがやるんだっ……!」
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「理事長……?」
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理事長と秘書の二人に、穢れが放った棘が纏わり付く。
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「こんな終わり方……昌次郎、世話をかけたね」
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「この身が魂と成り果てようとも、頼継様に従うのみ。
(BROKEN:8_20)
>

「フッ、その忠義に感謝するよ……!」
>

二人が最後の力を振り絞り、穢れの身体を門の表面に沈める。
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棘に絡まれていた二人の身体は、そのまま穢れに引きずられ、
門の中へ溶けるように沈んでいった。
>

穢れの身体に突き刺さっていた私の剣が音を立てて、
地面に転がり落ちる。
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「そんな……」
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穢れは消え、理事長と秘書の二人も消えてしまった。
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でも、まだ門は閉じられていない。
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「くっ……!」
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すぐに立ち上がると、私は地面に落ちた剣を拾い上げる。
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そして、刀身に炎を宿し、開きかけた門に突き立てた。
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「力なら全部あげるから――閉じてっ!!」
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溢れかえる瘴気に対し、残る力の全てを炎に変えて対抗する。
>

黒い瘴気を焼き払いながら、門が少しずつ動き始めた。
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「なっ……!?」
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このまま押し切れると思った時、岩肌が不気味に波打つ。
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岩肌から溶けた金属のような液体が噴き出し、
穢れの棘を無数に構成していく。
>

それだけでなく、波打つ岩肌が私の剣自体を取り込み始める。
>

「このっ!(BROKEN:8_20)
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剣から熱を発し、融合を防ぐが……
次々と生み出されていく棘に対抗する手段が無い。
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それどころか、門だけでなく、瘴気が流れ込む辺り一帯に、
鋭い棘が姿を見せ始める。
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封印されまいと、穢れ達が総力あげて抵抗しているようだった。
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「くっ――このままでは<RB='らち'>埒<RB>が明かない!」
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「中村さんっ……穢れ達が……!」
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「動きだした……あっち、カナがいる方っ!!」
>

「まずいっ!(BROKEN:8_20)
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「離れろって言われても……ね?」
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剣の熱を上回る瘴気が、身体に纏わり付き始めていた。
>

金属のような物質が剣を浸蝕し、
既に私の手首まで絡め取られている。
>

動けない以上、このまま押し込むしか、自分が助かる方(BROKEN:8_20)
>

「来た……!?」
>

そんな中、肌を突き刺すような感覚が多数迫ってきていた。
>

この空間にいる穢れが全て私に向かってきている。
>

押し込む前に穢れに喰われるか、間に合ってくれるか――。
>

迫り来る足音と、既に感覚が無くなっている手首。
>

比較すると、答えは明確になるかもしれない。
>

「諦めるもんかっ……ここで挫けたら、繰り返すだけだっ!!」
>

歯を食いしばり、まだ動く足を使って、前へ剣を押し込む。
>

門が動き出す――あと少し。
でも、あと少しだった。
>

「くっ……!」
>

背後に感じた気配に顔を向けると、
大柄な穢れが両腕を振り上げていた。
>

その鋭い爪が振り下ろされれば、そこで終わりになる。
>

時間の流れがゆるやかになり、本当にこれで終わりみたいに、
穢れの動きがコマ送りで再生されていく。
>

中村さんが何かを叫ぶ声が聞こえる。
>

でも、遠い。間に合わない。
>

「――――」
>

お母さん、末来さん……ごめんなさい。
>

せっかくここまで来たのに、二人の意志をこのまま無駄に――。
>

「鼎っ!!」
>

放たれた氷の刃が穢れの両腕を切り落とす。
>

「生きろと約束したのは鼎のはずだっ!!」
>

「犠牲や礎とならず、生きて戻るっ!(BROKEN:8_20)
>

氷の短刀が飛び交い、奈岐の道を切り開いていく。
>

力尽きて動かないはずの身体を奮い立たせ、
左右の刃で穢れの群れを切り進む。
>

「奈岐……?」
>

血塗れの足をどうやって動かしているのか分からない。
>

でも、奈岐は地面を駆けながら、私のところへ向かってくる。
>

「奈岐が鼎を守るっ!!(BROKEN:8_20)
>

「生きて奈岐達の約束を果たすんだっ!!」
>

飛び交う短刀が砕け、氷の塵へと化していく。
>

その煌めく細氷を見て、ようやく気付いた。
>

奈岐を動かしているものは、力尽きた肉体ではなく、
最後の最後まで私を信じてくれる心と――その魂だ。
>

「そうだよね、約束したもんね……」
>

「絶対に諦めない……このまま終われないっ!!」
>

まだ動く身体、いや動かそうする自分の魂に呼びかける。
>

このまま終わるな、最後までやり遂げる意志を貫け――。
>

「約束を守ってみせるっ……!」
>

身体に再び炎が宿り、門を押し込み始める。
>

「そうだ、鼎……それでこそ……!」
>

道を切り開いていた短刀が次々と砕けていく。
>

それでも奈岐は進み続ける。
>

立ち止まれば、もう動かなくなると分かりきっているかように、
その口元に笑みを宿し、残り少ない短刀を操っていく。
>

「くっ……!」
>

だけど、動くはずの無い身体を動かす――その矛盾は限界を呼ぶ。
>

「ごほっ……がはっ……!!」
>

大量の血が口から吐き出され、彼女の氷がさらに散っていく。
>

そして、砕けていくのは彼女が作り出す刃だけではなかった。
>

光を放っている星霊石に亀裂が入っていく。
>

彼女の身体についで、星霊石にまで限界が訪れる。
>

それでも奈岐は止まらずに走り続けた。
>

血を吐き捨て、残りの氷を集束させ、最後の道を切り開く。
>

「力なら全てくれてやるっ!!(BROKEN:8_20)
>

門に迫りながら、声をあげ、両手の刃を振り上げた。
>

「これが一対の――ッ!!」
>

門に短刀が突き刺さった瞬間、奈岐の星霊石が砕け散る。
>

でも、その力は確かに門へ伝わった。
>

だから――。
>

「閉じろおおおおおおぉおおおぉぉ――ッ!!」
>

確かな手応え。
>

だけど、剣を握り締めた感覚、隣に感じる奈岐の気配――
全てが無くなっていく。
>

ゴゴッと岩が蠢く音だけが耳に響いていた。
>

同時に辺りの瘴気が消えていく。
>

門が……閉じた?
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そう思った瞬間、目の前が真っ白に弾ける。
>

身体の感覚が無くなっていた。
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最初は死んでしまったのかと思った。
>

でも、こうして考えることが出来ている。
>

じゃあ、まだ生きている?
>

その時、瞼の裏に眩い光を感じた。
>

どこか懐かしく、温かい光に私は無意識に手を伸ばす。
>

「……おかあ、さん……?」
>

「――よく頑張ったね、鼎」
>

目を開くと、そこは見たことも無いような空間だった。
>

色とりどりの光が煌めきながら流れていく。
>

「……お母さん?」
>

手を伸ばした先には、求め続けたお母さんの姿がある。
>

ただ、身体の感覚が曖昧で、どうしてもそこまで届かない。
>

「久しぶり――なんて言ったら、怒られるかな?」
>

「それは……怒るよ」
>

「あはは、大きくなって、立派に育ってくれたね」
>

「まるで自分の若い頃を見ているようだよ」
>

「……私はお母さんみたいにハチャメチャなことしてないよ」
>

拗ねたように言いながら、何とか身体を動かそうとする。
>

でも、僅かに指先が動いただけで、お母さんに届かない。
>

「島に来て、色々知られちゃったかぁ……」
>

「ホント、やりすぎだよ。でもね、お母さんらしいと思った」
>

「ふふっ、それはいい意味で?」
>

「両方だよ」
>

指先の感覚がよく分からず、やっぱり手が動かない。
>

私は痺れを切らして、お母さんに声をかける。
>

「ねえ、そっちに行きたい」
>

「鼎はまだお母さんに甘えたい年頃かい?」
>

「七年ぶりなんだから……甘えたいよ」
>

「……七年、か。鼎も大きくなるわけだ」
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「時間の感覚が無くてね、言われて気付いたよ」
>

「お母さん、そっちに行きたい」
>

「……鼎、ここは魂が触れ合っているっていうのかな?
(BROKEN:8_20)
>

「だから、言葉を伝えられているだけでも奇跡なんだよ」
>

「……そっちに……行きたいっ」
>

声が震え、堪えても涙がこみ上げてくる。
>

「鼎は……立派にお母さん達の意志を継いでくれたね」
>

「最後に一目だけでも会えて良かったよ」
>

「もう知ってると思うけど、お母さんは鼎と一緒にいられない」
>

「お母さん……そっちに行きたいっ……触れたいのっ!」
>

「七年前か……七年前にお母さんは魂だけ、ここに留まった」
>

「それも、もうお終い。鼎がお母さんを助けてくれたんだよ」
>

「お母さんだけじゃないか……織戸伏の島を救ってくれたね」
>

微笑むお母さんの姿が所々薄くなっていることに気付く。
>

それが光の波にさらわれそうに思えて、
私は何度も手を伸ばそうとする。
>

「鼎には、お母さんの無理ばかり押しつけちゃってたね。
(BROKEN:8_20)
>

「いいお母さんじゃなかったかもしれない。
(BROKEN:8_20)
>

「ありがとう、鼎」
>

「…………」
>

「ずるい、ずるいよ……そんな言い方、ずるいよ」
>

「何も言えないっ……!」
>

ただをこねるような私にお母さんは微笑むだけだった。
>

「鼎、これからは鼎の生きたいように生きるんだ。
(BROKEN:8_20)
>

「……分かってる、分かってるよ」
>

「うん……もうこの空間も閉じられる。末来の奴の分まで
(BROKEN:8_20)
>

「…………」
>

「鼎、お母さんがいなくなったら、いっぱい泣くんだよ」
>

「鼎はすぐに何でも我慢する子だからね」
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「……分かった」
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お母さんの瞳に私が映り込む。
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その優しげな眼差しが瞼に覆われると、
最後にお母さんが微笑んだ。
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「鼎、元気でね。お母さんと末来の分まで幸せになるんだよ」
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「うん……さよなら、お母さん」
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「私、お母さんのこと、大好きだったよ」
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「ふふっ……ありがと」
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「じゃあね――ばいばい、鼎」
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光の波が押し寄せ、視界が眩く弾け飛ぶ。
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同時にお母さんを紡いでいた像が、無数の光に流されていく。
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「お母さん……」
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頬には涙が伝っていた。
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思わず堪えようとしたけれど、今は我慢するのを止める。
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いっぱい泣くように、ってお母さんが最後に言ってくれた。
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だから、私は声を上げる。
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むせび泣きながら、何度もお母さんの名前を呼ぶ。
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「お母さんっ……お母さんっ……!」
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「触れたかったよっ……一緒に、一緒にいたかったよっ!」
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「ホントに……ホントに大好きだったんだから……!」
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「うっ……うううっ……ああぁっ……!!」
>

「ああああああああああああぁあああぁあぁ――ッ!!」
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私は声を上げ続ける。
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我慢するのを止めるだけで、
こんなに涙が出ることを初めて知った。
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だから、この眩い光の世界が途切れる瞬間まで、
もういないお母さんの名前を呼び――私は泣き続ける。
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もう会えないから。
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その寂しさの分だけ泣いておこう。
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そうして、私はまた前を向いて歩けるようになるから。
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だから。
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「さようなら、お母さん」
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別れを言葉に。
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眩い世界が閉じていく。
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そして、意識が途切れていった。
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seisai_no_resonance/sce08_04_23_1.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)