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seisai_no_resonance:sce08_04_13_1
「……奈岐、足跡だ。結構多い」
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祠に続く道には無数の足跡が残されていた。
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「足の大きさからして、松籟会の男衆か。
(BROKEN:8_20)
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足跡が続く先へ視線を向けると、祠のある岩山が見える。
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すると、その方角から僅かに……。
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「奈岐、何か聞こえたっ」
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「人の声だ……!(BROKEN:8_20)
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奈岐は身をかがめて、全力で走り出していく。
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私も勾玉を握り締め、後に続いた。
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「<RB='くるまがかり'>車懸<RB>りの陣を崩さずにラインを維持するんだ。
(BROKEN:8_20)
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洞窟に入ると、理事長の声が響いてきた。
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同時に断末魔のような悲鳴が連続する。
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奈岐と顔を見合わせ、さらに奥へ駆けていくと、
不思議な鉱石に照らし出される無数の人影が目に映る。
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「やあ、遅かったね。既に巫女は中だよ」
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こんな時でも飴玉をくわえながら、理事長は笑みを浮かべていた。
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「これはどうなっている?」
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「んー、妨害を予想していた松籟会側が人手をかき集めて、
(BROKEN:8_20)
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洞窟の先を見れば、二つの勢力が狭い通路で交戦を続けていた。
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理事長の秘書を先頭に道を切り開くスーツ姿の男性達、
もう一方は杖を手にした装束姿の男性達……。
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死に物狂いと理事長の言った表現が相応しいかように、
装束姿の人達は倒されても、すぐに起き上がってくる。
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まるで映画のゾンビを見ているみたいだった。
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「不気味だよね。でも仕掛けさえ分かれば、全然怖くない。
(BROKEN:8_20)
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「儀式を妨害しようとする悪い奴らから、巫女達を守るため、
(BROKEN:8_20)
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「それ……突破出来るんですか?」
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「んー、いつでも。キミ達が来るのを待ってたのさ」
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理事長がパチンと指を鳴らすと、戦闘を続けていた秘書の人が
素早く身を翻す。
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「頼継様、準備は整っております」
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「さて、巫女を閉じ込めた門まで一気に行くよ。走れるかい?」
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突然、こちらを向いて話しかけられる。
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「あ、はいっ」
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私の返事さえ聞ければ良かったのか、理事長が視線を戻す。
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「陣立てを<RB='ほうし'>鋒矢<RB>の陣へ。門までの道を開く」
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「鋒矢の陣へ!(BROKEN:8_20)
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人影が蠢き、突撃の姿勢へ変更していく。
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「鼎、走るぞ」
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奈岐に手を掴まれた瞬間、人影が一斉に動き出す。
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拮抗状態にあった戦線を突き崩し、道を切り開いていく。
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「っ……!?」
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ただし道を開くだけであり、なぎ倒されながらも、
装束姿の人達は杖を振るって抵抗を続けている。
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これでは血路を開いているような状態に変わりない。
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「皆、死力せよ!(BROKEN:8_20)
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誰もが後ろを振り返らずに、
立ち塞がる者を押し倒しながら進む。
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「門に到着後、<RB='かくよく'>鶴翼<RB>の陣で追っ手を誘い込むんだ。
(BROKEN:8_20)
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「はっ。全てはこの時のため――頼継様のために」
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理事長達に続き、私と奈岐は洞窟内を駆けていく。
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下り坂になっており、洞窟は地下へと伸びているようだった。
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奥へ進むにつれ、不安定になる地面に足をとられないように
走り続ける。
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洞窟の最奥と思しき場所が見えると、
穢れの記憶で見た石造りの門が道を閉ざしている。
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そして、その門の前には松籟会の老人が佇んでいた。
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杖を手に、他の者とは違う黒い装束を纏っている。
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「やはり……鬼子を、諏訪家を遠ざけておくべきだったか」
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「やあ、遠山のお爺ちゃん。自ら指揮を執っているだなんて、
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遠山の――何度か見た遠山先輩のお爺ちゃんだ。
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「<RB='とおやまひこざえもん'>遠山彦左衛門<RB>、儀式の進行を行う松籟会の男だ。
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奈岐の言葉を聞き、私は視線を老人へ戻す。
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「これから僕達は儀式をぶち壊しにする。何か言うことは?」
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「それはならぬ。門が開けば、穢れが溢れ、この島には厄災が
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「言いたいことはそれだけかな?(BROKEN:8_20)
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理事長が指を鳴らすと、スーツ姿の男性達が老人を壁際に連行していく。
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「開けてはならぬっ!(BROKEN:8_20)
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「そうだね、こんな島……終わりにしないとね」
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どこか抑揚のない口調で呟いた後、理事長が私達に振り返った。
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「さて、この扉は巫女の力が通じない仕掛けになっている。
(BROKEN:8_20)
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「策ならある。洞窟が崩落しないことを祈っていろ」
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奈岐の声を聞きながら、私は周囲を見渡す。
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壁に押さえ付けられた遠山先輩の祖父、
来た道で再び交戦を続けている理事長の部下達、
奈岐を見て、僅かに驚きの表情見せた理事長……。
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まるで核でも爆発させる装置を前にした気分だった。
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「鼎、始めよう」
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「……うん」
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もう戻れないし、引き返す気も無い。
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私はここを開き、本当の意味で儀式を終わりにさせるんだ。
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「――燃えろ」
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勾玉の力を解き放ち、炎の流れを操っていく。
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巫女を閉じ込めた門に、次々と炎が覆い被さる。
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そして、まるで門自体が燃えているかのように、
洞窟内は明々と照らし出され、熱気で溢れかえった。
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「まだっ……!」
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決してこの門を炎で溶かすことは出来ないだろう。
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だけど、その限界まで熱をはらみさえすればいい。
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門に集中させた熱気が溢れ、周囲の壁を変色させていく。
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洞窟自体に被害が出るのが先か、
それとも充分な熱を溜め込むのが先か。
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出来れば、被害は出したくないんだけど……
そう思いながら、さらに炎を集中させていく。
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「鼎、もう充分だ――身を守れ!」
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奈岐の声を聞き、私は巫女の力を解放させる。
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剣をその場に突き立て、すぐに後ろにいる理事長達を守るように、力をコントロールしていく。
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「砕けろっ……!」
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奈岐が星霊石を輝かせ、一斉に冷気を門へ浴びせかける。
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ゴオオオォォォォォォン――ッ!!!
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その次の瞬間、鼓膜が破れるかと思うほどの轟音が響き渡った。
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大量の水蒸気と砂ぼこりが視界を埋め尽くしていく。
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これが奈岐と私の策――
この爆発は巫女の力ではない。
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限界まで熱を蓄えた岩に対し、水をかけるとどうなるか。
火の付いた油に水をかけることと同じ原理だ。
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高熱に浴びせられた水が水蒸気となり、急激な体積の増加により、爆発が起こる――という奈岐からの受けより。
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散々失敗でやらかしてきたことを最大限に利用したみたけど……
その結果はどうなったか。
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「…………」
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水蒸気と砂ぼこりが晴れてくると、
道を遮っていた門が崩れ落ちていた。
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「やったか……鼎、無事か?」
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奈岐の声を聞き、再び周囲を見渡す。
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理事長達と、唖然としている遠山先輩のお爺ちゃんも含め、
全員無事で済んだらしい。
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「何とかね。全員、無事だよ」
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私は地面から剣を引き抜くと、勾玉に戻さず握り締める。
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門を壊した途端に感じたのは、強烈な穢れの気配だ。
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記憶の中で見た無数の穢れ達……それがこの先にいる。
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「な、なんということだ……島が、島が穢れてしまう……!」
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「昌次郎、ここから僕の警護はキミだけでいい」
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「はっ。この命に懸け、頼継様をお守りいたします」
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この先にいるはずの遠山先輩と中村さんは無事だろうか?
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とにかく、今は急がないといけない。
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私は剣を手にしたまま、先行するように走り出す。
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「奈岐、ギリギリまで力は使わないで」
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すぐ隣を併走する奈岐に声をかけておく。
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「その判断は私がする」
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「今は聞き分けて、一緒に帰るって決めたから」
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「…………」
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「……分かった」
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奈岐の返事を聞き――
そして、私は記憶で見た場所へ踏み出した。
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seisai_no_resonance/sce08_04_13_1.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)