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seisai_no_resonance:sce08_04_05_2
儀式の日――
夕刻になると肌で感じる空気が一転した。
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毛を逆立てられるようなざわざわとした感覚が止まない。
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穢れの存在をここまで肌で感じたのは地震直後以来だろう。
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<RB='おうま'>逢魔<RB>が<RB='とき>時<RB>という言葉を耳にしたことがある。
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その字の(BROKEN:8_20)
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それは――昼から夜へ移り変わる時、ちょうど今を指す。
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「<RB='おおまがとき'>大禍時<RB>ともいう――禍言と同じく忌むべき時間だ」
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バサッとマントを羽織り、奈岐が準備を終える。
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「今、島民は家から出ることを禁じられているはずだ。
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「んー……よく言えば、暴れ放題?」
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「悪く言えば、非常に危険な状態ということだ」
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奈岐に苦笑してから、私は社前で座っているガジに歩み寄った。
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「ガジ、社の中から出たらダメだからね?」
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「ニャン?」
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言葉が通じるわけみなく、ガジは不思議そうに鳴いただけ。
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でも、ついてくる様子ないので、心配はしなくて良さそうだ。
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「よし……」
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私は制服のネクタイを結び直すと、奈岐に頷いて見せた。
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こういう時は正装――制服の方がいいだろう。
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「奈岐、行こう。きっともう始まってる」
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「ああ、このタイミングであの男も動き出しているはず」
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「うん。まずは祠までの包囲を突破する」
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奈岐と頷き合い、祠の方角へ向けて駆け出す。
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祠へ続く森に入ると、穢れの気配がより一層濃くなった。
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下手に巫女の力を解放すれば、すぐに取り囲まれそうなほど、
間近に存在を感じる。
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こんな状況でも松籟会の人達は祠を警備しているのだろうか?
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「奈岐、儀式の時って毎年こんな風になるの?」
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「いや、いつもは静かすぎて逆に不気味なぐらいだ。
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「封印がほころび始めている可能性が?」
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「もう一度、地震が来れば……間違いないだろうな」
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あの地震の直後、穢れが大量に発生した。
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もし同じことが起きたとして、今回も対応出来るのだろうか?
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予定通りなら理事長達も祠を目指しているはず。
ということは、穢れを祓える人がいない状態になる?
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「急がないと……」
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奈岐が私に頷き、祠へ急ぐ足を速めた。
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さらに森を進んだ時、覚えのある気配を感じて、私は立ち止まる。
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奈岐も同じく足を止め、周囲を警戒するように視線を左右させた。
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「この力って……」
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「穢れが出た場合、対応出来る人間は限られてくる。
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自然と私は手に勾玉を握り締める。
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その僅かな力の変化に気付いたのか、
茂みの向こうから声があがった。
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「そこにいるの誰っ!?」
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巫女の力を携えた恵が私達の前に姿を現す。
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「えっ、カナちゃんに向山先輩……?」
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「恵、もしかして松籟会の人に言われて、ここに?」
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「…………」
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恵は私達の姿を見て、顔を曇らせてしまう。
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そんな彼女に奈岐が険しい視線を向ける。
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「松籟会からの命令は二つ。穢れが出現すれば、即座に祓うこと。
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「っ……!?(BROKEN:8_20)
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おそらく恵の考えを覗いたのだろうけど、奈岐は口にしない。
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「勘だ。それで、お前は松籟会の指示に従うつもりか?」
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「それは……」
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「私達が儀式の妨害を企てているなら、止めなくてはならない。
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「……カナちゃんも先輩も、ホントに儀式の邪魔をするの?」
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恵が手に持った扇が震えているのが見えた。
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恵が儀式の実態を知らない以上、私達の行動を止めなくては、
穢れの出現を招いてしまう。
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「恵、何も言わずに道を譲って。説明してあげたいけど、
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「カナちゃん……」
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力の流れが方向性を持ち、私達へ向かってくる。
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「……あたし、そんなこと出来ない。由布ちゃんと約束したから、
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「そして、私達の身柄と引き換えに、来年の巫女の座を約束――
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「ど、どうして……あたしと松籟会の人しか知らないことを?」
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「勘だ」
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奈岐、やりすぎ――と内心で注意しつつも、
松籟会の考えには顔を顰めるしかない。
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巫女候補の気持ちなんて、都合の良い道具なのだろう。
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「奈岐、私に考えがあるから。ここは任せて。
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「……分かった」
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むぅと小さく呻いた後、奈岐は一歩後ろへ下がっていく。
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それを確認してから、私は手に勾玉を握り締めた。
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「恵、見逃してくれないなら、こうするしかない」
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「今は言い訳をしてる時間も無い。恵がどう思ってくれても、
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「ただ……こうすることが、友達としての責任だと思うから」
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勾玉から炎が溢れ出し、私の身体を包み込んでいく。
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すぐに私の右手にずしりと剣の重みを感じた。
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「カナちゃん……武器を捨ててくれないよね?」
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「そうだね、まだ捨てられない。だから――」
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ごめん、と言いかけた言葉を私は呑みこみ、剣を構える。
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謝っていいのは、全部終えることが出来てからだ。
中途半端な言葉なんて告げられない。
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「今年、神住先輩が中村さんとの巫女に選ばれて……
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「これで、来年は由布ちゃんと巫女になれるかもしれないって」
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「だから、カナちゃん……ごめんね」
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恵の感情が天秤を傾かせるのに時間はかからなかった。
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心の中で由布の姿を描き、恵は巫女の力を振るう。
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迫る衝撃を切り返し、私は剣を両手に一気に距離を詰める。
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seisai_no_resonance/sce08_04_05_2.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)