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seisai_no_resonance:sce08_04_04_0
荷物を下ろした後、奈岐は壁にもたれて座り込む。
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そして、険しい表情のまま、星霊石を覗き込んで目を細める。
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私はそんな奈岐の隣に座り、その様子を見守った。
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やはり調整された石から感じる力は異質なもので、
私の感覚では、とても扱い切れそうにない。
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奈岐は一通り星霊石の外観を確かめ終えた後、
僅かに冷気を発動させた。
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小さな氷の結晶が石を取り囲みながら構成されていく。
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その数が十近くになった時、まるでそれぞれが意志を持っているかのように、氷の結晶がその場で飛び交い始める。
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一つは円を描くように、一つは上下に、一つは四角を描くように、結晶は、どれもが別々の動きを行っていた。
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「鼎、少し話をしよう」
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結晶を動かしながら、奈岐はそんなことを言い出した。
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「それも具合を確かめるため?」
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「今は並列で十三の処理を行っているが、まだ余裕がある」
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「並列で十三のって……」
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桁外れというか、既に想像も出来ないことをしているらしい。
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さらにここから会話を加えることで、処理はもっと複雑になる。
奈岐はそれを試したいのだろう。
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「それじゃあ……奈岐、葉子先生に言ってたことだけど、
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「だが、鼎一人の力で儀式を止めることは出来ない」
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「でも、お母さんは一人で止めることが出来た。
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奈岐は訝しげな表情で私を見るが、宙を舞う結晶は変わらない。
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「その石、少しだけ借りてもいい?」
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「構わないが……どうするつもりだ?」
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冷気が収まると、奈岐は私に星霊石を手渡す。
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「ちょっと見ててね」
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目を閉じて、手の平にある星霊石の感覚に集中していく。
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頭の中で奈岐の姿を描き、次に奈岐が操る氷をイメージする。
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そして、彼女の一番奥底にある想いを意識した。
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「…………」
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「なっ……鼎?」
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その瞬間、私の回りに氷の結晶が散っていく。
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すぐに気化して消えてしまったけど、確かに冷気を感じた。
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「これが……答えだと思う」
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「鼎……?(BROKEN:8_20)
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「ふふっ、知りたい?」
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私は奈岐に星霊石を返した後、口元に笑みを浮かべる。
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「そういう言い方、気になる……」
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少し拗ねた調子で奈岐が言う。
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「じゃあ、約束」
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「犠牲とか礎とか、どんな表現でもいいけど……
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「だ、だけど、それだと……」
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「ね、奈岐一人で何とかするって思わない」
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「まだ確信は無いけど、お母さんと同じことが出来るなら、
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「…………」
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押し黙ってしまう奈岐の手を取る。
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「私は自分の可能性を信じる。奈岐も私の可能性を信じて。
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「鼎……」
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奈岐の指がぴくりと反応して、私の手に絡ませてきた。
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「奈岐は……鼎と一緒にいたい。ずっと一緒にいたい。
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「ううん、そんなこと無いよ。難しいことじゃない」
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自分の背中を押せる最後の強さは、思ったよりも単純だった。
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結局は――どんな状況でも自分を信じ切れるかどうか。
それだけなんだと思う。
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自分の力を信じていたから、お母さんは真っ直ぐに意志を貫くことが出来た。
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自信過剰なんて言葉が頭をよぎるけど、
それぐらいでもいいかもしれない。
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何せ、私は……この島で色んなことをやらかしてきたお母さんの娘なんだし、ちょっと過剰なぐらいがちょうど良いはず。
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「奈岐、私を信じて」
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「…………」
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返事は無かったけど、奈岐が私の手を強く握ってくれる。
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「何があっても一緒にいよう。難しいことなんかじゃない」
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「私を信じて。私も自分の力をどこまでも信じてみせるから」
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「……鼎」
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言葉を繰り返すと、奈岐が小さく頷いてくれた。
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「信じることが始まり……それは、いつもそうだな」
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「鼎を信じないと、また奈岐は独りぼっちの考えに囚われる。
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「鼎のことを信じる。鼎と一緒にいたいから……信じてみせる」
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「うん……ありがとう、奈岐」
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腕を引き、身体を抱き寄せると、奈岐の瞳を見つめる。
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その目が閉じられたのを合図に、私は唇を重ね合わせた。
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数秒のキスの後、私は奈岐の唇から離れる。
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でも距離は近く、額をくっつけ合ったまま言葉を紡ぐ。
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「……お母さんは他の人の星霊石の力も使ったんだと思う」
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「他の人の?(BROKEN:8_20)
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「でも、私はさっき奈岐の石を使ってみせた」
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「しかし、星霊石は自分の魂の力を現すもので……他人には……」
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「私もそうだと思ってたけど、厳密には違うみたい」
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「もし、自分の魂と紐付けされているなら……
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「……じゃあ、どうやって?」
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まばたきをした奈岐に微笑む。
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「星霊石は所有者の魂を現した力を授けてくれる」
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「もし所有者と強い絆で結ばれていれば、星霊石を通して、
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「そんなこと……」
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「一対として魂を体現する感覚と似てるかもしれない」
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「ほら、魂っていうか、気持ちが共鳴してるみたいな?」
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「…………」
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奈岐が驚いたように口を開いて固まってしまう。
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だけど、その後すぐに――。
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「フッ……そうか、そういうことか」
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吹き出してしまったかのように奈岐が笑う。
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「あ、あれ?(BROKEN:8_20)
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「いいや……それは鼎だから出来ることなのだろうな、
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笑ってしまったお詫びに、と奈岐が私の頬に口付ける。
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でも、それだけじゃ物足りないので、
私からは奈岐の額にキスを残しておく。
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「鼎の心は熱い炎のようだと思っていた。
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「まるで流れる水のようだ。どんな形にでもなれるから、
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「水……?」
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流れる水は何にでもなれる――
八弥子さんもそんなことを言っていた記憶がある。
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「……奈岐は不器用だから、水にはなれない」
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「でも、そうすることが出来るって想像の先に鼎がいる」
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奈岐が私に頬をすり寄せ、そのまま肩に頭を預けた。
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「鼎の母が島を出て、外で鼎を育てた理由が分かった気がする」
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「この島のしがらみに囚われていたら、その枠でしか物を考えられ
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「……でも、お母さん、どうやって島から出たんだろう?」
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「島の外に出ようとすると……死んじゃうって呪いみたいな話」
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この島に来て間も無い頃、その話を何度か耳にしている。
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「この島に生まれれば、その血や魂が、封印されているものと
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「ただ優れた星霊石を持っていれば、一定期間は死に至らなかった
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「勾玉が守ってくれていたってこと……かな?」
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奈岐はそうだなと頷いた後、自身の考えを口にしていく。
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「鼎の母が勾玉から離れ、島に戻る際は、誰かと連絡を取って……
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「あはは、お母さんらしいけど……とんでもないことしてるなあ」
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「そうだな……そう考えると、本当に鼎は特別だらけだ」
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私に身を預けたまま、奈岐が苦笑していた。
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「ふふんっ、特別な扱いを受けた分だけ、頑張らないとね」
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奈岐の言葉が正しいとしたら、お母さんは自分の勾玉という希望を私に残してくれている。
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きっとお母さんは今回の儀式に全てを賭けて行動した。
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その意図に沿って、娘が動いているとは限らないけれど、
今は自分の力をどこまでも信じてやってみるつもり。
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信じることが始まり――奈岐の言葉を借りるなら、
その通りだろう。
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自分を信じて、自分の背中を押せた。
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「全部終わらせたら、奈岐も島の外に出ることが出来るかな?」
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「島との結びつきが断てれば……たぶん」
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「じゃあ、一緒に島の外を見に行こう。いっぱい案内するよ」
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「……そうか、それは楽しみだ」
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希望を胸に、あとは真っ直ぐ進むだけ。
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最後まで真っ直ぐに――。
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seisai_no_resonance/sce08_04_04_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)