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seisai_no_resonance:sce08_04_03_0
三日後の朝――
奈岐の星霊石が届く予定の日、思わぬ来客があった。
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神社の鳥居をくぐる影に目を疑いながらも、
私は手に勾玉を握り締める。
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隣にいる奈岐は腕を組んだまま、その人物を睨む。
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「二人とも無事のようですね」
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神社に姿を見せたのは学園長だった。
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場所が変わっても凛とした雰囲気で、私達の様子を観(BROKEN:8_20)
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「二人の無事が確認出来て、先生も一安心です」
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学園長の隣には、私達を逃がしてくれた葉子先生が佇む。
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先生もいつも通りに和やかな雰囲気だった。
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「……学園長みずから何の用だ?」
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「このようなところに潜んでいるのです。食料など必要でしょう。
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葉子先生は食料など生活物資が詰め込まれたリュックを下ろし、
奈岐へ歩み寄った。
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「向山さん、この星霊石の意味、ちゃんと分かっていますか?」
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葉子先生が布に包まれていた星霊石を取り出す。
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見た目には同じ形をしていても、感じる力は別物だった。
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奈岐が希望した通り、複数の力がそこにはあるような……
とても人の感覚で使えるものでは無い。
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「現状で考え得る最良の手段だ」
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「自己犠牲が、ですか?」
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「決して犠牲ではない。これは<RB='いしずえ'>礎<RB>となる」
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「…………」
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葉子先生が困ったように眉を寄せ、学園長は静かに目を伏せた。
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「向山さん、先生達は学生の身を一番に考えないといけません。
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「渡す?(BROKEN:8_20)
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「向山さんの身に何かが起きた時、一番悲しむのは誰ですか?」
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「……そんな問答に付き合う暇はない」
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「向山さん、せめてそれだけは答えて下さい」
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先生の言葉に奈岐は短い息を吐くと、視線を私に向ける。
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「…………」
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だけど、奈岐は何も語らずに再び葉子先生を見上げた。
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「充分だろう。石を渡してもらおう」
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「……学園長」
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困ったような声で葉子先生が学園長に判断を仰ぐ。
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「構いません。その石は彼女の物です」
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「いい判断だ」
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そして、葉子先生が持っていた石が奈岐の手元に渡る。
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「向山さん、高遠さん、
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「ヤヤちゃん、まだ動くこともままならない状態なのに、
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「……そうか、意識を取り戻してくれたか」
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奈岐は返ってきた星霊石を握りしめ、目を閉じた。
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「禰津と話がしたい。病(BROKEN:8_20)
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「病(BROKEN:8_20)
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「なら、伝言を頼みたい。そちらもそちらで話があるだろう。
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「えっ?」
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奈岐は再び私に視線を向けた後、すたすたと社へ向かっていく。
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「向山さん?(BROKEN:8_20)
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「……向山さんの言う通り、私も高遠さんと話があります。
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「分かりました」
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葉子先生は私に微笑みかけると、社へと歩いて行った。
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「さて、理事長から諏訪家の話を伺いました。
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「でも……まだ知らないこともありますよ」
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私は必然的に学園長と一対一で向かい合うことになる。
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「巫女になった時、お母さんは一人で戦ったんですか?」
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「……もう隠す必要も無いでしょうね。
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「ですが、彼女は一人で戦ったわけではありません。
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お母さんは……一人で戦ったわけじゃない?
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学園長の言葉に私はまばたきを繰り返す。
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「どういうこと……ですか?」
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「人の気質――そこから現される魂の形。
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「ですが、心を通わせることにより、他者を理解しようとすること
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通じ合い、分かり合うことで初めて一つの御魂を体現出来る。
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でも、それとお母さんが一人で儀式に挑んだこと……何の関係が?
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「高遠さん、あなたはこの島に来て、どれだけの絆を育むことが
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「その絆の数だけ、あなたも、諏訪未来さんと同じように力を使う
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「お母さんと同じことが私にも……?」
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学園長は私に頷き、そして言葉を続けた。
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「もし向山さんがあの石の力を使えば、彼女は肉体だけでなく、
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「彼女を助けられるのはあなただけです、高遠さん」
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「…………!」
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その言葉に思わず息を呑んでしまう。
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学園長だけでなく、様々な声が頭の中で反響していく。
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	「鼎――奈岐を助けられるのはキミだけだからね」
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	「その小鬼を止められるのはキミだけだよ、高遠鼎――」
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「あなた自身の力と、諏訪未来さんが残したお守りを信じなさい」
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「……お守り」
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手に勾玉を取り、軽く握り締めてみた。
僅かに感じる熱はいつも私に勇気をくれる。
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「高遠さん、これを」
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学園長が私に透明な石を差し出した。
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「それ、星霊石……ですか?」
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「いいえ、星霊石には遠く力が及ばないものですが、
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「そんなものをどうして私に?」
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「手に取ってみなさい」
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言われるまま、勾玉から手を離し、学園長から丸い石を受け取る。
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ちょうど手に収まるサイズのそれを握り締めると――。
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「……えっ?」
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微かにだけど、石から熱を感じた。
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「星霊石に祈るように、もっと力を籠めてみなさい」
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「…………」
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少し息を吸って、意識を集中させていく。
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すると、眩い光と少しの衝撃が私を中心に広がった。
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「これは……?」
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慌てて手を開くと、光を放った石は硝子片のように
砕け散ってしまっていた。
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風が吹き付けると、はらはらと中空を舞っていく。
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「やはり、血は争えないものですね」
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「それは片倉末来さんのために用意した星霊石の残りです。
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「末来さんの石をどうして私が……?」
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「その答えこそ、諏訪未来さんが儀式で生き残れた理由です」
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まだ力を解放した感覚が残る右手を見た。
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僅かに感じる熱は――どこかで感じたものに似ている。
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「これは、末来……さん?」
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そうだ、これは末来さんと繋いだ手の温もりだ。
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でも、どうして……?
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「ふふっ……本当にあなたがた親子は、
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学園長が微笑みを浮かべたように見えたので、
思わず目を疑ってしまう。
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だけど、それはほんの数秒だけのことで、
すぐにいつもの凛とした表情に戻る。
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「さて、時間のようです」
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話が終わったのか、社から葉子先生と奈岐の二人が顔を見せる。
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「立場上、私はあなたを止めるべきなのでしょうが……
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「学園長……」
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「それでは」
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学園長が踵を返し、神社の鳥居をくぐっていく。
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「……向山さん、先生は反対しますからね」
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「…………」
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何を話してきたのか、葉子先生はどこか落ち込んだ様子だった。
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それに対して、奈岐は聞き流すように目を閉じている。
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「高遠さん、向山さん……無事に戻ってきて下さいね」
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葉子先生は学園長の後に続き、神社から姿を消していった。
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残された私は目を閉じたままの奈岐に視線を移す。
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「先生と何を話したの?」
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「今後のことだ。いずれ分かる」
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淡々とそう答えた奈岐は先生が届けてくれたリュックを手にする。
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「社に戻って、霊石の具合を確かめてくる」
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「待って、私も行く」
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奈岐が持ったリュックに手をかけ、重さを半分にした。
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「…………」
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何も言わず、奈岐は私から視線をそらすと、足先を社へ向ける
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そんな奈岐から離れないように、私も歩み出す。
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seisai_no_resonance/sce08_04_03_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)