User Tools

Site Tools


seisai_no_resonance:sce08_04_02_0
夕方が来て、私は軒下に座りながら、空を眺めていた。
>

奈岐は社の中で、書き留めたノートを再読している。
>

どうしても付き合える気分になれなくて、
私は社の外で、無為な時間を過ごしていた。
>

「ねえ、ガジ、私にはお母さんと同じ血が流れているんだよね?」
>

隣で丸まっていたガジに何となく話しかける。
>

お母さんは贄とならず、儀式で生き残り、
末来さんを助けるために封印を解いた。
>

あの実態を知った上で封印を解くなんて、
ホントに滅茶苦茶なことをする人だと思う。
>

封印を解くことで、どうして末来さんを助けられたのか
分からないけど……一つだけ言い切れることがある。
>

思い込んだら真っ直ぐで、どこまでも自分の意志を貫く――
そうすることが出来る力を、お母さんは持っていた。
>

でも、私は?
>

このままだと、間違いなく奈岐は無茶な力を使ってしまう。
>

私との約束を一方的に守り、そして何もかも終わりにする。
>

「ガジ、私には何が足りないんだろう?」
>

「ニャン?」
>

ガジが私の問いを理解出来るはずもなく、小首を傾げていた。
>

「自分の意志を貫けるほどの強さ……
(BROKEN:8_20)
>

「三輪さんなら血筋とか言いそうだけど、
(BROKEN:8_20)
>

お母さんの勾玉を手に取り、空にかざしてみる。
>

綺麗な空色をした勾玉――中心に向かうにつれて、
青色が濃くなる不思議な石だ。
>

こうして勾玉をまじまじと眺めてみて、ふと思うことがあった。
>

「……どうして私の石だけ勾玉なんだろう?」
>

これが星霊石だとして、他のみんなのは球体になっている。
>

島の外から持ってきたものだから、と思っていたけれど、
星霊石の加工は諏訪家が行うものらしいし……。
>

勾玉の形に諏訪家がわざと加工したことになる。
>

「お母さんが諏訪家の人だから……?」
>

そんな特別扱いが許されるのだろうか?
>

許されそうな人ではあったみたいだけど……うーん?
>

「それに、理事長の話だと……お母さんは一人で戦って、
(BROKEN:8_20)
>

一対の相手について言及すらされていなかった。
>

ますます分からなくなってきて、考えを中断させる。
>

そして、私はため息をつきながら、軒下で寝転がった。
>

「はぁ、お母さん……今が最大の山場だよ」
>

「私、好きな人を失うなんて絶対に嫌だよ……」
>

何も語らなかった奈岐の横顔を思い出せば、
また瞳から涙が溢れ出しそうになる。
>

例え封印に成功したとしても、そこに奈岐がいなければ、
私にとっては……成功なんかじゃない。
>

「ニャーン……?」
>

「んー、泣いてないよ。ガジ、心配してくれてありがと」
>

目元を手の甲で(BROKEN:8_20)
>

儀式までの一週間――
きっとここが正念場になると思う。
>

私もお母さんみたいに真っ直ぐ進まないといけないのに。
>

「……しないといけないって考える癖、直らないなあ」
>

ふと末来さんに指摘されたことを思い出して苦笑する。
>

島に来た頃は、ずっとしっかりしないといけないって、
思っていた。
>

思い描いた通りに出来ていたかは疑問だけど、
でも私は真実に辿り着きつつある。
>

だからこそ――最後の強さが何かを知りたかった。
>

「お母さん……答えを聞いたらダメだよね」
>

「うん、儀式の時までに絶対に見つけないといけない」
>

と……またいけないって言ってるし。
>

お母さんに似て、こんなところまで頑固な娘になったのかな?
>

「よし……」
>

勾玉を握り締め、私は深呼吸をしてから身体を起こす。
>

夕陽の赤が淡くなり、もう間も無く陽が沈もうとしていた。
>

「――待ってて、お母さん。
(BROKEN:8_20)
>

自分の背中を自分で押すことが出来る……
そんな最後の強さを見つけてみせるから。
>

心の中でお母さんに誓い、
熱を放つ勾玉を胸に抱いた。
>
seisai_no_resonance/sce08_04_02_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)