User Tools

Site Tools


seisai_no_resonance:sce08_03_06_1
銀色の光が瞼の裏を焼く。
>

神社に朝が訪れていた。
>

「ん……朝……?」
>

私の側では奈岐が猫のように丸まったまま寝息を立てている。
>

昨晩は奈岐が起きてから、ご飯を食べて水浴びをして……
と、ある意味で大忙しだった。
>

遠山先輩達のことは、奈岐の話によれば事情を話した上で
説得を試みたらしい。
>

奈岐にしては正攻(BROKEN:8_20)
選択肢だったのかもしれない。
>

その説得に時間がかかって、到着が遅れたと語っていた。
>

とにかく、どちらも穏便に済ませてくれて良かったと思う。
>

「ガジ……?」
>

「ニャーン?」
>

奈岐の側で寝ていたと思ったガジが社の外に出て行く。
>

同じくようにして隣にいたヤヤの姿が無かった。
>

社の内にヤヤがいないから、捜しに出たのだろうか?
>

私はガジを追いかけるようにして外に出る。
>

朝日が眩い、社の外にガジが飛び出し駆けていく。
>

そして、その先にいたヤヤがガジを両手で抱きかかえた。
>

「おっはよー、ガジ。ガジも朝の体操する?」
>

「ニャーン!」
>

手足を動かす様は体操より、頭の定位置に戻りたいと
鳴いているようにも聞こえた。
>

「ガジは食いしん坊だから運動しないとダメだよー?」
>

「ヤヤ、おはよー」
>

「ん、カナカナも起きてきたんだ」
>

声を掛けると、ヤヤが笑顔で振りかえる。
>

「うん、目が覚めてね。奈岐はまだ寝てる」
>

「ふふっ、ナギっちは夜行性だしね」
>

「末来さん達は?」
>

「理事長達は神社の下にいるよ。ミライっちも」
>

今日の作戦会議とかかな……?(BROKEN:8_20)
>

「それでヤヤは準備運動中?」
>

「そそ、今日はいっぱい動くみたいだしねー。
(BROKEN:8_20)
>

穢れと戦う……か。
>

末来さんは、かなり気の濃い場所だと言っていた。
>

中村さんと戦っていたヤヤの姿が頭に過ぎり、
心に僅かな不安が生まれてしまう。
>

「カナ、心配そうな顔してる」
>

そう言ったヤヤはガジへ視線を戻す。
>

その様子がどこか儚げに思えて胸が痛んだ。
>

「ごめん、緊張しちゃって」
>

「ふふっ、ヤヤのことだよね。顔に書いてあるよ」
>

「……意識しないようにしてたんだけどね」
>

「一度ああなるとさ、ホント抑えられないんだよね。
(BROKEN:8_20)
>

どこか遠いところを見るようにしながら、
ヤヤは言葉を続けていく。
>

「前に……ナギっちに言われたじゃん。何人殺したって」
>

「…………」
>

「七年前さ、松籟会の指示でヤヤの家が動くことになった事件が
(BROKEN:8_20)
>

七年前……お母さんが島に戻った時?
>

「松籟会に反抗した諏訪家――
(BROKEN:8_20)
>

「当時、星霊石の力をやっと使えるようになってたヤヤには、
(BROKEN:8_20)
>

「ヤヤ……」
>

俯いたヤヤの表情が見えない、感情が読めない。
>

「理事長がさ、穢れを倒せるぐらい強い人達を本土から連れて
(BROKEN:8_20)
>

「最初は……凄く嫌な感覚だった。でもさ、血が騒ぐんだ。
(BROKEN:8_20)
>

「途中から何も考えられなくなって、ただ狩りをしていた。
(BROKEN:8_20)
>

「気付いたら、ホントに何人殺したか分からなくなってた」
>

「悪いことをしているって意識はあったけど、
(BROKEN:8_20)
>

そう言いながらも、ヤヤの頬には涙が伝っていく。
>

「ヤヤ……」
>

「そんなヤヤがさ、呑気にこうしてガジを抱いて過ごしてる。
(BROKEN:8_20)
>

「そんなこと……許されるような血が流れてないのにさ」
>

これはヤヤがずっと抱え込んできたこと。
>

自身の血に対しての意識……それは恐怖に近いもの。
>

何よりも今のヤヤが見せる涙が全てを物語っていた。
>

「ヤヤはそんな自分が怖いんだね」
>

「……カナ?」
>

ヤヤが振り返ると、再び頬に涙が伝っていく。
>

「頭で分かってても止めることが出来ない。
(BROKEN:8_20)
>

「ヤヤのは、もっと逆らえないものなんだろうけどね」
>

「…………」
>

「前に言ったけど、そんなヤヤもヤヤだから。
(BROKEN:8_20)
>

「ヤヤ――昔のこと、話してくれてありがと」
>

「またヤヤのことを一つ知った、だから何度でも言う」
>

「私はヤヤが大好きだよ」
>

「その身体に流れる血と向かい合うのは怖いと思う」
>

「でも、私が側にいるから。どんなヤヤも大好きでいるから。
(BROKEN:8_20)
>

驚いたように口を開いたヤヤがまばたきを繰り返す。
>

その後、くしゃっと表情が崩れて泣きながら微笑む。
>

「カナ……恥ずかしいこと言うねぇ」
>

「ふふーっ、だってこういう時にしか言えないし」
>

「あははっ、ありがと、カナ」
>

「ヤヤはね、誰かがこうして背中を押してくれる時を
(BROKEN:8_20)
>

「この身体に流れる血も自分の一部だから認めてあげないと
(BROKEN:8_20)
>

「もう大丈夫だよ、カナ。
(BROKEN:8_20)
>

「うん」
>

「ありがと、カナ……
(BROKEN:8_20)
>

それと同時に――仄かに勾玉から熱を感じた。
>

でも、その熱はいつもと違うように思える。
>

ヤヤの気を感じる……?(BROKEN:8_20)
>

それに決戦が近いとお母さんが知らせてくれているように思え、
私は意識を改めようと息を吐き出した。
>
seisai_no_resonance/sce08_03_06_1.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)