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seisai_no_resonance:sce07_06_02_2
「――行こう」
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「その服、僕は嫌いなんだけどな……姉さんの真似だ」
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「着替えに戻ってたら鼎が起きるかもしれない」
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「一言ぐらい言いたかっただけさ」
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「……封印にほころびが生じる前に、キミを礎に戻す」
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「鼎が巫女になるまで頼んだよ」
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「キミに頼まれなくても、それが姉さんの望みだ。
(BROKEN:8_20)
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「……ありがとう」
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「その顔で礼を言うのはやめてくれないかい」
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「さて、急ごう。昌次郎、祠までの様子は?」
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「ほころびが近いと知ってか、穢れが溢れ出しております」
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「道を開けるかい?」
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「ご命令とあらば――」
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「片倉末来、キミは直前まで力を残しておくんだ」
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「分かってる」
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「…………っ」
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ふと意識が戻ってくる。
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飛び起きて視線を左右させる。
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末来さんがいない。
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この感覚……。
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嫌な予感が胸を急き立てる。
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お母さんが勝手にいなくなった時と同じだ。
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何も言わずに私を残して――酷い既視感。
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「末来さん……?」
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「そんな……末来さん……?」
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呼びかけても末来さんの返事が無い。
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向かいのベッドには脱ぎ捨てられたシャツ……
壁に掛けられてあった末来さんの私服が無くなっている。
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末来さんは……行ったんだ。
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お母さんと同じように私を置いてきぼりにして行ってしまった。
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「こんなの……嫌……」
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「また置いて行かれるのは嫌……」
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動けと何度も心の中で繰り返す。
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もう同じ思いをしたくないなら、動け、と。
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お母さんがいなくなって、この島まで来て……
それで……今、動かなかったらどうするの?
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「末来さん……お願い、待って……待ってよ……」
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「もう勝手にいなくならないでっ……!」
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私服を掴み、すぐに着替えると私は部屋を飛び出した。
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手に勾玉を握り締めながら、夜の森を全力で駆ける。
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末来さんの目的地はあの祠で間違いない。
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封印の礎になろうと――戻ろうとしているんだ。
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お母さん達がそれを望んでいても、私は絶対に嫌だった。
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もう失いたくなんてない。
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どうするのが一番正しい方(BROKEN:8_20)
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でも、今はただ末来さんだけは失いたくなかった。
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「はぁっ、はぁっ……末来さんっ……お願い、待って……!」
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走り続ける。
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木々の隙間をくぐり、茂みを越え、とにかく走り続けた。
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息を切らしながら、一心不乱に一度だけ見た祠を目指す。
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ようやく見えた祠の入口には、
黒服の男性達が警備に当たっている様子だった。
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やっぱり、末来さん……それに理事長はここへ来ているんだ。
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私が走り込んでくると、男性達は驚きつつも、
慌てて進路をふさごうとする。
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「退いて、退かないとひどいよっ!」
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勾玉を握り締め、脅しではないと火の粉を散らす。
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その勢いに怯んでくれたのか、僅かに出来た隙をついて、
私は洞窟の中へ駆け込んでいった。
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暗い洞窟内を薄く光る鉱石が照らし出す。
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仄かな明かりだけを頼りに、私は奥へと駆けていく。
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静寂に包まれた洞窟内に自分の足音が反響する。
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その音が余計に焦燥感を煽った。
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まだ手遅れじゃないと信じて、
私は速度を落とさずに走り続ける。
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そして、大きな石造りの門を越え、見えた広間に飛び出す。
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「末来さんっ!!」
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儀式が行われるであろと広間――。
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そこに末来さんの背中を見つけると、息を切らしながらも、
私は大声をあげていた。
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「鼎……どうして……」
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「……来てしまったか」
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「昌次郎、彼女を止めてくれ」
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驚く末来さんと、唇を噛んだ理事長が指示を出す。
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「……頼継様、どうかご無事で」
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末来さんと理事長は私から視線を逸らすと、
さらに奥へ急いで行ってしまう。
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そして、私の前に秘書の人が命令通りに立ち塞がる。
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「はぁっ、はぁっ……そこ、どいて下さいっ!」
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「それは……出来かねます。頼継様に私は全てを捧げた身」
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「っ……だったら、どうして……ついていかないんですか!?」
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「…………!」
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冷静沈着に見えた男性の眉が僅かに跳ねた。
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「この先がどこに続いているのか、知ってるんですよね……!」
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「そんな場所にあの人を行かせていいんですかっ!?」
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「…………」
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押し黙った秘書の人の横を私は走り抜ける。
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その男性が私を止めることは無かった。
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きっと……止められないんだ。
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それが分かっているから、私は振り返らずに走り抜ける。
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石造りの舞台を駆けて、末来さん達が消えた奥を目指した。
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「末来さんっ!!」
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再び見えた背中に声を張り上げる。
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私を見た末来さんが僅かな驚きの後、首を横へ振るう。
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「鼎……これはボクと未来の望みなんだ」
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「そして、鼎はボク達の希望なんだ」
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「そんな理由を急に押しつけて……
(BROKEN:8_20)
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「末来さんが私のお母さんなら……
(BROKEN:8_20)
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「鼎……」
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どこか迷うように末来さんの視線が彷徨う。
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その時、隣にいた理事長が何かに気付き、声をあげた。
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「いけない、勾玉の接近に反応しているっ……!」
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そして、すぐ奥にある門へと振り返る。
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閉じられている石造りの門――。
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その扉が僅かに脈動したように見えた。
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あれが死者の魂が向かう場所……黄泉へ繋がる門?
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門が蠢くと、瘴気が溢れ出し、人の形……
見たことないような穢れを作り出していく。
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肌に突き刺さる感覚からして、穢れに間違いはないのに……。
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これは何……?
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「……姉さん」
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理事長の言葉通り、その穢れの顔はお母さんと同じものに見えた。
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「そんな……お母さん……?」
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まさかお母さんが……?
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魂が囚われているって聞いたけど……こんな形で?
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そう思っていた時、穢れが身体を蠢かし、
左右から無数の棘を解き放ってきた。
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「――ッ!?」
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最も近くにいた理事長に穢れの棘が迫っていく。
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お母さんの顔をしていても、意識はもう穢れに堕ちている……!
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「頼継様っ!!」
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彼を呼ぶ声とともに黒い影が駆けた。
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そして、理事長を庇い、
秘書が穢れの棘を受け止める。
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金属のような棘が男性の背中を切り裂き、
地面に鮮血が散っていく。
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「ぐううぅっ!!」
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「昌次郎っ……!?」
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「ご無事……ですかっ……」
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「僕を庇うなんて、まったくキミって奴は……」
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その場で倒れ込みかけた秘書の人を理事長が支える。
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そして、手に付いた秘書の血を見た後、
理事長が険しい視線を穢れへ向けた。
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「アレは姉さんで間違いない。僕の目には視える」
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見鬼――魂を覗く鬼子の目で理事長は穢れを見ている。
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「穢れを祓うんだ。姉さんの魂がまだ視える間に祓ってくれ」
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その声に応えるように、末来さんが穢れの前に立つ。
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「未来、すぐに解放してあげるから――」
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そして、星霊石を輝かせ、光を解き放っていく。
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その光は瘴気すら祓っていくが、お母さんの穢れは怯まない。
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末来さんはその姿を見つめながら、星霊石の光を集束させていく。
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巫女装束を纏い、剣を手に宿し、再び穢れに向かう。
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瘴気を切り裂くようにして、
自在に飛び交う武器が既に穢れを包囲している。
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「末来さんっ!(BROKEN:8_20)
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「鼎……?」
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「巫女は一対ですよね、力を使うなら私の力も使って下さい」
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「…………」
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末来さんの側に駆け寄りながら声をあげる。
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そして、差し出した私の勾玉を見て、
末来さんは再び迷うように視線を左右させた。
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「あんな状態のお母さんなんて見てられないです」
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「娘を放り出して……何してるんだか」
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「鼎……」
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「両親の責任ですよ、末来さん」
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私がそう言って微笑むと、
末来さんの瞳がようやく勾玉を捉えてくれる。
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「そうだね、これは親の役目だ」
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そして、末来さんの手が私の勾玉に触れた。
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「全部、末来さんに託します」
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これで一対の交信は交わした。
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あとは力を発現させるだけ。
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私は勾玉を強く握り締め、炎を立ち上らせていく。
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「鼎の魂を感じる、これなら大丈夫」
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末来さんが剣の切っ先をお母さんの穢れへ構える。
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同時に展開していた武器が一斉に穢れへと向かう。
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「未来、戻って来るんだ。鼎が来たよ」
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「未来っ!!」
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お母さんの名前を強く呼んだ末来さんが剣を振るう。
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そして、穢れを祓うための戦いが始まった。
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seisai_no_resonance/sce07_06_02_2.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)