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seisai_no_resonance:sce07_06_00_0
カーテンの開く音、差し込む朝日に目が覚める。
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「ん……私、昨日あのまま……」
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身体を起こすと同時に、
ここが末来さんの部屋だと思い出す。
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そういえば、昨日……私、末来とお風呂場で……。
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ちょっとでも思い出すと、頬が上気してしまいそうになる。
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「おはよう、鼎」
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末来さんは既に制服に着替え、支度を終えているようだった。
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「おはようございます……登校、早いですね」
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「理事長に呼び出されただけだよ。
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昨日の話……お母さんと末来さんの?
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どうしてその話を理事長と……?
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気になった途端、私はベッドから飛び出していた。
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「……その話でしたら、私も行きます」
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「それはいけない。鼎は一対の相手のところへ戻るんだ」
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「封印のため……ですか?」
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こくりと末来さんが頷く。
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「最後に必要なのは一対としての力であり、魂なんだよ」
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末来さんは(BROKEN:8_20)
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昨日から私の気持ちは何も変わっていない。
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自然と手が末来さんの服を掴んでいた。
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「鼎……?」
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「私、お母さんも末来さんも……失いたくないです」
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「鼎、それは出来ないよ」
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そう言われても末来さんを離すことなんて出来ない。
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「末来さん、私はあのお母さんの娘です。
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「……難しいことを言うね」
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「だから、今の末来さんからは離れません」
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「どこかに行ってしまいそうな……そんな顔してます」
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私の言葉に少しだけ目を丸くした末来さんが息を漏らす。
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「鼎の性格は遺伝だね。
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「遺伝ですね。ありがとうございます」
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私は末来さんに微笑み、すぐに寮を出られるように支度を始める。
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「さて、鼎を連れて行くと……彼も困りそうだ」
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末来さんはそんな独り言を口にして苦笑していた。
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先日と同じく、理事長は食堂にいるそうで、
秘書の人に食堂まで案内される。
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「どうぞ、頼継様がお待ちです」
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「どうも」
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テーブル席で理事長が今日はコーヒーを傾けていた。
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「やあ、おはよう――と言いたいところだけど、
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理事長の視線が訝しげに私へ向かう。
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でも、末来さんは特に気にする様子もなく、
テーブル席に座った。
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「鼎に全部話す(BROKEN:8_20)
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「全部?(BROKEN:8_20)
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理事長の言葉の最中にも、末来さんが私に席をすすめてきて、
何となくそのまま座ってしまう。
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「封印の状態が危険。それは知っているはず」
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「当然だ。でも、キミの口から話せばどうなるか、
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「ボクには話す責任がある」
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「……それは姉さんに助けられた恩があるからか?
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「えっ……?」
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理事長の口から……今、何て……?
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姉さん……?(BROKEN:8_20)
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えっ?
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まばたきを繰り返す私を見たのか、
理事長が露骨に眉をしかめていた。
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「やれやれ……全部話してないじゃないか」
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そして、少し苛立ったようにコーヒーカップを置く。
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そっか、この人も奈岐と同じで……私の考えを読める。
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「その話は封印に必要無いこと」
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「しかし、キミは責任という言葉を口にした。
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「…………」
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理事長の言葉に末来さんが何も答えず目を伏せる。
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そんな末来さんから視線を逸らして理事長は長い息を吐いた。
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二人の状況も、理事長の言葉の意味分からない私は、
ただ混乱するだけで、視線を左右させる。
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「……鼎、落ち着いて聞いて欲しい」
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私の顔を覗き込むようにして、末来さんがゆっくりと話し出す。
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「未来の本名は諏訪未来。高遠は母方の旧姓だ。
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「諏訪……」
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はぁ、と理事長が再び息をつくのが聞こえた。
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「諏訪家、即ち僕の家に当たる。そして、諏訪未来は僕の姉だ」
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「…………」
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「キミからすると、僕は叔父に当たる」
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そんなことを言われてしまい、まじまじと理事長を見るが……
お母さんにまったく似ていない。
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どうしても鬼子としての要素が強すぎて、
髪や肌に目が行ってしまう。
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「それから……鼎、まだ落ち着いて聞いて」
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「鼎はね、未来と――ボクの子供なんだ。
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「…………」
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開いた口が塞がらなかった。
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そして、そんなことを言った末来さんから目を逸らせない。
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得体の知れない緊張で、唇が震えている。
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落ち着けと頭の中で繰り返しながら、言葉を再確認していく。
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お母さんは女の人、これは間違いない。
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それで末来さんも……女の人で間違いない。
昨日の今だ。見違えるはずもない。
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ということは……?(BROKEN:8_20)
どこで、どういう風に……私を?
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「ボクはね、正確にはもう死んでいる存在――
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「こうしてボクが人の形を保っていられるのも、
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「……それで……どうやって……お母さんと?」
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口の中が乾いている。
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思考が無茶苦茶になっていて、もう考えることが出来ない。
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そんな私を見ていた理事長はこめかみ辺りを押さえながら、
窓の外へ視線を逸らしていった。
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「ボクは長い時の中で自分の姿形すら忘れてしまっていた。
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「それで、末来さんは……お母さんとそっくりに……」
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「魂だけの存在のボクは何にでもなれる。
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とても……信じがたい話だった。
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でも、末来さんが嘘を言っている様子も無い。
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「この織戸伏の地は、最も死に近い場所――
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「何代にも渡り、巫女の命を贄とし続け、封じているものこそが、
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理事長が窓の外を見たまま、淡々と言葉を口にしていく。
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そんなことを聞きながらも、
私は落ち着こうと何度も深呼吸を繰り返していた。
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「これで彼女は全部知ったことになるかな?」
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「……鼎、大丈夫?」
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理事長に答えず、末来さんが私の顔を覗きこむ。
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「まだ頭の中で混乱してますけど……なんとか」
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それでも強張った顔がしばらく元に戻らない気がした。
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理事長は無言で手を挙げ、秘書を呼ぶと水を持ってこさせる。
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私は秘書の人から差し出されたコップを受け取った。
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「ありがとう……ございます……」
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水を口に含んで飲み干す。そして、深呼吸を何度か。
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何とか気持ちだけ落ち着いてくれた気がする。
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「はぁ……これだから、僕はキミが苦手なんだ。
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「……未来にもよく言われたよ」
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「まあいい。今は建設的な話をしよう」
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理事長と末来さんがそうして話を進めていく。
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もう私は隣で聞いているだけで精一杯だった。
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「姉さんの魂が勾玉に反応していることに気づけたのは、
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「手遅れになっていれば、僕は躊躇いなく彼女を礎に選んだ。
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「封印の状態は?」
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「夏までは持たない」
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「……そう、分かった」
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僅かに息をついた末来さんが目を伏せる。
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それだけで話が終わったのか、理事長が私へ振り返った。
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「フッ……姉さんは育て方を間違えなかったみたいだ」
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「……理事長?」
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「キミの心はまるで水のようだ。何にでもなることが出来る。
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「そして、どんな星霊石でも使いこなせる――
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苦笑の後、理事長が席から立ち上がる。
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「話はおしまいだ。もう充分に伝わっただろう?」
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「そうだね。分かってる」
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目を伏せたまま、末来さんがそう答えた。
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返事を聞いた理事長は秘書を連れ、足早に食堂から出て行く。
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そして、私と末来さんの二人がテーブル席に残された。
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「…………」
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何も言えず、沈黙の時間が流れていく。
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しばらくして、末来さんは目を閉じたまま私に話しかけてきた。
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「……こんな打ち明け方、未来に知られたら怒られてしまうね」
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「でも、話せて良かったと思っている自分もいる」
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「もし何も伝えられないまま、鼎と別れていたら……
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まぶたを開けた時、末来さんの瞳が僅かに揺れた気がした。
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末来さんが……泣いていた……?
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「これからどうするか――それは鼎が決めて欲しい。
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「…………」
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末来さんは……するべきことをする……?
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それが意味するところは一つしかない。
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この島を救うためにお母さんと一緒に――。
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「私が決めていいなら……末来さんから離れません」
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「鼎……?」
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「お母さんと同じように、私を置いていくつもりなんですよね」
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「もう……置いてきぼりは嫌です」
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私の想いを聞いた末来さんはどこか悲しげに目を伏せた。
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「そう、それが鼎の選択なんだね」
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その後、ゆっくり立ち上がると私に手を伸ばしてくれる。
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「おいで、鼎。今日は未来の話をいっぱいしよう」
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「……授業はいいんですか?」
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「ふふっ、構わないよ。ボクにとっては鼎が一番だ」
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いつものように微笑んでくれた末来さんにどこか安堵して、
私はその手を取った。
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お母さんがいなくなった時と同じ思いは……もうしたくない。
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封印がなんだと言われても、私はもう失いたくなんてない。
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末来さんだけは、絶対にもう……。
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自然と私は末来さんの手を強く握ってしまう。
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末来さんはそんな私に何も言わないまま、
手を握りかえしてくれた。
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seisai_no_resonance/sce07_06_00_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)