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seisai_no_resonance:sce07_04_19_0
数刻後、長かった一日の夜が訪れる。
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何度か池と神社を往復して掃除を終えた頃には、
すっかり夜も更けてしまっていた。
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静かな社内に外から虫の音が響いている。
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光源は月明かりだけで、どこか不気味な雰囲気が漂う。
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葉子先生が懐中電灯を鞄に入れてくれていたけど、
灯りは目立つので、今は使わないでおく。
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埃を払って、綺麗になった床と壁にもたれる。
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「ね、奈岐……今年の巫女はもう決まったかな」
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マントを抜いでから、隣に座る奈岐に話しかけた。
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「ああ、もう巫女は軟禁されているだろう。鼎の呪いの御陰だ」
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学園長の前で言った私の言葉――全てを語ったわけじゃないし、
直接的なことには、それほど言及していない。
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それでも秘密主義に徹する松籟会にとっては、
聞き捨てならない言葉ばかりだろう。
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学園長が松籟会に伝えたか、それともあの部屋にいくつ盗聴器が
仕掛けてあったか……それは定かではない。
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でも、他の誰かの耳に入る前に、処理をすることだけは確かだ。
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「……遠山先輩には悪いことをしたかもしれない」
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あそこにいた巫女候補は、遠山先輩と中村さんの二人だ。
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恐らくあの二人が今年の巫女に選ばれ、口を封じられる。
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「気に病むな。いずれにしても消去(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「それに……事実を耳にした以上、遠山が風間との巫女に拘るとは
(BROKEN:8_20)
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「酷い二択だよ。そんな連鎖をもう終わりにしないと」
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もうこれ以上の犠牲を増やしてはいけない。
自然と手が力み、拳を作っていた。
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「儀式の場所は以前に行った祠で違いないだろうが……
(BROKEN:8_20)
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「唯一の扉は巫女の力が通じぬように霊石――
(BROKEN:8_20)
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「巫女の力が通じない、か……じゃあ、それ以外の力なら?」
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「それはやってみないと分からないが……何がある?」
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閃いたといった様子の私に、奈岐が疑問の眼差しを向ける。
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そして、私が頭の中でその方(BROKEN:8_20)
奈岐はフッと吹き出して笑った。
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「確かに、それは巫女の力ではないな」
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「ふふっ、成功するかは分からないけどね」
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息を吐き出しながら、私は暗い天井を見上げる。
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一つ考えるべきことが終われば、次に考えないといけないことが
やってくる。
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	「お母さんは……いったい何をしたの?」
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	「巫女の務めを果たさず、禁忌を犯し、島に災いを呼び起こした。
	(BROKEN:8_20)
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	「災いって……?」
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	「巫女が務めを果たさずに過ぎた数日間、島に無数の穢れが溢れ、
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	「そして、お前の母の代わりに立てられた巫女は――」
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	「…………」
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	「忌むべき巫女と、存在してはならぬ巫女の間に……
	(BROKEN:8_20)
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途端に分からなくなった自分自身の存在について。
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巫女と巫女の間に、厄災の象徴として――生を受けた。
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巫女と巫女の間……?(BROKEN:8_20)
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少し経った今でも理解が及ばない。
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お母さんが災いを引き起こしたとして……
その象徴として、私が巫女と巫女の間に生まれる?
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そこに、子を成せる要素があるのだろうか?
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「…………」
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中村さんが私を揺さぶるために、うそぶいた可能性もあるし、
間違ったことを松籟会から知らされているかもしれない。
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「鼎、その答えも巫女が贄となる場で分かるはずだ。
(BROKEN:8_20)
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考え込んでしまっていた私を心配するように奈岐が覗き込む。
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「……そうだね」
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あの場所へ封印に向かった末来さんの姿を思い出す。
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お母さんにそっくりな理由も、そこにあるんだろうか?
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腰にある勾玉を握り締めると、僅かに熱を感じた。
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その手の上に、もう一つ温もりが重なる。
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「鼎、奈岐に出来ることは少ないと思う……」
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「ただ……その……心の準備なら、もう出来てるから」
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奈岐の照れた言葉に思わず微笑んでしまう。
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「ふふっ、それは奈岐がしてくれる合図?」
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「そ、それは……たぶん……まだ……無理……」
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どんどん縮こまっていく様子が、いつもより愛らしく感じる。
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だから、もっとそんな彼女に触れていたいと思った。
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「冗談だよ。私は奈岐に触れることが幸せだから」
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「……鼎」
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奈岐の手を握りかえして、正面から向かい合う。
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「鼎が……幸せに思ってくれるなら、好きにして欲しい」
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「ふふっ、奈岐も幸せに思ってくれないとダメだよ?」
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「それは……と、当然だから……」
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額をくっつけて、熱くなっている奈岐の体温を感じる。
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「じゃあ、奈岐から聞かせて」
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「…………っ」
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こうして吐息のかかる距離にいると、
奈岐から感じる熱がさらに上がるのが分かった。
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視線を彷徨わせ、何か言いかけた唇を慌てて閉じたり、開いたり。
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私が奈岐みたいに考えを覗けるなら、困らないんだろうけど、
とてもそんなことは出来ないから、言葉を求める。
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「ね、奈岐?(BROKEN:8_20)
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出来ることは、ちょっとだけ背中を押すことぐらい。
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それだけでも充分だったのか、奈岐が上目遣いに私を見る。
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「鼎のこと、好きだから……もっと奈岐に触れて欲しい」
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「触れるだけでいいの?」
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「……い、意地悪っ……」
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ちゅっと啄む音を立てて、奈岐の頬に口づけていく。
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「また…………して、欲しい……」
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これ以上いじめるのは可哀想に思えるぐらい、
奈岐が耳まで紅潮してしまっている。
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「うん、分かった」
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なので、いじめるのはここまでにして、
頬から唇へキスの居場所を求めて移動していく。
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「奈岐のこと、大好きだよ」
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「んっ……鼎……」
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唇にかかる吐息を感じて、奈岐が身体を震わせた。
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そして、奈岐は続きを期待するように目を閉じる。
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「……んぅ……んっ、ちゅっ…………」
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唇を重ねながら、奈岐の服へ手をかけていく。
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seisai_no_resonance/sce07_04_19_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)