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seisai_no_resonance:sce07_04_18_0
随分と古びた建物が見えたところで、勾玉の力を戻す。
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両手に抱えた荷物と、頭にいるガジを引き離して、
背負っていた奈岐をゆっくりと地面に下ろした。
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「奈岐、大丈夫?(BROKEN:8_20)
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「ああ、心配をかけた……」
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私の身体に寄りかかるようにして、奈岐が地に足をつける。
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「ここって……神社だよね?」
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「誰も管理していないし、存在自体を知っている者も少ない」
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鳥居はまだしも、社の方はかなり朽ち果てているように見えた。
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手前の台座には何かが置かれていた痕跡こそあるけれど、
肝心の狛犬らしきものは見当たらない。
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社を守るはずの存在がいないから、
こんな外観になってしまったのだろうか?
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「文献によれば、守護していたのは白い狼だったそうだ。
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おぼつかない足取りで奈岐が社へ向かい歩き出す。
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「理事長が言ってたこと?(BROKEN:8_20)
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「ああ、ここ数十年は鬼子自体が生まれてこなかったから、
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私は荷物を持つと奈岐の後を追って社へ向かっていく。
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「でも、理事長は生きてるし、奈岐も巫女を強要されてなかった」
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「あの男がどうやって生き延びたのかは分からないが、
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「……泳がされていたとも言うがな」
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皮肉めいた笑みを浮かべた後、奈岐は社の扉に手をかける。
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ガタッという音が鳴り、木くずが散っていく。
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腐食しているのか、引き戸が上手く開かずに、
奈岐が扉をガタガタと揺らす。
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「大丈夫?(BROKEN:8_20)
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「案ずるな、私は眷属だ。ここの、な」
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そういえば、そんな設定というか、話もあった。
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こんな状態の神社だし、状況も状況だし……怒られないよね。
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ガタンッと一際大きな音が鳴り、奈岐が社の戸をなんとか開く。
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「鼎、中へ入ろう」
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手に付いた埃を払ってから、奈岐は戸をくぐっていく。
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「うん。ガジ、行くよ」
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足下で伸びをしていた猫に声をかけて、私もその後に続いた。
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社の中も酷い有様だった。
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カビの匂いが(BROKEN:8_20)
その一部は腐食して抜け落ちている始末だ。
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きっと何かを祀ってあった祭壇らしきところは空洞になっていて、
ここにはもう神様がいないんだなと実感させてくれた。
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「ね、奈岐、次に動きがあるまで、お世話になる場所だし、
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「綺麗に……と言われても、この惨状だ」
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「眷属なんだよね?(BROKEN:8_20)
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むぅ、と唸った奈岐が床に下ろしてあった鞄を漁り始める。
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「……(BROKEN:8_20)
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「池って前に水浴びしたとこ?」
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「そうだ、歩いて五分もかからない。
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色々と思い出のある池だからか、不意に奈岐と視線が合う。
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「……さ、先に水を汲み行ってくるっ」
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「わっ、ちょっと待って」
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逃げ出しかけた奈岐の手を慌てて掴む。
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「最初は一緒に行かないと、どこに池が分からないよ」
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「……それも……そうか」
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珍しく抜けてしまったのは、恥ずかしい事を思い出したからか、
それとも……ようやく安心出来たからか。
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「ね、奈岐、おいで」
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「……へ、変なことしない……?」
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「あはは、しないよ。ちゃんと奈岐が泣けるようにするだけ」
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「…………」
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「それは……助かる」
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奈岐が私の胸元に顔を埋めてくる。
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そして、肩を震わせ、静かな嗚咽が漏れ始めた。
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「っ……ううぅ……ぁ…………」
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「よく我慢したね……八弥子さんのこと、奈岐が一番辛いよね」
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「もし禰津が回復しなかったら……奈岐は……どうしたら……」
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「禰津は……奈岐のことをよく見ていてくれた。
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「血の縛られた獣……きっとアイツが一番傷つく言葉なのに……
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「アイツはただ笑っていればいいのに……猫とじゃれていれば
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「そして、今……死の淵を彷徨っているっ!!」
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「アイツは大バカ者だ……だから、余計にあんなことを言った
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しゃくり上げた奈岐が答えを求め、私を見上げる。
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「鼎……禰津は……ちゃんと戻って来られるよね……?」
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「うん……八弥子さんは嘘をつく人じゃないから。
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奈岐の頭を撫でて、もう一度強く抱き寄せる。
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「鼎っ……ごめん……ごめんなさい……ごめんなさいっ」
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「ごめんなさい……奈岐が……奈岐が……全部……
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「禰津も、鼎にも……奈岐はどれだけ謝っても……」
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「奈岐、もう充分だよ。私はね、失敗を悔やみ続けるより、
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「巫女にはもうなれない。でも、私達は生き延びて、
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「まだやれることは……いっぱいあるよ」
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奈岐をゆっくり引き離し、涙の跡で濡れた頬を撫でる。
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「鼎の……そういう考え方が……奈岐には出来ない」
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「出来なくていいんだよ。奈岐の分まで私が前向きで、
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「鼎……」
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私の名前を呼んだ奈岐に微笑み、ゆっくりと顔を近づける。
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「奈岐、私のために……怒ってくれてありがとう」
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「んっ……」
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ちゅっと啄むように口づけを交わす。
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奈岐の細い身体に腕を回したまま、何度か唇を重ねていく。
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涙の味がするキスは少しだけ胸を痛くさせるから、
より奈岐が欲しくなって、強く身体を抱き寄せる。
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「また……するの?」
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「ううん、今はこうしてるだけで……」
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「今は……?(BROKEN:8_20)
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「ふふんっ、それはなにより。心の準備が出来るね」
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「……鼎、ずるい」
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そう呟いた奈岐から私への口づけ。
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そのまま私達は飽きることなく何度もキスを繰り返す。
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ここに来るまで痛み続けていた心の傷が落ち着くまで、
互いの体温を感じながら、互いを求め合い続ける。
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そんな時間を過ごした――。
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seisai_no_resonance/sce07_04_18_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)