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seisai_no_resonance:sce07_04_17_0
霜が降りた木々の合間を縫うようにして、奈岐が駆ける。
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さすがの速度に対応しきれず、中村さんは木々を盾にしながら、
正面からの衝突を避けていた。
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今の状態の奈岐と剣を交えれば、また武器を失うことになる。
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そこまで知りながら、中村さんがまだ交戦を続ける理由――。
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「やっぱり……奈岐の息切れを狙ってる」
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奈岐が連続して放つ短刀を木々を盾に中村さんは回避する。
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距離を詰めれば、炎で牽制しながら後退をしていく。
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逃げに徹する中村さん、追いかける奈岐――。
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その表情から余裕が無くなったのは、やはり奈岐が先だった。
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「ぐっ……!」
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構成しようとした氷の短刀が中空で砕け散ってしまう。
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肩で大きく息をし、額には大量の汗が滲んでいた。
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「はぁっ、はぁっ……身体が処理にっ……」
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「フッ、やはり冷静さを欠いていたか」
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木の陰から中村さんが姿を見せると、周囲の冷気を炎で薙ぎ払う。
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「それだけの力を何度も使えば、体力の消耗も激しいはず」
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「鬼とはいえ、肉体の限界値は人並みのようだな」
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中村さんが大剣を片手に奈岐へ歩み出す。
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「私はまだ――!」
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新たに氷を集結させた奈岐の表情が苦痛に歪む。
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「がはっ……!」
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奈岐の息が詰まり、氷は短刀を構成する前に砕け散る。
そして、その場に崩れ落ちて両膝をついた。
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周囲に漂っていた冷気は消え失せ、力が星霊石に戻っていく。
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「はぁっ、はぁっ……」
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「最後は自滅か――滑稽だな」
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そして、中村さんの大剣がゆらりと蠢いた。
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「そこまでっ!」
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勾玉に溜め込んだ熱を解放させ、燃え盛る炎をイメージした。
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奈岐の冷気が途絶えたことで、ようやく力を使うことが出来る。
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「幸魂を欠いた状態で、私に敗北したことを忘れたか?」
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「今が同じ結果になるとは限らないっ」
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奈岐と中村さんの間に割って入り、私は炎を纏った剣を振るう。
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「鼎っ……」
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「ごめん、もっと早く加勢出来れば良かったんだけど」
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「でも、その分だけ戦えるから」
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剣の切っ先が中村さんの姿を捉える。
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「……今が好(BROKEN:8_20)
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「どうして、そんなに私を狙うの?」
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「お前の存在を肯定することは、島に災いを呼び起こすことと
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「お前の母の所業を許すわけにはいかない」
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中村さんの大剣が蒼い炎を携え、構え直される。
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「お母さんは……いったい何をしたの?」
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「巫女の務めを果たさず、禁忌を犯し、島に災いを呼び起こした。
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「災いって……?」
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「巫女が務めを果たさずに過ぎた数日間、島に無数の穢れが溢れ、
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「そして、お前の母の代わりに立てられた巫女は――」
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「…………」
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蒼い炎が強まり、中村さんから感じる殺気が膨れあがった。
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「忌むべき巫女と、存在してはならぬ巫女の間に……
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忌むべき巫女……?(BROKEN:8_20)
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お母さんと……まさか末来さんのこと?
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でも、巫女の間にって……?
頭の中で生まれた符合が合致してくれない。
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「二度と災いを繰り返してはならない!」
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「っ!?」
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もう話すことは無いと中村さんの足が動いた。
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「今度こそ、この手で仕留めるっ!」
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大剣を横手に構え、勢いよく私へ迫ってくる。
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「昌次郎、今だ!」
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「何っ!?」
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黒い影が視界に映ったかと思えば、
中村さんの大剣を素早い蹴りを放っていた。
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轟音を響かせる先で黒スーツの男性が拳を構え直す。
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「オン・ベイシラマンダヤ・センジキャ・ソワカ――
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「ここは、安部一門が残党、安部昌次郎がお相手を務めましょう」
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「この後に及んで……犬が邪魔をするかっ!」
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中村さんが大剣を振るい反撃を試みるが、
秘書は素早い足運びで一撃を回避する。
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そして、生まれた隙を逃さずに連続して拳を打ち込んでいく。
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「チッ……!」
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不本意にも守りに入らざるを得なくなった中村さんが後退する。
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その姿を目で追っていた時、視界に見慣れた人影が入り込む。
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「やあ、ここは僕と昌次郎に任せて、キミ達は逃げるといいよ」
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「……理事長」
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手を貸してくれたのは礼を言うべきところだけど、
でも、奈岐の星霊石の枷を外したのはこの人で……。
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「この島で鬼と呼ばれた子はね、関わる人を不幸にしてしまう」
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「でも、実際はどうなんだろうね?」
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「男の鬼子は間引かれ、女の鬼子は生まれた瞬間から、
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「だからさ、鬼子と深く繋がった一対の巫女も命を落としてきた。
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そこまで語った理事長が僅かに微笑む。
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「――鬼子と関わっても不幸にならないかもしれない。
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迷った私の背中を押すように、理事長はそう告げていた。
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「……分かりました。聞きたいことはいっぱいありますけど、
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「礼を言うよ。ほら、早く行きな」
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理事長に頭を下げて、地面に座り込んだままの奈岐に駆け寄る。
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「奈岐、背負うからね。道案内だけお願い」
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「っ……鼎……すまない……」
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奈岐を背負って、二人分の荷物を拾えば、両手が塞がってしまう。
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力を解放しているからこその荒業だけど、
これ以上荷物は運べない。
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「仕方ない、ガジは頭に噛み付いても良し!」
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「ニャーン!」
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そんなに嬉しそうに鳴かなくても……って。
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「痛っ!(BROKEN:8_20)
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「ううぅ、とにかく急ごう……!」
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全力で私はその場から逃げ出していく。
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背後で中村さんの怒声と、理事長が秘書に指示を出す声が
響いていたけど、今は振り返る余裕なんてない。
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とにかく、足を止めずに走り続けた。
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seisai_no_resonance/sce07_04_17_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)