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seisai_no_resonance:sce07_04_12_2
昼過ぎになると、私達は巫女候補として学園の外れにある森へ
呼び出された。
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いつものように立会人として松籟会の人達が並んでいる。
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その中には、理事長と秘書の人の姿も見えた。
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「今回のように儀式が早まることは異例と思われるでしょうが、
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「これより巫女となるものは、仕来りに従う必要があります。
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淡々と語った学園長が私達の顔を順番に見つめていく。
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「……異論は無いようですね。
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「第五試合は、遠山・風間と三輪・保科の二組――
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最後に戦う相手は、やはり決まっていた。
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八弥子さんと中村さん――荒魂は中村さんが務めるだろう。
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そして、恐らく中村さんには松籟会から指示があったはず。
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私達を巫女にして贄とするか、それともこの場で処理するか。
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松籟会にいる叔母さんの反応を見る限り、
たぶん後者になるだろうな、と予想はしておく。
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「では、本日の<RB='みそぎはらえのぎ'>禊祓乃儀<RB>を始めます。
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学園長の声が響き、由布と遠山先輩、恵と三輪さんの二組が
前へ歩み出していった。
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この試合が終われば、私達の番がやってくる。
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「茶番だな……遠山と三輪が刃を交えるならば、
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「それって、(BROKEN:8_20)
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「暗黙の、な――それが分かった上で試合をする。
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呆れたように奈岐が息を吐き出し、松籟会の人達を睨む。
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同じく――松籟会の人達の中でも、つまらなそうに、
理事長が秘書に何か話しかけていた。
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試合は一分足らずで決着を迎える。
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奈岐が言った通り、遠山先輩の圧勝だった。
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大鎌に武器を絡め取られた三輪さんが早々に降伏。
出来レースとはいえ、あまりに呆気ない幕切れである。
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「次に、第六試合の一対となる巫女は前へ出なさい」
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学園長から順番を告げられ、私は長い息を吐き出す。
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「鼎、遠山の時と同じだ。中村を守りに誘い込め」
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「それ、また無茶な力を使うつもり?」
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「……中村の奴は命を賭けて勝負に来ている。
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「…………」
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ここで負けるわけにはいかない。
そんな想いが奈岐から伝わる。
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迷うな、私……今まで隠してきた切り札を使う時なんだ。
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だから、今は――。
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「奈岐、信じてるから」
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「ああ、信じていてくれ。それが力になる」
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話を終えた時、学園長が次の指示を出す。
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「では、それぞれの巫女は御魂を体現なさい」
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これが最後の試合になる。
深呼吸した後、私は勾玉を手に取った。
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そして、荒魂を体現するべく、私は勾玉の力を放つ。
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「――ッ!!」
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炎の流れを集束させ、全て私の力へ変えていく。
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炎を払うと、私は巫女装束を纏い、一振りの剣を手にする。
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「奈岐を信じるよ」
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奈岐の星霊石に片手で触れ、力の交信を行う。
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「――全力で行く」
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力の解放、同時に吹き荒ぶ冷気に目を疑った。
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「っ……これは……!?」
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今までと比較にならないほどの力が、全てを凍てつかせる。
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草木だけでなく、炎を纏った私の巫女装束ですら、
奈岐の氷に抑え込まれ、霜が付着していく。
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「何だ、あれは……」
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「ナギっち……?」
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感じたことのない力に、中村さんと八弥子さんが声をあげていた。
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「これほどの力……理事長、まさか星霊石を……!」
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驚きを隠せない学園長の視線が理事長を捉える。
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「鬼に生まれた者は、最初からこうするべきだったんだよ」
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「……人と同じように生きることなんて出来ないんだからさ」
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その言葉は諦めではなく、その場にいる全員への警告に聞こえた。
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「奈岐……」
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剣の柄を握り、力を籠めても炎が発現しない。
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それほどまでに奈岐の冷気が全てを制圧していた。
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「っ……!」
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さらなる力の波動を感じて、私は反射的に守りを固める。
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衝撃が駆け抜け、絶対零度の世界が作り上げられていく。
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守りを固めた私の剣が熱を失い、凍り付いてしまっている。
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「くっ……!」
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冷気を解放した奈岐の顔が険しく歪む。
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想定以上の力なのか、それともまだ複雑な思考を行っているのか。
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その表情から読み取れるのは、既に限界を越えているということ
ぐらいだった。
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その直後、唐突に私へ力が流れ込んでくる。
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今までにないほど力が自然と身体に炎を宿していく。
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それと同時に――。
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「っ……?」
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視界が暗転して、平衡感覚を失った足がふらついた。
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目を凝すと、闇の中、僅かに光が差し込んでいることに気付く。
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「あれは……?」
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	「ぐはっ……!」
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	「消えろ」
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	中村さんに踏みつけられ、息を詰まらせる私の姿があった。
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	これって……過去の光景?
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	でも、私の視点じゃない。私はあそこにいるはずだ。
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	考えている間にも、中村さんの右手に宿す蒼い炎が解き放たれる。
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	「――ッ!?」
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	倒れている私が両手を交差させる。
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	「これはっ!?」
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	ドンッという衝撃が周囲に駆け抜けていく。
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	砂が飛び散り、中村さんの身体が中空に投げ出される。
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	がたがたと視点が動き、砂浜を駆けていく。
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	向かっている先は砂浜に倒れたままの私だった。
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	「鼎っ!(BROKEN:8_20)
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	頭の中で奈岐の声が響いている。
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	「鼎っ!(BROKEN:8_20)
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	意識を失っている私の顔が間近で映し出された。
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	ようやくこれが奈岐の記憶だってことが分かる。
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	それと同時に恐ろしいほどの冷気を感じた。
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	「鼎っ……!(BROKEN:8_20)
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	「ナギっち、大丈夫!(BROKEN:8_20)
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	駆けつけた八弥子さんが私を見て、奈岐に教えてくれるけど。
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	「くっ……!」
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	「ナギっち……?」
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	「気を失っている――『だけ』だと?(BROKEN:8_20)
	(BROKEN:8_20)
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	冷気が集中して奈岐の片手に短刀が作り出されていく。
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	「中村真琴……鼎の命を狙ったのは、これで二度目……」
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	「三度目があると思うな……」
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	再び視界が動き出す。
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	先ほどよりも、もっと速く――砂浜で倒れる中村さんへ目掛けて、一直線に向かっていく。
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	「ナギっち!(BROKEN:8_20)
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	「向山先輩っ!?」
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	中村さんの容態を見ていた遠山先輩が驚きに声をあげる。
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	「ナギっちっ!!(BROKEN:8_20)
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	視界が大きく揺れて、地面に引き寄せられ、砂が飛び散った。
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	奈岐の足が映し出され、そこには八弥子さんが放った鎖が
	がっしりと絡みついている。
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	「邪魔をするなっ!!」
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	「そんな気持ちで誰かを傷つけたら、歯止めがきかなくなるっ!」
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	「ナギっちは優しいから!(BROKEN:8_20)
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	「ふざけるなっ!!(BROKEN:8_20)
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	氷の短刀が八弥子さんの鎖を断ち切ろうと振り下ろされるが、
	ギィンッと金属音を立てるだけで弾き返されてしまう。
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	「くそっ!(BROKEN:8_20)
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	「こんな枷さえなけばっ……くそっ!!」
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	吹き荒れた冷気が周囲を凍てつかせていく。
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	そして、視界が霞み、おぼろげになり……
	テレビの電源を落としたかのように、ぷつりと途絶えた。
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「今のは……奈岐の記憶……」
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今の私達は繋がっているから……見えた?
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でも、どうして今になって?
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どうしてこのタイミングで?
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「っ!?」
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突然、視界が戻り、私は炎を放つ剣に寄りかかる。
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周囲を見渡し、ここが現在であることを認識していく。
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どうして……奈岐の記憶が私に?
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奈岐が力を本気で解放させたことと関係がある?
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どちらにしても、あの記憶が確かなものなら、
中村さんの行動次第では……奈岐はきっと。
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「……私がしっかりしないと」
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奈岐がまた思い至らないように、私が決着をつけないといけない。
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想いと共にさらなる力が溢れ出す。
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身体に付いた霜を一瞬で気化させ、私の身体が熱に包まれる。
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握った剣の刀身は赤く燃え、遠山先輩の鎌を焼き切った時と
同じぐらいに……違う、それ以上の力を宿していた。
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蒼い炎を解き放った中村さんが左手で大剣を振るう。
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「お前達……あの力、いったい何をした?」
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「……ごめん、それは答えられない」
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「なら、答えられないようなことをした――そう解釈する」
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負けじと中村さんが大剣に蒼い炎を宿していく。
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八弥子さんの力を得て、ようやく本来の熱を取り戻した様子だ。
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「今日の試合、松籟会の叔母さんに何か言われてる?」
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「答える必要があると思うか?」
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「無いと思う。だから、あなたには負けられない」
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「きっとあなたの信じているものは……嘘ばかりだから」
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「……戯れ言を」
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話は終わりだと中村さんが剣を構えた。
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私も両手で剣を握り、学園長が下す開始の合図を待つ。
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「最終試合、始めっ!!」
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学園長の声を聞き、私は全ての炎を解き放った。
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「この一戦にて、禍根を断つ!」
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「嘘ばっかりのまま、終わらせないっ!」
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二つの炎が交錯し、巫女の座と――命を賭けた戦いが始まる。
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seisai_no_resonance/sce07_04_12_2.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)