User Tools

Site Tools


seisai_no_resonance:sce07_04_10_0
翌朝、私達は先生から地震のことを改めて知らされる。
>

先生は繰り返すように、あれが地震だと言っていた。
そのことが余計に気になってしまう。
>

そして、御花会のメンバーにだけ、昨晩から末来さんの行方が
分からなくなっていることを知らされた。
>

学園に来ても、学生達の話題は地震のことばかり聞こえてくる。
>

末来さんのことや、穢れの気配については誰も話していない。
>

知っているのは御花会の人間と……
学園でもごく一部の先生と松籟会の人達だけだろう。
>

また事実が嘘で塗り固められていく――
そんな光景を見ているかのようだった。
>

昼休み、食堂でも昨晩の話題が飛び交っている。
>

港で被害が出たと誰かが言えば、それは誤報だと誰かが切り返す。
>

実際のところ、どちらが正しいのかは分からない。
>

ここから港までは遠く、学園や寮は、まるで隔離されたかのように
森の奥に佇んでいる。
>

朝一で情報を集められる学生も限られているだろう。
>

「やっほー、カナカナ」
>

八弥子さんの声が聞こえたかと思えば、
向かいの席に腰をかけていた。
>

「あ、こんにちは、昨日の晩は平気でした?」
>

周りを気にしていたわりに、自分も地震の話題を口にしている。
>

不意に出た言葉とはいえ、なんだか複雑な心境だった。
>

「平気平気。寝てたら、ガジが飛び乗ってきたのかと思ったよー」
>

そんな八弥子さんらしい答えを聞いて、思わず笑みが零れる。
>

「カナカナ、ミライっちはね、不思議ちゃんだから、
(BROKEN:8_20)
>

「……そう、ですよね。ちょっと天然なところありますし」
>

末来さんを気にしていること、あっさりと見抜かれてしまって、
ちょっと苦笑してしまう。
>

「うんうん。それとも、もしかしてさ、カナカナとナギっちが
(BROKEN:8_20)
>

「あはは……もしそうだったら、ちょっと困りますね」
>

私の答えを聞いて微笑んだ八弥子さんが周囲に目をやる。
>

「ね、ナギっちは?(BROKEN:8_20)
>

「奈岐は学園周辺を調べに出てます。
(BROKEN:8_20)
>

「調べるって……昨日の被害とか?」
>

あえて地震とは言わなかった気がする八弥子さんに頷く。
>

「そうですね、何だか胸騒ぎがするので」
>

「んー、ヤヤも少し気になることあるけどさ……
(BROKEN:8_20)
>

「相変わらず?」
>

おうむ返しに言った私は顔を傾ける。
>

「ほら、熱くなるとさ、周りが見えなくなっちゃってるじゃん」
>

八弥子さんの言う通り、奈岐はいつもそんな調子だけど……。
>

「でも、それが何かあるんです?」
>

「カナカナ、本気で弱ってるね……鈍くなっちゃってるよ?
(BROKEN:8_20)
>

「えっ?」
>

「顔に落ち込んでるって書いてあるよー?(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
>

「…………」
>

思わず唖然としてしまう。
>

ホントに八弥子さんは……私のことも、奈岐のことも、
よく見てくれている。
>

そんなことを改めて知った気がした。
>

「奈岐は……そういうところも可愛いんですよ」
>

「あ、カナカナがのろけた」
>

「ふふーっ、なら仕方ないなー。ガジー、今日はのろけ話を
(BROKEN:8_20)
>

「えええっ!?(BROKEN:8_20)
>

「おー、でも少しはあるんだー」
>

元気よく八弥子さんが笑顔で身を乗り出してくる。
>

「あ、あはは……」
>

これは……少しぐらい話さないと、逃がしてくれない雰囲気だ。
>

そんな状況に嘆息しつつも、内心では励ましてくれた八弥子さんに感謝しないといけないな、と繰り返していた。
>

授業が終わり、寮の部屋に戻ってくる。
>

奈岐は先に帰ってきていたのか、机でノートを広げていた。
>

「鼎、戻ったか。学園はどうだった?」
>

「地震の話題ばっかりだったよ。御花会のみんなは末来さんのこと
(BROKEN:8_20)
>

鞄を放り出し、私は息をつきながらベッドに腰をかける。
>

「そうか……こちらは穢れの痕跡があったところを
(BROKEN:8_20)
>

「私達以外に戦闘を行った者がいると考えて違い無いだろう。
(BROKEN:8_20)
>

「……どうして?」
>

奈岐がこちらに来いと視線で呼ぶ。
>

机の前に移動すると、広げてあったノートを指さされる。
>

「この周辺の地図に印をつけたところが、穢れと戦闘があったと
(BROKEN:8_20)
>

学園周辺から島の北側にかけて、無数の印がつけられていた。
>

これを末来さんが一人でやったと考える方が難しい。
>

「じゃあ……私達以外に穢れを祓った人がいるってこと?」
>

「考えにくいことだが、その可能性は高いな」
>

巫女の力を使える者以外が、あの穢れを祓う……?
>

岩で押し潰しても死なない相手――
そもそも霊体を相手にどうやって?
>

「鼎、松籟会が管理する祠へ理事長を探しに行った時のことを
(BROKEN:8_20)
>

「うん、あの変な岩がある洞窟だよね?」
>

「その際、私は秘書の男と交戦している」
>

交戦……奈岐の短刀を掌底で砕いた男性の顔が思い浮かぶ。
>

「奴は私と戦う前に、<RB='しんごん'>真言<RB>を唱えていた」
>

「真言……?」
>

「マントラともいう。呪文のようなものだ。唱えることで、
(BROKEN:8_20)
>

「あの男がただの秘書でないことは確かだが……仏僧かといえば、(BROKEN:8_20)
>

僧侶の人といえば、お寺で木魚を(BROKEN:8_20)
そんな印象からは遥かに遠い。
>

「オン・ベイシラマンダヤ・センジキャ・ソワカ――
(BROKEN:8_20)
>

「えっ、えっと?」
>

上手く聞き取れない言葉に私は目を白黒させる。
>

「これは<RB='びしゃもんてん'>毘沙門天<RB>への願をかける真言だが――
(BROKEN:8_20)
>

「魔を祓うって……」
>

「奴は僧侶ではない。だが、魔を祓うため、<RB='びしゃもんてん'>毘沙門天<RB>へ願をかける
(BROKEN:8_20)
>

「その者達は霊山で厳しい修行を行い、
(BROKEN:8_20)
>

「鬼を<RB='ちょうぶく'>調伏<RB>したという逸話を聞いて以来、いくつかの文献を読んで
(BROKEN:8_20)
>

聞き慣れない単語にまばたきを繰り返している私に対し、
奈岐は肩をすくめてみせた。
>

「つまりは穢れを祓う力を持っている可能性が高いということだ」
>

「でも……あの人が一人でこれを?」
>

私はノートに書かれた無数の印を指さす。
>

「いや、奴の他にも何人か黒服の男達がいた。
(BROKEN:8_20)
>

「穢れが霊体であり、魂だけの存在であることを知っていれば、
(BROKEN:8_20)
>

「…………」
>

昨晩に見た血の痕も、その人達のものだったのかもしれない。
>

この印にあるだけ――少なく見ても二十箇所近くのところで戦闘が行われた――地震があってすぐに?
>

「まるで……地震が起きて、穢れが現れることを知ってたみたい」
>

「ああ、知っていただろうな。だから事前に待(BROKEN:8_20)
>

「そんなことが分かる人って……」
>

奈岐は机の上に置いたあった星霊石を手に取って頷く。
>

「諏訪頼継――奴ぐらいだ」
>

「あの男、鬼となって……いったい何と戦っている?」
>

あの人は巫女のことも地震のことも全部知っていた。
>

この島で起きている現象、その全てを知っているんじゃないかとも思えてしまう。
>

思い返せば、私の転入の時だって……そうだ、手を回していた。
>

「…………」
>

無数の点と点が線で繋がりそうになる。
>

でも、あの人の目的が分からず、答えは見えないままだ。
>

「いずれにしても、次の試合で巫女が決まる。
(BROKEN:8_20)
>

「あの男も……島の因習について思うところがあるようだからな」
>

松籟会に身を置きながら、奈岐に手を貸したこと、私を学園に転入許可させたこと――全部、この島の行く末に繋がる。
>

あと少しで何かが分かる……でも、本当にそれは巫女になれば、
分かることなのだろうか?
>

疑問はあるけど、そう信じて進むしか選択肢は無い気がした。
>
seisai_no_resonance/sce07_04_10_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)