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seisai_no_resonance:sce07_03_02_2
学園側から北の森に入っていく。
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肌を突き刺すような冷たい空気は穢れのものじゃない。
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明確な殺気が森中に漂っていた。
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これが何なのか――あまり考えたくはなかった。
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でも、意識しなくても答えは出てしまう。
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「ヤヤ……何するつもりなの」
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ヤヤが何かしようとしている。
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私にでも分かるぐらいに殺気を膨らませて、
別の何かになろうとしているんだ。
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そう、いつか奈岐に言われていた――獣。
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生き血をすするような獣になろうとしている。
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「……ヤヤが何であろうと構わないよ」
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でも、勾玉を取り戻してから消えるのだけは許さない。
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そんなことをしたら、ヤヤは自分のことを認められなくなって、
もう私のところには戻ってきてくれない。
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ようやく見つけられた幸せを全部捨ててしまうことになる。
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「間に合って――お願い」
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どんな状態でもヤヤに伝えないといけない言葉があるんだ。
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だから、私は夜の森を全力で駆ける。
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間に合って――。
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「へえ、ちゃんと来たじゃん」
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「貴様ら……母さんをどこへやった」
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「先にヤヤ達の話だよー、勾玉は持ってきた?」
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「ここにあるっ!(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「ふんふん、そんなに危ない状態だったんだ。マコも大変だねえ」
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「でも、勾玉を返してもらうのが先だよ」
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「母さんの無事を確認させろ」
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「残念、それは交渉決裂。二度と会えない」
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「……貴様、まるで別人だな。そっちが本性か」
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「どうだろうね、どっちがどっちなんて分からないよ」
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「……勾玉はここにある」
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「投げて渡して」
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「母さんはどこだ?」
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「勾玉が先。二度は言わない」
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「くっ……受け取れ」
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「確かに。偽物じゃないね」
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「当然だ。母さんはどこだ?」
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「んー、ごめん、知らない」
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「なっ……!?(BROKEN:8_20)
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「ヤヤはこの状況を用意してもらっただけだしさ、
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「……貴様の星霊石はまだ私が持っているんだぞ」
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「だから?」
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「口を割らせることも出来る」
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「炎よっ……!」
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「手足の一本や二本を失っても人間は喋る」
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「ふぅん。それ、脅し?」
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「星霊石の無い貴様に何が出来る?(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「ああ、そっか。知らないのか」
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「…………?」
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「松籟会の叔母さんに聞いてくれば良かったのに。
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「何を言っている……?」
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「血から……チカラ……縁子がそんなこと言ってたっけ」
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「ホントとこ、知らないだろうけど、その通りなんだよね」
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「巫女の家系、特にヤヤのところは血を拠り所にしている」
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「ヤヤの得物をさ、霊石から取り出しているなんて思ってた?」
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「なんだと……?」
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「フッ、そう思って当然かな……でも、考えてみなよ?」
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「チカラに特化した血が濃ければ濃いほど、どうなるか――
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「この気配……穢れ?(BROKEN:8_20)
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「……血を拠り所にした物がコレだよ」
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「なっ……星霊石無しで武器を……!?」
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「これが血だよ。血を拠り所にした力だよ」
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「…………」
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「勾玉を取り返して、ヤヤがいなくなる前に……
(BROKEN:8_20)
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「カナが安心してお母さんを探せるように、さ……」
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「貴様――だが、得物だけでどうにかなると思うな」
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「さあ、それはどうかな?」
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森の中に漂う嫌な気配がさらに濃くなった。
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穢れのような気配に混じって、巫女の力を感じる。
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この力はたぶん中村さん……?
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「……あれは?」
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前方の暗がりを越えた先で、僅かに蒼い光が見えた。
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間違いない、中村さんの炎の明かりだ。
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いつもの癖で勾玉を探してしまうが、今は巫女の力どころか、
武器一つ持っていない状態だった。
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それでも足を止めちゃいけない。
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「あそこにヤヤもいる」
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でも、ヤヤの力は感じなかった。
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代わりに感じるのは、穢れに似た鋭い殺気だけだ。
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ギイィンッと甲高い金属音が響く。
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「ッ……!?」
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始まっている!?
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反射的に地面を蹴って、音が聞こえた方へ走る。
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茂みを突っ切り、木々の隙間を駆け抜けていく。
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そして、炎の熱を肌で感じる距離まで来た時――。
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「この化け物めっ……!」
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中村さんが炎を纏った大剣で空を薙ぐ。
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草木を焼き払いながら、蒼い炎が目標へ放たれる。
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「ヤヤ……?」
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炎に照らし出されるようにして、見慣れた人影が揺れた。
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俯き、棒立ちになったような状態で得物の鉄球を握っている。
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星霊石を取り戻した?
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でも、巫女装束は……?
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そんなことを考えている間にも、炎がヤヤに迫っていく。
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「危な――」
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声を上げようとした瞬間、その姿がかき消える。
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ヤヤが数メートル近い跳躍から鉄球を振り落とす。
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ドンッと轟音を響かせ、中村さんがいた場所に大きな窪みを作る。
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もし中村さんが回避しなければ、怪我じゃ済まない一撃だ。
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「何故、まともに戦えるっ!?(BROKEN:8_20)
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「……化け物って、さっき自分で言ってたじゃん」
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「その通りだよ。巫女の血が作り出した化け物だよ」
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鉄球を携えた人影がゆらりと蠢く。
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前倒しになるかのような姿勢で中村さんとの距離を詰める。
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正面からぶつかり合い、金属が弾け、火花が飛び散った。
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「くそっ……速いっ……」
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「そっちが遅いんだよ」
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「だが、この距離なら……!」
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鍔迫り合いの状態から、中村さんが炎の力を高めていく。
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「ヤヤの星霊石、ちゃんと持ってきてたみたいだね」
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「なに……?」
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「フッ……!」
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ヤヤが身を逸らし、中村さんの大剣を避けると、
胸ぐらを片手で掴みあげた。
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同時に炎が消し飛ぶほどの風が吹き荒れる。
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「星霊石を発動させる気か……!」
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「終わりだよ」
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続けざまに突風が走り抜け、立っていられなくなった。
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近くの木に身体を預けながら、ヤヤと中村さんを見る。
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すると、先ほどまで制服姿だったヤヤが巫女服を纏い、
星霊石の力を発現させていた。
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「くっ……何だ、この力は……」
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「決して巫女に選ばれない力だよ……穢れすれすれのさ」
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その言葉通り、ヤヤから感じる力は穢れに近い。
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禍々しさを感じる風が吹き荒び、
中村さんとヤヤを包み込んでいく。
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「ヤヤっ!(BROKEN:8_20)
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嵐のように木々を揺らす風が激しく、私の声を届けてくれない。
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その間にヤヤと距離を取った中村さんが大剣を構え直す。
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「穢れ同様だと言うのならば、私の力で<RB='ちょうぶく'>調伏<RB>してくれるっ」
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「いいね、それ。やってみせてよ」
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二人を止めに入ろうにも、風が強くて木にしがみついているだけで精一杯だった。
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「ダメ……今のヤヤと戦ったら……!」
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私の静止が聞こえるわけもなく、中村さんが炎を放ち、
ヤヤに向かって剣を振るい上げる。
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ヤヤは唇を不気味な三日月型に変え、中村さんを迎え撃つ。
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seisai_no_resonance/sce07_03_02_2.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)