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seisai_no_resonance:sce06_06_02_0
一通りの課題を済ませた私は約束通りにロビーへ向かった。
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テレビの前では学生達が談笑しており、
末来さんの姿は見当たらなかった。
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仕方なく、手近なソフ(BROKEN:8_20)
末来さんが来るのを待つことにする。
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そして、数分が過ぎた後。
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「待たせたね、鼎」
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何故か制服姿の末来さんが私の側に歩いてきた。
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もしかして……今、戻ってきたとか?
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「いえ、末来さんは今まで外に?」
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「門限破りになってしまいそうだから、
(BROKEN:8_20)
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「あはは……それもそうですね」
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仮にも寮長なんだし、門限破りはまずい。
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そんなことを思っていると、末来さんが私に手を差し出し、
ソフ(BROKEN:8_20)
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「ありがとうございます」
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「いいよ。ボクの部屋に行こう。
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そう言った末来さんが歩き出すのはいいんだけど……。
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何故か私の手は握られたままだった。
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まだロビーには他の学生達もいるので、
少しだけ恥ずかしい気がする。
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一方の末来さんは特に気にした様子も無く、
むしろいつもより楽しげにも見えた。
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うーん……末来さんって……
やっぱり、天然なところがある?
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カチャッと音を立てて、末来さんが部屋の鍵を開ける。
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そんな部屋の場所はというと、驚くべきことに……
私の部屋から、ほんの少し離れたぐらいの所にあった。
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目を凝らさなくても自分の部屋が見えてしまう。
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「鼎、入って」
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「あ、はい、失礼しますっ」
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末来さんの声に促されて、
若干緊張気味ながらも部屋の中へ踏み出す。
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室内に入ると、すぐに末来さんが電気をつけてくれた。
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寮長の部屋といっても、やっぱり他と変わらないらしい。
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規則は規則……ってところなのかな?
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「話が長くなるかもしれない。
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そう言ってくれたものの、ベッドは何となく躊躇われたので、
机の近くにあった椅子に腰をかけておく。
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すると、すぐに末来さんがコップに注いだお茶を出してくれた。
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「ありがとうごさいます」
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「さて……鼎が今一番困ってるのは勾玉のことだね。
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末来さんが向かいに腰をかけると、神妙に面持ちで切り出す。
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「その勾玉は未来のために作られた星霊石なんだ。
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そんなことを言われ、改めてお母さんの勾玉を手に取ってみた。
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「お母さんの……?」
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「どうして、その星霊石だけ勾玉の形をしていると思う?」
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そういえば……と聞かれてみて、初めて疑問に思う。
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お母さんのだから、という考えが念頭にあって、
深くは考えていなかった。
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「それは<RB='まがたま'>禍魂<RB>――禍々しい魂と書いて、マガタマと読む。
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「未来の力に耐えられるだけの星霊石を作り出したんだよ」
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「でも、何だか……不吉なイメージですね」
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お母さんには悪いけど、禍魂だなんて……
ちょっと良いイメージが持てないかもしれない。
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「……そうだね。実際に使い方を誤れば、
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「…………」
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「だから、未来や鼎だけが勾玉を使ってもいい。
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褒められている気がしたけれど、少しだけ怖くなった。
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使い方を誤れば、危険なものが私に託されている。
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息をついた私に気付いたのか、末来さんが立ち上がると、
私に歩み寄ってきた。
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「鼎、絶対にその勾玉を手放してはいけない。
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「望み……?」
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「そう、望みだ。この島を縛る因習に終わりを告げること。
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因習に終わりを告げる……?
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それって巫女の伝統を終わらせるってこと?
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「鼎は学園に来て不思議に思ったことはない?
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「…………あ」
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またお母さんのことが頭にあったから、気付いていなかった。
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巫女候補だった人――葉子先生みたいな人はいても、
巫女だった人を私はお母さん以外に知らない。
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「役目を終えた巫女は島を出る――そういう話になっていたね。
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「学園長とボクが行った祠、あの奥に巫女は向かい、
(BROKEN:8_20)
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「贄……生贄……ですか?」
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唐突に聞かされた不穏な言葉を聞き返してしまう。
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末来さんは冷静な様子のまま、私の頬に手で触れる。
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「そう、生贄。封印しているものを保つための贄となる」
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「…………」
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「ボクは松籟会が絶対悪だとは言わない。
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「封印を保つため、巫女を捧げるしか手段は無かったんだ。
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頬から末来さんの手が離れ、今度は髪に触れた。
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そして、そのまま緊張をほぐすように優しく撫でてくれる。
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「でも、未来は見つけることが出来た。
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「……でも、まだ巫女の伝統は続いていますよね?」
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「そして、ボクと未来の計画も続いているんだよ」
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「末来さんと……お母さんの……」
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ちゅっと啄む音を立てて、末来さんが私の髪に口づけ、
手を離していった。
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あまりに自然な流れですぐに気付かなかったけど、
ちょっと照れてしまう行為に胸が高鳴ってしまう。
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「未来はあの祠の中で、ボクが鼎を導いて来る時を待っている」
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「……えっ」
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私から離れた末来さんは真剣な眼差しだった。
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「完全な封印を行う方(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「そして、その象徴である鼎が一対の巫女として<RB'・'>門<RB>を閉じること」
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一対の巫女、この島で続けられてきた因習。
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でも、お母さんと末来さんが一対として……?
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それって……嫌な単語が頭の中で過ぎっていく。
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「お母さんと末来さんが一対に……それ、さっき言ってた話……」
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突然のことに混乱して上手く喋れないけれど、
どうしても末来さんに言いたかった。
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浅い呼吸の後、私は末来さんに問いかける。
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「お母さんも末来さんも……贄になるつもりですか」
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「……そうだね、最後の生贄になる。
(BROKEN:8_20)
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予想した言葉がそのまま返ってきてしまい、愕然とする。
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途端に嫌だという感情が胸に溢れ、
つい末来さんの腕を掴んでしまった。
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「……鼎?」
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「お母さんが祠にいるってことは……もうお母さんは……」
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「鼎を騙すような形になったかもしれないね。
(BROKEN:8_20)
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「……ボクと鼎が来るのを待っているんだ」
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「それ……封印が成功しても、お母さんも末来さんもっ……!」
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気付くと手が震え、どうしてか目から涙が溢れる。
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お母さんだけじゃなくて、末来さんまで……?
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そんなことを思うだけで、昂ぶる感情が止められない。
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末来さんは私の頬を伝った涙を指でそっとすくう。
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「だけど、これから先に続く悲劇を止められる」
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「でもっ、でもっ……そんなのっ……」
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お母さんや末来さんの方が私にとっては――。
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そう言いかけた言葉を寸前で呑み込む。
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この島に来て出会った巫女候補のみんな。
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それから、この先に巫女候補となる子達。
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それがどれだけの数になるかも分からないのに、
私の感情だけで言ってしまっていい言葉なのか。
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そんな想いがぎりぎりのところで私を止めていた。
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「鼎は優しい子に育ってくれたね……嬉しいよ」
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「っ…………」
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何も言えなくなってしまった私を末来さんが抱きしめる。
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いつものように優しい温もりが今は胸に痛かった。
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また涙が溢れて止まらない。
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「――最後に一つだけボクのことを話そう」
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「ボクは最初の儀式で贄となり、礎となった巫女なんだ」
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「…………」
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最初の儀式……?
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驚き、顔をあげようとした私の頭を末来さんが撫でた。
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「ボクが封印の要となった。それはもうどれだけ昔のことか
(BROKEN:8_20)
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「未来がそんなボクを封印から解き放ったんだ。
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「それからボクは彼女と一緒にこの計画を立てたんだ」
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二人の考えが私には重すぎて……また何も言えなくなる。
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ただどうしても涙だけが溢れて、末来さんから離れられない。
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「一度に色んなことを話しすぎたね。
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「…………」
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「でも、ボクのために泣いてくれてありがとう」
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首を振ることも出来ず、
末来さんに抱かれたまま肩を震わせる。
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そんな私を末来さんは何も言わずに抱きしめ続けてくれた。
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seisai_no_resonance/sce06_06_02_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)