User Tools

Site Tools


seisai_no_resonance:sce06_04_21_0
バシャバシャと音を立てて、波打ち際から浜辺へ向かう。
>

トンデモなことをしたけれど、私も奈岐も怪我一つ無く、
全身ずぶ濡れになる程度で収まってくれた。
>

「うぅ……靴の中の海水が気持ち悪いぃ……」
>

踏み出すたび、スニーカーの中で雑巾を絞るかのように、
海水が溢れ出していく。
>

「…………」
>

同じく海水を滴らせる奈岐の表情は――とても不(BROKEN:8_20)
>

無理矢理、勾玉は取り返したようなものだったし、
一緒に海へ落ちるなんて真似までさせてしまった。
>

「えーと……奈岐?」
>

「……すごく不(BROKEN:8_20)
>

表情を見て分からないのかと奈岐が頬を少し膨らませる。
>

私は手の中に戻ってきてくれた勾玉を再確認してから、
波打ち際で佇む奈岐の手を取った。
>

「奈岐、助けてくれてありがとう」
>

「そうさせたのは……鼎自身だ。あんなやり方は卑怯だ」
>

「あはは……でも、ああでもしないと勾玉を無くしちゃうし、
(BROKEN:8_20)
>

眉間に皺を寄せた奈岐が長い息を吐き出す。
>

「はぁ……海に落ちた時、頭を打ったのかもしれないな」
>

「えっ……?」
>

そういう意味じゃないと奈岐は首を少しだけ振るう。
>

「鼎に勾玉は返す。盗んだことも謝る」
>

淡々と言い放った後、奈岐の瞳が私を見上げる。
>

「それから……鼎のことを信じてみようと思った」
>

「奈岐……?」
>

まばたきをする私を奈岐の双眸が見つめていた。
>

私のことを信じてみる……それって……。
>

「鼎は、あんな無茶をするぐらい奈岐を信じてくれていた」
>

「崖の上から生身で飛ぶなんて、悪い夢を見ているみたいだ……。
(BROKEN:8_20)
>

勾玉を奈岐が投げ捨てた時、
私は迷わずに飛び降りることを選んでいた。
>

私を守ると言った奈岐の言葉が絶対だと信じられたから、
迷うことなんて無かったんだと思う。
>

「鼎が信じてくれている分だけ……
(BROKEN:8_20)
>

「奈岐……」
>

少し冷たい奈岐の手が私の手を握りかえしてくれた。
>

「ただ一つだけ――鼎が巫女になるなら、奈岐も巫女になる」
>

「鼎の一か八かに、奈岐も賭けてみる。鼎と一緒に行く」
>

そう告げてくれた奈岐の瞳は決意に満ちたものだったけれど、
何故かすぐに視線を逸らしてしまう。
>

「奈岐……?」
>

「鼎は……今回みたいに、またとんでもない無茶をしでかすかも
(BROKEN:8_20)
>

照れながらもはっきりと言葉にしてくれた奈岐に、私は微笑む。
>

「奈岐……ありがと」
>

そして、繋いだ手を離す代わりに、水浸しの身体を抱きしめる。
>

「……やっぱり奈岐は頭を打ったのかもしれない」
>

「ふふっ。それって、すごく都合のいい場所を打ってくれたね」
>

「まったくだ」
>

苦笑しつつ答えた奈岐が私の背中に手を回す。
>

寄りかかるように密着して、互いの距離をゼロに近づける。
>

「ずぶ濡れでこうするのって何だか変な感じ」
>

「でも、嫌じゃない」
>

「あ、素直だ」
>

「だって……」
>

口籠もった奈岐が私の腕の中でもぞもぞと動く。
>

「だって?」
>

「服が濡れているから……いつもより鼎の体温を感じるし」
>

「そうだね、私も奈岐がよく分かる」
>

触れ合った部分が温かくて心地良い。
>

体温が奈岐の存在を身体に教えてくれているようにも思えて、
もっと触れていたくなる。
>

繰り返される潮騒を耳にしながら、奈岐の後ろ髪を撫でていく。
>

「あ、あれ……?(BROKEN:8_20)
>

「だって、ずぶ濡れだし……奈岐は髪の量が多いから……」
>

「あはは、早く帰って洗った方がよさそうだね」
>

そう言って離れようとした時、奈岐の腕が一際強く私を抱いた。
>

「奈岐?」
>

「もう一回だけ……こうしてていい?」
>

消え入りそうな小声だったけれど、ちゃんと聞こえたから、
私は頷いておく。
>

それから、もう一度、奈岐の体温を求めるように身体を寄せ合い、少し強いぐらいに抱きしめる。
>

「鼎……海水を流すだけなら、いい場所があるから」
>

「いい場所?」
>

「うん、いい場所――奈岐のとっておき」
>

私に身を預けながら、奈岐は心地良さそうに言っていた。
>

「鼎、こっち。行こう」
>

身体が離れ、その代わりに再び手と手が繋がる。
>

そして、奈岐に誘われながら、私は浜辺を歩き始めた。
>
seisai_no_resonance/sce06_04_21_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)