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seisai_no_resonance:sce06_04_15_0
授業開始のチャイムを背に、学園を抜け出して森へ。
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そのまま北上しているのは分かったが、
いつもと若干道のりが異なっていた。
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「こっちに何かあるの?」
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「松籟会の管理している祠がある。理事長が向かった可能性もある
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「穢れの記憶で見た場所は、これから向かう祠かもしれない」
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「…………」
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命を落とし、魂を穢れへと変えられた巫女のことを思う。
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あの二人だけじゃなくて、もっと多くの巫女が犠牲になっている。
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そうまでして続ける必要がある儀式っていったい?
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「……人の歩いた跡だ」
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こんな森の奥にも関わらず、人が行き来するように草木が折られ、僅かな道が開けていた。
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「祠が近いな。出来るだけ気配を殺せ」
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奈岐に頷き、私は息を潜めながら、さらに森を進んでいく。
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そして、森の奥深く――岩山の麓で大きな口を開けている洞窟が
目に映る。
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「奈岐、アレ……」
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「足跡はあの中に続いている――行くぞ」
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奈岐はフードを被り直し、身をかがめ、洞窟の入口へ向かう。
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私も足音を忍ばせながら奈岐の後に続いていく。
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昼間でも、洞窟内には陽の明かりが届いていなかった。
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時間帯も関係あるんだろうけど、わざと明かりが差し込まない
角度で、この空洞が作られている。
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それに、人を拒むような冷たさは、穢れの気配に似た感覚だ。
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「あの明かり……」
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洞窟を少し進むと、奥から僅かな明かりが見える。
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かがり火や照明ではなく、岩自体が不思議と発光していた。
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「こんな南の島で<RB='ひかりごけ'>光苔<RB>は見られないはず……
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奈岐が周囲を確認しては訝しげに眉を顰める。
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「奈岐?」
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「岩が発光しているなら、紫外線を浴びる必要がある。
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陽光どころか岩の光を除いて、光源は一つも無い。
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「そういえば……穢れの記憶の中で、光る岩を見た気がする」
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天井から広い空間を照らし出す不思議な岩。
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たぶん、私達が見ているものと同じだ。
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「……やはり、あの記憶にあった場所はここか」
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「この洞窟、予想していた以上にきな臭いな」
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「奈岐、進もう」
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私と奈岐は顔を見合わせ、さらに奥へ進もうとした時――。
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カツンッ――と入口の方から靴音が響いた。
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「誰か来た……!」
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咄嗟に身を隠す場所を探す。
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幸いにも近くに大きな岩があり、私と奈岐は身体を寄せ合って、
その陰に潜む。
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足音は一人ではなく、複数の者だということがすぐに分かった。
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三人以上はいるのに、規則的な足の運びが不気味に思える。
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靴底が岩肌を(BROKEN:8_20)
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「…………!」
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あっと声をあげそうになった口を噤む。
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現れたのは秘書の人を先頭に、数人の男性達だった。
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その誰もが場所に似つかわしくないスーツ姿をしている。
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足音がさらに近づき、そして――止まった。
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「ここは立ち入りを禁じられているはずですが」
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気配を消していたつもりなのに、声は私達に向かっていた。
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「理事長を探していたら、いかにも、な場所を見つけてな」
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諦めた奈岐が先に岩陰から姿を見せた。
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それに続こうとしたが、奈岐が正面を見据えたまま、
手の平で私の額を押さえる。
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もしかして、隠れていろってこと……?
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「ここは織戸伏の禁足地、近づいてはならない場所です」
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「そのような場所に、お前達は揃いも揃って何の用事がある?」
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「お答えすることは出来ません。ただ早々にお引き取り願いたい」
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「巫女候補の方に手荒な真似をすれば、頼継様が悲しまれる」
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秘書の人はそう言うが、洞窟内の気配がさらに嫌なものへ変わる。
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「巫女候補だと?(BROKEN:8_20)
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いつもの成りきりに聞こえるけれど……
暗に、巫女の力を行使するぞ、という奈岐の脅しだろう。
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力の意味が分かっているはずの秘書の人なら、
すぐに引き下がってくれる――そう思っていた。
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「巫女候補の方ではないのでしたら、立ち去って頂く方(BROKEN:8_20)
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男性が片手を挙げると、他の人達が後ろへと下がっていく。
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「何の真似だ?」
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「鬼子を相手に――どこまで対処出来るかという好奇心と、
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本気なのか、男性はネクタイを少し緩め、手袋の感触を確かめる。
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「フッ……そうか、なら怪我で済ませるつもりはない。
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本気なのか奈岐が胸の星霊石に手をかけた。
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そして、洞窟内に異質な冷気が漂い始める。
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氷の力を集束させながら、奈岐の唇が僅かに動く。
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「――――」
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『逃げろ』と唇の動きが告げてきた。
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逃げろって……相手はただの人じゃ?
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でも、奈岐が伝えてくるなら、何か意味があるはず。
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そう考えている間にも、奈岐から光が溢れ、
氷塵を纏った巫女姿へと変化する。
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すぐに短刀を作り出し、秘書の男性へ切っ先を向けた。
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「繰り返す。怪我では済まないぞ」
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「御魂を体現せず、ですか――頼継様への良い土産話です」
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口元を隠す独特な装束だからか、唇の動きは読まれない。
その上で、奈岐が小声で私に指示を出す。
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「私が奴と接触したら、鼎も力をすぐに使え。
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「奈岐は?」
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「まともにやり合うつもりはない。すぐに行く」
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「分かった」
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奈岐は空いている片手にも氷の短刀を作り出し、
素早く身構えた。
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すると、男性は目を閉じ、早口に何かを唱える。
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「オン・ベイシラマンダヤ・センジキャ・ソワカ――」
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「いくぞっ!」
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ほぼ同時に奈岐が岩を蹴って、駆け出していく。
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「奈岐……!」
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私は腰の勾玉を手に取ると、力を発現させ始めた。
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その間にも奈岐の短刀が秘書の人へ振り下ろされる。
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回避する気はないのか、奈岐の一撃に対して、
男性は僅かに腰を落としただけだった。
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「破ッ!」
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掛け声が響き、掌底を短刀の側面から(BROKEN:8_20)
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氷で出来た短刀はいとも簡単に砕け散り、
鉱石の光に反射する塵へと変貌していった。
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「なにっ……」
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「まだ」
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体勢を立て直そうとする奈岐に向かい、
体格差をいかして大きく踏み込んでいく。
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「<RB='き'>帰<RB>すべし――!」
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前に出た勢いのまま、二度目の掌底が奈岐の短刀を狙う。
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再び氷が砕け、奈岐の手から武器が失われる。
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「チッ……!」
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しかし、一撃を回避出来ないと判断していた奈岐が、
男性の懐に踵からの蹴りを放つ。
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「くっ……考えずとも、行動を読まれましたか」
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蹴りを受けた脇腹を庇うようにして、男性が後ろへ下がり、
仕切り直す。
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「何者だ?(BROKEN:8_20)
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「それにはお答え出来かねます」
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呼吸音の後、男性が何事も無かったかのように、
腰を浅く落とす構えを取った。
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戦闘行為をまだ続ける気があると判断して、
奈岐が新たな短刀を両手に作り出す。
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「って……いけない、そろそろ力を使って逃げないと」
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慌てて立ち上がろうとした瞬間、誰かに肩を(BROKEN:8_20)
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「わっ!?」
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「やあやあ、楽しそうなことになってるね」
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理事長の姿に思わず声を上げそうになったところ、
彼はしーっと唇に指を当てる仕草を見せた。
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「ねえ、気にならない?(BROKEN:8_20)
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「それとも、向山奈岐が手を抜いているから、
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昌次郎――きっとあの秘書の人の名前だろう。
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不意に視線を戻した時、
奈岐が再び秘書に距離を詰めていた。
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迎え撃つ秘書は大きな動きを取らない。
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「あーあ、昌次郎ってば、後の先を狙うのはいいけど、
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「それは……奈岐が鬼子だからですか?」
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「考えを読まれないようにしているみたいだけどさ、
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秘書は短刀の軌道を読み、
回避からの当て身に移ろうとしたが――。
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「……正面に<RB='けど>気取<RB>られすぎましたか」
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床に張り巡らされた氷が足に絡みつき、動きを封じていた。
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「終わりだな、洗いざらい喋ってもらおうか」
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奈岐が短刀を秘書の喉元に突き付ける。
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その時、勝負あったとばかりにパンパンッと手が(BROKEN:8_20)
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打ち鳴らしたのは私の横に潜んでいた理事長だ。
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「はい、そこまでそこまで」
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「いつの間に……!(BROKEN:8_20)
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突然のことに戸惑ってた、とは言えず苦笑するしか出来ない。
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「向山奈岐、僕の時間を三分あげるから、
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「いや……五分だ。それでコイツを見逃してやる」
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「んー。じゃ、いいや」
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「えっ?」
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サラッと言ってのけた理事長が肩をすくめる。
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「……チッ、三分だぞ」
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舌打ちした奈岐が氷の短刀を塵に変えていく。
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「そうそう、それでいい」
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理事長が軽快に岩を乗り越えて、奈岐達の元へ歩み寄る。
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「頼継様……申し訳ございません」
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「別にいいよ。充分楽しかったよ、昌次郎」
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その場でひざまずいた秘書の肩を理事長が軽く(BROKEN:8_20)
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「外で話そう。ここじゃ、誰に聞かれるか分からないしね」
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「……分かった」
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理事長は振り返らずに、そのまま洞窟の外へ歩いて行く。
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すぐに秘書が後に続いていった。
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二人の背中を視線で追いながら、奈岐は元の姿に戻ると、
マントを羽織る。
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「鼎、時間が無い。端的に言う。奴を絶対に意識するな。
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「……下手なことを考えたら揚げ足を取られるって意味?」
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「ああ、そういうことだ」
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淡々と答えた奈岐が洞窟の外へ向かって歩き出す。
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「……それにしても」
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一度だけ振り返ると、洞窟の奥では鉱石が変わらずに
淡い光を放っていた。
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本当にここが穢れの記憶で見た場所だとしたら、
先に進めば、あの大きな広間があるのだろうか?
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その真偽も……理事長が知っているのかもしれない。
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確かめないと――私は顔を洞窟の外へ向け、
急ぎ足で奈岐の背中を追いかけた。
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seisai_no_resonance/sce06_04_15_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)