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seisai_no_resonance:sce06_04_09_1
奈岐が解放させた冷気に目を細めながら思考をまとめていく。
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私は奈岐を守る盾になるわけでもなく、
穢れを祓う武器になるわけでもない。
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魂を体現する方(BROKEN:8_20)
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互いの力を交わらせずに発現させる。
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「――今だ」
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奈岐の冷気を追いかけるようにして、勾玉から炎を解放していく。
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相手に力を預けるのではなく、個々が独立して力を行使する。
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ただし、それだけでは単独で戦闘行為を行うことと違いが無い。
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あくまでも一つの魂を体現するにはどうすればいいか。
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私にも奈岐にも――その答えは明白だった。
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勾玉に纏った火の粉を振るい落とす。
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そして、肺に溜まった息を少しずつ吐き出していく。
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「鼎、平気か!?」
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巫女装束を纏った奈岐が私へ振り返る。
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正直なところ、ここまで――とは想像していなかった。
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手先の感覚が無くならないように、熱を放つ勾玉を胸に抱く。
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「……さ、寒い……こ、凍えるっ……」
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巫女の力を使った奈岐に対して、私は勾玉の力を解放しただけ。
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装束も無ければ、剣も無い。私は生身の状態だった。
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力を使った奈岐に全てを預けるということ――これが唯一の方(BROKEN:8_20)
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穢れと戦う際、生身で相対するのは無謀だと
笑われるかもしれない。
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でも、一対である奈岐をどこまでも信頼しなければ、
そもそも一つの魂を現すことなんて出来ないだろう。
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どれだけ自分を危険な状態に晒してでも、奈岐を信じ抜く。
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自分の全てを預けることで、ようやく一対を示すことが出来る。
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「っ……奈岐がこの力に慣れれば、鼎も姿を変えることぐらいは
(BROKEN:8_20)
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「今は何より安定させることが大事だから……」
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強がってみるものの、身を切るような寒さに身体が震えてしまう。
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この冷気……今まで以上の力を奈岐が発現していることと、
一対として影響を受けているのが原因だろう。
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どちらかが巫女の力を使っただけでは、ここまで煽りは受けない
のは、以前の経験から把握している。
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落石の事件――穢れに邪魔をされた時のことだ。
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あの時、私は奈岐を抱えて逃げたけど、
奈岐が火傷を負ったりすることはなかった。
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そんな経験があったから、少し甘く見ていたのかもしれない。
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「……穢れの気配も無い。すぐに巫女の力を解除しよう」
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「奈岐、待って……!(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「そ、それは……鼎がもっと煽りを受けることになるっ」
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「でも、まだ力を発現させただけだから……使いこなせないと」
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「…………」
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奈岐は一呼吸置いた後、渋々とだけど頷いてくれる。
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そして、右手に氷の短刀を作り、次いで左手にも短刀を作り出す。
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ただそれだけの行為なのに、熱を放つ勾玉を抱いてなければ、
凍え死んでしまうかと思うぐらいの冷気が身に纏わり付く。
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「鼎、もう少し炎の力を強めてもいい。奈岐と接触しても、
(BROKEN:8_20)
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手探りで奈岐は一対として発現した力の感覚を確かめている。
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それがどれほどか分からないけれど、今は朗報だ。
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「うぅ、助かるかも……妥協点を見つけないと危ない……」
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勾玉を強く握り、少しずつ熱を解き放つ。
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せめて震えがおさまるぐらいの熱を解放出来ればいいんだけど。
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「鼎、そこまで凍える必要は無い。呼吸を合わせて……
(BROKEN:8_20)
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「わ、分かった、危なくなったら教えて」
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奈岐の様子を確認しながら、さらに熱を高めていく。
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肌に張り付いていた冷気が剥がれて、次第に震えがおさまる。
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「はぁ……ちょっと落ち着いた」
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ここまで力を使えれば……動くことも出来そう。
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「安定さえすれば、鼎も巫女装束を纏える。
(BROKEN:8_20)
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「……だと思う」
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さすがの奈岐も知識に無いことだからか、
小声でそう付け足していた。
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「あはは……」
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「でも、ようやくだね」
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ようやくのスタートラインだと思う。
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一対として選ばれてから、失敗続きだったけれど、
やっと力を合わせることが出来た。
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気を抜けば、涙ぐんでしまいそうなほど感慨深い。
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「全部、鼎の御陰だ。一人じゃ、この答えには辿り着けない」
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「そうでもないよ。奈岐と過ごした時間を振り返ったら、
(BROKEN:8_20)
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「……そうか。なら、次は奈岐が鼎を答えに導く番だ」
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フッと笑った後、奈岐が両手に持っていた短刀を氷の粒に還す。
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「予測通り、この状態なら穢れの声を聞けると思う」
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「奴らから巫女との関係を聞き出せれば、鼎の母に繋がる情報も
(BROKEN:8_20)
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「うん、それは奈岐に期待してる」
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微笑んだ奈岐は手を振るい、力を元の星霊石に集束させていく。
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冷気がおさまったのを見て、私も勾玉の力を鎮める。
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初めてのことだったからか、ドッと疲れが出てきたように思えて、膝が折れてしまいそうになった。
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奈岐の方は平気なのか、私の様子に目を瞬かせている。
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「鼎……平気か?」
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「あはは、なんとか。いつも最初はフルパワーでやっちゃうのが
(BROKEN:8_20)
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初めて巫女の力を使った時もそうだったかな……。
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一ヶ月ぐらい前のことが随分と遠い昔のことに思える。
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「なら、少し休んでから戻ろう」
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「うん、そうだね」
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奈岐に頷いてから、私は砂浜に腰を下ろした。
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すると、すぐ隣に奈岐も座ってくれる。
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「んー……明日、授業サボっちゃおうかな」
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「……鼎がそんなこと言うなんて意外だ」
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本当に意外だと思ってくれたのか、奈岐が目を丸くしていた。
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「二兎追う者はなんとやら――前回の反省だよ」
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「今は巫女と穢れのことに、時間を少しでも多く使いたいし」
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「……鼎、人目を避けて活動出来るのはこの時間だけだ。
(BROKEN:8_20)
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サボりを悪癖と認めている奈岐がおかしくて少し笑ってしまう。
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「ふふっ、それよりも奈岐の側から離れても平気なんだ?」
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「……一対として相手を信じること、それも重要だから。
(BROKEN:8_20)
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そう言っても中村さんとの一件が不安なのか、奈岐は落ち着かない様子で視線を左右にさせていた。
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「私なら大丈夫。奈岐と一緒に答えを見つけないといけないし」
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「鼎……」
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どこか不安げな声を聞きながら、私は奈岐の手に握る。
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「でも、せっかくだからさ……
(BROKEN:8_20)
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「そうだな……風間と同室でなければ、安心して寝坊も出来る」
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「ふふっ、じゃあ眠い時は体力温存のために遅刻しちゃおう」
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「それが一番だ」
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奈岐と顔を見合わせて笑い合った。
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一つの御魂を体現するという次のステップもクリア――。
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あとは……実際に穢れと遭遇してからが本番だ。
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私は気持ちを新たにしながら、手の中にある勾玉を握り締めた。
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seisai_no_resonance/sce06_04_09_1.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)