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seisai_no_resonance:sce06_04_08_0
消灯後――
私と奈岐は空き部屋から寮の外へ抜け出す。
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二日ぶりに感じる夜風が不思議と心地良く思える。
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夜行性じゃなかったんだけど、と内心で苦笑しつつ、
森の中へ足を踏み入れていく。
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虫の鳴き声が響く森の中を奈岐と進む。
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肌で感じる空気は少し涼しいぐらいで快適――
どこかに穢れが潜んでいる気配は無い。
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だからか、私と奈岐は軽快な足取りで目的地へ向かう。
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「鼎、一対として力を(BROKEN:8_20)
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「本音で話し合ってから、一度も試してなかったね」
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あの時のことを思い出したのか、奈岐が視線が横に逸れる。
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「は、話をした効果は……あると思う。でも、自信が無い」
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「どうして?」
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「どれだけ鼎に近づけたとしても、力の相性が悪い……
(BROKEN:8_20)
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炎と氷、確かに私も対になる力だと思う。
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瞬時に奈岐の氷を溶かしては水に変えて――いつもの爆発だ。
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だからといって、氷で炎を抑え込むような真似をしても、
それは力が衝突していることに変わりない。
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決して一対の魂を体現しているわけじゃない。
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でも、今の私には確信めいたものがあった。
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「きっと大丈夫だよ」
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「鼎……?」
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私は奈岐の手を取り、微笑みかけると、再び歩みを再開する。
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荒魂に対し、愛情を示す幸魂を対とする――
それで御魂を体現したのが巫女の力と教えられた。
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四つある魂の中から、どうして幸魂が優先されたか。
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勇猛な荒魂、愛情を示す幸魂、親和を現す和魂、
知性を構成する奇魂――。
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穢れを祓うために勇猛な力を求めるのは分かるし、
実際に巫女としての戦闘能力は必要になる。
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気になったのは幸魂だ。何故、愛情に固執したか。
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もし私の推測が正しくて、荒魂の力を引き出すための一対であるとするならば……。
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きっと、今日は成功出来る。
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いつもの海岸に到着すると、私は勾玉を手に取り、
奈岐へ振り返った。
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「私、愛情って考えに拘りすぎていたかも」
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「愛情……?(BROKEN:8_20)
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考えを読んだ奈岐に、私は頷いてみせる。
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「荒魂の力を引き出すことが最終目的だとしたら、
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「しかし、一対を体現するためには魂を……いや、そうか!」
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荒魂を支える為の力――きっとそこに意識がいきすぎていた。
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「そうか、そうだ。一霊四魂の考えが織戸伏に入るまでは、
(BROKEN:8_20)
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「幼少より聞かされていた話だけに……固執しすぎていた。
(BROKEN:8_20)
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水を得た魚のように奈岐の気分が高揚しているのが分かる。
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頭の回転速度を最大限まで引き上げて、饒舌に、早口に、論旨を
展開させていく――いつも奈岐が戻ってきた。
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「鼎を特別な存在だと認識したことで、そこに生まれたのは愛情
(BROKEN:8_20)
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「加えて、私も鼎も穢れに対して真実を求める。愛情に、親和に、
(BROKEN:8_20)
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力強い奈岐の瞳が私を捉えてくる。今にも巫女の力を発現させたいという意志が伝わってくるようだ。
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「そういう意味でも、奈岐は私にとって特別だよ。
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「原点回帰……いいや、これがあるべき形なのかもしれないな」
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奈岐は胸元の星霊石に手をかけた。
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「荒魂を体現する巫女、それを支えるもう一人の巫女は親和を、
(BROKEN:8_20)
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「相手を包み込む愛情だけじゃない。それが私達のやり方だよ」
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対になる炎と氷だからこそ、気がつけたことかもしれない。
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一対の巫女は剣と盾の関係じゃなかった。
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「鼎、力を使おう。必ず成功させる」
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「うん、奈岐がお願い。穢れの声を確かめる必要があるし、
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一対の巫女は、二人で一つの魂に……一人の人間を現す。
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答えを前にして意気揚々とする奈岐を見て、再び思う。
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末来さんの言った『助ける』という言葉の意味――
その最初のステップは乗り越えられた。
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あとは私達がどこまで出来るか。
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限られた期間の中で、どれだけ真実に迫れるか。
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「鼎、始めるぞ」
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奈岐の声に頷き、私も意識を集中し始めた。
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seisai_no_resonance/sce06_04_08_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)