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seisai_no_resonance:sce06_04_06_0
日曜日の朝――というより、もうお昼に差し掛かる時間。
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夜更かしでもしていたのか、奈岐は寝ぼけ眼を擦りながら、
不可思議なパジャマから着替えを済ませる。
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「制服……?」
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「ん……?」
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私と奈岐は揃って顔を傾けていた。
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「日曜日だよね?」
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「日曜日だな。ついでに言うと休日だ」
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「学園に用事でもあるの?」
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私が言いたいことを汲み取ってくれたのか、
奈岐は「いいや」と首を振った後、言葉を続けた。
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「私服は持ち込んでいないから、制服を着ているだけだ」
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「他の学生達がこぞって着飾っているのを見ると<RB='へきえき'>辟易<RB>する」
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「せっかく肌白いんだし、可愛い服着たらいいのに」
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私の声を半端聞き流しながら、奈岐はいつもマントを羽織る。
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「どう着飾ろうとも髪の色が邪魔をする」
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陽光を浴びて銀色に光った髪を奈岐が手で払う。
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「私は綺麗だと思うよ」
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「そう言ってくれるのは鼎だけだ」
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着替えを終えた奈岐が私に振り返る。
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「それより……鼎、昨日言いかけていた真面目な話とは?」
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「うん、その話をしようと思ったんだけど、お腹空かない?」
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奈岐が起きるのを待っていたので、
既に腹の音を何度か聞いている。
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「――用意しよう。食べたいものは?」
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「奈岐、食堂なら安全だよ」
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「…………」
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無言の後、奈岐が私に手を差し出す。
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「えっと?」
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「私から離れるな」
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過敏な様子は引き続き……ということらしい。
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「あはは……エスコートよろしく」
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苦笑しつつ奈岐の手を取るが、当人は至って真面目な調子を
崩すことは無かった。
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お昼時の食堂はやや喧噪に包まれていた。
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寮に住む学生の数を考えると、随分と静かなものだと思う。
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「休日は島の南にあるショッピングモールへ出かける学生も多い」
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「話は聞いてたけど、一度も行ってないんだよね。賑やかなの?」
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「松籟会が企業誘致を進め、賑やかな場所になっているな」
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「へぇ、松籟会ってそんなこともやってるんだ……」
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巫女に関係したことばかりというイメージが強い。
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「島全体に権力を及ぼすには、祭事を仕切るだけでは事足りない
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淡々と語る奈岐が私の手を引いていく。
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結局、両手でお昼ご飯の乗ったトレイを持つまで、
私は奈岐にエスコートされたままだった。
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テーブルで奈岐と向かい合って……ではなく、
並んで食事を取っていると、見慣れた人物が顔を出す。
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「やっほー、カナカナ、ナギっち」
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ただその表情にいつもの活発さは見られない。
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「……何の用だ?」
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私の視界を遮るようにして奈岐が立ち上がる。
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「カナ、ナギっち、昨日はゴメン」
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「…………」
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「言い訳はしない。ヤヤに出来ることなら何でもするから――」
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「鼎に任せる。私はもういい」
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視線を逸らした奈岐が着席すると、食事を再開させた。
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きっと八弥子さんの考えを読んだ上での答えなんだろう。
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「私は感謝してるぐらいです。八弥子さんが止めてくれなかったら
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「カナカナぁ……」
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どこか感極まった様子で八弥子さんが歩み寄ってくる。
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そして、何故か――ハグ。ぎゅっと抱きしめられてしまう。
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「あ、あの……?」
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私が座っているからか、ちょうど顔が胸に埋もれて……苦しい。
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「うぅ、無事で良かったよぉ……ちゃんと生きてるぅ」
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「あはは……」
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八弥子さんが涙声になりながら私の頭を撫でまわす。
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昨日は八弥子さんと話せてなかったし……心配かけてたのかも。
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「禰津、中村真琴の謹慎は何日か聞いたか?」
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「ぐすっ……マコは土曜まで。本戦に移るタイミングで
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八弥子さんの言葉の中に聞き慣れないものがあって、
胸の圧迫から逃れつつ、私は視線を上げる。
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「八弥子さん、本戦って……?」
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「ん?(BROKEN:8_20)
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「必要無い話だ」
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そう言われても、不穏な単語だけに気になってしまう。
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「……模擬戦は謂わば練習試合。それに対して、本戦は最も優れた
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「ナギっち、優しい」
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「うるさい、鼎が気になっていたから答えただけだ」
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「必要の無い話って言ったのに?」
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「うるさい」
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拗ねたのか、奈岐はそっぽを向いてしまう。
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「だってさ、カナカナ?」
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「巫女は模擬戦の結果だけで選ぶわけじゃないんですね」
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「うん。どっちも参考にはされるけどね、偉い人に。
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「禰津、喋りすぎだ」
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奈岐の視線が返ってきたかと思えば、八弥子さんを鋭く睨む。
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「う、ナギっちが凶暴になってる」
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八弥子さんの話を組み合わせると、土曜から始まる本戦で勝つことが巫女選抜では重要視される。
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そのタイミングで中村さんが復帰……か。
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「…………」
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考えを巡らせていると、奈岐が物言いだけに私を見ていた。
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そんな奈岐から逃げるようにして、再び八弥子さんに話しかける。
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「誰と誰が戦うか、とか……まだ分からないんですか?」
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「うーん、ナギっち?」
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奈岐から漂う不穏な空気に、八弥子さんが私の問いをパスした。
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「はぁ……当日までは伏せられているはずだ。
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「当然、松籟会が絡む。学園側も意見するだろうが……
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どんな思惑があっても、もし本戦で成績を残せれば、
松籟会側も見過ごせない――。
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なんて考えると、奈岐の視線が痛い。
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「カナカナ?」
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苦笑していると、八弥子さんが不思議そうに顔を傾けていた。
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「な、なんでもないです……あ、そうだ、八弥子さんも一緒にご飯
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「いいの?(BROKEN:8_20)
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「鼎がいいなら別に」
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「わー、二人ともありがと!(BROKEN:8_20)
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八弥子さんが(BROKEN:8_20)
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その背中を目で追いかけながら、奈岐が長い息を吐き出す。
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「……昨日の今日なんだ。もちろん、勝手に鼎を視る奈岐が悪い。
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「そう、だよね……ごめん。でも、あとでちゃんと話すから」
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「……真面目な話にその事も含まれるのか?」
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不安げに奈岐が訊ね、私はそれに頷いた。
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「うん、これからのことを含めて、ね」
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今はそれだけ伝えて、私は食事を再開する。
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奈岐はしばらく黙考していたが、八弥子さんが戻って来る頃には、見切りを付けて食後のお茶を傾けていた。
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seisai_no_resonance/sce06_04_06_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)