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seisai_no_resonance:sce06_04_03_0
しばらくした後、カチャカチャと鍵を外す音が聞こえた。
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慌てて身を起こすと、部屋に入ってきた二人分の影が見える。
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「穏やかじゃないね」
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「そう思ってくれる方がいい」
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すぐに鍵を閉める音が響き、奈岐が末来さんを連れてきた。
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「座れ」
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奈岐が机の側にある椅子を引ったくるように掴み、
部屋の真ん中に投げ出した。
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そして手早くカーテンを閉じ、外からの視界も遮る。
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「まるで尋問だね、奈岐」
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「そう思ってくれて構わない」
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「鼎の意志は?」
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指示された通り、末来さんは椅子に腰をかけた後、
ベッドにいる私へ視線を向けた。
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「末来さん、私は――」
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「今、この場で重要なことは私の質問に答えてもらうことだけだ」
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「中村真琴の危険性について、末来は気付いていたはずだ。
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奈岐の視線は末来さんではなく、末来さんの考えを見ているように思えた。
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「今、ボクは力を消耗するわけにはいけない状態にある。
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「……私が手を出すと確信している口ぶりだな」
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「必ず鼎を助けてくれると信じていた」
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僅かな沈黙、奈岐は末来さんを見つめたまま思考を読み取る。
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「その理由は鼎に対する私の執着が異常だと思うからか?
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「分かるよ。誰かを特別に思う気持ちは同じだ」
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末来さんの言葉に対し、奈岐が眉をしかめる。
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「言い直そう――鬼子の気持ちを理解出来るわけがない」
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「……それは難しいね」
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末来さんは奈岐に考えを知られることを前提として、
話しているように見えた。
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恐らく、それに気付いている奈岐は向かい側のベッドに――
視界に私と末来さんの両方が入る位置に座る。
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「何故、鼎を巫女になるように焚き付けた?」
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「奈岐の質問はいつも唐突だね」
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「はぐらかすな。質問にだけ答えろ」
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末来さんがまるで尋問と表現した通りの光景だった。
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「鼎が未来の後を追ってきた場合、ボクが道標となること。
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「この島の内情を知った上で、巫女になる道を示したか」
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「そうすることが、未来に会える唯一の方(BROKEN:8_20)
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「巫女にならねば会えない?(BROKEN:8_20)
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「それを言葉にするのは危険。言えないよ」
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「この島のどこにいる?」
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「奈岐、それは言えない。少なくとも今はまだ言えない」
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末来さんから有力な情報を読み取れないのか、
奈岐は眉をしかめたままだった。
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「危険な場所に鼎を行かせるつもりか?」
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「鼎が望んだ真実はそこにある」
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お母さんに会いたいと私が末来さんに告げたことを思い出す。
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あれは……この島に来て、最初の夜のことだった。
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私がそのことを思い出していると、奈岐から呆れ返ったような声が聞こえてくる。
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「……鬼子との話し方を知っているな。それに慣れている」
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「少ないけれど、理事長と話をしたことがあるからね」
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理事長の話を聞いて、奈岐が外見不相応に肩をすくめた。
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「真っ先に聞いておくべきだった」
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「そうかもしれないね」
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元より末来さんの性格には天然が混じっている気がする。
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たぶんそんな相手は奈岐にとってやりにくいのだろう。
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「無駄だと思うが聞いておく。何故、お前は高遠未来と瓜二つの
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「それも今はまだ言えない。キミ達を危険に晒すことになる」
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答えを知っていたとばかりに、奈岐は失笑していた。
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そして、長いため息の後、改まった様子で奈岐は末来さんを見る。
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「なら、ここからは私個人としての願いだ」
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「何かな?」
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「今の御花会は危険だ。末来が守れない以上、鼎を参加させるな」
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「奈岐……」
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思わず私は抗議の声をあげてしまうが、
奈岐の視線は末来さんに向いたままだった。
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「奈岐――それがキミのいけないところだ。御花会にいるのは鼎の
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「今日、私が手を出さなければ、鼎の命は危なかった。
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「八弥子はすぐに動いた。神住達も星霊石を手に取っていた」
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言い終わる前に、奈岐は立ち上がり、末来さんに詰め寄る。
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「行動を起こせたのは禰津の一人だけだ。だが、アイツも中村の
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「それに、末来、お前が力を消耗できない理由は何だ?」
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「それも今は言えない。でも、キミ達を守るためには必要な力だ」
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「くっ、鼎を命の危険に晒しておいて、よくそんな言葉が言える」
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座ったまま末来さんの胸ぐらを奈岐が掴んだ。
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「奈岐、落ち着いてっ」
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私の声が聞こえたのか、それとも動じない末来さんを見て、
冷静さを取り戻したのか、すぐに奈岐は手を離した。
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「もういい、出て行け。鼎の身は私が守る」
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奈岐は早足で部屋を歩き、ドアの鍵を外す。
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それを見た末来さんは立ち上がり、一瞬だけ私に視線を向ける。
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「鼎――奈岐を助けられるのはキミだけだからね」
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小声で私にそう告げると、すたすたと廊下へ歩いて行った。
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奈岐も続いて廊下に出ると、再び施錠する音が部屋に響く。
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「えっ……?(BROKEN:8_20)
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末来さんの残した言葉の真意が分からず、私は呆然としながら、
二人の消えたドアを見つめていた。
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seisai_no_resonance/sce06_04_03_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)