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seisai_no_resonance:sce06_03_18_1
風に吹き飛ばされた中村さんが砂浜に投げ出される。
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だが致命傷には至らないのか、受け身を取った後、
すぐに大剣を構え直した。
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「やるじゃん――っていうか、どういうつもり?」
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「どういうつもりとは?」
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ヤヤが再び風の力を片手に集束させながら問いかける。
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「穏便に済ませようって気がまったく無いよね」
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「時間が残されていないと言いましたよ」
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「だから、ヤヤが相手でも容赦しない?」
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「ええ、それが唯一の勝算です」
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中村さんが炎を携えた剣を振るい上げ、
砂浜を駆けていく。
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そして、守りを度外視した一撃をヤヤへ向けて放つ。
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「ッ――!?」
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回避したヤヤが反撃を試みようとして、
ギリギリのところで止めてしまった。
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そっか、今、攻撃してしまえば……中村さんは致命傷を負う。
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「そろそろ気付きましたか。禰津先輩、あなたが練習として
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「私を倒せば、今年の巫女が失われる」
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「付け加えるならば、禰津先輩の力を守り無しで受けてしまうと、
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だからこそ、守りを捨てた攻撃を躊躇いなく放てる。
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「それに……噂と違い、随分とあなたは大人しい。
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「…………」
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ヤヤに中村さんが倒せないと知った上での戦い――これが勝算?
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普通に考えるなら、捨て身もいいところだろうけど、
中村さんは確信を持って攻撃してきている。
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これじゃ、どちらかが力尽きるまで続く……?
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「もう一つ。必要ならば、私はあなたの命を奪うようにと
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「私はあなたを殺すつもりでやっています。
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「……そんなにしてまで、カナを狙いたい?」
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「勾玉を奪う指示、そして私怨――充分でしょう」
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「ヤヤはカナを守るよ」
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「……フッ、初めて私を脅しましたね。
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ヤヤの周囲を取り巻く風が毛色を変える。
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冷たく鋭い風が吹き始めた。
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まるで風自体に殺気をはらんでいるに思えて、
ぶるっと私は肩を震わせる。
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「ただ脅しに屈するつもりはありません。
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中村さんが再び剣に炎を宿す。
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その姿を見たヤヤが唇を噛む。
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何を言っても、ヤヤは中村さんを手にかけるつもりは無い。
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だったら、せめて無力化する方(BROKEN:8_20)
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「…………」
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私は抱いていたガジを下ろすと、右手に勾玉を握る。
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使うなと散々注意されていたけど、今ばかりは避けられない。
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「ッ!?(BROKEN:8_20)
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中村さんが私に気付き、声を荒げていた。
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でも、この状況を打開するには――。
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「カナッ、危ない!!」
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ヤヤが私の前に滑り込み、風を纏った右手を大きく横へ薙いだ。
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同時に光の弾が海側へ弾け飛んでいく。
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「えっ……?」
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「……こうなることも想定済みですか。
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「っ……勾玉の使用は防ぎました」
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「ごめんなさい、由布……あなたにこんなことをさせて」
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「でも、私にしか……この距離からは撃てません」
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「……狙いを引き続き、高遠さんへ。勾玉が見えたら狙撃を」
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「分かりました、神住姉様」
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「そんな……」
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今の攻撃は……由布の銃で間違いない。
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松籟会が手を回して由布に撃たせている。
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「風間家は利口だ。それでいい」
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「……やり方、最低だよ。友達に撃たせるなんて」
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「禰津先輩、事態がそれだけ深刻ということです。
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「風間家や遠山家が絡んでいる以上、私がこの場で高遠鼎を
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「間違いなく背中から撃たれます。ただし勾玉を渡せば、
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弾が来た方角に目を凝らす。
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海岸線――堤防の上に、点のような人影が見える。
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何百メートル離れているのか分からないけれど、
ここから何かして由布を止めるということは不可能だろう。
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「…………」
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目を伏せたヤヤが右手に力を集束させていく。
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巫女装束と巨大な得物は星霊石へ変わり、ヤヤの姿が元に戻る。
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「ごめん、カナ……ヤヤが迂闊だった」
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そして、ヤヤが中村さんの足下に星霊石を放り投げた。
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「ヤヤ……」
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「友達同士、こんなことしちゃダメだよ……」
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「……心が穢れに持って行かれる」
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「…………」
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手の中に勾玉はある。
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でも、これを使えば、ヤヤの守りが無い今、
無防備なところ、由布の狙撃を受けてしまうだろう。
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それはここから逃げだそうとしても同じこと。
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足を撃たれるだけなら、まだ運がいい方だろう。
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ヤヤが降参したように、もう打てる手がなかった。
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「ヤヤが謝ることないよ」
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私は勾玉を一度強く握り締めた後、
中村さんの足下へ放り投げる。
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僅かに砂を散らし、お母さんの勾玉が浜辺に転がった。
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「賢明だな」
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中村さんが勾玉とヤヤの星霊石を拾い上げる。
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「禰津先輩、星霊石を必要時以外は預からせて頂きます。
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「…………」
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「あと一つ。理事長と向山奈岐の行方、何か知っていませんか?」
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「出て行くって話だけ聞いた。行き先までは知らない」
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「鬼が二匹、素直に喋っているわけも無いか……」
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「今は目的を達成しました。素直に引き下がります」
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ただし、次は無い。
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そんな視線で中村さんが私を睨み付けた後、踵を返していく。
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「……カナ、ごめん。守れなかった」
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「充分だよ。私一人ならとっくにやられちゃってる」
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「…………」
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ヤヤの視線はつま先に落ちたまま戻ってこない。
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かける言葉が見つからず、私は彼女の手に触れ、握り締める。
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ヤヤの手は僅かに震えていた。
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それが悲しみによるものなのか、怒りによりものなのか。
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それとも、そんな感情が混ざり混ざったものなのか――。
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「……ごめん」
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ただそう呟いた彼女の声色はどこか冷たく、
僅かに私の背筋を震わせる。
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その謝罪が意味していた本当のところを、今の私が知る由もなく、幾度かまばたきを繰り返しながらもヤヤの手を握り続けた。
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seisai_no_resonance/sce06_03_18_1.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)