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seisai_no_resonance:sce06_03_16_0
朝食後、ヤヤとロビーで落ち合う。
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「おー、カナカナ、楽しみすぎて
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「あはは……大当たり」
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ヤヤの私服はそのジャージで違いないのか、
すぐにでも出かけられる様子だった。
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「それじゃ、行こっかー」
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「そういえば、遠山先輩から連絡とか来てないの?」
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「来てないー。あの後、揉めたんじゃないかなぁ」
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「ほら、カスミもマコも堅物だけど、方向性全く違うしさー」
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「あ、言えてる」
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喧嘩とまではいかないだろうけど、冷静に押し問答してそう。
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同じ事を思ったのか、ヤヤは私の顔を見てクスクスッと笑った。
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「あ、高遠さんにヤヤちゃん、今からお出かけですか~?」
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一階の廊下から葉子先生がこちらへ歩いてくる。
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出かける用事があるのか、手に鞄を持っていた。
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「おはよー。そうだよ、今からカナカナとお出かけ」
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「おはようございます」
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「はい、おはようございます。お出かけ先は、島の南ですか?」
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「そうです、ショッピングモールがあるとか聞いて」
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「ふふっ、そうですか~。楽しんで来て下さいね♪」
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葉子先生は微笑んだ後、ヤヤに歩み寄る。
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「ヤヤちゃん、帰りしなでいいんですけど、
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「えぇ~……おつかい?」
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「ちょうど切らしてしまったのです。ヤヤちゃん、お願いします」
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「うぅ、仕方ないなぁ……いつものやつでいいんだよね?」
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「はい、お願いしますね~」
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小さく手を振ると、葉子先生が寮から先に出ていく。
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その背中を見送りながら、気になったことをヤヤに訊ねる。
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「ね、ヤヤって葉子先生と仲良いの?」
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「うん?(BROKEN:8_20)
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「先生、ヤヤの従姉妹だよ?」
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「……えっ?」
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思わず葉子先生が消えた寮の外と、ヤヤの顔を見比べてしまう。
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に、似てない。
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従姉妹だし、そんなに似てないものなのかもしれないけど……
それにしても色々と似てない気がする。
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「先生って……あんなにのんびりしてるのに」
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「学園を卒業してから次第に落ち着いていったねー」
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「昔はそうじゃなかったの?」
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「んー、喋り方とかは変わってないけど、
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立ち話もなんだし、ということで二人して歩き出しながら
言葉を変わらす。
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「アクティブ……」
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今の葉子先生を見ている限り、全く想像出来ない。
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「ヤヤと同じ家だから、巫女候補だったしさ、
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「色々……色々……?」
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うーん、やっぱり何も想像出来ない。
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校門前にあったバス亭で、ヤヤと並びながら、
話を続けていく。
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「それはそれは結構派手にやってたみたいでね、
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「想像出来ないなぁ……あんなにおっとりしてるのに」
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「ほら、戦いになると恵みたいに怯えちゃいそうで」
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「無いなー、うん、無い」
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八弥子さんがどこか達観した様子で言う。
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「敵を見つけたら、喜々としちゃうからなぁ……」
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「……ますます想像出来ないよ、それ」
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「ヨーコ先生はヤヤの血筋らしいタイプだったからね」
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「ほら、力に溺れちゃうタイプ。戦いになると我を忘れちゃう
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「まるで見てきたみたいだね」
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私がそんな感想を告げた時、ヤヤの笑顔が僅かに凍り付く。
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「うっ……あー……子供の頃、色々、ね……」
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「……?」
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首を傾げていると、遠くからバスのエンジン音が聞こえてきた。
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「ほ、ほらっ、カナカナ、バス来たよー!」
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何故か少し慌てた様子でヤヤがそう言う。
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もしかして……子供の頃、先生と何かあったのかな?
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「トラウマ?」
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「ひっ!」
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ヤヤがぶるっと身を震わせる。
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どうやら、それで間違いなさそうだった。
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でも、葉子先生が……うーん、やっぱり想像出来ない。
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バスから降りた先は予想の遥か上を行く光景だった。
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お洒落な街並みがズラリと港の方にまで続いている。
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「わあ……まるでリゾート地だね」
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「その例え、的を射てるかも」
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同じくバスを降りたヤヤが私の隣に並ぶ。
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ちなみに休日でもガジはヤヤの頭についたまま、
お出かけも一緒らしい。
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「この島の内情は閉鎖的でもさ、
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「おー?」
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頭の中で符合が結びつかない。
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仕来り云々で口うるさいぐらいの島なのに?
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「松籟会も昔みたいに権力だけで島民の気持ちを集めることが
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「なるほど。情報化社会だしね」
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そんな私の情報源だった携帯電話は海の底で
今頃お魚に突かれてそうだけど。
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「ま、ヤヤは難しいこと考えないし、楽しいところがあれば、
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「あはは、それもそうだね」
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「それじゃ、いこっかー。今日はいっぱい買い物があるからねー」
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ヤヤが笑顔で私の手を引いて歩き出す。
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「何買うつもり?」
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「ヤヤの頭にいる食いしん坊のご飯とか。色々ー」
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ああ、寮の食事だとキャットフードは出てこないもんね。
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「ふふっ、楽しみ」
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ヤヤの手を握りかえしながら、小洒落た街並みを歩んでいく。
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いつか来た港沿いを歩きながら、店先で買った揚げパンを囓る。
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上手く入り江に作ってあるのか、異国風の港になっており、
クルーザーがいくつか停泊しているのも見えた。
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リゾート地という認識は本当に間違っていないらしい。
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「んー?(BROKEN:8_20)
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ガジがヤヤの揚げパンに手を伸ばしている。
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「あはは、猫ってパンも食べるんですか?」
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「食いしん坊だからねえ、もう何でも食べちゃうよー?」
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ヤヤはガジをたしなめつつ、さすがにパンは渡さない。
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「ヤヤが一年生の時なんかね、夜中に抜け出して、
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「食べ過ぎちゃうと、頭にぶら下がってられないよー?」
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ヤヤから離れないガジの頭を撫でる。
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ふわふわとした猫毛に触れていると、ふと思い出す。
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「そういえば、奈岐から連絡無いね」
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「理事長と行方不明になったってのはホントみたいだけどね」
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「そんな話あったの?」
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「ほら、ヨーコ先生が朝から学園に出かけていったじゃん。
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そういえば、休みにも関わらず、学園に向かった様子だった。
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「……奈岐が何かしてるのに、私、遊んでていいのかな」
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「ふふっ、カナカナ、それは考え方が違うぞー?」
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ヤヤがそう言うや否や、私の肩に顎を乗せてくる。
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か、顔が近い……。
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「ナギっちが何かしてるから、ヤヤ達はこうして遊んでないと
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「寮に籠もってヤキモキしてたら目をつけられちゃうわけ」
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「それは……納得だけど」
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「カナカナは真面目だなぁー」
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ヤヤが私の肩に顎を乗せたまま、つんつんと頬をつつく。
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「ほら、笑顔笑顔。休みを楽しまないと損だよ」
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「むぅ……じゃあ、もうちょっと南国っぽいモノ食べたい!」
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「あははっ、カナカナも食いしん坊だ」
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私から離れたヤヤは笑った後、再び手を引いてくれる。
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「じゃあ、今度はあのお店に入ろっ!(BROKEN:8_20)
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「ふふっ、それはガジも喜びそう」
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「ガジはダーメ、調子に乗ると何でも食べ続けるから」
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ピクッと反応したガジをたしめなつつ、
ヤヤが指さした店へ向かっていく。
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その後、ヤヤと数件店をめぐり、ウィンドウショッピングを
続けている間にも陽が傾き始めた。
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片手に荷物、片手にヤヤの手――
そんな状態に慣れた頃、もう帰りのバス亭だった。
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「ヨーコ先生のお茶も買ったし、ガジの餌も買ったし……」
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ヤヤが荷物袋を覗きながら、忘れ物はないかと確認している。
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「ふふっ、楽しいデートだったよ」
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「んー?(BROKEN:8_20)
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「手まで繋いでるのに?」
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「ふふっ、カナカナは誘いに乗っちゃってるのかな?」
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少し意地悪な笑みを浮かべたヤヤが私の顔を覗き込む。
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「また好きになったらダメとか言うつもり?」
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「おー、正解」
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「カナカナはヤヤにとって眩しすぎるぐらいなんだよね。
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「むぅ……変な例え。ちょっと分かんないよ?」
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「そのまんまの意味なんだけどなー」
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ヤヤが苦笑した時、帰りのバスが道路を走ってくる。
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「じゃ、カナカナ、帰るまでがデートだよ」
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「それ、また誘ってる?」
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「生殺し?」
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「私の台詞だよー」
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口先を尖らせると、ヤヤがクスクスッと笑う。
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「ヤヤはカナカナのこと、大好きだからねー」
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「またそういうこと言う」
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「ふふーっ、カナカナはそうしてキラキラしててね」
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ヤヤが楽しげに笑った時、バスが目の前で停車する。
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この日、ヤヤが言った言葉の意味――
すぐには理解することなんて出来なかった。
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でも、それが必ず明らかになるものだと気付いていたからか、
ヤヤは私にそう言ったんだと思う。
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ヤヤに私は眩しすぎるぐらいの存在。
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きっとそれは陰陽の関係みたいなもので。
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ヤヤが心に抱えているものを知った時、
ようやく私はそれを理解出来るのだろう。
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ただその全てを知った上でも、
私はきっとヤヤのことを――。
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seisai_no_resonance/sce06_03_16_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)