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seisai_no_resonance:sce05_04_15_0
早朝――まだ眠い眼を擦ってから、うーんと伸びをした。
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遠山先輩は朝一番に寮を出ていると聞いた記憶があったため、
こうして寮の外で出待ちしている。
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制服に着替えた後、ご飯も食べずに来たから、
入れ違いにはなっていないはず。
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「ふぁ……日差しが強くなってきたな……」
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いつものように日中はフードを被った奈岐があくびをした。
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「織戸伏の夏って暑いの?」
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「暑いのは暑いな。ただ本土の夏の方が辛いと聞いた」
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「湿度とかの関係かなぁ?」
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この島が南方に位置しているだけあって、
ジメジメした夏にはならないのだろう。
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「蒸し暑くなるわけではないな」
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それでも、夏が近づくにつれて日差しは強くなる。
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木陰から青空を見上げながら、ふと思い出す。
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「奈岐、ちょっといい?」
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「ん?」
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振り返った奈岐の顔を見て、私は微笑む。
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《ね、口調は保留のまま?》
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「……っ!?(BROKEN:8_20)
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あえて頭の中で訊ねてみたけど、これは便利かも。
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《これから遠山先輩に会うから、キャラ作りとか?》
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「そ、そういう意味もある……だから、また今度……」
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「ふふっ」
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「……意地悪」
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照れながら睨み付けてくる奈岐を見て、自然と笑みが漏れる。
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そんなやりとりを続けていると、寮の扉が音を立てて開く。
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「……あなた達、今日から謹慎処分のはずですよ」
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姿を見せた遠山先輩は私と奈岐に険しい視線を向ける。
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「謹慎は分かっています。でも、その前に先輩にちゃんと伝えて
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「私に……?」
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「一昨日の火事と落石の騒ぎ、ご存じだと思いますが……
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「ただ四匹も穢れが現れて、ああしなければ、私も奈岐も
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遠山先輩は腕を組んだまま、私の話に耳を傾けていた。
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「……どうして夜中に穢れと?」
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「そ、それは……」
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穢れを調べるため――と告げていいのか迷っていると、
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「穢れは祓うべきもの。私は独自にその行動を取っている。
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「…………」
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昨晩のことがあるからか、遠山先輩の表情は険しいままだ。
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「遠山、鼎の話は全て本当だ。その上で私からも一言ある」
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「何でしょうか?」
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警戒する遠山先輩に対して、奈岐はフードを下ろすと、
陽光に色素の薄い髪と肌を晒す。
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「遠山、昨日の夜は……すまなかった」
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「えっ……?」
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「弱みに付け込むようなことをした……悪く思っている」
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「…………」
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唖然とする遠山先輩に奈岐がほんの少しだけ頭を下げた。
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「昨日の話、取り下げてもらっていい。だからといって、
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「どういうこと……です?」
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「判断は遠山に任せる。どんな処分が下っても、私は昨日告げた
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「一言、謝りたかった……それだけだから」
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奈岐は再びフードを被ると、私に視線を向ける。
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「私も奈岐と同じ心構えです。どんな処分でも受けるつもりです」
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「ただ、退学だけは許して欲しいなぁ……と思いますが……」
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そう言いながら、ちらりと遠山先輩の表情を窺う。
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「二人して朝からどうしたのですか、頭でも打ちましたか?」
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クスッと微笑みながら、遠山先輩は私と奈岐を見比べる。
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「許可無く夜間に外出したのは問題ですが、あの事件が穢れから
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「ただ謹慎処分はまぬがれないと思って下さい」
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「……はい、分かりました」
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遠山先輩がフードを被ったままの奈岐に視線を移す。
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「向山先輩、巫女候補として最後の年――高遠さんと出会えて、
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「……遠山」
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「せめて私が取り仕切っている間、一度でも御花会に顔を出して
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「高遠さんも向山先輩も部屋に戻っておいて下さい。
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「分かりました」
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「それでは」
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遠山先輩が私達の前から立ち去り、学園の校舎を目指していく。
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その背中を目で追いかけながら、ふぅと長い息を吐き出した。
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「……良かったぁ、内心どうなるかとドキドキしてたよ」
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「鼎、私は……あんな調子で問題無かったか?」
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「うん、ちゃんと謝れてたよ」
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「そうか……良かった。慣れないことだったから」
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言われてみれば、奈岐が誰かに謝るところは想像出来ない。
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まして、毛嫌いしている御花会の人達になんて有り得ない話だ。
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これを(BROKEN:8_20)
けど、それでも遠山先輩との関係は少し軟化したかもしれない。
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「それじゃ、朝ご飯だけもらってから、部屋に戻ろ」
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「鼎、これを」
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奈岐がポケットから数冊のノートを取り出す。
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「穢れに関してまとめてある資料だ。謹慎処分で時間もあるうちに
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「そうだね、借りておく」
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私は返事をしつつ、奈岐からノートを受け取った。
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様々なことが一歩ずつだけど……それでも前進している気がする。
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さらに陽が昇り、強くなる日差しを感じながら寮の扉を開く。
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お母さん、時間かかっちゃってるけど……
絶対にお母さんのところ辿り着いてみせるから。
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心の中でそう誓い、私は寮の中へ戻っていった。
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seisai_no_resonance/sce05_04_15_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)