User Tools

Site Tools


seisai_no_resonance:sce05_04_13_0
部屋に戻り、背中で扉を閉めた。
>

気付かない間に汗をかいていたのか、背中にキャミが張り付く。
>

「おかえり、今日は早かったみたいね」
>

寝る準備をしていたのか、既にパジャマ姿の由布が声をかける。
>

文庫本らしきものを手にしてベッドに腰をかけていた。
>

「た、ただいま……」
>

「どうしたの?(BROKEN:8_20)
>

「疲れてて……調子悪いのかも」
>

そう言った時、突然ドアがノックされる。
>

「ッ――!?」
>

背中をドアにつけていた私はまた飛び上がりそうになってしまう。
>

「由布?(BROKEN:8_20)
>

「神住姉様?」
>

由布は私を不思議がるように見た後、ベッドから立ち上がる。
>

「今、開けます」
>

そこ邪魔と由布に視線で言われてしまい、私はドアから離れた。
>

すぐにドアが開き、遠山先輩の姿を見せる。
>

「由布、ありがとう。高遠さん、ロビーでお待ち頂くようにと
(BROKEN:8_20)
>

「すみません……ちょっと体調が悪くて……」
>

「外出しようとしていた方に体調が、と言われましても……
(BROKEN:8_20)
>

遠山先輩がここに来たということは、もう奈岐との話は終わった?
>

理事長は遠山先輩に私達のことを知らせたと言っていた。
>

もしかして、鬼子の――見鬼のことも?
>

でも、そんなことを知ったら……遠山先輩なら、奈岐と話すことを避けるはず。
>

「ちょっと……あんた、大丈夫?」
>

「あ……う、うん……」
>

由布につつかれて正気に戻ってくる。
>

「少しお話をしたいところでしたが……日を改めましょう」
>

「高遠さんと向山先輩の二人には謹慎処分が下る予定です。
(BROKEN:8_20)
>

「謹慎処分って……」
>

「心当たりがないとは言えないはずです」
>

全部、知った上で――でも、奈岐はこの話を呑んだの?
>

「朝には連絡が行くはずです。それでは、おやすみなさいませ」
>

「あ、神住姉様っ、おやすみなさいっ」
>

由布の声を聞いた後、遠山先輩が部屋から出て行く。
>

そして、僅かな静寂の後、由布の視線が私に向かった。
>

「謹慎って……あんた達、何したの?(BROKEN:8_20)
>

「……ごめん、ちょっと横になるね」
>

由布に一言だけ断って、おぼつかない足取りでベッドに向かう。
>

そのまま倒れ込むようにして、枕に顔を埋める。
>

由布が何か声をかけてくれるのが聞こえたけれど、
返事をする気力もなく、私は目を閉じたまま動けなかった。
>

しばらくして消灯の時間が来たのか部屋の電気が落とされる。
>

暗い天井を見上げたまま、ゆっくりと息を吐き出していく。
>

私、何をこんなに……動揺しているんだろう?
>

何をそこまで怖がっているんだろう?
>

目を閉じれば、私の考えを全て覗き込んだ上で、
楽しげに笑う理事長の顔が思い浮かぶ。
>

鬼子、見鬼――そんな言葉ばかり頭の中でぐるぐると回る。
>

息を吐き出す唇がまだ震えていた。
>

「…………」
>

シーツをきつく握り締める。
>

今の私……絶対に奈岐に会えない。
>

頭からシーツを被り、怯えるように身を丸くする。
>

こんな気持ちが知られたら、こんな気持ちを見られてしまったら。
>

奥歯を強く噛み締め、必死に目を閉じる。
>

色んなモノが怖く思えて、すがるようにお母さんの勾玉を握り、
私はシーツにくるまったまま、震え続けた。
>
seisai_no_resonance/sce05_04_13_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)