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seisai_no_resonance:sce05_04_12_0
寮に戻ると、奈岐は遠山先輩に連れられて、
奥にある部屋へ向かっていった。
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消灯時間が近いのか、ロビーは人気が無く、
静寂が逸る気持ちに拍車をかけてくれる。
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壁に掛かった時計の秒針を見ていると、
さらに時間の流れが遅く感じてしまう。
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奈岐は上手くやり過ごせているだろうか……?
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賢すぎる故、また揚げ足を取ってないだろうか?
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信じようって思ったのに、一人で待っていると、
また不安ばかりが募っていく。
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「ねね、ここってさ、男子禁制だったかな?」
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「わわっ!?(BROKEN:8_20)
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突然、背後からかけられた声に飛び上がりそうになる。
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振り返ると、奈岐と同じような色素の薄い髪や肌をした男性――
学園の理事長が立っていた。
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「やあ、ちょっとお話しない?」
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「お話って……何でこんな夜遅くに……」
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「それはキミ達のことを、遠山神住に教えたのは僕だからさ」
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理事長が……私と奈岐のことを?
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じゃあ、もしかして穢れとの戦いで、火事や落石を起こしたことも知っている?
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「ああ、あの火事と落石って穢れを祓おうとしたのかぁ」
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「えっ……?」
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私、何も喋ってないのに……ど、どうして?
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「それは喋る必要も無いからさ」
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まただ……!
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これってどういうこと……?
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「鬼子ってね、すごく目がいいんだ。色んなモノが見えるんだよ」
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「星霊石を扱える血が混じった織戸伏の鬼子はね――
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「魂を……覗く?」
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「うん?(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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どこか私を挑発するように、くるくると指先で飴玉を回しながら、理事長は微笑む。
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「<RB='けんき'>見鬼<RB>って言葉を伝えれば、きっと教えてくれるよ」
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「見鬼……ですか?」
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聞き慣れない言葉に私は自然と問い返してしまう。
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「見るって書いて、鬼って書く。鬼を見ることが出来る力だと
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「本土ではそのままの意味――悪さをする鬼を見破る業として
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「本土の業が後天的なものだとしたら、織戸伏のは先天的。
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「魂って漢字を頭に思い浮かべてごらん?(BROKEN:8_20)
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「それを視ることが出来るのが見鬼の業なのさ」
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見鬼……人の魂を覗く?
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でも、そんなことをして何が出来るんだろう?
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「簡単なことさ。ほら、今まさに僕がやってみせている」
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「えっ……?」
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「向山奈岐との会話で不自然に感じたことはないかい?」
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「まだ頭で考えてる言葉が、何故か会話として成立していく。
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今の理事長との会話も、確かに不自然なところが多い。
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思い返せば、今日も奈岐と話していた時だって……。
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「立ち止まるわけじゃない。過去のデータを再確認することは、
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「えっ?」
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「…………」
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立ち止まりたくない――私はそう思っただけなのに、
まるで考えを汲み取ったかのように奈岐は答えを返した。
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「うんうん、核心に近づいた。そうだよ、それが織戸伏の鬼子、
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「…………」
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見鬼……人の考えを覗く……。
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「あっははっ、自分が考えていることを覗かれちゃ、
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唖然としている私に対し、理事長は持っていた飴玉を向ける。
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「これを知ってるのは鬼子自身と――松籟会の人間、学園でも
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「だってさ、これは僕ら鬼子にとって、最高のアドバンテージ
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楽しそうに笑う理事長に対して、私は呆然としたまま。
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だって、この人の前で何かを考えたとしても……すぐに知られる?
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「うん、分かる分かる――視えるんだよ」
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「…………」
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息を呑む。寒くも無いのに鳥肌が立っている。
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一歩後退ったところで自分が恐怖していることに気付いた。
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「あっははっ、そんなに怖がらないでよ。傷ついちゃうなぁ」
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「…………」
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言葉が出ない。頭の中を掻き回されたみたいに混乱している。
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「あれれ?(BROKEN:8_20)
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見回りをしていたのか、葉子先生が二階から顔を見せた。
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ゆったりとした動作で階段を下りてきて、理事長に一礼する。
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「こんばんは、理事長。ここは男子禁制の女子寮ですよ?」
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「ああ、そうだったね。ごめんごめん、忘れちゃってたよ」
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「もう、ダメですよ~、理事長」
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「金澤先生は怒ると怖いからねえ、僕は退散させてもらうよ。
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私と先生に微笑みかけた後、理事長は玄関へ早足で向かっていく。
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その背中を目で追いながらも、私はまだ何も考えられなかった。
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「高遠さん?(BROKEN:8_20)
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「えっ……?」
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「お顔が真っ青ですよ?(BROKEN:8_20)
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「い、いえ……ちょっと雑談をしてただけですから」
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心配してくれる葉子先生に首を振り、また一歩後退ってしまう。
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「高遠さん?(BROKEN:8_20)
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「へ、平気……です!(BROKEN:8_20)
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慌てて頭を下げてから、私は二階へ続く階段を駆け上っていく。
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「あ、廊下も階段も走っちゃダメですよ~」
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先生の声を背中に聞きながらも、逃げるように動く足はどうしても止まらなかった。
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seisai_no_resonance/sce05_04_12_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)