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seisai_no_resonance:sce05_04_07_0
ゆっくりとまぶたを開くと、輪郭線のぼやけた世界が目に映る。
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意識が戻ってくると、自分の倒れた場所との違いに、
まばたきを繰り返す。
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「私……たしか……」
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岩場で穢れ達と戦って、奈岐が全部祓ったところを見て……
体力切れでそのまま倒れたような?
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「おかしい……やはり、名前が無いな。名簿にすら名前が無い」
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部屋のどこからか奈岐の声が聞こえる。
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身体を起こそうにも、四肢が鉛をつけられたように重く、
びくともしない。
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「偽名か?(BROKEN:8_20)
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末来さん……?(BROKEN:8_20)
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「松籟会も学園も……いよいよ仲良くなった証拠か?(BROKEN:8_20)
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「いずれにしても、もう一度洗ってみるか」
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バサッと紙の束が放り出された音が聞こえる。
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「奈岐……?」
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「鼎、気がついたか」
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椅子に座っていたらしい奈岐がベッド脇まで歩いてきた。
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「私、倒れたところまでは覚えてるんだけど……」
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「では、私はお前を運んだところまで覚えている、と言おうか」
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「…………」
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思わず唖然としてしまう。
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「そんなに驚くことか?」
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「寮からあそこまで距離があるし、それに身長差!」
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「むぅ……悔しいが、正論だ」
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むすっとした様子で奈岐はため息をつくと、
私が寝転ぶベッドに腰をかける。
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「お前を引きずりながら森へ戻ると、片倉末来が来ていた。
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「末来さんが……」
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「それでここまで運ぶのを手伝ってもらった。納得したか?」
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「末来さん、足早いですね」
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寮からあの場所まで一時間近く――騒ぎに気付いてからだと、
あの距離を三十分かけずにやってきたわけだし。
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「鼎の危険に気付いて走った、と本人は言っていた」
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「あはは……」
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末来さんなら、ホントに走ってくれてそう。
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後でちゃんとお礼を言わないといけないな。
でも今は……。
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「奈岐……ごめんね。ありがと」
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「…………」
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「先輩として、ペアとして……と、友達として当然のことだ」
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奈岐は少し顔を赤くしながらも、私の目を真っ直ぐに見てくれる。
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「顔、赤くなってる」
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「わ、分かってるっ……何で鼎はそんなことを口にするんだ」
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「もっと照れたところが見たいから」
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「こ、この意地悪っ!」
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バサッとシーツを頭に被せられて視界が塞がれてしまう。
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「あははっ、奈岐って結構照れ屋さんだよね」
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「慣れてないだけだっ」
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シーツを取ると、不満そうに眉をひそめた奈岐が座っていた。
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「さて……おふざけはこの辺りにして、鼎に報告がある」
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「私に?」
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「お前の母親のことだが、学園と寮の過去の名簿を探しても、
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「今日の昼間、職員の物をくすねてきた物だから、
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「えっ……?」
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一瞬、目の前が真っ暗になりかけたところ、
頭を振って何とか意識をたもつ。
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「お前の言葉を疑ってはいない。だから、松籟会にとっても、
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「疑ってないって……そんなあっさり。どこにも名前が残ってない
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「鼎は疑って欲しいのか?」
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「そうじゃないけど……」
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「なら、それでいい」
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あっさりと言った奈岐が僅かに口元を緩める。
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でも、納得が出来なくて私は言葉を続けていた。
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「私が嘘ついてないって……確信が持てるようなことがあるの?」
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「ある。私は勘が鋭いからな」
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この話は終わりと奈岐がベッドを離れて、
冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取り出す。
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「鼎も飲むか?」
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「あ、うん……」
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ボトルを持った奈岐がベッドに戻り、私に一本譲ってくれる。
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「不服そうだな」
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「だけど、真っ直ぐな鼎のことだ。そうして、不服そうにしている
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「……今度は奈岐が意地悪だ」
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「フッ、仕返しだ」
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そう言う奈岐を睨みつつ、ボトルキャップをひねって、
水で喉を潤わせた。
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「今、何時かな?(BROKEN:8_20)
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「風間には末来の奴から連絡を入れてもらった。今日はもう休め」
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「……ここで寝ていいの?」
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「気を失うほど、消耗が激しかったんだ。無理をするな」
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奈岐はペットボトルを手に立ち上がると、机の前に座る。
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「私はもう少し調べることがある。気にせず休め」
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「…………」
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ごろりと寝返りを打ったところで一つ気付く。
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「うっ、そういえば……汗でべたべただった……」
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「シャワーなら使ってもいいけど、倒れるなよ」
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「倒れるかもしれないって言ったら、一緒に浴びてくれる?」
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「……それは意地悪か?」
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少しだけ頬を膨らませた奈岐が私を睨み付けてくる。
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「あはは、バレた。もう平気だから心配しないで」
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「まったく……」
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拗ねたのか、奈岐は机の上の紙へと視線を落としていった。
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そんな奈岐を横目にしつつ、私は立ちくらみを起こさないように、ゆっくりと立ち上がり、シャワーを浴びさせてもらう。
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シャワーを浴びた後、奈岐か末来さんが用意してくれた寝巻きに
着替え、疲労感からベッドに転がる。
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そんなことをしていると、すぐに睡魔がやってきて、
シーツにくるまりながら微睡む。
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うとうとと夢かうつつか分からない世界を彷徨っていると、
視界の端に妙なモノが映り込む。
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「…………」
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どう見ても着ぐるみもどきだった。
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夢……だよね?
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目を閉じて、開いても――その変な格好の奈岐がいる。
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「これは神狼の加護を溜め込むパジャマだ」
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しかも、説明までしてくれた。
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何度、まばたきをしても……やっぱり変わらない。
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「鼎、これは神狼の加護を得るための――」
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今日はもう寝よう。
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そう思って目を閉じると、意識があっという間に途絶えてくれた。
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seisai_no_resonance/sce05_04_07_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)